暗く、狭く、息苦しい。
それしか表現できない空間にいた。
いや、これ卵だろ。だって全身覆ってるし。
殻らしきものを壊すため、全身をぐぐーと持ち上げる。
うぉおおおおおおおおお!!燃えろ!萌えろじゃなくて燃えろ!俺のなにかぁ!
いや、本当に燃えたら困るが。
そうやってしばらく続けていると、パキパキッ、と割れてきた。
おお!光が差し込んできた!もう少しかな?
パキパキ、パリィン!
ちょ!猛烈な光で目が!目がぁあああああああ!
暫く光に目が眩み、しばらく悶絶しているとようやく目が慣れ、周りが見えてきた。
視界には……孤島のエリア8?あれ?バルファルクはこんなとこ住処にしてなかったはずじゃ……
周りをぐるりと見渡すと、銀色の巨大ななにかが見えた。いや、これは……バルファルクの死体?
なんでこんなところにいや、これは俺の親?なんでこんなに傷ついて……
『おーい、聞こえるかの』
え、神様!?なんで?なんで神様の声が聞こえるの?
『お主の特典と今の現状を教えてやろうと思ってな』
おお!ぜひ頼む!
『儂が選んだ特典はバルファルクの龍気エネルギーの生成方法の変化じゃ』
生成方法の変化?
『うむ。バルファルクは胸部により龍気エネルギーを生成する。じゃがお主の場合は生成方法が違うんじゃ。お主の場合は呼吸を行うだけで龍気エネルギーを生成することができるのじゃ、まぁ流石に何もせずに生み出すというわけではないがの』
おお!それじゃあほぼ無制限に飛べるじゃないか!
『戯け!話を最後まで聞け!確かに呼吸で生成できるが代わりに体内のエネルギーを使うんじゃ、使いすぎると倒れてしまうぞ。気をつけるんじゃ』
なんでもウマい話はないもんなのか。ケチめ。
『誰がケチじゃ!もういい、話を戻すぞ。次にお主の現状のことじゃ。お主の親は巣でイビルジョーに襲われてな、傷を負いながらもお主の父親が囮となり、母親がなんとかお主の卵を持って逃げ出したんじゃ』
え?じゃあ目の前のバルファルクは俺の母親!?なんか複雑な気分なんですけど!
『しらんよ。それでは儂の説明は終わったので帰らしてもらうぞい』
え!?ちょ!待って!まだこちらにも質問が……
『さらばじゃ――シュン!』
あ、あの糞ジジイぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!
ま、まぁいい、大丈夫だ。取りあえずあのバルファルクの死体を食べよう。
ムシャムシャムシャムシャ……
流石に全部は食えなかった。まぁいいや、それじゃあ少し孤島を探検してみようか
~俺移動中~
ザバーン!
適当にウロウロしているとエリア10に来てしまった。
いえ、嘘です。ごめんなさい。エリア8にウロウロしてると滑って丘に落ちてしまったのだ。
咄嗟に翼脚で飛ぼうとすると、えぇ、バランス調整ができず、体が高速で右行ったり左行ったり、壁にぶつかったりしながらなんとか着地に成功した。いや着弾というのかもしれない。水があって助かった。
だが生きている!生きているって素晴らしい!
海面を眺めると自分の体が映った。
竜特有の鋭い青い瞳
すこし小さい白く光る牙
銀色に輝く、バルファルク特有の鱗
同じ銀色に輝く、翼脚
神様からもらった知識で知っていたが自分がなる、となると複雑な気分だ。
そうやって黄昏ていると嫌な予感がした。
慌てて、右へと全身を使って跳躍するとさっきまでいたところにルドロスが飛びかかっていた。
わー!ルドロスだー現実で見るとかなりおっきーな。ワニレベルじゃね?
なんて現実逃避をしてる場合か!確実にコイツ俺を狙ってね?
「ギシャァアアアアアアアアアアアアアアア!」
ぎゃぁああああああああああああああああ!
再び飛びかかって来るルドロスに跳ね飛ばされ、宙を舞う俺。
「ギャァ!グルガァ!(ガッ!何しやがる!)」
吹き飛ばされた痛みに叫ぶ俺、だがルドロスはまるで聞いていないかのようにこちらへと進んでくる。
どうする、逃げるか?いやこいつから逃げれるのか?無理だ。じゃあ戦うしかない。
確かに俺は心は人間だ、だが体はモンスターだ。まだ死ぬわけにはいかない。
戦え!恐怖なんてねじ伏せろ!
俺は、理性と本能を持つモンスターなんだから!
龍気エネルギー確認、行動可能、
ルドロスは再び突進の体勢になる。
俺はそれに合わせるように翼脚に力をいれ、鋭い先端部を槍を突くかのように力を溜める。
気は一瞬!相手より先に決める!
ルドロスが口を広げ突進してきた。
襲いかかる恐怖心が身体をすぐさま動かそうとするがそれに抗い限界までルドロスを引きつける。
残り数センチのところで右翼脚をルドロスに突き出す!
体をねじり、龍気エネルギーを推進力に勢いをつけた銀槍はルドロスの喉にあたり、抵抗なく貫いた。
仕留めたルドロスを頬張る。
生肉もいいが焼いて食ったほうがいいかもしれない。
焼けるのはしばらく先の話になりそうだな。
そう思いながら食べ終わった俺は自分の住処を見つけるため、エリア9へと向かっていった。