礎 遷形のヒーローアカデミア   作:Owen Reece

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ご感想、お気に入り登録ありがとうございます。
時期を見て主人公のコスチュームのイラストを描いて見ようかと思います。

それではどうぞ今後ともよろしくお願いします。






第7話 個性把握テスト 後編

個性把握テスト第一種目は50メートル走だ。

 

この競技で特に目立っていたのは、最初に走った飯田だ。彼がジャージの裾を捲ると、妙にゴツいふくらはぎがあった。気になったので近くに行ってみると、それはエンジンのマフラーに当たる部分のようだった。

 

予想は大方あたり、彼が走ると排気口から空気だかガスだかを派手に噴出し、凄まじいスピードで走った。

 

『3秒04!』

速っ!どう考えてもこの種目は彼の土俵だな。

 

もう少しクラスメイトの個性を近くで見たかったが、すぐに俺の番なので急いでスタート付近に行くことにした。

 

「あ、はじめましてっ!礎君だよね?一緒に走る麗日お茶子(ウララカ オチャコ)ですっ!よろしくね!」

 

ん、さっき教室の前で騒いでた女子か、出席番号順だから覚えてくれたのか。

 

「そうだよ、よろしく。」

 

自然と笑顔で答えてしまったようで、彼女も笑っていた。

 

「次は俺たちだ。」

 

「うんっ!」

 

2人してスタートラインに向かって立った、クラウチングの体勢を取る前に麗日は服や靴に触れた。どんな個性だろう?わからん、とりあえず目の前に集中。

 

『ヨーイ..START!』

計測ロボットからの合成音声でスタートの合図が出されたと同時に、俺は強く蹴り出た。

 

タッタッタッ…

 

麗日が近いと巻き込むかもしれん、ある程度離して____ダッッ!!

[運動エネルギー]放出

 

飛ぶわけでもなし、空気抵抗も重力も吸収は無しでいい。

 

『4秒06!』

 

よしっ…もうちょい行ける。俺の記録が出て少し後に麗日がゴールした。

 

『7秒15』

 

走り終わり、両の手を合わせた彼女はどこか嬉しそうな様子だったのでゴールから少し離れた所で聞いてみよう。

 

「お疲れ様。」

 

「やー、礎君凄いねっ!いきなり速くなるんだもん、ちょっとびっくりしちゃった。」

 

やっぱりか…

 

「ごめん。でも麗日はさっき嬉しそうだったね。」

 

「うんっ!中学の時より速なった。」

 

速なった??関西出身か、どうゆう個性なんだろう。

 

聞こうとしたが、次の番の2人が走り出した。一方は肌がピンクで角が生えてる女子、んでもう片方は…へその辺りからレーザー?を出し後ろ向きに飛んだ男子だった。

 

ピンクの方は普通に走ったがレーザーの方は何故だか長く射出せずにぺシャッと途中で落ちた、あれ痛いぞ…。

時間制限、か何かしらのリスクがあるんだろう。と考えていたら

 

「青山くんと芦戸ちゃんだよ。」

 

「えっ?」

 

「さっき走ってた子達の名前。気になってそうだったから。」

 

..驚いた、心を読む"個性"かなんかだと思った。

 

「気になるっていうより、いつもの癖だよ。観察を優先しちゃう、だから..その.コミュ力が低いんだ。」

 

「そうなんだね。でもでもここならきっと友達が沢山できるよっ!」

 

「…ありがとう麗日、頑張ってみるよ。」

 

なんて前向きで純粋な奴なんだ…。

 

「よっ礎、さっきの見てたぞ。お前超速いな。てか、息切れも無しか?ヤッベェな。」

 

上鳴が話してかけてきた。

 

「個性使っただけ、皆とそんな変わらんよ。」

 

「最初、普通だなって感じだけど急に速くなったもんな。ブーストみたいな個性か?」

 

「いやぁ..違うって訳じゃないけど個性の使()()()の1つだよ。..あ、次は麗日の友達の番か?」

 

「ん、ほんとだ!」

 

「たしか、緑谷だったっけ?」

 

麗日の友達の緑谷?と爆豪がスタートラインに並んでいたので、一緒に見ることにした。

 

「名前知んねーの?」

 

「両方にまだ自己紹介してなくって。」

 

上鳴はふーんと言って二列に並んだ彼らを見ていた。

 

「緑谷は大丈夫かな。」

 

「何が?」

 

「一緒に走る爆豪って奴、ちょっと乱暴な性格に見えるし、"個性"もアレだから緑谷の事を考えずに使うんじゃ…」

 

「いやまさか。」

 

上鳴が言った瞬間、爆豪の両の掌が爆発する。それだけなら良かったが、ラストスパートで一際大きく爆発して案の定というか、隣の緑谷を軽く吹き飛ばす。

 

「まさか、だったな。」

 

「あぁ…。」

 

「そうだね。」

 

ゴールした直ぐに膝に手を突いているが、幸い怪我は無さそうだ。三人でほっと安堵の息を吐き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員の記録を取って、50メートル走は終了。次は体育館に移動して握力の測定をした、それなりにいい記録は出たが、俺の上にはまだ数人いる。

 

その数人は個性がそれ向きな人達だ。こんなテストがあるなら、エネルギーをもっと蓄積していればよかった。

 

その後が立ち幅跳びだ、これなら自信がある。

 

内心喜びながらスタートラインに立ち、短いジャンプを繰り返した。そして軽く____タッ

地面を蹴った。

[重力]吸収

 

よし、なるべくこのままの体勢と高さを保つ。

 

俺の体は宙に浮き同じ高さで直進した。

 

「マジかよ!?飛んでんの?どういう個性だよ?!」

 

「嘘やん、礎君と個性被ってもた!」

 

2人が騒いでいたら皆の注目が集まってしまった。

 

(麗日は重力を消せる個性か?意外と便利そうなkうおっ!?)

 

集中を欠いて体勢を崩してしまった。こうなるとカッコ悪い、逆さまになってしまった。飛ぶのはなれないな、動いてる方がいい。緑谷は随分と青い顔してんな、どうしたんだ?

 

 

 

 

礎が宙に浮いて数十秒、相澤はさっき彼と喋っていた生徒を使って呼び止めることにした。

 

「上鳴。」

気怠そうに呼んだ。

 

「は、はい!」

 

「礎を止めて来い。」

 

「えっ?あっはい。」

 

上鳴も察したのか指示に従うことにした。

 

 

 

 

吸収を調整しつつグラウンドの端まで行けそうだと思っていたら、

「礎ー!!もう戻ってきていいぞー!」

 

上鳴?…記録は十分に取れたようだ。

 

 

 

 

戻ってくると先生が来た。

 

「礎の立ち幅跳びの記録は999m。」

 

「?はい。」

 

記録を伝えてくれた、実際はもう少し行けそうだったがまぁいいや。

 

「スゲェ、九十九(つくも)野郎だ、九十九野郎。飛んでいっちまった。」

 

「でも、さっきあいつ50m走でめちゃくちゃ速くなかったか?浮かぶっていう個性か?」

 

切島と上鳴が話していた。てか記録は九十九じゃない、九が1つ足らないぞ上鳴…。

 

「なぁ礎って飛べんの?」

 

切島が尋ねてきた。

 

「飛んでる訳じゃないけど個性の使()()()の1つだよ。多分、麗日の"個性“とは違うけど。」

 

「またかよ。」

 

「ん?そうなのか?うおっ麗日も飛んだ!あ、でも直ぐ落ちた。」

 

麗日は着地してすぐに気分が悪そうだった、それが彼女の個性のリスクなんだろう。

 

 

 

次は反復横とび、ソフトボール投げだった。50m走とほとんど同じ要領でやったが反復横跳びは途中、バランスを崩してしまった。まだまだ練習が足らないと実感しながらも、それなりにいい結果が出た方だろう。

 

この調子でいけば上位には食い込めそうだと思っていると、かなり沈んだ雰囲気の緑谷がボールを持って円の中へ進む。そういえば彼が個性を使ったところを見ていない..そうだ!

 

「麗日..と飯田。」

 

「ンッ?」

 

「あ、礎君。」

 

今朝方、緑谷と話していた2人に聞いてみよう。

 

「2人は緑谷の個性は知ってる?まだ見せてないよね?」

 

「あぁ入試時に一緒だったから知っている、だが緑谷くんはこのままだとマズいだろう。」

 

一応個性はあるm「ったりめーだ無個性のザコだぞ!」

 

…隣にいた爆豪が叫んだ。

 

「無個性!?彼が入試時に何を成したか知らんのか!?」

 

「は?」

 

 

 

…聞くのは出来そうになかったので傍に居た切島に話しかける。

 

「追い詰められてんな、緑谷…」

 

「あぁ」

と、すぐに返事が返ってきた。

 

俺は緑谷を観察していたが、彼が何かを決意したように表情を引き締めたのを見て首を傾げた。

 

「お、何かやるのか?」

 

切島君も気付いたのか、ギザギザの歯を出してニッと笑う。ようやく彼の本領が見れる。

 

 

 

「な……今確かに使おうって…」

 

が、彼の記録は46メートル。普通だ、としか言いようがない。さっきのは俺の勘違いかと思ったが、自分の手のひらを見つめて動揺する緑谷の様子からしても何かをしようとはしていたようだ。

 

「個性を消した。」

 

俺に記録を伝えて以降は、特に何も言うことなく見ているだけだった相澤先生が口を開いた。

 

ぼさぼさに垂れ下がっていた前髪は、手が使わずとも持ち上げられて後ろに流れている。彼の鋭い眼光が緑谷を貫くようだった。

 

 

「つくづくあの入試は…合理性に欠くよ。お前のような奴も入学できてしまう。」

 

「消した…!!あのゴーグル……そうか……!」

 

見るだけで人の"個性"を抹消する"個性"!!

 

「抹消ヒーロー、イレイザーヘッド!!!」

 

イレイザーヘッド?こっちのヒーローは大体調べたが聞いた事がない。ていう事は相澤先生……いや、イレイザーヘッドはメディアへの露出を避けているのか。

 

考えてみれば、合理性を追求する相澤先生らしい。それにしても視線で個性を消す個性とは…アメリカでも類を見ないぞ。直接的な攻撃力のある個性ではないにせよ、戦闘ではめちゃくちゃに便利な個性だ。

 

おおよそ敵の大多数が持て余した個性で暴れて罪を犯す者達だからだ。

 

相澤先生は首に巻きつけていた布で緑谷君を引き寄せると何事か話していた。

 

捕縛用の武器か、どうやって動かしてんだ?

さっきのと飯田達の声で何となくわかったが緑谷の個性は使ったら行動不能になるような大変リスキーなものらしい。

 

それで今まで個性を使わなかったのか、いや使えなかったのか。そんな理由なら納得だ。

 

すると相澤先生は緑谷君を解放し、2回目を促した。緑谷は俯いたままだ、落ち込んでいるのだろうか。と思って顔を見つめると俺は驚き、目を見開いた。

 

緑谷は諦めてなどいない。いやむしろこれ以上無い程にに集中している。周りの音が聞こえていないようで、目を見開き、口元だけをぶつぶつ動かしている。

 

聞き取れないので内容は分からない。彼はしばらくそうしていたが口を閉じ唇に力を入れ、円の中で軽く助走をして大きく振りかぶって投げた。

 

するとボールはさっきのが嘘のように空高く飛んでいった。しばらく経過してから落ちたようで、相澤先生の端末が記録を取った音を出した。

 

どうやら緑谷は指から出血したらしい。というか変色してズダズダだ、指だけに個性を使ったのか。ただ、個性を使う度にあんな痛々しい怪我をするのか。…入試では一体どれほどの…。

 

「まだ……動けます。」

 

彼の大きな目にいっぱい涙を溜め、それでもなお歯を食いしばり笑う姿はなぜだかネットで見たオールマイトを彷彿とさせた。…かっこいいな、スゲェよ緑谷。

 

「どういうことだ!!」

 

爆豪が叫びつつ手を爆発させて緑谷に接近する。すごく怒っているようだが、皆も俺も何がなんだか分からない。

 

一体今の何処に怒る要素が有ったというのだろう。これ止めたほうがいいな、怪我人にやる事じゃない。が、悩んでいるうちに相澤先生の布が爆豪に巻きついて捕らえた。

 

爆豪は必死でもがくが、布は千切れる事もなければ、それ以上伸びもしなかった。見た目は普通の布と何も変わらないが、炭素繊維に特殊合金の繊維を編みこんだ捕縛武器らしい。

 

そして新事実。相澤先生はドライアイ。それで充血してるのか…。

 

 

 

 

残った三種目を終え、結果発表のときが来た。皆が緊張して待っていたが、

「因みに除籍はウソな。」

 

と、まるで天気の話でもするように相澤先生はなんら悪びれる事もなく言った。

 

「君らの最大限を引き出す"合理的虚偽"」

 

「「「はーーーーー!!?」」」

 

(マジかよ。)

 

飯田、麗日、そして緑谷がそろって驚きの叫びを上げた。

 

「あんなのウソに決まってるじゃない…ちょっと考えればわかりますわ…」

 

1位の八百万さんは呆れたように3人見て言ったが、俺には相澤先生のあれが全て演技だったとは思えなかった。

 

俺の結果は3位。八百万の便利グッズには勝てんか…。何でも創れるって個性か?恐ろしくパワフルだな。

 

終わったらさっさとと戻る相澤先生に続き、ぞろぞろと校舎に戻る皆に続くように俺も歩き出した。

 

結局高校生活の初日は個性把握テストの後、着替えて教室にあったカリキュラム等の書類に目を通して終わってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 




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