礎 遷形のヒーローアカデミア   作:Owen Reece

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第6話 個性把握テスト 前編

「「「個性把握…テストォ!?」」」

 

俺はクラスの皆が揃って声を上げる中口を開けて呆けていた。

 

これは..また、どうしたものか…。

 

 

 

 

 

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体操服に着替えて外に出るために歩いていると後ろから肩を掴まれ後ろを向いた。

 

「靴紐がほどけてるぜ。」

 

驚いた顔のまま足下を見ると赤髪の彼が教えてくれた通り、ほどけていた。

 

「ありがとう。」

 

結び直して彼に礼を言った。

 

「良いってことよ、俺は切島鋭児郎(キリシマ エイジロウ)

こっちは____」

 

「俺は上鳴電気(カミナリ デンキ)だ、よろしくな。」

 

「俺は礎 遷形、よろしく。」

 

俺も挨拶を返した。肩を組んできたのは切島、一緒に歩いてたのは上鳴というらしい。2人とも活発そうだ。

 

「なぁ、礎もだけど皆やっぱり身体の方鍛え込んでるよな。」

 

切島の言う通りだ。体操服に着替えた時に見たところ皆、鍛えていた。俺は着痩せする方だが他の皆はそうじゃないから少し羨ましい。

 

「ヒーロー目指してんなら普通、筋トレ位はするだろ、女子はわかんねーけども。」

 

上鳴が答える。俺も何か.....そうだ!

 

「違いがあるとすれば始める時と自分でするか、人に教えてもらうかぐらいだろうね。」

よし、ちゃんと言えた。

 

「あースポーツクラブに行くとかか、礎はそこでコーチでもいたのか?」

 

切島、よくぞ聞いてくれました。俺の生涯の自慢話だ。

 

「うん、俺は__「皆集まってるみたいだぜ。」

…上鳴……

 

 

だんだん集まってきた生徒の前に、いつの間に来たのか相澤先生が立った。先生は俺たち全員が簡単に並んで集まったのを確認すると、これからやる事を告げた。

 

「全員集まったな。お前達には、これから"個性把握テスト"を受けてもらう」

 

「「「個性把握…テストォ!?」」」

 

皆の疑問の声に、相澤先生は少しうるさそうに充血した目を細める。

 

「入学式は!?ガイダンスは!?」

 

さっき教室の前で話をしていた女子が声を上げた。

 

多分、俺らはその行事には出られない。出すつもりなら入学式開始の予定時間を先に告げる筈だ。何より、さっき大勢の生徒が同じ場所に向かって歩いていた。

 

おそらく新入生、あるいは全校生徒が講堂かその辺りに集まったんだろう。

 

「ヒーローになるならそんな悠長な行事出る時間無いよ。」

 

相澤先生はとしれっとその女子言った。プロのヒーローは当たり前なんだろうが、B組の姿が見えない。

 

ヒーロー科は2つクラスがある筈だが、もしかして先生によって違うのか?あるいは別の場所か?

 

「雄英は"自由"な校風が売り文句。そしてそれは"先生側"もまた然り」

 

前者だったか、と感じていたら不意に妙な圧力を感じる先生の雰囲気になんとなく嫌な予感を感じた。

 

先生のその科白に皆がそろって首を傾げた。

 

個性把握テスト。

 

ヒーロー科だからこそのテストなのだから特別な事になるだろう、が何をやるのか要領を得ない。皆も大体そんな感じだろう。相澤先生は気にせずに続けた。

 

「ソフトボール投げ・立ち幅跳び・50m走・持久走・握力・反復横とび・上体起こし・長座体前屈。中学の頃からやってるだろ?"個性"禁止の体力テスト。

国は未だ画一的な記録を取って平均を作り続けてる。

合理的じゃない。まあ、文部科学省の怠慢だよ。」

 

と呟くように相澤先生は締めた。集まった生徒を見回し、一人の生徒に声を掛ける。

 

「爆豪。中学のソフトボール投げ、何mだった。」

 

「67m。」

 

「じゃ個性を使ってやってみろ。円から出なきゃ何してもいい。早よ。」

 

先生は爆豪にボールを投げ渡しながら説明し、最後に急かす事も忘れない。

 

しかし体力テストか…こっちのは受けたことがないから分からないがアメリカ(うち)より項目が多い。

 

というか爆豪もよく記録の一の位まで覚えてるな…。

 

「思いっきりな。」

 

その声にギッと音が出そうなほど目に更に力を入れる。目つき悪過ぎるマジでヒーロー志望か…。爆豪は軽く腕を伸ばして準備をすると、大きく振りかぶった。

 

「死ねえ!!!」

 

掛け声…というには暴力的な言葉を叫び、掌の爆発と共に放ったボールは遥か彼方まで飛んでいった。

 

…爆風でボールを押し上げたな。

"個性"の使い方をよくわかっている、応用の幅が広い。もし戦ったら()()が悪いな…

 

そう考えていると、ボール着地したのだろう。相澤先生の持つ端末から音が鳴った。

 

「まず、自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段。」

 

先生が端末の画面をこちらに見せる。

'705.2m'

それが爆豪の"個性を使った"記録だった。

 

「何だこれ!!すげー面白そう!!」

 

「705mってマジかよ。」

 

「"個性"思いっきり使えるんだ!!さすがヒーロー科!!」

 

他のクラスメイトが沸き立ち盛り上がる中、俺は顎を軽く上げ空を仰いだ。

 

「hurm…」

 

8種目……身体能力云々より他よりも応用力のある俺の"個性"なら、殆どクリアはできる。問題は他のクラスメイトの個性が不明な事だ。

 

 

 

そんな風に生徒が騒ぐ中、相澤先生のボソッとした呟きが不思議とその場に響き渡る。

 

「………。面白そう…か。」

 

「?」

 

「ヒーローになるための三年間、そんな腹積もりで過ごす気でいるのかい?」

 

「!?」

 

俺含め皆が息を飲んだ。

 

「よし。トータル成績最下位の者は見込みなしと判断し、除籍処分としよう、――雄英は"自由"な校風が売り文句。そしてそれは"先生側"もまた然り――」

 

さっき感じた嫌な予感は、この事だったんだろうか。

 

「生徒の如何は先生の"自由"。ようこそ、これが__"雄英高校ヒーロー科だ"」

 

先生はボサボサの前髪をかき上げ、重たげにしていた瞼を見開いた。

 

皆が理不尽だと騒ぐ中でも先生の意思は揺らぐ事がないのか、かき上げた前髪をまたくしゃくしゃに下ろす。

 

「自然災害、大事故、身勝手な敵たち…。いつどこから来るかわからない厄災。日本は理不尽にまみれている。そういう理不尽(ピンチ)を覆していくのがヒーロー。放課後マックで談笑したかったならお生憎、これから三年間雄英は全力で君達に苦難を与え続ける。

"Plus Ultra(更に向こうへ)"さ。

全力で乗り越えて____来い。」

 

効果は抜群だ。さっきまで談笑していた全員が、引き締まった表情で先生を見つめた。そうはいっても、本当に最下位の生徒を除籍にするのだろうか。

 

それだと入試の意味がなくなる……考えても分からないな。だが先生の言葉からは、"本当にするのでは"と思わせる凄みも気迫もある。

 

鼓舞の目的にせよ、仮に除籍するにせよ、俺がやる事は変わらない。

 

入学早々の個性把握テストが、始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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