礎 遷形のヒーローアカデミア   作:Owen Reece

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第5話 ヒーロー科1年A組

入学日まで残り一週間。

 

 

俺はいつも通り画面越しにシモンズと話していた。

 

「スタークさん達に作ってもらったコスチュームはどうしたんだ?」

 

「あれまだ持ち歩いちゃダメだから専門の業者に送ってもらったよ。ちゃんと届いたって昨日連絡来た。そっちは?」

 

「変わんない。昨日ソーがデカいドゥームボットを倒してた。ところでさ…」

 

「ん?」

 

「髪切った方がいい、そんなんじゃ友達出来んぞ。」

 

そういえば、こっちの冬が思っていたより寒くて伸ばしてたな。

でも___「いいよ、面倒くさい。」

 

「ダメだって!そっちの高校はどうだか知らないけど、友達出来たら超楽しいぞ。ほら!」

 

そう言って写真を見せてきた、おそらくシモンズとサポート科の面々で撮ったのだろう。

1年でこうも変わるか…

 

「hurm…わかった行ってくる。」

 

半ば渋々行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一週間後、早朝。

 

今日から雄英高校の一員となる。

 

「そろそろ行くよ。叔母さん、行って来ます。」

 

「はい、行ってらっしゃい。気を付けてね、入学初日で躓いたら恥ずかしいわよ。」

 

「やめてくれ、大丈夫だって。」

 

初日は少し早めに着くようにと、割と早めに家を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

受験以来に来た雄英のその巨大さは目を見張るものだった。この大きさにもなれる日が来ると思いながら校門をくぐった。

 

雄英バリアー(ダサい名前だ。)の噂を耳にし、心配をしていたが生徒手帳のおかげで玄関までこれた。

 

靴を履き替え手紙に同封されていた地図を見た。それは大まかに描かれていて、自分達の教室が分かる程度だったが迷わないよう注意して再び足を運ばせた。

 

自分のクラスである1-Aに向かっていると幸いなことに教室はすぐに見つかった。

 

大きな扉に大きな文字で1-Aと書かれ、この辺りは多少の差異はあれど向こうの学校、あるいは、C.H(ハモンド)と同じ構造だ。個性によって体格が大きな人もいるのだろうから。

 

 

早くに来たのは失敗だったか、教室はシンとしている。呼吸を整え、一息に引き戸を開けた。

 

「ん…?」

自分の姿を捉えた尻尾の生えた生徒が小さな声を上げた。

 

まだ一人、いや二人だな。見回してみると教室はがらんとしていて、無人の机ばかりが目立つ。すると、彼は立ち上がって手を上げた。

 

「よう、俺は尾白猿夫(オジロ マシラオ)。朝から緊張して、早く着すぎたらまだ誰も来てなくてあせったよ。」

 

少年はつり目を少し下げて言った。

 

マシ…なんだ?そんな字あったか?後で調べ..いやダメだ、そんなんだから友達が出来ないんだ。聞こう。

 

「あの..ごめん、マシラって?その..どういう?」

手で字を書くジェスチャーをしながら尋ねてみた。

 

「ん?あぁ(けものへん)の猿って書いて"マシラ"だよ、見たままだろ?」

尻尾を後ろで揺らして彼は答えてくれた。

 

「そうか、ありがとう。俺は礎 遷形。センは遷都の遷、ケイは形って書く。初日だから早くに着いたんだけど、尾白君が居てよかった。」

 

 

それから合格通知の事や、オールマイトの雄英就任の事だとかを話した。

話の流れで叔母と暮らしている事を告げた。

 

「あの…御両親は…?」

 

「あぁ母は俺が生まれた時、父はそのすぐ後に事故で、亡くなったんだ。」

 

「…そうだったのか…悪い。」

 

両親の話は聞かれる事が必然的に多くなる。

 

「いいよ。慣れてる。」

すこし笑いながら答えた。

 

「なんと言っていいかわからないけど、もし、困った事があれば遠慮せず言ってくれよ。」

親身に答えてくれた。なんていい奴なんだ…。

俺の中で尾白君への株が上がっていった。そんな中そういえば、と疑問に思ったことを口にした。

 

「そういえば、席順はもう決まっているのかな。」

 

「あぁ、なんか決まってるみたいだな。名前順みたいだけど、教卓のとこに席の書いたプリントが置いてあったから見ておいたほうがいいよ。」

またもや親切に教えてくれた。

 

「ありがとう。」

尾白君にお礼を言って、俺は教卓に向かい自分の名を探した。

廊下側の席、前から4つ目が俺の席のようだ。奇数人数の1-Aは、廊下側の最後尾が一つ出っ張っていた。

 

左を見ると尾白君は俺と話している間に登校してきた人と既に会話している。

これがコミュ力の差だな。

 

「あなたなんで笑ってるの?」

 

「…えっ俺、笑ってた?」

可笑しなところを近くにいた蛙っぽい女子に見られた。

 

「えぇ。私、思ったことを何でも言っちゃうの。」

 

そうなのか。なんだか変わった髪型だ。「ん..あぁ座席表か、お名前は?」

 

彼女が来た理由を察して名前を聞いた。

 

「私は蛙吹梅雨(アスイ ツユ)。」

 

蛙吹さんか…同じ列だ。

 

「蛙吹は廊下側の列、前から3つ目の席。」

 

紙を見せながら教えた。

 

「そう、ありがとう。あなたのお名前は?」

 

「俺は礎 遷形、同じ列に座ってる。」

 

「そうなの、ねぇ礎ちゃん。」

 

礎ちゃん??

 

「私のことは梅雨ちゃんと呼んで。」

 

??なるほど…。

 

「梅雨ちゃん....これからもよろしく。」

 

「こちらこそ。」

 

それから暫く蛙吹…じゃない梅雨ちゃんと喋っていたその時、

 

「君!!」

 

(びっくりした!!なんだ?!)

突然聞こえた大声に肩が跳ねた。

 

「机に足をかけるな!雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか!?」

 

「思わねーよ。てめーどこ中だ端役が!」

 

糊のきいていてかっちりと制服を着こなす眼鏡の男子の良く通る声と、爆発した様な髪型が特徴で初日から制服をかなり着崩した男子のドスのきいた声が響いた。

 

教室がざわつき始めたとき、入り口付近で覗き込んでいた緑の髪の男子に眼鏡の…さっき飯田君といっていたか。彼が近づいて自己紹介をした。

 

その後にやってきたふわっとした…というか頬が紅い女子も、その男子に話しかけた。どうやら彼等は顔見知りのようだった、試験会場が同じだったのか?

 

 

 

そろそろ先生も来そうだ。と思っていたときに、教室の前の扉に寝袋に入った男が立った。

 

なんだあの寝袋?デカい芋虫みたいだ、あるいはゴジラの尻尾、いやゴジラというよりモスラだな。

 

男はジーっと寝袋のジッパーを下ろして脱ぐと、教室を見回して一言無精ひげの目立つ口元から発した。

 

「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。君たちは合理性に欠くね。」

 

まるで教師のような事を言うホームレ…不精な男は、簡潔に自己紹介をした。

 

「担任の相澤消太(アイザワ ショウタ)だ。よろしくね。」

 

男_____相澤先生は、寝袋の中をごそごそと探って体操服をバッと取り出す。

 

「早速だが、体操服(これ)着てグラウンドに出ろ。」

 

有無を言わせぬ雰囲気に近くにいた生徒が受け取ると、そこからは次々と先生の前に並んで受け取っていく。

 

皆が体操服を受け取って、揃って微妙な顔をした。わけがわからなかったが、体操服を受け取り理解した。なんとなく…その…なまあたたかい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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