礎 遷形のヒーローアカデミア   作:Owen Reece

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第41話 I am…!

「………………………………………………………………………………………ぁ?」

 

「…………起きたか…爆豪……」

 

隣接するベッドに横になる爆豪に先に目を覚ました礎が声を掛けた。

 

爆豪も礎も傷だらけの為、寝てる間に治療を施されたようで白い包帯やら湿布やらで身体を包まれていた。

 

両者の違いと言えば顔面に蹴りを受けた爆豪の片目を覆い、頭部で結ばれた包帯だろうか。

 

「……てめぇ何でここに居ンだよ」

 

仰向けの爆豪とは違い、礎は上半身を起こして枕を背にしていた。

彼は爆豪を見ると小首を傾げて静かに応える。

 

「………怪我人だから……?」

 

「…目ェ覚ましたんならとっとと出て行けy_「俺も少し前に起きたばっかりなんだ。無茶言うな」

 

言葉尻を取る礎の返答。

それに対し爆豪は眉間に皺を寄せ、目を逸らす。

 

平時なら怒声を上げていたかも知れないが怪我を負ったからか、彼は怒りの篭った溜息を吐くだけだった。

 

そんな彼と同じく視線を外した礎が口を開いた。

 

「…………………………………負けたよ」

 

「…ハッ!俺に勝つなんざ100年早え。デカい口叩いて負けてたンじゃ世話が無ぇ」

 

「あぁ…」

 

礎の呟きに冷笑を浮かべ、心底嬉しそうな声で爆豪が応えた。

 

先刻まで対戦相手だった彼の敗北宣言に細められた片目を向ける爆豪、しかし礎は片膝を抱えて視線を下にして力無く相槌を打った。

 

「…キャプテン・アメリカに鍛えて貰っといてコレじゃ恥ずかしいな」

 

「あa_「っ"あぁ"じゃねぇよ!中身の篭った返事しろや!クソが!!………………何笑ってんだっ!!ネズミ野郎!!!」

 

素っ気ない生返事に堪え兼ね、負った傷の痛みも忘れて爆豪が叫んだ。更に横っ面に見えた口端の皺が彼を苛つかせ、罵声が付け加えられる。

 

「爆豪。お前─…子供の時分はガキ大将だった口だろう」

 

「あぁ!!?それがどうしたァ!今ァ関係無ぇだろっっ!」

 

苦々しい笑みを浮かべる礎が爆豪に顔を向け、落ち着いた口調で話し始めた。

 

「…一目で分かったよ。俺を殴りに来た連中とそっくりの眼をしていたから」

 

「………あ?」

 

突然の告白に熱を帯びた爆豪の怒りが僅かに冷める。

 

「……向こうに居た時、俺はずっと独りだった。連中──そういう奴を見つける事だけは得意で痩せた奴、逸れ者、変人、何かと理由を付けてやって来やがるんだ」

 

爆豪の眉間に深々と皺が寄って行く。

 

「俺は爆豪…お前と連中を重ねていた。……俺はそいつらを──…」

 

「アぁッッ!!クッソ気持ちワリィなァアッ!下らねぇ事喋ってんじゃねェ!!

テメェが誰に何されようが知ったこっちゃねぇわッ!」

 

辛気臭く陰湿な空気を打ち破り、爆豪は上半身を起こして叫んだ。突然の大声に礎の頭が自然と相手に向く。

 

「虐めだァ!?ンなモン来た奴を端からブッ飛ばしゃいいだけだろうがっ!!勝手に重ねてんじゃねぇッ!クソがッ!」

 

「……………………」

 

爆豪の説教じみた言葉に礎の口から僅かに空気が漏れ、彼は目を丸くした。

 

「…〜〜ッ!無視してんじゃねェ!!なんか喋れや!礎ェァッッ!!!」

 

血走った目を釣り上げて爆豪は礎に向かって叫んだ。

 

 

「……喧しンだよ…ボンバーマンが…」

 

「───…あぁッッ!!?ッンだと!!てめぇっ!…──ッ!──ッ!──…」

 

横で再び捲し立てる爆豪から頭を反対に逸らして礎は再び顔を伏せた。

 

(違うんだよ爆豪。俺は─…俺は……)

 

………

 

「…………」

 

保健室の前に立つリカバリーガール。

中から目を覚ました患者の話し声が聞こえ、片方が叫びを上げる彼女は扉の取手に手を掛けたまま動きを止めた。

 

(元気そうさねぇ…暫く2人にしておくとするかね……)

 

そう思うと踵を返して保健室から離れて行った。

 

……………

………

 

──保健室の扉を開けると足音を立てて爆豪は出て行った。

 

すると──…

 

「礎くん…大丈夫?」

 

「緑谷、どうした?」

 

ベッドから降りようとしている礎に保健室に入って来た緑谷が声をかける。彼も礎に負けず劣らず包帯で巻かれ、痛々しい姿をしていた。

 

「授与式…出れるのかなって、かっちゃんは大丈夫そうだったけど…」

 

「あぁ……爆豪なら記憶喪失になってもそれだけは覚えてるだろうな……すぐに行こう」

 

礎は下に置いてあった靴を履いて保健室を後にした。

 

………

 

「……で何から聞きたい?」

「…えっ!?」

 

礎と並んで廊下を歩く緑谷に対して唐突に質問が投げかけられ彼は驚いた。

 

「わざわざ怪我を引きずってまで彼処に来てくれた理由は一つじゃないだろう?でも緑谷、なるべく手短に済む質問にしてくれよ。メダルが待ってるからな」

 

「ぁ…ぁはは……」

 

悪戯を仕掛けた子供のように礎は笑みを浮かべ、緑谷を見た。

 

頭の中を見透かされた緑谷は乾いた笑い声を漏らし、微かに強張っていた彼の表情が自然と緩むと、慎重な様子で口を開いた。

 

「……えっ…えっと…その……礎くんは…なんでヒーローになろうと思ったの?」

 

「あぁ……良い質問。それを話してるだけで表彰台まで着きそうだ。……hurm…そうだな……」

 

やや興奮気味の緑谷の問いに礎は静かに話し始めた。

 

「…子供の頃、学校の帰り道には決まって待ち伏せされてた。小さい俺は標的にされ、殴りたい奴らで列が出来ていた」

 

「…………」

 

「…驚かないか……知ってた?」

 

礎が聞くと緑谷は視線を少し下げて応えた。

 

「……礎くんが個性の話をした時、どうやって調べたのか気になってたから……でも礎くんの個性だったら──…」

 

「あぁ、大抵の攻撃は効かない。待ち伏されてても人前に誘導すれば警察に捕まってそれで終わりだった。"相手にする価値も無い"って…そう思ってた」

 

緑谷の心中を察した礎は直ぐに肯定し話を綴るが、彼の言葉に滲み出る感情を緑谷は読み取った。

 

……これは…"後悔"だ。

 

「でも連中もようやく学んだらしくってある日、路地裏に追い詰められてな。向こうは5人、背中には金網。どうやって切り抜けたもんかって思ってたら──」

 

………

 

太陽の光を遮り、壁からの反射光で独特の薄暗さを作る路地裏に灰色の髪の少年が身体の大きな、おそらく同年代の子供達に追い込まれていた。

 

他人から見れば窮地だが錆びて埃の被った金網を背にしても尚、当の少年は落ち着いた表情をしていた。

 

 

その時、

 

 

〈君たち!その力には大いなる責任が伴うんだよ!!〉

 

赤い蜘蛛のシンボルを背負った男が頭上から現れ、幼い礎と彼等の間に入った。

 

「スパイダーマンだっ!!」

 

緑谷が歓喜の大声を出してその興奮を大いに表現する。

 

「そう彼だよ。俺の前に降り立って連中を追い払ってくれたんだ。というか彼の姿を見た連中が一目散に逃げってったんだけどな」

 

「それはそうだよっ!だって彼はたった1人で少なくとも20人以上のヴィランを逮捕した人だし、しかも─…!」

 

下をまくし立てる緑谷の口は片眉を上げて彼を見下ろす礎によって止められた。

 

「ごっ…ごめん…続きを……」

 

 

〈大丈夫?怪我してない?〉

 

〈…えぇ…ありがとうございました……でも助けてもらわなくても僕だけで何とか出来ましたよ…〉

 

彼は振り返って声を掛け、安否を確かめる。しかし礎は落とした鞄を拾うと素っ気ない返事をして歩き始めた。

 

〈だろうね。上から何回か見てたけど、君はいつも上手いことやってる〉

 

〈(見られてたのか…)そりゃどうも〉

 

大きな通りに向かうと右の壁を這って彼は追いかけると礎の顔を眺めた。礎は歩みを止め訝しげに言葉を吐いた。

 

〈ずっとあんな調子?あの子達を相手にもしないで逃げるだけ?君はかなり強そうなのに〉

 

〈強さは関係無いですよ…皆が好き好んでああいう手合と関わる訳じゃあない〉

 

背中で壁に張り付き、手に顎を乗せて首を傾げる彼に礎は淡々と応えた。

 

 

「彼にそんなこと言ったの!!?礎くんが!?」

 

「事実だよ。当時の自分が目の前にいたら1発殴ってやりたいけど──正直、その時はヒーローに興味が無かったんだ」

 

信じられないという面持ちで顔を上げると緑谷は驚きの声を上げた。

 

 

〈そりゃそうだね!でもいつか──君にもわかる日が来る。じゃあね!〉

 

彼は真っ直ぐ礎の顔を見ると壁に糸を飛ばしてその場を離れて行った。

 

 

「彼の言葉は俺には意味不明だったけど直ぐにわかった。その2日後にデカい事件が起きてな。緑谷も聞いたことがあるかも"ゴブリン・ネイション"って呼ばれてる事件…」

 

「……!」

 

「……知ってるか。そう、グリーンゴブリンが軍隊─…と言うかテロリスト集団だな。そいつらを率いてニューヨークを乗っ取ろうとした」

 

事件名を聞き目を見開く緑谷。話を続けた礎の口から出た事件の凄まじさはその反応に相当していた。

 

「俺はテレビでそれを観てたけど──街のそこら中から火の手が上がってまるで世界の終わりのような光景だった。でも彼は…スパイダーマンは諦めなかった」

 

事件の悲惨さを話す礎だったが彼の名が出ると表情に柔らかさが戻り、誇らしげな様子が見て取れる。

 

「明け方まで続いた空中戦の末に主犯のグリーンゴブリンを追い詰めたけど、人質に取られていた子供がビルから落下した。彼は子供を空中でキャッチしたが隙を見て犯人は逃走を計った」

 

「でも奴の乗ってたグライダーが壊れてバランスを崩してな。当然、奴はビルの合間を真っ逆さま"自業自得だ…"俺を含めて皆がそう感じたと思う。そんな時にスパイダーマンは何をしたと思う?」

 

緑谷は首を横に振る。事件名は知っていてもその詳細までは判らない。

 

「彼は一切の躊躇なく落下するグリーンゴブリンを救けに行ったんだ、人質を抱えたまま…」

 

「……!」

 

瞬間、緑谷は息を呑んで両目を大きくすると微かに困惑の表情を浮かべた。

 

「ゴブリンを捉えた瞬間は支え切れずに子供を肩に乗せ、彼自身は片手片足をビルの壁にめり込ませていた。

信じられるか?被害者を危険に晒してでも加害者を救けたんだ。彼は……」

 

「……その時、俺はヒーローとヴィランの本質を見た。ヴィラン…奴等は自分をヒーローだと思ってる、自らの行いは正しいと。だとしたらヒーローとヴィランの差は何だ?その答えをスパイダーマンは見せて…いや……教えてくれた」

 

僅かに笑みを浮かべて彼は話を綴った。

 

「ヴィランは自分の為にヒーローを倒そうとする。でもヒーローはヴィラン自身の為にヴィランを倒す。敵と戦い無力化するのは──その敵を守るためなんだ。その先が破滅だと知っているから」

 

「……………」

 

緑谷は礎の思いの丈を測り口を噤んだ。

 

「その時になってようやく彼の言葉を理解した。俺は力を持っていながら悪を見逃し、奴等にとっての最悪の結果を招いたんだ。止める事が出来たのに…!」

 

「でっ…でも…それは_...「"俺のせいじゃない"?」

 

言葉の端を捉えると礎は緑谷を見る。自然と2人の足は止まり、互いに顔を見合わせた。

 

「……否定はしない。因果を招いたのは奴等で実際、素行は悪かったんだろう…でも悪から目を離すことは正義に背を向けることと同じだ。

だから俺は……俺はヴィランを守れるようなヒーローになりたい」

 

自嘲気味に彼が話を結ぶと歩みを止めた。いつのまにか受賞者の集まる部屋に着いていた事に緑谷は気づく。

 

「あ……」

 

「…メダルが待ってるからもう行かないと」

 

呆然としていた緑谷に礎が扉を指して伝えると、歩を進めて取手に手を掛けた。

 

すると

 

「礎くん…!」

 

緑谷が礎を呼んだ。

 

反射的に彼の名前が口から出て緑谷自身も驚き、言葉を詰まらせた。

 

話を聞いた緑谷は礎自身が無謀な目標だと理解していると彼の口振りでわかってしまった。

 

それに──…

 

 

(礎くんは自分の贖罪のためにヒーローを選んだ…僕は…何を言えば……)

 

だが彼は意を決して口を開いた。

 

「礎くんなら…!きっとなれるよ!」

 

動きを止めていた礎は緑谷の言葉でゆっくり振り返り彼の顔を見た。

 

「………………………ありがとう。緑谷」

 

そう言って礎は扉を開けて部屋に入って行った。

 

……………

………

 

 

様々な色の煙玉が爆ぜて青と白だけ空を彩る。

 

『今年度体育祭、1年の全日程が終了!それではこれより表彰式に移ります!』

 

ミッドナイトの声と共にスクリーンが映り変わり、ファンファーレが鳴り響く。

 

空を丸く切り取るドームの屋根から花火が打ち上がり、大量のスモークと共に地下から表彰台が上がって来る。

 

そこには4人の生徒が立ち、観客の視線は全て彼らに向けられた。

ステージの中央には今から表彰される以外の1年生が疎らに列を作っている。

 

「それではメダル授与よ!!今年のメダル贈呈をするのは勿論この人!!」

 

ドームの上から聴き馴染んだ大きな笑い声が聞こえ、その見慣れたシルエットが皆の目に入ると観客席は熱を帯びる。

 

〔オールマイトだ!!!〕

 

歓声に応えるように彼は跳躍し、決め台詞を叫ぶ。

 

「私が!!!!メダルを持って来_「我らがヒーロー!オールマイトォ!!」

 

鮮やかな着地を決めるオールマイト。

 

 

高らかな大声はミッドナイトと見事に被り、遮られた。

 

残念そうな表情を浮かべるオールマイトの顔が台の上に立つ礎にも見えた。やや緊張していた彼もそんなオールマイトを目にすると落ち着きを取り戻した。

 

『……そしてもう1人…サプライズゲストとして──今日は特別なプレゼンターが来てくれたわ…』

 

勿体つける彼女の言葉に客席が騒めき立ち、礎含む生徒達にもそれは広がった。

 

(…ゲスト……)

 

ミッドナイトの言葉を聞き、礎の脳裏にエンデヴァーが思い浮かんだが直ぐに否定した。

 

(………サプライズなら姿を隠すだろうし…そもそもあの人の性格じゃ受けないか…オールマイトと並び立てる人……)

 

思議を巡らせる礎にほんの一瞬、ミッドナイトと目が合う。

 

彼が疑問に思う直前。

突如、大音量で老練なギターの演奏がスピーカーから鳴り響いた──…

 

……………

………

 

──…数秒前、体育祭会場の上空。

 

『──風は30ノット。高度4500メートルで安定。……再帰性反射パネル解除』

 

何も無かった景色にノイズが走り、瞬く間に先進的なデザインの戦闘機が突如出現した。

 

『よしフライデー、針を落とせ』

 

……………

………

 

体育祭会場。

 

「…!A〇/DCのShoot to Thrill……」

 

スピーカーから熟達したギターの音が掻き鳴らされ、皆が目を白黒させる中で耳郎は流れる曲名を呟く。

 

(……なんてこった…)

 

彼女と同じく曲名を思い出した礎はショックを受けて俯いた。

 

巨大スクリーン大きな文字で"表彰式"と書かれた画面が暗転し、皆の視線が一斉に注がれる。

 

画面に映像が戻ると赤く輝く金属が映りこんだ。それを誰かの後姿だと気付くまでに時間はかからなかった。

 

何故ならその()()は飛行機内に立ち、ハッチが開くと青空の光に晒されその身体が一層に輝く。

 

客席内のどよめきが所々で歓声に変わり始めた。

 

ハッチが開ききり、点描画のように小さくなった街並みが奥に覗く。するとアーマーを着た人物は何の躊躇も無しにそこへ()()()()()

 

()を写すカメラも飛び降り、後を追いかける。景色が落下する彼を中心に回転する。

 

すると脚部のジョット機構が熱放射により光り、白煙を引いた。目指す場所がカメラに映り込む。

 

そこは体育祭会場のドームだ。

 

 

「"ワアアァァーーーーー!!!!!"」

 

時を同じく曲が歌詞に入り、掠れたハスキーな歌声が上がるがそれに負けない大歓声が客席から沸き起こる。

 

『スペシャルプレゼンターはこの方!!ザ!インビジブル──…』

 

ミッドナイトが口を開き、着地点を促すように指し示す。

 

観客と生徒の視線が一斉に注がれる。そんな中、礎だけが顔を伏せる。

 

重量による加速と自らの加速によってあっという間に距離を縮めた彼は打ち上がり炸裂する花火を寸前で避け、既に景色の大半を占めていた会場に飛び込んだ。

 

_ッガン!!!

 

『……─アイアンマン!!』

 

彼の着地と同時に一層派手な花火が打ち上がり、更に大きな歓声が沸き立った。

 

片膝をつき対となるように拳を地面に突き立てるその姿は覚めるような赤と風格のあるシャンパンゴールドで彩られ、鋼鉄の重量感と美しさを感じさせる。

 

〔Mark.43アーマーだ!!〕

 

観客の一人が眼を丸くさせて叫ぶも大歓声によりそれも搔き消える。

 

ステージの彼が立ち上がるとアーマーが機械音を立てて胸から開いていき、宛ら羽化するように中に人影が覗いた。

 

瀟洒なジェミニ色のスーツを着てアーマーと同じ赤いネクタイを結んで客席に手を振る彼の姿を捉えようと、夥しい数のカメラのフラッシュが焚かれる。

 

その人はトニー・スターク。マスクが開くと共に笑顔を浮かべ、客席を見回すと彼自身も拍手を観客らに贈る。

 

〔トニー!!〕

 

彼の名を呼ぶ声が上がり分離したスーツが彼から離れ、観客の目前まで飛び立つと客席を周回した。

 

手を伸ばせば触れる距離を鋼鉄のスーツが迅駛するも通り過ぎる度に歓声が上がり、声援が送られる。

 

会場を半周するとスーツは上昇し、空高く彼方へと消えて行くとスクリーンの画面が切り替わり、音楽が止まった。

 

そこにはいつのまにか着替えたのかチアリーダー達の服装がアイアンマン仕様に変わって胸と掌、足の裏が光っている。

 

『やぁみんな。久しぶり』

 

〔トニー!〕

 

彼女らに手を振って客席に向き直ると皆への挨拶を始めた。それはとても流暢な日本語で発され、暖かな歓声で迎えられた。

 

『……あー……I am IRONAN(私がアイアンマンだ)

 

「"ワアアァァーーーー!!!!!"」

 

視線をチラリとオールマイトを見てわざと真剣な表情を浮かべて自身のもう一つの名前を言うと、またも歓喜の声が上がった。

 

〔何か吹き飛ばせ!〕

 

「吹き飛ばせ?もうやったよ」

 

直ぐに笑顔に戻ると横に向くと数歩、歩いて隣のオールマイトを見上げるように視線を合わせた。

 

「Mr.スターク」

「オールマイト。また会えるとは」

 

何方が先か分からないほど同時に手を出して堅い握手を交わせた。

 

 

『Argh!貴方仕様のアイアンバスターを作らないと…』

 

突然、手を離すと手首から先を振って痛みを表現しながら彼らしい冗談を言い放うと、客席から笑い声が聞こえた。

 

 

「アイアンマン…!!トニー・スタークだ…!初めて見た…スッゲェ…!!!」

 

「いっつもサングラスしてるから分からないけど、下まつ毛がチャーミング!」

 

切島と葉隠がスタークを見て驚きの声を出す。他の皆を同じ様に思いもよらないゲストに驚きを隠せなかった。

 

(スタークさん…なんで来てるんだ…)

 

皆とは違い、礎は疑問で頭がいっぱいだったがそんな彼の心中など露知らずスタークは警備ロボットと共に歩を進める。

 

ロボットは赤いスカーフを広げた皿を持ち、その上に銅と銀色のメダルを載せていた。

 

「'手渡しが嫌いで...貴女方の手を煩わせるのもどうかと思って'」

 

「'知ってます'」

 

「'どうしてもイラッとして─…「'存じてますから。ほら どうぞ'」

 

小声でミッドナイトと喋っていると彼女から やや呆れ気味に促され表彰台に着くとブロンズ色のメダルを手に取った。

 

『やぁブラック・ホーク』

 

常闇の見た目を指したカクテルの名前を呼ぶと緊張していた彼の表情に微笑が浮かんだ。

 

メダルを取るとスタークは常闇の首に掛け、彼を評する。

 

『あー…おめでとう常闇くん。君はとても強い能力を持ってる。自力を鍛えて合わせれば取れる戦法が増えるだろう。僕も身体を鍛えた、スーツを開発した後だけどね』

 

「……御意…」

 

緊張して固くなった口から短くも敬意に溢れた返事をするとスタークは片眉を上げた。

 

「……僕じゃ不満だった?」

 

「いやっ…!そんな事は…全く…!!」

 

常闇の緊張を察したスタークが質問すると、偉大なアベンジャーの問いに慌てて首を振って常闇は否定を表した。

 

そんな彼の様子を見て安心する様にスタークは笑みを浮かべて、彼に近づいた。

 

「…あと……僕達は対局の立場にいるかも知れないけど──僕の事も少し参考にしてくれれば嬉しいよ」

 

「…?…はい……」

 

軽いハグをしながらそう呟くと表彰台から離れ、客席から拍手が送られる。

 

次にオールマイトがメダルを持って轟の前へ立った。

 

「轟少年、おめでとう。決勝戦で左側を収めてしまったのは──…何かワケがあるのかな」

 

メダルを掛けて賛辞を送ると轟の様子を察してオールマイトが質問すると、轟は静かに口を開いた。

 

「緑谷戦でキッカケをもらって、わからなくなってしまいました……

あなたが奴を気にかけるのも少しわかった気がします」

 

視線を伏せ、静かに語り出す。自分が進んでいた父親を完全否定する道。憎悪を糧に此処まで来た。

 

だが緑谷と戦い、自身の考えに疑問を持たざるを得なかった。父から引き継いだ力を使って正しいのか。

 

「あなたのようなヒーローになりたかった。ただ、俺だけが吹っ切れてそれで終わりじゃ駄目なんだと思った。礎にも爆豪にも…大きな借りが出来ました。清算しなきゃならないモノがまだある」

 

少なくとも今の彼には父親に対する憎しみが消えていくようだった。

 

「…顔が以前とは全く違う。深くは聞くまいよ。今の君ならきっと清算できる」

 

胸に喪失感を抱えながらも懸命に言葉を繋げた轟に、オールマイトは労うように軽く抱きしめ、優しくと背中を叩いた。

 

オールマイトが下がり、いよいよ礎の番だ。

 

『やぁ、遷形。元気にしてた?』

 

「……どうも…スタークさん……あの…なんで来てるです?」

 

「…まぁ僕にも色々やる事があってね。あぁそうだ君、スーツを壊したろう?」

 

スタークの問いに礎の顔が強張り、バツの悪そうな表情をする。

 

「huu…リードが自動修復機能を付けくれた事に感謝しないとな」

 

「すいません…こっちに来て……その…色々あって……」

 

「へぇ〜…例えば?」

 

スタークは片眉を上げ、興味深かそうに礎の瞳を覗き込んで彼が今日、感じた所思を促した。

 

「…向こうじゃ殆ど出来なかった…友達が大勢出来ました」

 

「………」

 

「それで今日はその友達と闘わなくちゃいけなくて……正直、心のどっかでキツいと感じてたのかもしれません…」

 

「……hmm」

 

言葉少なく自身の思いを語る礎はいつのまにか視線を伏せていたが、決意を新たにするように顔を上げた。

 

「でも俺の求めるヒーローになるには…皆と友達以上にならないとって思いました。それが競い合うって事だと体感できたので……」

 

「huum…君が成長できたんならそれで良いさ、僕的にはもっと派手に欲張って欲しかったかな。理想を追い掛ける自由の代償はいつだって大きい。多少の尊大さが無きゃ倒れた時 痛いぞ」

 

「……はい」

 

スタークの言葉に彼自身の経験を感じ取った礎は静かに返事をした。

 

「…取り敢えず、今日はこれを受け取っておくと良い。戒めと思うか……今日の記念にするかは君次第だ」

 

メダルを掲げると礎は首を前に倒して受け取り、そのままスタークは手を伸ばして反対側の礎の肩を軽く叩いた。

 

礎も手を同じように動かしたが──…

 

「…ハグじゃない。包帯の巻きが緩かった」

「〜〜っ」

 

スタークの呟きに憤り、礎は彼を押して引き剥がすと両手を広げて児戯を楽しむように笑っていた。

 

「キャプテンと別れた時みたく簡単に泣いちゃ駄目だぞ。ヒーロー」

 

両手を広げて茶化すように笑ってスタークは礎から離れて行った。

 

そして次は──…

 

「さて…爆豪少年。伏線回収見事だった。一位、優勝おめでとう!」

 

爆豪勝己。

今年の雄英体育祭一年の優勝者は彼だ。

オールマイトは笑いながら一位の金のメダルを爆豪の首にかけようとする。

 

 

掲げられたオールマイトの腕を爆豪の手が遮り、彼の首までの道を塞いだ。

 

「……オールマイト…悪りぃが俺の首にはそれは掛けらんねぇ」

 

ややくぐもった声で爆豪は喋り始めた。

 

「あの舐めプ野郎がまともに闘ってりゃ貰っといても良かったんだが……どうにも納得できねぇからよ…」

 

「…………」

 

轟の方を見据える爆豪、片目だけでもその眼光は鋭い。オールマイトは黙して聞いていたが口を開いた。

 

「hmm…爆豪少年。君の言う事は分かる……でも君自身がそうなるまで闘った礎少年の立つ瀬が無いと思うが…」

 

視線を横にして礎と爆豪を見るオールマイト。両者共に絵に描いたような満身創痍で、先の試合で起こった凄まじさを物語っていた。

 

「……だから今日はッ」

 

爆豪がオールマイトの腕を掴んでいた手を離した。

 

「…アンタから()()()()()()。半分野郎もブッ飛ばした時に首に掛けて貰うぜ」

 

そう言って彼は口元に皺を寄せ、白い歯を覗かせた。平和の象徴を前にしても尚、断固として自身の望む"一位"への拘りを捨てる事はしなかった。

 

オールマイトは笑みを崩す事なく礎を見て、それに礎が気付いた。

 

(……コイツの好きなように。オールマイト)

 

既に敗北を受け入れた礎の心は決まっていた。向けられた視線に対し彼は両の目を閉じて首を爆豪の方へ倒した。

 

「……良いだろう!爆豪少年。その一念が果たされるその日まで──金メダル(コレ)は君に預けておこう!!」

 

礎の表情を読み取ったオールマイトは帯を掴んでいた手を離し、メダル本体と繋ぐ金具を両手で持ち直すと爆豪に差し出した。

 

爆豪はそれに応え包帯で巻かれて白くなった腕を伸ばして、ゆっくりとメダルを受け取った。

 

「さァ、今回は彼らだった!! しかし皆さん!」

 

メダルを渡すと会場一杯に座る観客、生徒に向かって高らかに言い放つ。オールマイトの声が会場全体に響き渡り、誰もが彼の言葉に耳を傾ける。

 

「この場の誰にも此処に立つ可能性があった!!ご覧頂いた通りだ!

競い!高め合い!!さらに先へと登って行くその姿!!次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!てな感じで最後に一言!皆さん、ご唱和下さい!!

せーのっ―――」

 

『"プルス……ウル_「おつかれさまでした!!!!」

 

掛け声と共に会場全体がプルスウルトラを叫ぼうとしたが失敗。最後の最後で体育祭の閉会式が見事に台無しとなった。

 

「「「「「そこはプルスウルトラでしょ!オールマイト!!」」」」」」

 

「ああいや…疲れたろうなと思って…」

 

ブーイングが一気にNO.1ヒーローに向けられ、スタークは吹き出し大口を開けて笑った。

 

雄英の校訓を皆で叫び、締めようとするところが失敗し、激闘が繰り広げられた体育祭はようやく終わりを迎えた。

 

………

 

しかし…

 

「スターク氏!オールマイトとの2ショットを1枚!!」

「アベンジャーズの今後の方針を教えて下さい!」

「ペッパー氏との生活は順調ですか!?」

 

質問の嵐を引き連れてカメラマンとインタビュアーがスタークとオールマイトは目掛けて爆走して来た。

 

「しまった……我々2人は人を惹きつけ過ぎる」

 

「彼らの対処は私が…」

 

記者団からはまだ距離がある。2人は視線を交えずに会話をしていたがスタークがオールマイトの方を向いた。

 

「……オールマイト…」

 

_ガコンッ!

 

「「「「っ!?」」」」

 

「ん?」

 

衝撃音でスタークが振り向くと、すぐ後ろにあった礎達の乗る台座が下に動いていた。

 

「(マスコミ対策…今日はここでお別れか……)Mr.礎」

 

「はい?」

 

下がって行く台座を見ていた礎がスタークの声に反応して頭を上げた。

 

「シモンズはウチで良くやってくれてるよ。それから…まだまだ上を目指せ(Excelsior)

 

「…スター_ッガコン…

 

返事をする前に地上へと続く扉が閉じ、礎の言葉はスタークへは届くことはなかった。

 

「…良いんですか?礎少年は……」

 

「私の事よりも……()()()

 

オールマイトの方に向き直ると再び彼と握手をするスターク。

 

「……'あまり無理はされないように'」

 

小声で彼に呟くと手を離してスタークは迫り来る記者達の方へ歩いた。

 

「……よし。日本のマスコミにサービスだ。皆様、只今よりご覧に入れますのは我がスターク・インダストリーズが誇る最新の─…」

 

スタークが手首の装置を操作すると彼の着ていたスーツが折り畳まれるように収縮してゆき、手首へと消えた。

 

端正なスーツが無くなるとそこには胸にリアクターを輝かせ、藍色とグレーの混じった迷彩色のジャケットを着た彼がいた。

 

「──テクノロジーだ」

 

服から伸びるドローストリングを両の指で引くと余剰のあった布が引き締まってスタークの身体にフィットし、彼がリアクターを軽く指で2度叩いた。

 

すると機械音と共にそこから金属が流れ出て無造作に流れる水のように速く体の上を走り、幾何学模様を辿って彼を覆って行く。

 

無機質な金属の軌道が先に拡がり見覚えのある鮮烈な赤がその上で結合し、あるべき形に終期して行く。

 

僅か数秒でスターク全身を覆い尽くしたそれは先程のアーマーよりも遥かに先進的かつ、流体的なデザインのアイアンマン・アーマーだ。

 

「"ワアアァァーーーー!!!!"」

 

その姿に会場が沸き立ち皆が驚愕し、慌てた記者達もその場で止まりカメラを向け瞬く間にフラッシュが焚かれるが──

 

『悪いね。今日はここまで』

 

マスク越しの機械音声の混じった声でそう言うと、彼の足元と両手が光るとあっという間に空へと飛んで行った。

 

皆は見上げ拍手と歓声を送り、空に向かって白線を引いて消えて行く彼を見送った。

 

 

……………

………

 

 

体育祭が終わり、A組は明日、明後日は休校となる旨を相澤から聞いた。

 

今日の体育祭の疲れを癒すことと、放送を観たプロヒーローからの指名等を先生達がまとめ、それを休み明けに発表するとの事だった。

 

 

 

……………

………

 

 

 

同日、全生徒が下校したその数時間後。

 

太平洋の雲上を飛ぶクインジェット、その機内。空の運転席を背にスタークは後ろで手を組み立っていた。

 

「…フライデー、接続を戻した後に秘匿回線を繋いでくれ」

 

『では認識番号をどうぞ』

 

「FF52BP196607だ」

 

『今日はどちらの名義でお掛けになりますか?』

 

「そうだな、トム・フォードの三揃を着てる方だ」

 

 

 

………………………

………………

………

 

 

 

鬱蒼としたジャングルの中、太陽の光が先鋭的な飛行機と数人の黄色いコスチューム着た者達を照らしていた。

 

_BLAM!BLAM!BLAM!

 

「早く逃げろ!」

「チョロい仕事だなんて言ったの誰だよ!」

 

銃声に驚いた鳥の群れが木々から空へと飛び立つ。

 

飛行場と離陸地を繋ぐドアから転がるように同じ色の防毒スーツのような姿をした者が2人出て来た。

 

「トッド、文句なら後にしろ!!」

 

銃の弾倉を入れ替えながら悪態をつく。

そうしている間にも殴り飛ばされた仲間が足元に堕ちてきた。

 

「ワカンダを襲おう、AIMで出世するチャンスだなんてて言ったのお前だぞ!」

「なんだよ いいアイデアだろ?」

「まぁな、でも大事なことを一つ忘れてるぜ」

 

目前にある広くない廊下で数名が自分達を襲う者に銃火器で応戦している。その間を縫うように再度、ひき金を引くが標的には擦りもしない。

 

「何してる?たった1人だぞ!さっさと倒せ!」

「そういう問題じゃねぇ!」

 

養蜂業者に似た服が引き裂かれ、恐怖に支配された瞳が覗いて廊下中に金切り声が反響する。

 

歪に切り裂かれ虚空に飛び交う拳銃の奥に漆黒の人影が蠢きその姿を現した。

 

 

「敵はブラックパンサーだぞ!!」

 

 

応戦していた者は1人残らず倒されるか吹き飛ばされた。外へと飛ばされた一人は鼻が折れたのか、直ぐさまその場に血溜まりを作った。

 

「だから選りすぐりの精鋭を18人も連れてきたんだ」

「それじゃ足りねぇよボケ!」

「ハルクじゃないんだ!なんの特殊能力もない男だぞ!」

 

飛行場に留まっていた者達が一斉に武器を構えて飛びかかるが、次々と跳ね返されその装備品が悉く弾け飛んだ。

 

「ヒーローのくせに自分の国なんて持ってる奴だぜ!ただ者じゃないに決まってんだろ!これからどうすんだ!!」

 

次々と倒れていく同僚とこの状況に焦りを隠せなくなると後ろの仲間に縋りつくように問い掛けるが──…

 

「…俺は逃げる」

「AAaAHGh!!!」

 

「お前を囮にしてな」

 

発砲音の直ぐ後に叫び声が上がる。

太腿を撃ち抜かれた彼は痛みで呻き、傷口を抑える。

 

銃を撃った当人は倒れた彼に背中を向けて飛行機に設置された梯子へと走った。

 

「あばよアフリカ!スーパーヒーロー1人じゃ、流石に人手不s_SCROUM!!

 

瞬間、紫色(ししょく)の衝撃波が木々を震わせ、鋼鉄製の飛行機さえも動かした。

 

掴んだ梯子ごと彼は吹き飛ばされ鋼の銀翼にその身を打ち、激しい痛みと脳震盪により意識を失った。

 

「………………………」

 

桴で打たれた銅鑼が止むように囂囂とした喧騒は鳴りを潜め、累々と倒れた敵の中に立つ彼だけが残った。

 

「……隊長、拘束具と医療班を頼む。外道めが仲間の脚を撃った」

 

「わかりました。今日は固まりませんでしたか?陛下」

 

「あぁ…止血はしたから急いでくれよ」

 

指先から伸びる鋭利な爪を収めて通信機を起動させ、親衛隊の隊長と連絡を行うと冗談混じりで返された。

 

「それから─…スターク氏から連絡が来ています。別称の方ではなく」

 

「…?わかった、繋いでくれ」

 

「……ティ・チャラ」

 

「スターク。…イルミナティの件なら…」

 

「あー…今日はその件じゃなくて…遷形って覚えてるか?昔、君が鍛えてた子だ、礎 遷形」

 

「…あぁ勿論、覚えている。彼は筋が良かった。彼がどうしたんだ?」

 

「こっちの仕事でさっき少しだけ会って来たんだが─…彼、結構強くなっていたよ。まだまだ育つ」

 

「…hmm……そうか……それをわざわざ秘匿回線で知らせに来たのか」

 

「こんな時代だ、明るい話題は貴重だろうと愚案してね。陛下」

 

スタークにそう言われて横たわるAIMの構成員らを見据える。

 

「……………………………一理ある」

 

すると上空からワカンダ製の飛行機が数台、姿を現し木々を揺らす。

 

それを目視すると彼のマスクが首元まで折り畳まれるように消え、褐色の肌が露わになった。

 

そうやって彼は眺めた、広大な樹海に囲まれた荘厳な都市を。

 

 

 

 

 

 

 




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