礎 遷形のヒーローアカデミア   作:Owen Reece

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明けましておめでとう御座います。
本年もよろしくお願いします。



第34話 第三回戦 開幕

「おぉ…礎が上鳴を瞬殺した相手を倒したぞ…」

 

「いや、俺はつい遠慮しちまって…「完封されてたわ、上鳴ちゃん」…あのな梅雨ちゃん…」

 

_ドンっ…

 

「ん?」「ゲロ?」

 

耳郎と蛙水が振り向く。

A組の面々がクラスメイトの評価をするがこの男は見解は違ったようだ。

 

「…礎ェエ……!!あの野郎…女子とベタベタくっつきやがってぇぇ…!!」

 

「クソかよっ」

 

歯を食いしばり嫉妬を剥き出しにする峰田に呆れる…

 

 

 

 

一方__...

 

(礎くんの試合、凄かったな…相手を追撃しつつも、気遣ってプロに個性の使い用を見せてた…

………でも…礎くんの戦闘スタイルは、攻撃される→吸収→攻撃する。だった筈……早く決着を付けたかったのかな……)

 

緑谷は先程の試合を頭の中で整理しながら、階段を降りていた。自身の試合が近づいたからだ。

 

降りきった先、廊下を歩いていると……

 

「ッ!」

 

観客席に戻る途中の爆豪と出会った。

 

「っ!うわあ かっちゃんっ!!」

 

「んだテメェ何の用だ死ねカス!!!」

 

突然降りかかる暴言が張り詰めた空気を作り、二人の間を流れる。そんな中、緑谷は固い動作で返事をする。

 

「(死ねカス…)いや…次が僕だから控え室で準備を……あと二回戦おめでとう…じゃあ……」

 

「………………」

 

爆豪から逃げるように ぎこちなく控え室へ向かう。

 

 

が、

 

 

「テメェの入れ知恵だろ。あの捨て身のクソ策は…厄介なことしやがって……っざけんじゃ_「違うよっ……」

 

爆豪は鋭い目を向け、いつもの怒りを覗かせる顔だが幾分か真面目な顔で喋っていたが緑谷が遮った。

 

「全部…麗日さんが君に勝つ為に考えて組んだんだんだよ。厄介だって思っんなら、それは………

 

麗日さんが君を翻弄したんだっ」

 

「………………ッ」

 

僅かに険しい表情を見せた爆豪を後ろに、緑谷は先に歩いて行った。

 

……………

………

 

「おうっ爆豪!…何か大変だったな悪人面っ!」

 

「組み合わせの妙とはいえ、とんでもないヒールっぷりだったわ。爆豪ちゃん」

 

席に戻って来た爆豪へ皆が声をかける。

 

「うぅるっせぇっんだよ!!黙れ!!」

 

「しっかし か弱い女の子によくあんな思い切りの良い爆破できんなぁ…礎の試合見たか?あーいうのが……「ッ喋んなアホ面!!」

 

こっちを指差し、礎を例に出して喋る上鳴を黙らせ 息を荒げて席へ戻った。

 

 

「どこが か弱えんッだよ……!!」

 

……………

………

 

_knock knock

 

「どうぞ〜」

 

「お疲れ様です」

 

礎は試合を終えて直ぐ、保健所に立ち寄った。

 

「アンタかい あの()ならもう戻ったよ」

 

「お見通しですか(無駄足だった…というか心配し過ぎか俺…)」

 

席へ戻る前に麗日の調子を伺おうと足を運んだが、彼女は治療を受け もう此処を後にしたようだ。

 

「そうですか…お邪魔しましt『決まったァァーー!!』

 

部屋を出ようとするとプレゼント・マイクの声がした。

 

 

『二回戦第8試合!勝者は常闇!!障子を場外へ押し出しっ勝利!!』

 

 

「(常闇が勝ったか…間合いは互角だったろうが素早さだと障子には部が悪かっただろうな……)…あ」

 

彼らの試合内容に想いを巡らせていると、気づいた。

 

(次が緑谷と轟の試合だ…戻るか)

 

そう思い取手に手を掛けた。が、

 

「…アンタ帰る前にー…」

 

 

………

 

 

「いや〜負けてしまった!」

「………………ぁ…ぇ…」

 

控え室の扉を開けると、治療を受け頬にガーゼを貼った麗日が笑っていた。そんな彼女を見て緑谷は呆然と立ち尽くしてしまった。

 

「最後行けると思って調子乗ってしまったよ くっそーー…」

 

「麗日さん…ケガは大丈夫?」

 

「うん!リカバリーされた!体力削らんよう程々の回復だから、すりキズとかは残ってるけど」

 

彼女の言う通り、僅かな傷跡が身体の所々に見受けられる。

 

「いやぁー強いね爆豪くんは!完膚なかったよっもっと頑張らんといかんな私も!」

 

「…………………」

 

麗日はいつもの調子で喋るも、緑谷は口を開けたままで黙っていた。が、

 

「………大丈夫…?」

「大丈夫!意外と大丈夫!」_bbb...

 

やや間を置いて緑谷が話すと彼女はいつもの笑顔で答えた。

 

「デクくんだってすぐ先見据えてやってるし…負けたからって負けられへんよ」

 

「……そんな…『アーーオォゥ!!』……!」

 

彼女の気遣いの言葉に何か言わねばと言葉を詰まらせたが、プレゼント・マイクの声が二人の耳に届いた。

 

 

 

『二回戦、第5試合で引き分けだったぁ!

 

切島とッ!

 

鉄哲のッ!

 

三回戦進出を掛けたっ腕相撲の結果はぁー!!?』

 

 

 

ステージ上に作られた台を挟んで向かい合って、勝負中の2名に歓声が上がる。

 

「ッッヌゥゥウッッッ!!」

「ッッンンンンンン!!!!」

 

最も当人の耳には届いてはいない なぜなら、角が取れたコンクリート製の台がひび割れる程の力を歯を食いしばり、加え合っているからだ。

 

硬化と鋼鉄化する"個性"。先の闘いで腕力も殆ど同じだという事は周知の事実だ、勝敗を分けたのは__...!

 

_ッピシィ…!

 

「ッッ!」

 

「...!ヌゥンガァ!!」_ガン!!!!

 

鉄哲の鋼鉄化した腕に亀裂が入り、隙を突いて切島が腕を叩きつけ勝負を決めた。

 

 

 

『勝者っ切島くん!!三回戦進出!!』

 

彼ら用に作られたステージの前で試合を見守っていたミッドナイトが判定を下す。

 

『...ッ切符を勝ち取ったのはっっ!!切島だァー!!』

 

 

 

「ぐおおおお…金属疲労が…!!もっと鉄分を取っていれば………」

 

「..ッ?!」

「いい…勝負だった!」

「…………ケッ」

 

相手に敬意を表し、差し出された切島の手を掴む鉄哲。二人に歓声が上がる。

 

 

 

「ホホ〜っ、青いわーっ!」

 

『これで三回戦進出者が揃った!つーわけで…』

 

またも顔を紅くするミッドナイト。そしてこの後、三回戦最初は緑谷と轟の対決だ。

 

 

 

「……もう……!」

 

アナウンスで自身の試合が近づいたことを察した緑谷の心臓が高鳴る。

 

「じゃあ…」

 

「あっごめん!私おってデクくん全然準備が…!」

 

「いや…」

 

ステージに行かなければならない緑谷は扉に手を掛ける。

 

「見とるね、頑張ってね」

 

麗日の言葉に頷き、緑谷は部屋を後にした…

 

 

 

 

 

 

 

麗日は緑谷を見送り、少し時間が経つと携帯を取り出した。

 

「…電話さっきごめんな。父ちゃん」

 

『いや こっちこそ忙しい時にすまんな』

 

受話器越しの声は野太く、長く大きな声を出していた影響か微かに枯れている。しかし温かさを伝える声色、話し相手は麗日の父だ。

 

『いやー…テレビ母ちゃんと一緒に見とったよ!惜しかったなー!!でも凄かったぞーーー!!』

 

「惜しくないよ凄くもない..最後、焦りすぎたし…あそこからの打開策なんもあらへん状態やったし…完敗」

 

先ほどの元気な彼女とは違って、とても暗く落ち込んでいる。

 

『そうなんかァ……難しいことはようわからんけど…別に負けたからって道閉じるわけやないんやろ?来年もあるんやろ?』

 

「勝ち進めばそんだけ…色んなタイプへの対応とか見せられんねん、一戦じゃスカウトする方も分からへん…」

 

段々と弱々しい声になっていく。

 

『……なーにを生き急いどんのや』

 

「だってっ…早く私…!父ちゃんたち…!」

 

 

机に雫が落ちる。

 

 

『……………お茶子はもう…急がんでも大丈夫やで。

そんなんなるくらい優しいお茶子は絶対良いヒーローんなるって俺、分かっとるもん』

 

父の優しい声に いつの間にか麗日の目から涙が溢れていた。負けたことの悔しさ、掛けられた言葉が嬉しさが頬を濡らした。

 

 

 

 

 

 

 

彼女の嗚咽が耳に届き、進む脚を鈍らせた。

 

(決まってるじゃないか…!悔しくないわけないのに"助けになれば"なんて言って…麗日さんに何もしてあげられない それどころか…)

 

〈見とるね、頑張ってね〉

 

(また背中をー……!)

 

彼女の言葉が自分の瞳を湿らせるが気持ち新たに それを拭い、脚を踏み出した。その時、

 

「ッ!!?エンッ…!」

 

曲がり角から現れたのはエンデヴァー。

対戦相手の実父。髭が燃え揺れ、肩から発される熱には威圧感がある。

 

「おォいたいた」

 

「エンデヴァー……何でこんな所に…」

 

轟から聞かされた話の後では…彼を見ると気不味くなってしまう。そんな緑谷の胸中など関係無しに彼は指を向ける。

 

「君の活躍見せてもらった。素晴らしい"個性"だね。指を弾くだけであれほどの風圧…!…パワーだけで言えばオールマイトに匹敵する"個性(ちから)"だ」

 

「ッ!何を……何を言いたいんですか……!僕はもう行かないと…!」

 

個性について言われた緑谷は、冷や汗を流し目と身体を逸らして、早歩きでエンデヴァーの横を通り過ぎる。

 

(エンデヴァー…!ワン・フォー・オールの事を知ってる…?いや、口ぶりからは知らないっぽいような…取り敢えずっ…この人だけには悟られちゃ…)

 

「ウチの焦凍には、オールマイトを超える義務がある」

 

なぜか自分を探していた彼は突然、自分の息子の話をし始めた。炎を揺るがせ後ろの緑谷に視線を移す。

 

「君との試合は、テストベッドとしてとても有益なものとなる…くれぐれもみっともない試合はしないでくれたまえ」

 

背中越しに聞いているだけで闇が深い。何より轟が父親を否定する気持ちに理解が追いついた…

 

 

〈クソ親父の個性なんざなくたって……

 

いいやっ……

 

使わず"一番になる""ことでっ

 

奴を完全否定する……ッッ〉

 

 

「…言いたいのはそれだけだ。直前に失礼した」

 

そう言って立ち去るように背中を向け、観客席に戻ろうとする。

 

その時、

 

「…っ僕は…!オールマイトじゃありません…ッ」

 

「…そんなものは当たりまえ_「っ当たり前の事ですよね………」

 

緑谷の突然の言葉に、意味が理解できず再び振り向く。自身の言葉は遮り、彼は話を続ける。

 

「ー…轟くんもっあなたじゃないッ…!!」

 

此方を振り向き、そう言うと緑谷は会場へと向かって行った。そんな彼の後ろ姿に表情を曇らせ、エンデヴァーは目を細めていた…。

 

〈…緑谷、おまえオールマイトに目ぇかけられてるよな…〉

 

(轟くん……!!)

 

 

………

 

 

「二人、まだ始まっとらん?」

 

「「ん?」」

 

礎が席に戻って次の試合を待っていると、背後から麗日の声がした。

 

「うら……むっ?!」「見ねば」

「目を潰されたのか!!早くリカバリーガールの元へ!!!」

 

(泣いてたんだろうよ……飯田……)

 

目の周りを腫らした彼女を見て飯田は声を荒げるが、事情を察した礎は目を逸らした。

 

「行ったよ、コレはアレ…違う」

 

「っ違うのか!それはそうとさっきは悔しかったな…」

 

「今は悔恨よりこの戦いを己の糧とするべきだ」

 

「'タシカニ…'」

「うん…!」

「…だな」

 

常闇の言う通り、闘うであろう相手を見分しないのは愚かな事だ。特に飯田と礎は尚更だ。

 

 

 

ステージ四隅から炎が立ち昇り、歓声が会場全体に響いた。

 

 

『お待たせしたなっ!!エビバディィイー!!三回戦第1試合はっビックマッチだ!!!』

 

実況の声色にも艶が出る。

 

『二回戦の圧勝で観客を文字通り凍りつかせた男!

ヒーロー科

 

轟 焦凍!

 

…片やこっちはヒヤヒヤ二回戦突破!今度はどんな闘いを見せてくれるのか!?

ヒーロー科

 

緑谷 出久!』

 

 

舞台の上、そこに向かい合う両雄。絶え間ない歓声の中、彼らを包む空気は静寂そのものだ。

 

「来たな」

 

短くも鋭く放たれた言葉が胸に刺さり、心臓が高鳴る。

 

「轟くん…!」

 

緊張するも相手の名前を振り絞る。目の前にいるのはクラス最強の1人なのだから。

 

 

 

 

 

 

「常闇くん..この試合どう見る?」

 

「…緑谷が轟の懐に飛び込めるかどうかだな」

 

常闇は腕を組み、飯田の問いに応えた。

 

「緑谷のパワーは驚異だってのはクラス全員に割れてる。轟も対策してくるだろうな…」

 

「うんっ…あの氷結 デクくんどうするんだ…?」

 

礎も轟と一度闘った経験から相手の力量を鑑みて喋る。

 

 

 

……………

………

 

 

 

某所、薄暗い部屋。

 

…写真やメモ、新聞の切抜きなどが貼られている壁の下でパソコンの画面だけが光る。それ座って眺めているのは両腕に包帯を巻いた男だ。

 

彼に男は話しかける。

 

「よく観て備えろ、死柄木弔。()()は…いずれ君の障壁になるかもしれない…」

 

「ハッ…糞みたいな話だな…」

 

 

死柄木弔。

 

 

彼は不機嫌そうな顔で浮かべ、首を掻いて放たれた言葉に応える。

 

 

 

……………

………

 

 

 

緑谷家、リビング。

丸まった紙がゴミ箱から溢れ、空になった箱がその上に置かれている。

テレビを観てる出久の母。緑谷引子は…

 

「いずぐうぅぅ!!」

 

涙と鼻水を大量に出してはティッシュで使い、捨ててはまたティッシュで拭きの繰り返し。部屋中がティッシュの海だ。

 

実の息子がここまで登り詰めたことに、感動している。

 

 

……………

………

 

 

 

「あの二人、共に貴方を救けようと行動したそうですね」

 

「…うん」

 

此方は観客席、オールマイトの隣に座る13号は舞台を見ながら話した。彼は返事をして、ステージ上の二人を真剣な目で見つめる。

 

「なんとなくだが、あの二人には…何か近しい ものを感じるよ」

 

 

 

『今回の体育祭 両者トップクラスの成績!!

 

まさしく両雄並び立ち!!

 

今!!!

 

緑谷!!

 

(バーサス)

 

轟!!

 

..START!!!』

 

両者の戦いが今、始まった。

 

 

 

 

 

 

 




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