礎 遷形のヒーローアカデミア   作:Owen Reece

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第33話 爆豪vs麗日・礎vs塩崎...!

「お前 浮かす奴だな..丸顔。退くなら今退けよ"痛ぇ"じゃ済まねぇぞ」

「'まる…!'」

 

爆豪の警告ついでの暴言に、麗日は思わず反応し口を窄める。わかっていたことだが、目前にしてハッキリと伝わる。彼は容赦無しに勝つ つもりだ。

 

………

 

「緑谷くん、先程麗日くんに言おうとしていた爆豪くん対策とは何だったんだい?」

 

「本当、たいした事じゃないけど…かっちゃんは強い…!本気の近接戦闘はほとんど隙無しで、動く程強力になっていく"個性"だ。

空中移動があるけど…とにかく浮かしゃえば主導権を握れる。だから__...」

 

先の二種目で爆豪の性格と個性を知った観客たちは、ステージに漂う不穏な空気を悟って歓声を止めた。

 

 

『START!』_ダッ

 

「__...速攻!!」

 

………

 

「退くなんて選択肢ないからっ!!」

 

スタートの合図と共に彼女は全力で走り、間合いを詰める。

 

 

「よしっ事故でも触れられたら浮かされる!間合いは付けられたくないハズ!

だからかっちゃん的には__...」

 

 

 

「……じゃあ死ねッ…」

 

爆豪は向かってくる麗日を見据え、右腕を振りかぶる。

 

 

 

「...回避じゃなくて迎撃!!」

 

 

 

〈かっちゃんは最初大抵右の大振りなんだ〉

 

「(ここだ!ここを避けて__BOOM!ッぶわっ!」

 

彼女の予測も虚しく、突進を爆炎が撫ぜた。

 

 

「「麗日さん(くん)っ!!」」

「っ爆豪ちゃん…!女の子相手でも容赦無いわね…」

 

〔っうわぁモロ…!!〕

〔女の子相手にマジか……〕

 

 

 

(アカン!わかってても反応が出来ない!)

 

 

「…片ァ付けてやるッッ…」

 

爆煙が周囲を覆い隠し、相手が見えない。が、煙の下に人影を捉えた。

 

「ナメん..じゃねぇっ!!」_BOOM!

 

それをねじ伏せるが如く、爆撃する。が、(…………ッ!)

 

それは、ただの上着…だ。

 

 

『オォー!上着を浮かせて這わせてたのか!よー咄嗟に出来たな!!』

 

 

(ここで浮かしちゃえば…!)

 

煙に紛れ彼の背後を取った、両手を限界まで伸ばして一部にでも触れようとする。彼は首を回しt_BOOM!!

 

「ッわ゛っ」

 

奇襲も無足に爆破に呑まれる。彼は半歩も動かず、ステージを作るセメントを削りつつ又も迎撃した。

 

 

「見てから動いてる!?」

「あの反射速度なら煙幕はもうかんけいねぇな…コエー…」

「触れなきゃ発動出来ねぇ麗日の個性っ…あの反応速度にはちょっと部が悪いぞ…!!」

 

 

 

 

「ー…ッ!!」

「っおっせぇッ!!」_BOOM!!

 

麗日は間を置かず、再突進し攻撃を試みる。が、爆豪は掬い上げるように迎え撃った。爆風で彼女諸共コンクリートを吹き飛ばす。

 

「おらあああ!!!」_BOOM!!

 

都合、五度目の爆破ー…!

 

 

 

 

「〜〜〜……ッッ!」

「お茶子ちゃん…!」

「ウチもう見てらんない…ッ」

 

「爆豪、まさか…あいつ……ソッチ系の…!」

 

耳郎は手で顔を覆い、峰田は手を組んで顎を乗せて爆豪に引いてる。

 

 

 

_BOOM!!

 

 

_BOOOOM!!

 

 

_BOOM!!!………

 

向かって行くたびに炸裂する爆撃。空気を震わせ耳を劈くその音は、狭い通路を反響し薄い扉を抜けて尚、届く。

 

…礎の耳にも。

 

 

 

(………ッ)

 

目を閉じて、手を祈るように組み眉間を乗せる。立ち上がり、客席に向かいたいと思うが彼は椅子に縛られたように動かない。

 

〈…決勝で会おうぜ…!〉

 

麗日の言葉を聞き、覚悟、想いを知ったからだろうか。それとも、席を離れる事が彼女に対する侮辱と同義と思えたからか。

 

'_BOOM!'(……!)

 

扉に背を向ける姿は抗いと思える程、彼の感情を伝えていた。

 

 

 

 

 

 

「まだまだぁ!!」_BOOM!!!

 

煙に紛れての突貫も、呆気が無く爆破を喰らい吹き飛ばされる。

 

 

『麗日、休む事なく突撃を続けるが…これは……』

 

 

_BOOOM!!

 

(っ麗日さん…!)

 

 

〔さっきの変わり身が通じなくて、ヤケ起こしてる…〕

 

プロヒーロー含め、客席からの歓喜の顔はなくなっており、痛々しい視線を送っている。

 

 

「はぁっ……アホだねアイツ…」

 

溜息混じりの呆れ声__...物間は失笑とばかりに首を上げて視線を逸らす。

 

 

_BOOOM!

 

〔っなぁ止めなくて良いのかっ?〕

〔大分クソだぞっ…〕

 

既に両手では足りなくなった爆破。幾度も繰り返されたこの光景に耐えかね、遂に声が上がった。が

 

「………………」

 

副審セメントスは動かない___....

 

 

 

 

「ー…!ー…!ッッ!!」_BOOM!!

 

既に肩で荒く息をするようになった麗日。火傷跡が痛々しくも、跳び掛かり__...爆撃。

 

 

 

「〔見てらんねぇ……!〕おい!!お前それでもヒーロー志望かよ!そんだけ実力差あるなら早く場外にでも放り出せよ!」

 

ブーイング。

 

「女の子痛ぶって遊んで楽しんでんじゃねーぞ!!」

「そーだそーだ!」

 

_Booo!_Boo!

 

声を張り上げたヒーローに釣られて一部のプロ達も野次を飛ばす。

 

 

 

『一部から…ブーイングが!しかし正直俺そう思u_SMACK!っ肘!?何s_『今遊んでるっつったのプロか?何年目だ?』

 

「ッ!」

 

相澤の肘が頬と言葉尻を捉え、実況用マイクを奪う。語気に静かな怒りを感じたのだろうブーイングは止み、実況席に視線を移す。

 

『シラフで言ってんならもう観る意味ねぇから帰れ…ッ帰って転職サイトでも観てろ…ッ』

 

 

「相澤先生…!?」

 

 

『っ爆豪は…ここまで上がって来た相手の力を認めてるから、警戒してんだろう。本気で勝とうとしてるからこそ、手加減も油断も出来ねぇんだろうが…!』

 

 

 

 

当の爆豪には野次も何も聞こえてはいない。なぜならその鋭い目で麗日を睨みつけていたから。

 

(まだだ…まだこいつ___…)

 

相手は息も絶え絶えにも立ち上がり、汗を拭って自分を睨みつけた。

 

(...っ死んでねぇ)

 

地面が削れ煙が立ち昇る中、彼女の目はハッキリ意志を感じさせた。

 

 

「'そろそろ…かな…ありがとう…'爆豪くん……油断してくれなくて…!」

 

「あ……?」

 

爆豪は言葉の意味を考え、麗日は青い顔で両手を前に出す。

 

 

 

「___爆豪の距離ならともかく、客席にいながら()()()()ブーイングしたプロは恥ずかしいね…」

 

 

B組、物間が口を開いた。

 

「低姿勢での突進で爆豪の打点を下に集中させ続け…()()()()()()()。そして絶え間ない突進と爆煙で視野を狭め__...」

 

物間が上を見る。

 

「...悟らせなかったっ」

 

ステージ上空、爆豪の攻撃で削り上げたコンクリートの破片が浮いている__!!

 

 

 

「ッッ勝あアァつ!!」

 

彼女が指先を合わせると、固く重い破片たちは重力を取り戻し、ステージ上へ降り注ぐ。

 

 

『流星群ーー!?』「気付けよ」

 

驚き口を開くプレゼント・マイクに相澤は呆れた声を出す。

 

「そんな捨て身の策を…!!?」

 

緑谷の驚愕の声もそこそこに麗日は既に破片が降る中、爆豪へと走っていた。

 

 

 

(こんだけの量!!迎撃にしろ回避しろ必ず隙が出来る!その瞬間に超必で距離つめる!!)

 

自身を浮かせる手の動作__...!麗日自身を浮かせる技だ。

 

 

 

この時、爆豪は上を見上げ左腕を構え…

 

 

 

(ーッ勝つ!勝って…私も…デクくんみたいに!)

 

彼女の手が爆豪へ迫る。が、_BOM!_BOM!_BOM!!

 

_KRA-KBOOOOOM!!!!

 

「〜〜ぐっゎッ???!!!!」

 

爆豪の腕の周りから極小規模の爆発が数回___その後瞬く間に巨大な爆発が麗日諸共 落石全てを吹き飛ばした。

 

 

「…デクとあのクソネズミとつるんでっからなテメェ…何か企みあるとは思ってたが__...」

 

爆豪は静かに口を開く。

 

「……一撃て………………ッ」

 

絶句___。遠い、力量差...あまりにも…あまりにも…

 

 

『っばッ爆豪、会心の爆撃!!麗日の秘策を堂々ッ正面突破!!』

 

 

「...危ねえな……」

 

鈍く傷む左腕を見て微かに溜めた息を吐く。

 

(っ私の出来る最大限…!!全く通じへんかったっ…!!)

 

小さな破片が落ちてくる…そんな中彼女は悔やみ、立つ気力すら失せた。絶望が胸w〈彼はね……〉

 

(ッ!!)

 

ふと脳裏に浮かぶ、これは___......

 

〈彼は___オールマイトが来るその時まで__...最後まで食い下がったんだ…〉

 

襲撃された後の___...聴取の時

 

 

 

(ッそれでも…!!)

 

震える脚で鈍く重い身体を支え、彼女は立ち上がった…!

 

「ッ!いいぜ…こっからが本番だ!麗日ぁ!!」

 

(ッ礎くんなら!__...)

 

尚、闘う意志を見せた麗日に応えるように爆豪は猛る。

 

(...諦めたりなんか…!)

 

汗が滴る。

 

策が破られようとも、己が全てを打ち砕かれても、走る。

 

彼女は投げ出さない。

 

 

 

 

 

 

 

___が

 

 

 

 

「______......!」ッドシャ……

 

 

 

 

 

「ハッ……んの……体……言うこと……きかん……!」

 

麗日は人形から糸が切れたように倒れてしまい、爆豪は思わず立ち止まり眉をひそめる。

 

 

 

「麗日くん……っ」

 

許容重量(キャパ)とっくに超えて……!!」

 

飯田と緑谷は気づいた。

体力も 個性の上限も、限界だと。

 

 

 

「'……わっ…わたしもっ…私もッッ…!__...'」

 

(っ!!)

 

前のめりに倒れた麗日が微かに残る力を腕に込めて前へ這い、爆豪が構えた。

 

「まだっ…!__...」

 

〈大きくなったら父ちゃんと母ちゃんのお手伝いするっ!〉

 

古傷が残る無骨な手で頭を撫でてくれた感触と共に思い出す。

 

〈気持ちは嬉しいけどなぁ、お茶子。親としてはお茶子が夢 叶えてくれる方が何倍も嬉しいわ!したらっお茶子にハワイ連れてって貰えるしな!!〉

 

これは___涙をためた目で見上げた、当時の自分には大きく映った両親の姿だ。

 

 

 

(__...ヒーローにッなって…!!)

 

 

 

 

 

 

その時、ミッドナイトがステージへ降りて彼女の元へ膝を降ろす。すると爆豪は腕を下げ、構えを解いた。

 

そして麗日は……

 

 

 

 

「'〜〜〜ッ父ちゃん………'」

 

既に像を捉えない霞んだ視界、最後に口に出たのは自分の夢を、背中を押してくれた人だった。

 

 

 

『……麗日さん、行動不能。三回戦進出 爆豪くん!』

 

 

彼の___いや、()()()健闘を讃えた歓声が響く中、焦げた上着が風に靡いていた。

 

……………

………

 

気を失った麗日をロボが担架で運ぶ、そして爆豪は表情も変えず背を向けて会場を後にした。

 

 

『二回戦第6試合…ああ麗日…ウン…爆豪、二回戦とっぱ……』

 

「ちゃんとやれよ..やるなら…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…麗日……)

 

一際、大きな爆発音がして暫く。実況のではなく、ミッドナイトの声が耳に届いた。そうして、勝敗を知った礎は静かに目を閉じて意識を鎮めた。

 

「(………切り替えろ。次は俺が…

(麗日は大丈夫か)

塩崎の個性は俺の…

(怪我の度合は?火傷を…)

黙れよ…

(今からでも)…!)〜〜ッハァッ……」

 

混沌とする頭の中に耐えかね、息を吐いた。

 

「(麗日は全力を出し尽くしたんだ…なら俺は……俺もそうしないと)…hurm」

 

深呼吸して脳に酸素を送る。

 

(……塩崎の個性と攻撃方法はわかっている。障害物競走序盤での俺の個性を見ている事は確実。ならば対峙した時彼女が取る手段は……)

 

ようやく取り戻した冷静さでもって戦略を練る。

 

 

 

 

 

 

『ッさぁーーーて!!気を取り直して!第7試合っ!!』

 

セメントスが削り取られ、所々が ひび割れたステージを直し四隅から炎が立ち昇る。

 

それを合図に両名がステージへと歩を進める。礎は歓声が上がる中、戦略の整理する。

 

(彼女の選択肢…

1.様子見。

俺の防御力を鑑みるなら そうしてくる可能性は高い。

2.攻撃。

試行的な部分が強いが此方も可能性が高い。

…どちらにしても後手に回るのが一番良い。相手の"個性"は___.....)

 

両者がステージ中央へと辿り着いた。

 

 

 

 

 

『ツルを伸ばして相手を拘束っ!長い髪には御用心!!

ヒーロー科

 

塩崎 茨!!

 

 

(バーサス)

 

 

予選を共に2位と確実にっ堅実に勝ち進んできた絶対防御の、こ の 男!!

同じくヒーロー科A組

 

礎 遷形!!』

 

 

 

 

(__...難敵だからな…)

 

目線の先には対戦相手、塩崎が同じく此方を見ている。

 

(目に迷いが見えない…2が確定。物間の策を断ったんだったか……性格が良いんだろうな…)

 

礎はいくつかある手段の内から選び準備の為軽く足運びをする……

 

………

 

共に麗日を心配しているが今、彼女は治療中だ。ならば彼の闘いを見て備える、次に闘うかも知れない飯田は尚更だ。

 

「礎くんの対決…!防御力では当然、彼に分があるが、彼女の個性は攻防一体だ。緑谷くんはどう思う?」

 

「間近で見たから分かるけど__...礎くんはガチガチのカウンター型だ…なのに堅い防御の反面、攻撃した時が弱点になるから塩崎さんの広い間合いをどう攻略するか。だね」

 

戦闘訓練時に見た者と近くで肌身に感じた者が意見を交える、そして…

 

 

『ッ2試合連続男女の闘いだっ!!お次はどんな激戦を見せてくれるのか!READY(レディー)〜〜___.....!』

 

 

 

〔…………………〕

 

 

 

「ッSTART(スタート)!!!」

 

「ッ!!」

 

(ッ!?迅ッ__...)

 

開始の号令とほぼ同時に塩崎は髪を地面に根差しステージが割れ、瞬く間に蔓が礎へと発された。

 

 

『塩崎っ速攻ー!!スピード勝負ッッ!!』

 

 

(...いなッ!!)_ッズッッッ……!

 

[重力]放出

 

大きく右脚を踏み出し 向かってくる蔓へと放ったそれは、ステージを砕き対象を動きを鈍らせる。

 

しかし彼女の攻撃は重力の抵抗すらも跳ね除け、止まる事なく地面を這い続ける。

 

(コンクリを壊す威力とアレ自体が軽いな…これじゃ牽制くらいか…)

 

踏み出した脚を手前まで戻し、再び力を込める。すると__

 

ッメキッッ…

 

蔓が先程までの勢いを取り戻すも、彼の足を支点に歪な三角の塊が捲れ上がった。

 

 

 

「……!」

 

A組の席から離れた場所で観ている轟が反応する、これは─…

 

 

_ッッガンッ!!

 

蹴り抜いた岩塊が蔓の上を通って飛んで来る。咄嗟に塩崎は合わせた掌に力を込め、根を下ろした己が武器を操る。

 

「(亀裂を利用して__...)…〜〜っ!」_ドッ……!

 

隆起する地面から緑の壁が立ち、濁った音が響く。飛んで来た岩と彼女の間を埋めたのは上鳴戦で見せた物と同様のものだ。

 

だが防御は成功したが視界を覆ってしまった。

 

(っ彼はー…ッ!!)

 

地下を通る蔓から振動が伝わり、相手が此方へ来る事を察した。間合いを詰める足音がハッキリと分かる。ならば___.....

 

(地面から出すより直接っっ!!)

 

地面へ伸ばしていた蔓を解いて、前方へ扇状にツタを張り巡らせる。

 

(壁の向こう側へも蔓を伸ばしました…!これで彼の動きは分かります!!)

 

_グシ……ッ…

 

此方へ走る相手の足が壁を挟んで右に向かうと感知し、瞬時に髪を分離し直接 捉えんと蔓を伸ばした。

 

「(これで……!)っ!??」

 

確かに感じた重みが霧のように消え、最速で飛ばした武器は空を切る……。

 

「なっ……ッ(彼は…何処に……?)」

 

伸ばした髪が風に吹かれて揺れる…視線の先の下、そこには___くり抜かれたステージの破片。

 

「ッしまっ!_揺れる自身の髪、その左側の隙間から青い服から覗く腕が迫る。

 

 

 

(予選の時…地雷が埋められている土の柔らかさを髪で感知して避けていた。頭髪は優れた触覚器官だからな…)

 

こちらへ体勢を立て直す塩崎だが、彼の速さに追いつけない。

 

(〜〜っ間にa_「ッフッッ……!!」

 

礎は一気に間合いを詰め、塩崎の体を持ち上げ、力任せに場外目掛けて放り投げた。その時、微妙に左右の力に強弱をつけて。

 

(髪を操る性質上、死角が出来やすい。だから塩崎は蔓を地に植えてから勝負していた。俺の狙いは最初から()()()()()()()()だ…)

 

 

 

『速えぇ!!はっやッッ!!礎、一気に近付きっ塩崎をぶん投げたぁあ!!

チョォー!力技ァ!!』

 

『投げる時…回転 加えたな……』

 

 

 

「(……〜〜っ!回ってるっ!!どっちが上!?どっちが___...!ーッ!!落ちるっ!!)〜〜ッッ…!」

 

実況の声が耳へ入らない。さっきまで見ていた景色、その天から地へ流れ繰り返される。髪も上手く動かせない。相澤の言う通り、投げる際に回転を加えられたからだ。

 

中央から殆ど動いていない故に、高さはあれど距離は無い。重力に従い、直ぐに失速して落下する。彼女は瞼に力を入れて迫る痛みに備えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……………???)

 

が、痛みが来る以前に感じていた遠心力や落下する感覚が雲のように消えてしまった。恐る恐る眼を開くと……自分は浮いていた。

 

「………ぇ…?」

 

小さな声で疑問が口に出ると、徐々に感覚が戻り、誰かの両腕の中にゆっくりと仰向けに降ろされた。

 

「…………ぁ」

 

その人は…自分の対戦相手だ。そして穏やかな程に着地された。そこはステージと場外を分ける線の外側__...観客席側だった。

 

 

 

『〜〜ッッ!!塩崎さん場外!!二回戦突破!礎くん!!!』

 

ミッドナイトが力強く鞭を振り、判定を下す。それにより響めきや感心の声や拍手が混じった歓声が上がる。

 

(ハァ〜ッ青いわーーっ!)

 

主審であるにも拘らず、礎の行いに頬を赤く染めてしまう。これは彼女の性だ。

 

 

 

〔何というか…爆豪とは正反対って感じの勝ち方だなぁ…〕

 

〔なぁ…凄い緻密な考えを彼らに感じたんだけど、それって俺だけか?〕

 

〔それ、私も感じたけどさぁ…勝った彼の"個性"!災害救助にも適任だと思う!あんな風に優しく降ろすのって結構大変なんだよね…!〕

 

〔彼の"個性"ってエネルギーに関わる系のかなぁ…汎用性が高いよ〕

 

口々にプロヒーローが感想を喋る中、礎は塩崎に軽く頭を下げ ステージを後にした。

 

 

 

『最後…落下するのを防いだ風に見えるが実際は蔓で減速されるのを警戒していた…もし塩崎が動けば追撃をしていたかもな。無駄が無いというか…かなりの策を張ってたな…』

 

相澤も口を開いた。

 

『オォ…!良い解説だぜ…イレイザー…!!二回戦も後僅かっ!!まだまだ盛り上がっていこうぜ!エブリワンッッ!!』

 

プレゼント・マイクの実況にも熱が再び入る。

 

(…礎…アイツにしては焦りが見えた……慌てて詰め込み過ぎたような嫌いが見えたが…無理もないか……)

 

そう思いポケットへ手を入れ、ステージの外へと歩く 礎の背中を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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