轟チームの電撃と氷結のコンボを躱し、緑谷チームは後方へ逃げる。
「礎くんが妨害してるッ!今のうちに少しでも距離稼ごうっ!」
緑谷の指示が飛ぶ。が、足のホバーソールが峰田の個性で半壊した為、競技序盤のような速度は出せずにいた。
その上___ッバチッ!!
「ッ!バックパックがイかれた!!?」
「ベイビー!!!改善の余地アリ」
その上、上鳴の電撃により緑谷が背負うバックパックが故障し、飛ぶことが出来なくなってしまった。
_DRRRRR!!!
礎の攻撃から逃れたのだろう、飯田のエンジン音が此方へ迫る。片脚で器用にバランスを取りながら跳ぶ麗日だったが、飯田のスピードでは振り切れない。
「速すぎるよ!逃げきれへん!」
「牽制する!」
常闇の
「八百万!」_ッガンッッ
「…ッッ!!」
攻撃の方向 そこを的確に把握し、八百万は装甲を作り出し黒影の攻撃を防ぐ。
「"創造"…!厄介過ぎる!」
「いや…それ以上に上鳴だ。あの程度の装甲、
「……!」
八百万の個性に皺を寄せる緑谷だったが、常闇の言葉に言葉を呑んだ。
ーーーーーー「そう…!とにかく防御に徹して欲しい!攻撃はしなくていいんだ!…その…」
「フッ…面白い…」
競技開始までもう少しと迫った時、緑谷は常闇を誘い出し、騎馬について話し合いをしていた。
「俺の個性は闇が深い程 攻撃力が増すが、どう猛になり制御が難しい。逆に日光下では制御こそ可能だが…攻撃力は中の下と言った所なんだ…
知らなかった上で、
「そうか!上鳴くんの電光…!」
「奴の放電が続く限り、攻めでは相性最悪だ。黒影が及び腰になってる…」
「ッグスッ!暴力反対!」
黒影にも感情はあるようで、半泣きになっている。さらに___ッガクンッ……
『ンァアアーーッ!緑谷チームもう後がなぁーいッ!!』
競技ステージの範囲ギリギリまで、追い立てられた_パキパキッパキッッ!!
轟の氷壁が周りを囲み、他のチームとの分断を図った。これで一段と追い立てられる緑谷チーム。
「攻撃力低下…それ向こうには知られてないよね?」
「恐らくな。この欠点はUSJで口田に話したのみ、そして奴は無口だ」
「…………………なら…」
緑谷は再び目に闘志を光らせ、轟の左側を力強く見る。
「…………常闇くんの個性を知られてないなら…牽制にはなる…!大丈夫…!何としても1000万は持ち続ける」
決意を新たに迫る轟チームを見てそう言った。
一方_BOM!!!
…爆豪が怒りを押し殺す 掌中の爆破を起こして直ぐ__「行けェッッ!!」
騎手の叫びとも取れる指示を受け、切島 先頭の騎馬は物間チーム目掛けて走る。
「ッッッ死ねぇ!!!」_BOOM!!
首に掛けたハチマキでは無く、確実に顔面狙いの攻撃。…だったが、物間に往なされ空振りに終わる。だが爆豪は体制を立て直し、向き直r_BOOM!!
「っ!!」
「…へぇっ…すごい…!良い個性だねぇ!」_パシィッ…
またも、爆音。
それも顔へ向けて。これは爆豪の狙い通りだが…なんと爆破をくらったのは爆豪 本人だった。
「俺の…!!」
「ッ!?爆豪おめーもタダ被りか!?」
今、物間は掌を相手に向け爆破させた。爆豪と同じ…切島は驚愕と言わんばかりの顔で物間を見る。
「〜ッッ!くそがッ!!!」
爆破の煽りを受け ぐらついた頭部を振り、再び怒りを露わに物間へ攻撃を掛ける。が
「っ!?」
「…ホンットに良い個性だよ。僕の方が良いけどさ…!」
驚くことに次は切島 よろしく体を硬化させ、爆豪の攻撃を防いだ。彼の上半身の左側、攻撃を受けた側は岩肌のような硬質化している。
「んなぁーー!俺の!?どーなってんだ?!」
「違ぇ こいつ…コピーしやがった」
「正解っ!まあ..馬鹿でも分かるよね?」
爆豪の推測を物間は頭を指差し、上から目線で見下ろすようにそう言った。
ーー物間寧人。
個性"コピー"触れた相手の個性を5分間使い放題。ただし同時に複数の個性は使えないーー
物間は嫌味の笑みを浮かべ、後ろへ退き爆豪と距離をとる_GLOOPP!!
突如、両チームを白く高粘度な液体が壁のように阻んだ。
「おわっ!」
「凡戸っ仕掛けてきたな」
物間が左を向く、そこには体の大きなB組の生徒の1人が、穴の空いた頭から白い液体を垂らしながらこちらへ のしのしと向って来る。
「固まった!ッ動けねえ!」
「ちょい待ち!私の"個性"で溶かすから!」
「早く!早く!0Pだぞ!」
切島の右足に白い粘着物が付着し、動きを奪われる。だが芦戸が片足から酸を出し、脱出を試みる。
「あっ、怒らないでね?煽ってたのは君だろ?ホラ…宣誓でなんて言ったっけ…恥ずかしいやつ…えー……まあいいや!お疲れ!」
「ッッッ!!」
散々罵られた挙句、Pを持ち逃げされた爆豪はギリギリと歯を食いしばっていた。
〈俺が一位になる〉
彼が宣誓した言葉……
「一位だ……ただの一位じゃねぇ俺が取るのは完膚なきまでの一位だ…!!」
決意新たに去る物間を睨む爆豪。
………
…
『残り時間約1分!轟、フィールドをサシ仕様にし、そしてあっちゅーー間に1000万奪取!!!
……かと思ってたよ!五分前までは!緑谷なんとこの狭い空間を5分間逃げ切っている!!』
「っへえ…!アレなら誰にも邪魔され無い。轟って人もかなりやるなぁ…」
「物間!このままキープし続けるぞ!!」
物間は爆豪や同クラスのチームを振り切り、競技場の端 円形に出来た氷壁に感心していた。
「うん。このPなら通過は_「久方ぶりになるな物間」_ッッビッ!!
「ッ?!クソッ!一つ取られ_ッッゴウッ!!
聞き覚えのない声が左から聞こえた。それを囮にしたのだろう、首に掛けたハチマキを取られた。その数秒後に突然の強風。
「改めて……久しぶりだ物間」
「(っこの声!!)…礎っ!……くん!!」
両腕で風を防いで、頭を上げる。そこには複数のハチマキを首に掛けた礎がいた。
「…あぁ、俺だよ。障子、良い動きしてた」
「お安い御用だ」
障子の腕が地面伝いに、もう片方は背中から縮んでいく、それを見て物間はハッとする。
「腕で口を……!」
「あぁ、騎馬戦って性質上視線が上に行くだろう?止まった騎馬の下を通したんだ。広いステージを常に走り続ける奴らなんてそういないからな」
距離を取るためだろう、騎馬が向こうへ走る。背中の上で器用に向きを変えつつ、僅かに目尻を下げる礎。
「そんなことより…お前んとこの前騎馬の人、吐いた空気を固めるって個性だろう?」
「ッ?!」
此方へ手を向け、風圧を送るA組の男。その発言にB組、
「何でそれを…!」
「予選の地雷原の時、地面に足が着いていなかった。空気云々は予備動作を見てわかった事だ。観察してたのは自分達だけだとでも?」
「っ?!(あの時、前に居なかったのはそういう___...!)」
記憶を辿る。思えば彼は前方にいなかった、自分達が着いた時は轟と爆豪が先頭で争っていた。それに__...
「こうやって攻撃してても壁を作らないのは、肺活量とかも関係してるからか?それとも周りの空気が超過した動きをしていたら出来ないのか?」
そう言って 十分に距離を開け、腕を下ろした。すると
『なーーーーー!?何が起きた!!?速っ飯田、速ッーー!逆転!!轟が1000万Pゲット!!そして緑谷、急転直下の0Pーー!!』
プレゼントマイクの驚きを含んだ実況が入る。どうやら氷壁の向う側で動きがあったようだ。
「っ!風が止まった!?どうする、ポイントを取り返すか?」
「いや、まだ大丈夫だ。このポイントなら_「待てえええ!待てって!」
今度は後ろから聞き覚えのある大声。
(爆豪たち……!)
振り向く物間。が
「勝手すなああぁぁ爆豪ーーーー!!」
目の前に迫る爆豪、爆破を利用して飛び 自分の方にまで飛んで来た。
「円場!!
「っしゃあ!!」
円場は空気を吸って思いっきり吐き、空中に壁を作った。
「(円場の個性は…大方予想通り。だが…)爆豪を狙いを変えたのは、相性の良さからだろう?序盤の仮想
礎は爆豪の空襲を受ける物間チームを確認してから目を離した。
「よしっ!今の内n_ッバリンッ!!
「なっ!?_ッベリッ!
爆豪は使った見えない壁を難なく壊して、物間のハチマキを奪った。
「〜ッ!また1本___....!!」
『おぉぉっと!!残り1分を切った今!ここで爆豪チーム!1本奪取で5位に!!この終盤で順位が変わり行く!!若気の至りだっ!!!』
巨大スクリーンに映し出された順位が入れ替わる。
(物間…喧嘩を売るなら俺にしときゃ良かった。
「くそ…!」
「大丈夫だ4位だ!Pは取られたのは仕方ないっこのまま逃げ切るぞ!」
「ああ…!この一本さえ死守すれば…!」
先程までの余裕のあった顔は無くなり、物間は冷や汗を垂らし ハチマキを守るように手で握りしめる。
一方、爆豪は瀬呂のテープに体を巻かれて騎馬へ戻る。
「ったく、飛ぶ時は言えって!」
「でもこれで5位!このまま行けば通過確実…「まだだ!!!」
「はぁ!!?」
爆豪の怒声とも取れる大声。その言葉に騎馬一同は驚きの顔を浮かべる。
「俺が取るのは完膚なきまでの1位なんだよ!取るのは!!」
「物間…B組の作戦は確かに合理的で良い。ただ一つ惜しむらくは___......」
「さっきの俺単騎じゃ踏ん張りが効かねぇ!行け!!!俺らのPも取り返して!1000万へ行く!!」
爆豪の言葉に再び火をつけられた騎馬は、頷き走り出す。
「しょうゆ顔!テープ!!」
「瀬呂なっと!」
瀬呂に指示を出し、肘からテープを飛ばす。が___
「ッ!?外れだ」
...物間に当たることなく外れるも、爆豪は絶え間なく指示を出す。
「黒目!進行方向に弱め溶解液!」
「あ・し・ど・み・な!」
爆豪は右脚を上げ、芦戸は掌から溶解液を発射させる。
熱闘で観客席が盛り上がる中、オールマイトは冷静に彼を見ていた。
(爆豪少年!君は
爆豪が掌を爆破させ一息に爆速をつけ、テープを支点に溶解液の滑りで加速する。
...そうでない者のその差_..!)
相澤も確かな眼差しで、対立する爆豪と物間を見ている。
「__...その執念の差を考慮してなかったことだな」
円場の空壁も爆豪 渾身の爆破で虚しく破壊されてしまい、物間の持ちポイントである自チームのハチマキを取り戻した。
『爆豪!!容赦なしーー!!やるなら徹底!彼はアレだな、完璧主義だな!!さぁさぁ時間も もう僅か!!』
「"ッワァァァアーーー!!"」
再びの逆転劇に観客が盛り上がりを見せる中。
「次!!デクと轟んとこだ!!」
爆豪は厳しい顔で狙いの方へ振り向いた。
ー…残り時間20秒ー
迫る緑谷から守るために、反射とも言える動きで左手から炎熱を出し防御の構えを取る。
一方、緑谷は体育祭までの二週間をUSJの時の脳無に与えたあの時の一撃。あの時の感覚を何度も反芻していた。
(〈初めて…人に使おうとしました…!〉大丈夫!どのみち
轟の左腕の炎を かき消し、腕自体も払い退ける。
(左……俺は何を……!)
腕を弾かれた時、咄嗟に使った左の能力に初めて気づいた轟。刹那の間に溢れる思考。
疑問、後悔、恐怖。脳内を駆け巡る文字は巡り、肉体を僅かな間だけ停止させた。
(痛むけど…!折れてない!!裏返しにしてるけど___1000万は最後に取って巻いた一番上のそれ_「ッだあぁぁ!!」
その一瞬の隙を見逃さずに腕を伸ばす緑谷、そこに騎馬の速度も加わる。そして狙い通り一番上のハチマキ、自身らのポイントを取り返した___....
「とった!とったぁぁあ!!」
『残り17秒!こちらも怒りの奪還!!』
プレゼントマイクの声に熱が溢れる__が
「待ってくださいっ!そのハチマキ…違いませんか!?」
「っ!?」
発目の声、それに反応してハチマキを見みる。
"70"
「〜〜ッやられた…!!」
『ン〜緑谷!ポイント奪還ならず!!』
「轟くん!しっかりしたまえ!危なかったぞ!」
「万が一に備えてハチマキの位置はかえてますわ!甘いですわ、緑谷さん!」
歓喜は焦燥に変わり、緑谷を支配する。八百万のすり替え、自分たちが背を向けた時に。
(このPじゃ…圏外…!!)
『そろそろ時間だっカウントダウンいくぜ!!エビバディセイヘイ!!
10!
9___.....』
「ッ常闇くん!!」
「上鳴!!」
幾度も相対した黒闇と電光が再び交わる。
その時_BOOM!!!
「っクソデクァ!!!」
氷壁を吹き飛ばし、爆豪が現れる。が緑谷の額には肝心のハチマキが無い。ならば_「っ半分野郎!!!」_BOOOM!!
爆豪が方向を変え飛ぶ。
緑谷は腕を伸ばす。
轟は_『TIME UP!』
タイムアップを告げられ、各々が動きを止めた。
「終わったか…障子、お疲れさん」
「あぁ、首尾良くいったな」
『ツーわけで早速上位5チーム発表していくぜぇ!!』
『1位、轟チーム!』
「…………くそっ……」
首位を飾ったのにも関わらず、轟は下に降りて俯く。
『2位、礎チーム!』
「ッし…!」
「むっ…!」
礎と障子、顔を合わせて共に喜んでいた。が
『3位!鉄て…え!?アレェ?オイ!!心操チーム!?いつの間に逆転してたんだよオイオイ!!』
「ご苦労様」
心操。先日、A組に宣戦布告した普通科の男子は尾白、青山、それからB組の生徒に背を向け笑みを浮かべた。
(…マジでいつの間に……?)
礎は眉をひそめ、彼を見るが順位の発表は変わらず続く。
『4位!爆豪チーム!』
「4位か〜ヒヤヒヤしたー!」
「あの状況から良く巻き返したよ。結果オーライだ」
芦戸と瀬呂は胸を撫で下ろし、ようやく息をつく事が出来た。
「ンなもんで満足するかよアイツが…」
そう言って切島が背後を指すと___
「だああぁぁぁぁ!!」
爆豪は後悔のあまり、地面に向かって叫んでいた。
……発表していく中、騎馬から降りて直ぐ緑谷は項垂れるように下を向いていた。
発目がバックパックを取り外した事に気付かないほどに。
「デクくん」
「あの…ゴメン…本…と……に…?」
麗日の呼び掛けでようやく踏ん切りが着いたのか、申し訳なさそうに皆に頭を下げようとする。が背後の常闇の方を促す二人を見て疑問に思った。
「お前の初撃から轟は明らかな動揺を見せた。」
「……ぁ…!」
常闇の言葉と並行して黒影が出てきた。
「1000万を取るのが本意だったろうが…そう上手くはいかないな」
「………ぁあ…っ!」
「それでも一本。
警戒の薄くなっていた頭の方を頂いておいた。緑谷、お前が追い込み生み出した轟の隙だ」
黒影が口に咥えたハチマキには"655"とあった。
『5位!緑谷チーム!!以上5組が最終種目へ…進出だぁぁあーー!!!』
「ぉあぁあぁぁーーーーーー!!」
嬉しさのあまり、目から大量の涙が間欠泉の如く溢れ出た。
………
…
「…………………」
「(攻撃には使わねぇ。そう決めたハズなのに気圧された…!)いけねぇ…これじゃ…親父の思う通りじゃねえか…!」
轟は自分の左手を見つめ、拳を強く握りしめていた。
『一時間程、昼休憩挟んでから午後の部だぜ!じゃあな!!…オイ イレイザーヘッド、飯行こうぜ…『寝る』
『ヒュー!』
B組、鉄哲チーム……
「…何が起きたんだ?いつの間にか0Pになって終わったぞ…」
「あの小人の方のP、汚らわしい取り方をしてしまった罰でしょうか…」
鉄哲、塩崎を含む全員が顔を真っ暗にして落ち込み、まだ状況が理解できてない様子でいた。
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