「調子乗ってんじゃねぇぞ!クソが!!」
(っ!?かっちゃん!?!)
突如、浮かぶ緑谷の騎馬の横。そこから爆豪が一人で空中に飛び、緑谷に殴りかかろうとする。
「っ、常闇くん!!」
1秒も無い時間の中で、緑谷の指示がとび常闇の黒影が反応した。
「
常闇が黒影を使って緑谷を庇う。爆破による突風と爆炎で変形したが、直ぐに元に戻った。
「あぁ!?んだこれ…」
直撃した黒影に眉をひそめる爆豪は、落下していく。するとそこへセロハンテープが爆豪の体を巻き、地上へと引き寄せる。
「飛ぶときゃ言えっての!!」
「クソがッ!!」
「ッ無視か!!」
「(飛ぶのは"あり"か…)障子」
「わかってる。合図はしてくれよ」
障子は体躯と索敵能力だけではない、状況把握にも秀でているようだ。半ば食い気味に返事をしてくれた。
「(紫髪は…)心操には注意を怠らないでくれ。こっからは混戦、乱戦だからな」
「あぁっ…!」
ついでに心操に関する指示を確認する。
(ヒーロー科A.B 2組が全員通ってる中、アイツはゴールして来た。サポート科ならまだわかるが、彼は普通科。これは少々異常だ…距離取るのが得策…)
一方観客席。
〔派手な動きで見てるこっちも楽しいやなー!〕
〔
第二種目。先程とは違い目の前で繰り広げられる、熱戦に観客全てが盛り上がっていた。
プレゼントマイクの実況も白熱する。
『やはり狙われまくる一位と猛追を仕掛けるA組の面々!!共に実力者揃い!
現在の保持
……
…
〔あれ…?なんか〕
『あら!!?ちょっと待てよコレ…!A組 緑谷以外パッとしてねー…ってアレ?爆豪がッ…』
巨大なスクリーンには"爆豪チーム 0P"と表示されていた___....
「単純なんだよっA組」
少し前。
爆豪のPを奪い取った人物はB組の物間だ。取られる間際、爆豪は手を背後へ回したが間に合わなかった。当然__...
「んだテメェ!返せゴラ殺すぞ!!」
「やられた!」
爆豪は怒りで瞳孔が収縮し、背後に向かって叫ぶ。
「ミッドナイトが"第一種目"って言った時点で、いきなり数を減らすとは考えにくいとは思わない?」
「ああ!?」
爆豪はドスの効いた声を放つも、物間は悠長に話を続ける。
「おおよその目安を40位内と仮定し、その順位以下にならないように予選を走ってさ。後方からライバルになる者たちの“個性”や性格を観察させてもらった。その場限りの優位に執着したって仕方ないだろう?」
「クラスぐるみか!」
「まあ皆が皆って訳じゃないけど、それでも良い案だろ?
"人参ぶら下げた"馬みたいに仮初の頂点を狙うよりさ」_ピクッ…
物間の毒舌に、爆豪は動きをピタリと止めた。
「あっ あとついでに君、有名人だよね?"ヘドロ事件"の被害者!
今度参考に聞かせてよ!年に一度敵に襲われる気持ちってヤツをさ…」
物間は爆豪に背中を向ける。が
「切島…予定変更だ…ッッ!クソねずみとデクの前に…ッ!コイツら全員殺そう!!」
物間の言葉は、唯でさえ低い爆豪の怒りの沸点に熱した鉄を流し込んだようだ。彼は怒りオーラを放ち、物間に向けて剥き出しの歯を見せる。
「あんま煽るな 物間!同じ土俵だぞそれ!」
「ん?ああ、そうだねヒーローらしくないし…よくある展開だよね。恨みを買われたヒーローが、
オレンジの髪、ポニーテールの髪型をしているB組の委員長である拳藤。彼女に注意されるも、物間は更なる嫌味を混ぜ軽く流した。
「おい爆豪!落ち着け!冷静になんねぇと俺らのP取り返せねぇぞ!!」_BOM!!
「〜〜ッしっ!進めぇ切島ぁ…ッ!俺は今、すこぶる冷静だ…!!」
切島は爆豪を落ち着かせるようと声を掛ける。が、怒りを押し殺すためなのか掌の中で爆破を起こした。
「マジで頼むぜ…」
爆音が耳に残る中、焦げた匂いと煙が漂っていた。
「(なるほど…長期戦覚悟の奴は俺だけじゃ無いわけね…)この分じゃ、5位まで入るには1000ポイント辺りがボーダーラインか…」
周囲を警戒しつつも、実況の言葉でスクリーンを見る礎。自分は今7位、上3位までは保持Pは1000を超えている事から予想を立てる。
「Pを持ってない奴らも緑谷の所に集中するぞ。どうする?!」
「hurm…………ッ!!障子 あの辺りへ。轟と緑谷、両方が見えるとこだ」
「了解っ」
続々と緑谷へ引き寄せられるチーム群。それを見て、方向を指して指示を出した。
そして1000万P所有者、1位の緑谷は___......
『さあ!残り時間半分切ったぞ!!』
一呼吸して、
「そう上手くは…いかないか」
轟も同じく、緑谷を見つめる。
「そろそろ奪るぞ………ッ」
『B組隆盛の中!!果たして1000万Pは誰に頭を垂れるのか!?』
…………
……
…
一方、峰田チーム。
「……ねえ峰田ちゃん、いつハチマキ取られたの?」
「わっかんねーよォ!けどこれでもう失うもんは何もねえ!あの2組のポイント全力で掠め取るぞ!いくぜ砂藤!!」
「お、おう!(何やってんだか…)」
心が折れかけた峰田は、なんとか挫けずに緑谷の1000万Pを狙う。
場所は変わり、此処では緊張する空気が漂っていた。まさしく修羅場…緑谷と轟はお互い鋭い目つきで見合い、相対していた。
「もう少々終盤で来ると踏んでいたが…随分買われたな緑谷」
「時間はもう半分!足を止めずに!しかけてくるのは__...」_DRRRRR………!
緑谷の言葉を遮るエンジン音。轟チームの前騎馬、飯田の個性だ。騎手の指示により唸りを上げる。
「八百万 ガードと
「ええ!」
「上鳴は…「いいよわかってる!」
八百万は腕から細長い棒状の物を作り出し、上鳴は皆まで言うなとばかりに声を張る。
「___....一組だけじゃない!」
「行くぞ礎っ」
「いつでもどうぞッ」
礎と轟を含む7チームが同時に仕掛ける。
「(何だ?あの布は__...ッ!)済まんっっ礎!防御だっっ!!」
「え?あ゛ッ?!!」
何かに気づいた障子が支えていた礎の足首を掴み、彼の体ごと自分の前に出した。礎 本人の世界が逆転する___その時、「無差別放電!130万ボルト!!」_BZZZZZ!!!!
「「「「〜〜〜ッ!!!」」」」
「上…鳴…!!」
上鳴が電撃を放ち、周辺の騎馬を行動不能にした。轟は八百万が作った帯電シートで身を包み己を守る。
「かみ゛なり゛かッッ!!」
[電力]吸収
逆さまになった礎は腕を広げ、攻撃が障子まで届かないよう防御する。
緑谷チームは、またも常闇の黒影がガードし麗日のアイテムで後ろへと飛んで行く。
「残りは6分…!後には引かねぇ」
放電が止み轟は八百万製の武器を突き立て、地面を擦る。
「ッ!なんか来るぞ!!障子っ一時停止!!」
「っむ……!!」
土煙を上げつつブレーキをかけた。その時_ッキィィィィッッッ!
『上鳴の放電と轟の氷結のコンボが炸裂ーー!!!ッッん?!!でぇも…ッ!』
『電撃で動きを止め、
「(いくつか取っておくか…)飯田っ止まった奴らを!」
「あぁ!!」
飯田が抜きん出たスピードで走る。他二人の騎馬の足はローラーシューズを履いてるので、脚は速い。
「あっ!?俺のハチマキを!くっそぉぉ!!」
騎馬の脚が凍ったB組 鱗のポイントを奪い、まだ走る。
「やったか?!轟くん!次は___ッゴゥッッ!!!!
「ッグッ!(風!?)誰が___...」
同じく、B組 拳藤のポイントを奪おうと手を伸ばすが突風により阻まれた。轟の視線の先___逆さまの礎がいた。
ーーーーーー飯田が走る先から氷が張っていく。それを眼で捉えた瞬間、障子の両足を掴んだ。
(…ッ八百万か!)
広範囲に拡がる氷が障子の足元で止まる中、他のチームの足は絶えず凍っていく。ーーーーーー
飯田のスピードも虚しく、拳藤の個性で防がれてしまった。
「(此処で来るとはな……ッ)くそっ」
一方で礎はようやく、本来の体制を立て直した。
「…いきなり 済まなかったな、礎」
「いいけどさ…もうちょっと優しくしてくれ。死んだかと思った___よッッ」_ッゴゥッッ!!!!
「ぬぉぉ……!礎くんかっ…!!これは…不味い…!ぞ…!!」
さっきよりも明らかに高出力の風。4人が一塊りになった事で飛ばされはしないが、後ろへ下がって行く。
(逆さまになったのは僥倖だった。3人中2人がローラーなんざ履いてたら、踏ん張りが効かんだろう)
事実、轟のチームは着実に下がって行く。
「(このまま押し出そうか…)この競技は場外に出るとOUTだったな…」
「ッ!?」
『チーム礎!!!轟のコンボを見事に防ぎ、反撃ーー!!まさしく絶対防御!アイツまじで怪我したことねーんじゃねぇの?!!』
『轟の策が裏目に出たな、スピードを補助する装置が首を絞めてる。アレじゃ反撃は出来ても防がれる上に、肝心のハチマキは取れない』
『ナイス!解説!!』
実況と解説の通り八百万が作ったシューズでは止まれない。
「(八百万がいるとはいえ、攻防の割合は7:3ってとこか…皮肉だな…)轟、最良の選択ってのは時に剥き出しの弱点と同じになるんだ」
(っ野郎ッ…………!「っ轟くん!!このままでは緑谷くんに逃げられるぞ!」
「(〜〜ッ!今は…)わかった。そっちへ行こうッ」
踵を返して緑谷の元へ行く轟たち、それを見て礎は風を止めた。
「(…緑谷ンとこに行ったか…)さて…これで取り放題だ…」
「くっ……ヤバい……!」
左の方にいた拳藤を見る礎、それに反応し障子も方向を変える。
「(手が大きくなる"個性"か…騎手に向いてる…しかし他3人の個性が分からん以上、無闇に近づいたらヤバいな…)拳藤って人」
「ッ何?!」
「'障子 合図で複製器官を一時解除、あと耳 塞いで。それから…キャッチよろしく'
'」
「..?わかった」'
なるべく小声で喋った、彼の複製した耳は驚異的な聴力を誇る。自分の声に反応した拳藤を見る。
「アンタって、手がデカくなる個性か?似たような奴がニュージャージーにいたよ」
「っそうだけどっ?!だったら何?見逃してくれんの?!!」
こちらを警戒し構える彼女へ両手を向け、肩幅まで開く。
「いや…悪く思うなって意味 '今だ!'」_ズッ!
障子の複製器官が無くなる、と同時に礎は拍手をs_ッッパッンッ!!
「ッグッ!??ッ耳がっ!」
「拳藤?!どうしたの??!」
突如、耳に届いた鳴動に思わず個性を解き耳を押さえる拳藤。音はしたが到底、耳に蓋をする程ではなかったので驚く騎馬。
「(脳無ン時に思いついた音響技…出来立てで指向性が付けにくいのが難点だが…)デカい手じゃ小さい耳をカバーしきれない…」_ッビッ!!
「ッあッ!クッソー!!あたしらのハチマキを!!」
拳藤が耳を抑えた瞬間、同時に自重を消して飛んだ。空中で前に回転し、腕を伸ばして持ちポイント全てを奪い取った。
「礎っ!」
障子が腕を伸ばすように複製し礎を掴んで、背中に戻す。
「鼓膜は破れてないだろうから、耳鳴りもすぐ止むよ。悪く思わな」
「礎!不味い!防御を!」
「ん!ッッと…!」
拳藤に喋っていると、耳郎のイヤホンと蛙水の舌が攻撃を仕掛けるのが見えた。が、ギリギリで腕を伸ばして防ぐ。
「あー!っ惜しい!」
「ゲロ……!」
「中距離攻撃やられると厄介か…仕方ない。離れるか、障子」
「わかった。しかし凄い音だったが…大丈夫か?」
「…………………」
「礎?」
話しかけたのに反応が無い。
「ん?!あぁ済まんっ障子。俺も耳鳴りで何言ってんのか分からんかった」
「……無茶な事を…」
障子のマスク越しの口の動きに反応し、ようやく事情を察する礎。B組 鱗の125Pを残し、陸にできた凍原を後にした。
『礎チーム!轟の氷を利用し一気に現在1040ポイント!!4位の座を奪い取ったぁーー!!個性の汎用性マジパネェーー!!』
『拳藤の個性を上手く抑え、空中からの奇襲。経験と環境、それに確認したルールを上手く使っているな…』
……礎チーム 現在1040P………4位。
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