礎 遷形のヒーローアカデミア   作:Owen Reece

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第28話 騎馬戦 Part2

「調子乗ってんじゃねぇぞ!クソが!!」

 

(っ!?かっちゃん!?!)

 

突如、浮かぶ緑谷の騎馬の横。そこから爆豪が一人で空中に飛び、緑谷に殴りかかろうとする。

 

「っ、常闇くん!!」

 

1秒も無い時間の中で、緑谷の指示がとび常闇の黒影が反応した。 

 

黒影(ダークシャドウ)!」_BOOOOM!!!

 

常闇が黒影を使って緑谷を庇う。爆破による突風と爆炎で変形したが、直ぐに元に戻った。

 

「あぁ!?んだこれ…」

 

直撃した黒影に眉をひそめる爆豪は、落下していく。するとそこへセロハンテープが爆豪の体を巻き、地上へと引き寄せる。

 

「飛ぶときゃ言えっての!!」

「クソがッ!!」

「ッ無視か!!」

 

 

 

「(飛ぶのは"あり"か…)障子」

「わかってる。合図はしてくれよ」

 

障子は体躯と索敵能力だけではない、状況把握にも秀でているようだ。半ば食い気味に返事をしてくれた。

 

「(紫髪は…)心操には注意を怠らないでくれ。こっからは混戦、乱戦だからな」

「あぁっ…!」

 

ついでに心操に関する指示を確認する。

 

(ヒーロー科A.B 2組が全員通ってる中、アイツはゴールして来た。サポート科ならまだわかるが、彼は普通科。これは少々異常だ…距離取るのが得策…)

 

 

 

一方観客席。

 

〔派手な動きで見てるこっちも楽しいやなー!〕

(ヴィラン)と戦ったってだけでこうも差が出るかねぇ!〕

 

第二種目。先程とは違い目の前で繰り広げられる、熱戦に観客全てが盛り上がっていた。

 

プレゼントマイクの実況も白熱する。

 

 

 

『やはり狙われまくる一位と猛追を仕掛けるA組の面々!!共に実力者揃い!

現在の保持P(ポイント)はどうなっているか…7分経過した現在のランクを見てみよう!』

……

〔あれ…?なんか〕

 

『あら!!?ちょっと待てよコレ…!A組 緑谷以外パッとしてねー…ってアレ?爆豪がッ…』

 

 

巨大なスクリーンには"爆豪チーム 0P"と表示されていた___....

 

 

 

「単純なんだよっA組」

 

少し前。

爆豪のPを奪い取った人物はB組の物間だ。取られる間際、爆豪は手を背後へ回したが間に合わなかった。当然__...

 

「んだテメェ!返せゴラ殺すぞ!!」

「やられた!」

 

爆豪は怒りで瞳孔が収縮し、背後に向かって叫ぶ。

 

「ミッドナイトが"第一種目"って言った時点で、いきなり数を減らすとは考えにくいとは思わない?」

 

「ああ!?」

 

爆豪はドスの効いた声を放つも、物間は悠長に話を続ける。

 

「おおよその目安を40位内と仮定し、その順位以下にならないように予選を走ってさ。後方からライバルになる者たちの“個性”や性格を観察させてもらった。その場限りの優位に執着したって仕方ないだろう?」

 

「クラスぐるみか!」

 

「まあ皆が皆って訳じゃないけど、それでも良い案だろ?

"人参ぶら下げた"馬みたいに仮初の頂点を狙うよりさ」_ピクッ…

 

物間の毒舌に、爆豪は動きをピタリと止めた。

 

「あっ あとついでに君、有名人だよね?"ヘドロ事件"の被害者!

今度参考に聞かせてよ!年に一度敵に襲われる気持ちってヤツをさ…」

 

物間は爆豪に背中を向ける。が

 

「切島…予定変更だ…ッッ!クソねずみとデクの前に…ッ!コイツら全員殺そう!!」

 

物間の言葉は、唯でさえ低い爆豪の怒りの沸点に熱した鉄を流し込んだようだ。彼は怒りオーラを放ち、物間に向けて剥き出しの歯を見せる。

 

 

 

「あんま煽るな 物間!同じ土俵だぞそれ!」

 

「ん?ああ、そうだねヒーローらしくないし…よくある展開だよね。恨みを買われたヒーローが、()に仕返しされるって話…」

 

オレンジの髪、ポニーテールの髪型をしているB組の委員長である拳藤。彼女に注意されるも、物間は更なる嫌味を混ぜ軽く流した。

 

 

「おい爆豪!落ち着け!冷静になんねぇと俺らのP取り返せねぇぞ!!」_BOM!!

 

「〜〜ッしっ!進めぇ切島ぁ…ッ!俺は今、すこぶる冷静だ…!!」

 

切島は爆豪を落ち着かせるようと声を掛ける。が、怒りを押し殺すためなのか掌の中で爆破を起こした。

 

「マジで頼むぜ…」

 

爆音が耳に残る中、焦げた匂いと煙が漂っていた。

 

 

 

 

 

「(なるほど…長期戦覚悟の奴は俺だけじゃ無いわけね…)この分じゃ、5位まで入るには1000ポイント辺りがボーダーラインか…」

 

周囲を警戒しつつも、実況の言葉でスクリーンを見る礎。自分は今7位、上3位までは保持Pは1000を超えている事から予想を立てる。

 

「Pを持ってない奴らも緑谷の所に集中するぞ。どうする?!」

 

「hurm…………ッ!!障子 あの辺りへ。轟と緑谷、両方が見えるとこだ」

「了解っ」

 

続々と緑谷へ引き寄せられるチーム群。それを見て、方向を指して指示を出した。

 

 

 

 

 

 

そして1000万P所有者、1位の緑谷は___......

 

 

 

『さあ!残り時間半分切ったぞ!!』

 

 

 

一呼吸して、()に視線を向ける…

 

「そう上手くは…いかないか」

 

轟も同じく、緑谷を見つめる。

 

「そろそろ奪るぞ………ッ」

 

 

 

 

 

 

『B組隆盛の中!!果たして1000万Pは誰に頭を垂れるのか!?』

 

…………

……

 

一方、峰田チーム。

 

「……ねえ峰田ちゃん、いつハチマキ取られたの?」

 

「わっかんねーよォ!けどこれでもう失うもんは何もねえ!あの2組のポイント全力で掠め取るぞ!いくぜ砂藤!!」

 

「お、おう!(何やってんだか…)」

 

心が折れかけた峰田は、なんとか挫けずに緑谷の1000万Pを狙う。

 

 

 

 

場所は変わり、此処では緊張する空気が漂っていた。まさしく修羅場…緑谷と轟はお互い鋭い目つきで見合い、相対していた。

 

「もう少々終盤で来ると踏んでいたが…随分買われたな緑谷」

 

「時間はもう半分!足を止めずに!しかけてくるのは__...」_DRRRRR………!

 

 

緑谷の言葉を遮るエンジン音。轟チームの前騎馬、飯田の個性だ。騎手の指示により唸りを上げる。

 

「八百万 ガードと()()を準備」

「ええ!」

 

「上鳴は…「いいよわかってる!」

 

八百万は腕から細長い棒状の物を作り出し、上鳴は皆まで言うなとばかりに声を張る。

 

 

「___....一組だけじゃない!」

 

「行くぞ礎っ」

「いつでもどうぞッ」

 

礎と轟を含む7チームが同時に仕掛ける。

 

「(何だ?あの布は__...ッ!)済まんっっ礎!防御だっっ!!」

「え?あ゛ッ?!!」

 

何かに気づいた障子が支えていた礎の足首を掴み、彼の体ごと自分の前に出した。礎 本人の世界が逆転する___その時、「無差別放電!130万ボルト!!」_BZZZZZ!!!!

 

「「「「〜〜〜ッ!!!」」」」

「上…鳴…!!」

 

上鳴が電撃を放ち、周辺の騎馬を行動不能にした。轟は八百万が作った帯電シートで身を包み己を守る。

 

 

「かみ゛なり゛かッッ!!」

[電力]吸収

逆さまになった礎は腕を広げ、攻撃が障子まで届かないよう防御する。

 

 

緑谷チームは、またも常闇の黒影がガードし麗日のアイテムで後ろへと飛んで行く。

 

「残りは6分…!後には引かねぇ」

 

放電が止み轟は八百万製の武器を突き立て、地面を擦る。

 

「ッ!なんか来るぞ!!障子っ一時停止!!」

「っむ……!!」

 

土煙を上げつつブレーキをかけた。その時_ッキィィィィッッッ!

 

 

 

『上鳴の放電と轟の氷結のコンボが炸裂ーー!!!ッッん?!!でぇも…ッ!』

 

『電撃で動きを止め、()()に凍らせる。シンプルだが強烈…アイツ以外にはな……』

 

 

 

「(いくつか取っておくか…)飯田っ止まった奴らを!」

「あぁ!!」

 

飯田が抜きん出たスピードで走る。他二人の騎馬の足はローラーシューズを履いてるので、脚は速い。

 

「あっ!?俺のハチマキを!くっそぉぉ!!」

 

騎馬の脚が凍ったB組 鱗のポイントを奪い、まだ走る。

 

「やったか?!轟くん!次は___ッゴゥッッ!!!!

 

「ッグッ!(風!?)誰が___...」

 

同じく、B組 拳藤のポイントを奪おうと手を伸ばすが突風により阻まれた。轟の視線の先___逆さまの礎がいた。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー飯田が走る先から氷が張っていく。それを眼で捉えた瞬間、障子の両足を掴んだ。

 

(…ッ八百万か!)

 

広範囲に拡がる氷が障子の足元で止まる中、他のチームの足は絶えず凍っていく。ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

飯田のスピードも虚しく、拳藤の個性で防がれてしまった。

 

「(此処で来るとはな……ッ)くそっ」

 

 

一方で礎はようやく、本来の体制を立て直した。

 

「…いきなり 済まなかったな、礎」

 

「いいけどさ…もうちょっと優しくしてくれ。死んだかと思った___よッッ」_ッゴゥッッ!!!!

 

「ぬぉぉ……!礎くんかっ…!!これは…不味い…!ぞ…!!」

 

さっきよりも明らかに高出力の風。4人が一塊りになった事で飛ばされはしないが、後ろへ下がって行く。

 

(逆さまになったのは僥倖だった。3人中2人がローラーなんざ履いてたら、踏ん張りが効かんだろう)

 

事実、轟のチームは着実に下がって行く。

 

「(このまま押し出そうか…)この競技は場外に出るとOUTだったな…」

 

「ッ!?」

 

 

 

『チーム礎!!!轟のコンボを見事に防ぎ、反撃ーー!!まさしく絶対防御!アイツまじで怪我したことねーんじゃねぇの?!!』

 

『轟の策が裏目に出たな、スピードを補助する装置が首を絞めてる。アレじゃ反撃は出来ても防がれる上に、肝心のハチマキは取れない』

『ナイス!解説!!』

 

 

 

実況と解説の通り八百万が作ったシューズでは止まれない。

 

「(八百万がいるとはいえ、攻防の割合は7:3ってとこか…皮肉だな…)轟、最良の選択ってのは時に剥き出しの弱点と同じになるんだ」

 

(っ野郎ッ…………!「っ轟くん!!このままでは緑谷くんに逃げられるぞ!」

 

「(〜〜ッ!今は…)わかった。そっちへ行こうッ」

 

 

踵を返して緑谷の元へ行く轟たち、それを見て礎は風を止めた。

 

「(…緑谷ンとこに行ったか…)さて…これで取り放題だ…」

 

「くっ……ヤバい……!」

 

左の方にいた拳藤を見る礎、それに反応し障子も方向を変える。

 

「(手が大きくなる"個性"か…騎手に向いてる…しかし他3人の個性が分からん以上、無闇に近づいたらヤバいな…)拳藤って人」

 

「ッ何?!」

 

「'障子 合図で複製器官を一時解除、あと耳 塞いで。それから…キャッチよろしく'

 

'」

 

「..?わかった」'

 

なるべく小声で喋った、彼の複製した耳は驚異的な聴力を誇る。自分の声に反応した拳藤を見る。

 

「アンタって、手がデカくなる個性か?似たような奴がニュージャージーにいたよ」

 

「っそうだけどっ?!だったら何?見逃してくれんの?!!」

 

こちらを警戒し構える彼女へ両手を向け、肩幅まで開く。

 

「いや…悪く思うなって意味 '今だ!'」_ズッ!

 

障子の複製器官が無くなる、と同時に礎は拍手をs_ッッパッンッ!!

 

「ッグッ!??ッ耳がっ!」

「拳藤?!どうしたの??!」

 

突如、耳に届いた鳴動に思わず個性を解き耳を押さえる拳藤。音はしたが到底、耳に蓋をする程ではなかったので驚く騎馬。

 

「(脳無ン時に思いついた音響技…出来立てで指向性が付けにくいのが難点だが…)デカい手じゃ小さい耳をカバーしきれない…」_ッビッ!!

 

「ッあッ!クッソー!!あたしらのハチマキを!!」

 

拳藤が耳を抑えた瞬間、同時に自重を消して飛んだ。空中で前に回転し、腕を伸ばして持ちポイント全てを奪い取った。

 

「礎っ!」

 

障子が腕を伸ばすように複製し礎を掴んで、背中に戻す。

 

「鼓膜は破れてないだろうから、耳鳴りもすぐ止むよ。悪く思わな」

「礎!不味い!防御を!」

 

「ん!ッッと…!」

 

拳藤に喋っていると、耳郎のイヤホンと蛙水の舌が攻撃を仕掛けるのが見えた。が、ギリギリで腕を伸ばして防ぐ。

 

「あー!っ惜しい!」

「ゲロ……!」

 

「中距離攻撃やられると厄介か…仕方ない。離れるか、障子」

 

「わかった。しかし凄い音だったが…大丈夫か?」

 

「…………………」

「礎?」

 

話しかけたのに反応が無い。

 

「ん?!あぁ済まんっ障子。俺も耳鳴りで何言ってんのか分からんかった」

 

「……無茶な事を…」

 

障子のマスク越しの口の動きに反応し、ようやく事情を察する礎。B組 鱗の125Pを残し、陸にできた凍原を後にした。

 

 

 

『礎チーム!轟の氷を利用し一気に現在1040ポイント!!4位の座を奪い取ったぁーー!!個性の汎用性マジパネェーー!!』

 

『拳藤の個性を上手く抑え、空中からの奇襲。経験と環境、それに確認したルールを上手く使っているな…』

 

 

 

……礎チーム 現在1040P………4位。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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