礎 遷形のヒーローアカデミア   作:Owen Reece

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第26話 第2回戦の幕開け

数分前。

 

緑谷が重い仮想(ヴィラン)の装甲を抱え、やっとのことで第三関門入口に着いた時のことだ。

 

(〜〜ッッ遠いっ!)

 

他の生徒達が右往左往と地雷を避ける中、一番遠くに見えるのが、轟、爆豪の二人。この二人はゴールゲート目前で競い合っている、此処からでは当然追い抜けるはずがない。

 

そんな中、地雷を踏まないように進んだが中には不注意、或いは誤って地雷を踏んだのだろう。所々で煙が上がる。

 

「このままだと追い越すのは無理だ。落ち着け 落ち着け…!_ッボゥンッッ!!ッぅわっ!!」

 

生徒の一人が地雷を踏み爆風によって吹っ飛ぶ姿を両の目が捉える。

 

"爆発の威力"

 

これが緑谷を冷静にさせ、ブツブツと考えが口から溢れた。

 

「地雷…踏んで信管が起動するタイプだ体が少し飛ぶ威力。なら速度を殺して避けて行くのがベター……!落下先がわからないから中距離の跳躍可能な人はできない。つまりは先頭は避ける地雷が他より多い……

 

地雷…

 

地面…

 

そうか…!入口付近は警戒意識の高さのお陰で地雷は沢山残ってっっるッ!!」_ザクッッ

 

仮想敵から奪った装甲。これを地面に突き立て、必死に地雷を掘り起こす。ここで抜けなければ、1回戦の突破すら怪しくなる。

 

それは避けたい。避けなきゃならない。

 

 

 

 

〈君が来た!ってことを、世の中に知らしめてほしい!!〉

 

オールマイトに背中を押されたのだからっ!

 

 

 

 

「借りるぞ、かっちゃん!」

 

土の中から掘り出し、誤爆に気をつけながらも小さな山のように積み重ねられた地雷に向かって走り___...

 

 

(大___爆速ターボ!!!!)

 

 

__...飛び乗っt_THOOOOOOOOOOOOM!!!!!

 

巨大な爆発音、衝撃 加えて超過した重力が体にのしかかる。

 

 

 

 

『A組、緑谷!爆風で猛追ィィーーーーー…

 

ッつーか!!__......』

 

 

 

 

(勢いが凄っすぎるッ…!頭 打ったっ)

 

プレゼント・マイクの白熱した実況、それを気に入らない程の衝撃。目を風で、耳を爆音で妨害され周囲の状況を捉える事が困難だ。

 

それでも皆の遥か上を飛び越え、あっという間に先頭集団に近づき___2人が、こちらを向いた。

 

爆豪も、轟も驚きの表情を浮かべている。まさかここで自分が登場するとは思ってもいなかったはずだ。

 

勢いはそのまま、2人の頭を飛び越え、

 

 

 

 

『抜いたああああ!!!』

 

 

 

 

背後で地雷が炸裂する中、実況の声がやっと耳へ届く。が、重力加速度に伴いスピードを上げながら地面が近づいてくる。

 

(ってかコレ着地…考えてなかった!)

 

爆風を利用し先頭2人を追い越す事、それ以外の事を一切考えていなかった。この必死さを持ち得たからこそ、追い抜けた。しかしこのままでh_BOOM!!!

 

「デクぁ!!!!!俺の前を、行くんじゃねぇ!!!」

 

背後から爆豪の声と爆音がうねりを上げる。轟に凍らされ左手のみだが器用にバランスを取り、本家 爆速ターボで緑谷に猛追をかける。

 

「(後続に道作っちまうが)…後ろ気にしてる場合じゃねぇ……!」

 

轟は地雷ごと地面を凍らせ、緑谷を追い抜こうとその上を走る。

 

爆豪の叫びに気づき、目だけで背後を見る。自分以上の実力の持つ2人が追いかけてくる。刹那の優越感すら感じられない程の危機感___....

 

 

 

 

 

『元 先頭2人が妨害を止め、緑谷を追う!!共通の敵が現れれば人は争いをやめる!争いはなくならねえがな!!』

 

「何言ってんだ お前」

 

 

 

 

 

(____失速!)

 

考える余裕もなく、速度が落ちる。自然なことだ。あの大爆発はあくまで一回限り、このままでは体勢を崩す。

 

(〜〜ッッこのままだと追い抜かれるっ。着地のタイムロスを考えれば、2人には追いつけない!

 

追い越しは出来ない!

 

ならっ

 

追い越されちゃダメだ!!!)

 

 

装甲についたコードを、慣性で残る勢いと共に振るい上げる。今までは重い装甲を背に乗せていたが、今の勢いがあれば違う。

 

そのままそれを__全力で目の前、地面に降り 落とした。_THOMMOOOM!!

 

轟と爆豪、彼らは緑谷が起こした爆発に包まれるように呑まれた。

 

 

 

 

 

不意にやってきた熱と光が、進む身体を止める、そして爆風と爆煙が、剥き出しの目を覆った。

 

緑谷の予想外の行動に脚を止めてしまう。

 

「ックッソデクッ!?」_boom…

「……緑___.....っ?!」_パキッ

 

妨害を受けた2人が手を、足を見た。

 

爆豪の両手は震え、轟の()()()()()()()足元は薄く氷が張っていた。

 

爆豪が"半分野郎かっ"そう思い 顔を上げた先、そこを悠々と、礎が走り去った___......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(緑谷ッ…!)_ッッザッッン!!!

 

巨大な爆発音。爆煙が尾を引き 飛ぶ緑谷。それを目で捉えた瞬間、礎は先頭2人の直ぐ後ろへ向かって跳んだ。

 

(緑谷の狙い、一位、なら落下先は出口付近、つまりこの2人の周囲、仮想敵の装甲、…ならば……っ)

 

落下先を間違えないよう緑谷を目で追い続ける、僅かに高く飛び過ぎたのか爆風での飛距離は2人を抜きそうになかった_ッズッザザァ!

 

ッボウッンッ!ッボウッンッ!……

 

落下予想地点より僅か手前 礎は片膝を立て辷り、先頭2人に背を向け 止まった。その際いくつかの地雷を踏んだが意に介さない。

 

(緑谷が起こした大爆発。それに気をとられ皆は後ろを向き、轟たちは緑谷に釘付け。今なら可能)

 

案の定 緑谷は自分の真上を通り超えた。爆豪の叫び、爆発音、轟の凍結音、そのコンマ数秒後___緑谷 渾身の再加速。

 

(ここ……だッッ!)_ッグッ………!

[重力]放出

 

両手を地につけ前後へ放ったそれは、対人地雷を起こす鶏の声だ。

 

THOOMMMMMOOOM!!!!!

 

緑谷の大爆発とは明らかに違う、連鎖的な爆破。礎は気がつかなかったが、緑谷が再び起こした爆破とコレは ほぼ同時に起きた。

 

 

(ッし!これ、で…なっ……?)

 

礎は振り向くと驚いた、何故か緑谷は前2人より先にいる。

 

爆破は己以外を吹き飛ばし、妨害の役目を果たした筈だったが予想外にも緑谷を加速させてしまった。

 

 

 

 

(まだやる事が……いた…!)_バキンッッ

 

前で起きた爆煙をゴーグルで防ぎつつ、2人を見つける。轟の作ったであろう氷の足場を踏んだ。

 

(…俺は氷を作る速度も量も___お前には遠く及ばない___....)_パキパキ……

 

轟の両の靴を氷が覆う。

 

(.....が 冷気なら出せるっ)_ッゴゥッ!!

 

爆豪の両手を冷気が包んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(足がッ!?……礎!?)…ッ!!クソッ」

 

走り去る礎を目に入った時 足の氷、その元凶を断定する。一瞬の間、その後に左側(ひだり)を使い氷を溶かす。

 

 

 

(……凍らされれば溶かさざるを得ないだろう)

 

 

 

 

「〜ッンのっクソネズミがっ!!!」_BOOM!!

 

爆豪が また爆発させるも、先程までの速度には程遠い。

 

 

 

 

(……汗と関係があるなら冷せば汗腺が閉じるか、縮む。…後者だったか 汗腺が再び開く前に俺は先にゴールに着ける)

 

礎は走りながらも後ろの2人を見てそう思っていた。

 

「……腹立つよな。()()()()()()()()()

 

 

 

 

………

 

 

 

 

再加速によって2人を抜き、なんとか受け身を取れたことでスピードを殺さずにここまで来れた。

 

そして

 

とうとうゲートを潜り抜ける……

 

 

 

 

『さァさァ序盤の展開から誰が予想出来た!?今1番にスタジアムに還ってきたこの男________....』

 

 

会場に姿を現したその男の名は……

 

 

『____緑谷出久の存在を!!!』

 

 

緊張が解けたのか息が切れ、激しく呼吸する。そんな中でも顔を動かし、当の人物を探す。

 

そして緑谷は涙を目に溜めて堪えながらも、ある人に満面な笑みを送った。

 

 

ある人とは……

 

「よくやったぜ……緑谷少年!!」

 

平和の象徴 オールマイト。

 

姿はガリガリで細くやつれていても目は、その瞳は力強く緑谷と同じく光っている。

 

教師陣席で他の教員達に紛れ、体育祭を見ていた。

 

(…この体育祭は君の思う"人を救けるヒーロー"、露骨にそれと相反する"他人を蹴落として"競う場。

緑谷少年は心が優しすぎて他人に遠慮するところがあるから心配していたが……

 

超・杞憂だったな!!その必要も無かったらしい!ゴメンな!泣き虫は早く治した方がいいけどな!)

 

 

堪えていた涙を出してしまった緑谷は、肘までしか無い体操服の布でなんとか涙を拭う。

 

 

 

 

『二位、礎!三位、轟!!他にもまだまだ遅れてご登場ゥゥ!!イレイザー!お前んところのクラス、首位独占だぜ!!!ヤベェなぁ!おい!!!』

 

「勝手に火ィ付け合ってんだろう」

 

…マイクの実況には無かったが、相澤は確と見ていた。

 

終盤、礎の動き…それは前方2人の虚を完全についていた。緑谷に目を奪われ、背後が疎かになったところを爆発で妨害。

 

その後に氷を利用して、足止め。背後を取ったことのアドバンテージを活かしきった。

 

(…というか礎…お前は……敵からすら学ぶのか……)

 

 

 

 

 

 

 

 

「また…またァ……!!くそっ!!くそがぁぁ!!」

 

息が切れる中、爆豪は忌々しく悔恨の混ざる表情で腕を抑える。

 

 

 

「…………………」

 

轟は冷えた体を個性を使い、温めながらも2人を見据えていた。

 

 

 

「(2位か…あの場面で先に行かれるとは……)緑谷、一位だな」

 

ゴシゴシと目元を擦り、手で涙の跡を消しながら 振り向く。

 

「ッあっ!礎くん!ありがとう、でも…運が良かっただけだよ」

 

「そうか?俺は正直なところ、ちょっと悔しいよ。地雷原とき何したんだ?」

 

「あっ…それは持ってた装甲を___「デクくん…!すごいねぇ!」

 

と話していたら麗日と飯田が揃って こちらへ来た。飯田は何やら残念がっている、おそらく個性柄 走る事には拘っているのだろう。

 

そうして自然と4人で固まったので、しばらくの間、休憩しつつも話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

30分後。

 

集計が終わり ミッドナイトの横にホログラムが投影され、予選を通過した者たちが写し出される。

 

礎は緑谷の後ろに立って見ていた。

 

 

 

1位 緑谷 出久

2位 礎 遷形

3位 轟 焦凍

4位 爆豪 勝己

5位 塩崎 茨

6位 骨抜 柔造

7位 飯田 天哉

8位 常闇 踏影

9位 瀬呂 範太

10位 切島 鋭児郎

11位 鉄哲 徹鐡

12位 尾白 猿夫

13位 泡瀬 洋雪

14位 蛙吹 梅雨

15位 障子 目蔵

16位 砂糖 力動

17位 麗日 お茶子

18位 八百万 百

19位 峰田実

……………………

……………

………

 

 

 

 

 

『残念ながら落ちちゃった人も安心しない!まだ見せ場は用意されてるわ!

そして次の競技から本選……第2種目よ!!』

 

画面が変わり、ドラムロールが鳴り響く。再びスロットマシーンのように横線が下へ流れていく。

 

『私はもう知ってるけど〜〜〜……何かしら!!? 言ってるそばから、

 

コレよ!!!!」

 

『『騎馬戦』』

 

「騎馬戦か…」

 

「個人競技じゃないけどどうやるのかしら?」

 

 

 

『参加者は2~4人のチームを自由に組んで騎馬を作ってもらうわ!

基本は普通の騎馬戦と同じルールだけど、一つ違うのが…先程の結果に従い、各自ポイントが振り当てられること!』

 

スーツ姿のオールマイトが、馬を組んだ3人に担がれている図がモニターに表示される。

 

「入試みたいなポイント稼ぎ方式か、わかりやすいぜ」

 

「つまり組み合わせによって騎馬のポイントが違ってくると!」

 

『あんたら私が喋ってんのにすぐ言うね!!!』

 

前方で聞いていた砂糖と上鳴が声を上げた。彼にお株を取られたからか、苛立ったように鞭を振るうミッドナイト。が、すぐに説明を再び始めた。

 

『ええそうよ!! そして与えられるポイントは下から5ポイントずつ! 5ポイント、10ポイント…と言った具合よ。そして……』

 

ミッドナイトが鞭の持ち手をこちらに向ける。

 

少しだが、微妙に下へズレている。そこにいるのは___.....

 

『1位に与えられるポイントは、1000万!!!!』

 

固まったまま、目を見開き真顔を浮かべている緑谷出久だった。

 

『上位の選手ほど狙われる_____.......

 

下剋上サバイバルよ!!

 

上に行く者には更なる受難を……!雄英高校に在籍する以上何度でも聞かされる___これぞPlus Ultra(プルス ウルトラ)

 

予選通過1位の緑谷出久くん!!

 

持ちP(ポイント)1000万!!』

 

その言葉を聞いた瞬間、皆が獲物を狙う肉食獣が如き眼をした。それを緑谷と__後ろにいた礎だけが気づいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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