『第一種目は障害物競走!!この特設スタジアムの外周を一周してゴールだぜ!!』
『おい……』
『ルールはコースアウトさえしなけりゃ何でもアリの残虐チキンレースだ!! 各所に設置されたカメラロボが興奮をお届けするぜ!』
『ヤレ!足ヲ狙エ!』
『ニンゲンナドブットバセ!』
『俺いらないだろ』
『さあお前らもドンドン盛り上げてやってけよーーー!!!』
巨大な仮想
轟が氷漬けにした仮想敵は体制を崩し、その身を砕きながら倒れた。同じく礎が倒した仮想敵はキャタピラ部分を叩き抜かれ、低くない壁となり道を阻んでいた。
倒れたロボで誰かが下敷きになる姿を前に生徒たちは見てしまった為、恐怖で足が進まないでいた。
「お、おい…これ、さっきの倒れて……下敷きになったヤツ居たぞ?」
「こ、これ死ぬのか…?体育祭なのに死ぬのか…!?」
普通科やB組の生徒が恐る恐ると震えながら声に出す。が、先ほど倒れて壊れたロボの装甲が音を立て揺れる。
「し…」
「?」
突如下から声が聞こえたので、装甲の方に目を移す生徒たち。すると___
「死ぬかあァァァァーーーー!!」
そこには金属が割れる音と同時に大声で叫ぶあのA組の熱血漢、切島の姿があった。
『1ーA!切島が潰されてたあァァァァ!!』
マイクのその声には心配の色が見えず、寧ろ面白かったのかゲラゲラと笑い声が混じる。
「クソ!轟のやつ…ワザと倒れるタイミングで凍らしやがって…俺じゃなかったら死んでたぞ!!」
切島の身体がガチガチの硬い身体になってそう言いだす。
切島鋭児郎 の"個性"硬化。体がガッチガチに硬化することが出来る。最強の矛にも最恐の盾にもなる。
切島が立ち上がろうとする。すると礎が倒したロボ、その装甲が揺れる。
「ん?」
疑問の声と、表情を浮かべ装甲に目を移すと声が聞こえる。
「…A組の連中はぁ…!本当に嫌な奴らばっかだなぁ!!!俺じゃなかったら死んでたぞ!!」
そこに現れたのは厳つい顔をしたB組の生徒だった。
この男、切島と同じことを言っている。
『B組 鉄哲も潰されてたーー!ウケるーー!!』
マイクは切島と鉄哲の二人が似た者同士の為、笑いのツボが入ったのだうろかまたもやゲラゲラと笑いだす。
鉄哲徹鐵"個性"スティール。体が鋼のように硬くなる。最強の矛にも最強の盾にもなれる。
「個性タダ被りかよ!タダでさえ地味なのに!!」
切島は自分の個性と鉄哲の個性が同じタダ被りだと知った途端、嫌気が差したのか立ち上がり再び走り出す。
(先行かれてたまるかよ…ッ)BOOM!
BBBBBBOOOM!!!
炸裂する音を鳴らしながら仮想敵の正面、その間合いの内側から空中を駆け上がる爆豪。
『オォーーーッと1-A 爆豪!!下がダメなら上!クレヴァーー!!!』
「ケッ!」
苛立つ。正面の攻めを避け、爆破の威力を応用して空中からの攻めに入った。が、上から攻めるのは爆豪だけではなかった…
「おめー、正面突破しそうなのに___避けんのね!」
「便乗させてもうぞっ」
「!」
後ろには仮想敵の頭部にテープを貼り付け、登った瀬呂。同じく個性を使い、やって来た常闇。
「着地だ、
「アイヨ!」
常闇がそう言うと、黒影は返事をする。
3人は仮想敵をそれぞれの能力で乗り越え、先へと進む。
彼らだけではない。A組の面々 全員が先を阻む仮想敵たちを倒し、走って行く。
USJ襲撃で耐え抜いた者たちは、一足先に敵との戦闘を積んでいる。
「他の科やB組も決して悪くはない!ただ___...「___立ち止まる時間が短い」
経験がある者とない者の差、それは正にこの事だ。敵との戦闘にて様々な事を感じた者がいる。
(上の世界を感じた者、恐怖を植え付けられた者、対処し凌いだ者…。各々が経験を糧として迷いを打ち消している)
障害物競走 先頭。
独走。ではないにしても先頭を走る轟、自分と被る足音の音源の方を見る。
(……常に一定の距離を空けて走ってやがる…長期戦と見越して体力の温存が狙いか)
足音の主 礎は轟の間合いの外、個性を使わずに避けれる距離を見極め 走っていた。視線を前へと戻す轟。
(おそらく2〜5位あたりを狙いつつ
ある程度 礎の思考を読み、競技に専念する。
(って思ってんだろうな…正直、これの順位云々より第2、第3種目が気になる。他の奴らもダラダラしてるわけが無い、時機に追いつかれる。B組も他の科の連中の力量くらいは把握したい……早くっ来いッ…)
胸中は僅かに高揚しつつも、第二関門へ辿り着く。
『さぁーて!先頭2人!!轟、礎は第二関門に突入ゥゥーー!!奈落の底に落っこちたら即ゲームオーバー!!命がけの綱渡り、その名も……
ザ・フォール!!!』
そこは元が地面だったと疑う程 奈落の大穴が空いている。疎らにある地面を頑丈なロープが繋いであるだけだ。
落下覚悟で突破しろ。そういう事だろう、だが二人にとってそれは全く関係なかった。
ッパキパキッパキッ……!
ッダッッン!!
[運動エネルギー]放出
凍結でロープを橋にし道を作っている、これにいたっては轟の十八番だ。
(使っても問題ねえか…滑って落ちるしな…)
轟は心の中でそう呟く それは正しく、この個性なら妨害にもなる。細長く、頑丈なロープだが、凍らせてしまえば滑ってどうしようもなくなる。
(この距離なら放出だけで行けそうだ。地面が減った、轟を抜くなら今なんだが___....ッん?)
陸地から陸地へ飛び移りつつも、轟の様子を見る。確かに地面や壁を通して氷を生み出す轟の個性なら、此処は闘うには若干不利だ。しかし、大勢の足音が背後から聴こえてきた。
「ッ礎達 思ってたより先に行ってる!」
「いつの間にこんなん作ったん…」
ロープを如何に どのように進むか考えてる芦戸、大穴の規模に驚く麗日。だが___...
「ッゲーロ〜!!……っ大げさな__綱渡りねっケロ」
...蛙吹はカエルだからだろう、ロープを掴んで四つ這いになるもスピードを上げて進んでいく。二人が負けてはいられないと脚を出す。が、その時後ろから奇妙な声が聞こえてくる。
「フフフフフフフフフ来たよ来ましたよアピールチャンス…ッ!!」
「え?」
振り返ればそこにはゴーグルをかけ、足はブーツでサポートアイテムを所狭しと装着している謎の女性であった。
「フフフフFFFFFFF…私のサポートアイテムが逆光を浴びる時!見よ全国のサポート会社!"ザ・ワイヤーアロウ"&"ホバーソール"!!」
どうやらこの人はサポート科らしい、だがこの大会では…
「え、サポート科!?アイテムの持ち込みいいの?!…」
「フフフ…ヒーロー科は普段から実戦的訓練を受けてるでしょう?
喋りつつも僅かに位置を整える、何かを狙っているらしい。
「と言いますかむしろ
ベルトからワイヤーを発射させ、離れた地面にかける。
「…さぁ!見てできるだけデカイ企業!!」
そのまま彼女は崖下向かって飛び込み、肩に掛けてあったボタンをポチっと押す。_ギュィィィィィイ゛ッッッッ!!
機械音と同時にワイヤーが巻き上がり、速度を上げて彼女を運んだ。
「私のどっ可愛い…」
ワイヤーの先、露出した崖へと移動した瞬間に足のブーツからボム!!と柔らかい音が鳴り、壁を滑走する。
「ベイビーを!!!」
掛け声と共に宙へと飛んだ。
「負けてらんないっ!!」
「悪平等だーーっ!」
芦戸は不公平だと言わんばかりにブーイングを発目に向ける。しかしそんな彼女たちの後ろ、ある男は羨ましそうにニヤケていた。
「良いなぁ…」
その男は、ヒーロー科に宣戦布告した普通科の男子であった。
(サポート科ッ!完全に見落としていた…!色々と厄介そうd_BOOM!!!
爆発音。礎は一人しかいないと確信する。
「くそが!!」
(ッ爆豪…!何秒かのインターバルがあっても競技冒頭よりも速くなってやがる、少なからず汗と関係あるな……相性の悪さが益々デカくなってる…)
爆破を繰り返し、空を飛ぶ爆豪を同時に視認する
(調子上げできたな、スロースターターか)
ロープの末端を凍らせ、渡りきった先を急ぐ轟。数秒遅れるも着地して走る礎。
(大凡で、3.2キロ辺りの筈。なら次が最後の障害になる)
………
…
ようやく到着したが、その時には爆豪の背中が見えていた。
「恐らく、兄も見ているのだ…かっこ悪い様は見せられん!!!」_DRRRRR!
飯田は気合いを入れ直し両腕を広げ、ロープ上を進む。が
『カッコ悪ィィーーー!!!』
エンジン音を吹かせ バランスを取りつつ、速度を緩めることなく直進するが…T字ポーズの見た目 遺憾が 悪いせいで台無しだった。
時を同じく、その光景を映像で見ている観客席は……。
「一位と二位、圧倒的じゃん。二人とも素の身体能力も判断力がずば抜けてる」
「あのエンデヴァーの息子より早く進んでいる奴って誰?どんな個性か想像がつかんぞ」
「俺もそれ思ってた!確か今年入試で一位で合格した生徒だろ」
「そりゃあすげぇ!早くも
巨大モニター越しでプロヒーローが礎と轟の二人を興味深々で見ている中、同じくそこには炎で身を包んだ男が腕組みをして立っていた………
真っ先に到着した轟、正面には有刺鉄線で囲われた場所。おそらく最後の障害物。
「っと」
ブレーキをかけ止まった、ここで突っ込んでいくのは無謀だと考えたのだろう。
『そして早くも最終関門!! かくしてその実態は___.....一面地雷原!!! 怒りのアフガンだ!!』
「(地雷原て……)ォオ……フットボールでもやんのかい、この広さは…」
物騒な物言いに思わず言葉がて出てしまう、聞こえるわけがないのに。鉄線で囲まれた場所は、目で測ってもかなりの広さが伺えた。
『地雷の位置はよく見りゃわかる仕様になってんぞ!! 目と脚 酷使しろ!! ちなみに地雷は威力は大したことねえが、音と見た目は派手だから、失禁必至だぜ!!』
『人によるだろ』
前を歩く轟が目に入る、礎の個性ならば距離など ほぼ関係無く地雷原を突破できる。が
「(轟を抜くんなら此処かなんだが___)出来ないんだよな……」
視線を下に移し、必死で地面を見ながらなるべく早く だがゆっくりと進む。並行して頭の中で考える。
(冒頭の0P仮想敵への氷結……アレで相当な高さまでカバーできる事が分かった。轟に限らずだが、個性の最大限が把握できて無いのが痛すぎる…)
今から跳んだとしても、出口までの距離では流石に目に付くだろう。凍らされたとして脱出は可能だとしても、着地した瞬間地雷に___(…地雷か……)
頭に浮かんだ事が引っかかった、方向を変える。進行先を斜め前、左へ向かう。後続の足音、それが着々と向かってくるのがわかる。
鉄線で囲われた地雷原の端へと着いた。鼻から息を吹き___....
礎は地雷を踏んだ。_ッボウンッッ!!
起こった筈の風圧は感じない、吸収したから。代わりにピンクの煙と土埃が視界を覆い、着色ガス特有の臭いが鼻腔を満たした。
(なるほど……)
『ンンッ〜〜?1-A礎…ワザと地雷踏んだっ…け、ど……何やってんだ?!なんかわかるか?イレイザー?』
「さぁな…(何を考えてる……?)」
前を走る轟は、何をやっている?そう言いたげな視線を送るが、悠々としている
「(こりゃ先頭走ってる奴ほど不利な障害だ)エンターテイメントしやがる」
後ろにはもう、他の生徒達がやって来ている。地雷を避けつつ、時に爆破させつつも迫_BOOOOOM!!!!
(爆発音ッ!地雷じゃない___「はっはぁ俺にはっっ関係ねぇー!!」 大きな爆発音とともに、爆豪が隣に並ぶ。
「ッてめぇ!!宣戦布告する相手を…間違えてんじゃねぇよ!!!」
爆豪は抜いたと同時に横目で轟を睨みつける。
『レース終盤ンン!!二人を追い抜き、爆豪が先頭にぃい!!喜べ!マスメディア!! おめぇら好みの展開だあぁああぁ!!!』
(爆豪ッ!地雷と重なっていたかわからな__ッッ??!!)
地雷原の端からゴールへ向かったので若干、距離が長くなった礎は跳んで距離を詰めようかと思っていた。だか、それよりも目に付いた
地雷原を抜けるまで後少し、爆豪は爆発で妨害をする。だが、攻撃は彼だけではなかった。
「んなっ!?」
轟は爆豪の左の腕を掴んで凍らせる。轟が先を行こうとするも爆豪も走り出し、二人は地雷を避けつつも互いに競い合う。がその瞬間___
THOOOOOOOOOOOOM!!!!!!
後ろから大爆発が起きた。先頭3人は流石に振り向いた。
『っっ!!なんだあァーーーー!?突然の大爆発!!これは偶然か故意かあぁーーーー!?!
A組!!
緑谷!
爆風で猛追ィィーーーーー!!!』
お読み頂きありがとうございました。
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