『YHAAAAAA!!!』
「"ワアアァァーーーーー!!!!"」
超満員の観客が叫び、会場を包む。ようやく待ち侘びた瞬間が来た。
お馴染みの良く通る声が上がり、大スクリーンにプレゼント・マイクが映し出される。同時にドームの周りを花火の輝きが包み、爆発音が天蓋を震わせた。
『っ群がれマスメディア!!白熱しろオォーーディエンス……!!今年もおまえらが大好きな高校生たちの青春暴れ馬…雄英体育祭が始まディエビバディアァユウレディ!!??』
「"eeYHHEEEEEE!!!"」
『OK!!これは雄英体育祭!!ヒーローの卵たちが、我こそはとシノギを削る、年に一度の大バトル!!』
係の方が合図を出し同時に列が動き始めた、誘導に従い歩く。雄英高校1年A組は最初の登場だ。
『1年ステージっ!生徒の入場だっ!!!』
盛大なオーケストラの音楽からドラムロールへ変わる。
『お前らアレだろ!この大バトルを観に来たの!!雄英高校に敵の襲撃を受けたにも拘らず、鋼の精神で乗り切った奇跡の新星!!!
ヒーロー科!!
ィ1年!!!
A組だろおぉ!!?』
〔観るならやっぱA組でしょお!!!〕
「"ワアアアァァァァーーーーー!!"」
ッバッッ!ッババッッ!!バッ!バッバババ!!!
歓喜の声とフラッシュが光の弾丸を射つ音を挙げる中、A組がゲートから歩んで行き登場してくる。
「う、うわあぁ…!凄い人気だ……分かってはいたけど、やっぱり緊張が…」
「大勢の人たちが来て、ヒーローになるために何をどう見られるのかも、今後のヒーローとしての役割…なるほど!!ヒーローにとって必要なことだな!」
『続いてっヒーロー科のB組!普通科C・D・E組…!!サポート科F・G・Hも来たぞ!経営科のI・J・K……』
次々と会場に出てくる1年の生徒達は、中央へと整列する。
ピシャアァン!と鞭の空を切る音が会場に響き渡る。
『選手宣誓!!』
全身に極薄タイツ、メガネをかけた女性 18禁ヒーロー"ミッドナイト"だ。
〔おお、今年1年主審はミッドナイトが担当だ!〕
〔校長は?〕
〔例年3年ステージだよ〕
整列した1年生徒の前、指令台にミッドナイトが鞭を片手に立っている。……コスチューム姿で。流石に生徒も少し疑問に思ったようだ。
「ミッドナイト先生…!なんちゅう格好だ…///」
「18禁なのに高校にいて良いものか…」
「良いっ…!!」
常闇が小さく呟くのを、峰田は大分興奮して答える。するとまたピシャアン!とミッドナイトは鞭を地面に叩きつけ、音を鳴らす。
『静かにしなさい!選手代表!!__1ーA組!爆豪勝己!!』
ピクッと少し反応の様子を見せ、爆豪は悠々と教壇に歩み寄る。
「えっ??かっちゃんなの!?」
「あれ、爆豪?入試1位って礎じゃ…」
「(しまった……)色々あって…辞退した」
「なんでまた……」
A組の視線が集まり、苦々しくも答えるが疑問に思われただけだった。爆豪 本人は、スタンドの先についたマイクの前に立つ。
爆豪は皆と観客の目線を浴びてるなか、一呼吸置き 口を開いた。
「せんせー
………
俺が一位になる」
「「「「はああああああああ!?」」」」_BOOOO!!!
生徒から一斉に怒号のブーイング。考え得る最悪の選手宣誓だ。
「礎っ!なんで降りたの?!アンタやりゃ良かったでしょ!?」
「ハハハッ スマン耳郎、だがもうどうしようもない」
「クッソッ敵が更に増えたじゃねぇか!お前も爆豪もなにやってんだっ!?」
瀬呂の叫びと耳郎の嘆き。共に正しいが礎には乾いた笑いと苦笑いしか出てこない。
「何だよこのヘドロ野郎ーーー!!」「フッザけんじゃねーよ!」
「調子乗んなよ!A組オラァ!!」
「どうして君は人を蔑めるようなことを言うんだ!!」
「巻き添え食らう俺たちの気持ちも考えろー!!」
A組の飯田と上鳴の声があるが、それよりも他の科目のブーイングの方が激しい。
暴動にも似た 激しいブーイングの嵐の中、爆豪は親指をクイッと下に向け、「せめて跳ねの良い踏み台になってくれ」
_BOOOOOOOOOOOO!!!!!
爆豪の発言でまたもや激しいブーイングの嵐が巻き起こされたのである。
「あんの野郎…どんっだけっっ自信過剰だよ!!昨日に続いて…!この俺が直々に潰したるわ!!」
前のB組の厳つい男は爆豪を睨みつける。先日の事で、爆豪のことが嫌いなようだ。
………
…
『さーてそれじゃあ、早速第1種目行きましょうっ。
毎年ここで多くの者が
_ッヴン
壇上で表示されるホログラムが現れたと同時に、ドラムロールが鳴る。画面にはカラフルなスロットマシーンのように、横線が下へ流れ落ちる。
『さて、運命の第1種目今年は……コレ!!!』
ミッドナイトの声と共に、ホログラムにハッキリと種目の名前が表示される。
『『障害物競走』』
『A〜K、計11クラスでの総当たりレースよ! コースはこのスタジアムの外周約4km!そして我が校は自由な校風が売り文句!』
軽い舌舐めずり、なにやら彼女は興奮しているようだ。
『 ウフフフ…コースさえ守れば、何をしたって構わないわ。さあさあ、位置につきまくりなさい…』
ミッドナイトの説明が終わると同時に、入場には使われなかった近くにあった門が動く。
いくつかのパズルの一片で造られた門は幾何学的に動き、ゲートへと姿を変えた。先は長い廊下、そこから先が外周コースなのだろう。
大勢の生徒が位置につく。緊張や自信、不安、周りの生徒 皆の表情を見れば分かる。
(個性使用可、妨害あり、広くないが高さはある通路……後ろ 並ぶか)
………
…
門の上についている3つのランプ。
__1つ目が消える。_ゴーグルを降ろし、首を曲げて空を仰ぐ。
__2つ目が消える。_爪先で地を叩く。
__3つ目が――_『スターーーーーーート!!』
ミッドナイトの合図で生徒が一斉に走り出す___......
「さぁーて実況していくぜ!解説アーユーレディ!?」
「無理矢理 呼んだんだろうが」
『早速だがッ序盤の見所は!?』
「"今"だよ」
......___がスタートゲートが狭すぎる。走れない、走り抜けるスペースが見つからない。
「ってスタートゲート狭すぎだろ!!」
「狭っ!」
「邪魔だっ!!」
「どけって!おい!先頭!!」
「っ速く 行けよ!!!」
狭いスタートゲート。ギチギチと音が出るほどに ぎゅうぎゅう詰めになる。
(…ッホラ、やっぱり)__ッダンッ!!
[運動エネルギー]放出→[重力]吸収
ッダッッ!ダッッ!ダッッ!…
左の壁へ跳び 勢いを殺さず壁を走る。
(礎くん!?ってことは
「最初のふるい」_ッパキパキパキッ……
轟が生み出した冷気が地面を這い 瞬時に凍てつかせ、そのまま壁を氷が覆う。
「ッ!!(氷っ…ギリギリかっ)」_ッッダッンッ!!!
瞬間 思い切り壁を蹴り、氷を躱す。身体を伸ばし、腕を張る。_ッッガッッシィッ!
既に氷で覆われた壁の端を両手で掴み、そこを支点に四足獣のように体を丸める。
「(冷たッ)イィッ!」_ッバキンッ!
[運動エネルギー]放出
脚を伸ばして氷を砕き 身を放り出す、一連の動きは虚空を走る豹に似ていた。
轟の個性"半冷半熱"。この個性を知らない競争相手は、これを避けることすら出来ない。
「ってぇー!! なんだ凍った!! 動けん!!」
「寒みー!!」
「んのヤロォォ!!」
軋みを上げる氷に体を侵されている生徒達が叫ぶ。下手に砕こうと踠けば、体ごと傷つけてしまう。
「(これで_バギンッ…)ッ!!」
「……知ってるだろうに」
脚を進めた先から 後ろへ凍っていった地面、それを破る音。勢いをそのままに ゆらりと顔を上げ、そいつは走る。
視線の先、そこに目を見開き、白い歯を見せ 走る礎がいた。
その時____「そう上手く行かせねぇ!半分野郎がァ!!!」
爆豪の怒号と破裂する空気、所狭しと会場に響く。
「甘いわ!轟さん!」
「んーキラメキ☆!!」
「いきなり凍らせるとか男らしくねぇぞ!轟!!」
爆破を行い、跳躍___反射神経と類稀なる運動能力を併せ持つが故に、この回避を可能にした。
「一度受けてるっもう二度目はないぞ!」
凍る前の地を尾で叩き、跳ぶ尾白。戦闘訓練の結果に悔いていたのは、2人だけではなかった。
無論 彼だけではなかった。個性を知るクラスメイトの全員、何人か他のクラスの人間も。妨害を回避してこちらへ走る。礎はそれらから頭ひとつ抜けただけだったのだ。
「___当然か」
(下の氷 吸収してたら人が来る。...混戦になると厄介だ)_BOOOM!!
「待てコラ!!ネズミ野郎がぁ!!」
(ネズミに降格か…)
爆発音と並ぶ大声で叫びを上げる爆豪。気づいたら第1コーナーを曲がり、轟は氷結を止めていた。長期戦を考えての判断だろう。
そこへ空中で俺と並んだ奴がいた__
「轟の裏の裏をかいでやったゼ!!っざまぁ見ろってんだ!!!くらえ オイラの必殺……グレーp_WHAAM!!!
峰田が轟に何かをしようとしていたが、横から無機質な鉄槌が贈られる。
その正体は…入試用の仮想敵だ。偶然、目に付いた峰田を殴り飛ばした。
『ターゲット……タイリョウ…!!』
「入試用の仮想敵!?」
『さあ!いきなり障害物だ!!まずは手始め……
第一関門――
ロボ・インフェルノォ!!』
「入試ン時の0ポイント敵じゃねえか!!!」
「マジか!ヒーロー科あんなんと戦ったの!?」
「多すぎて通れねぇ!!」
ここで障害物の一つ、一般入試用の仮想敵が立ちはだかる。
「一般入試用の仮想敵って奴か…」
「(あぁもう…我慢が…切れる……ッ)ハハッ!」__ッザッッンッ!!
足を止める轟__....土を叩き前へ跳ぶ礎。
頬を上げ、飛び出す。小さい仮想敵は当然、反応して向かってくる。
『敵ハッk_ッバギュィッッ!!
[運動エネルギー]放出
相手の懐から左肩へ跳ぶ最中、頭を引っ掴み己の体ごと回して仮想敵の首を捻り切った。
「おいおい…ッ!アイツ1人で飛び出しちまったぞ!?」
「死ぬ気か?!」
"そんなわけがない"。間近で個性を見た者はそれをよく知っている___....
「せっかくなら もっとすげぇの用意してもらいてぇもんだ___」手を地に這わせる。
自分を中心に冷気が大地を包む。霜柱が土を突き抜け、顔を出した。それ程の膨大な冷気。瞬く間に生み出されたそれを___....
小さい仮想敵を乗り越え前を見上げる、当然___『………標的、確認…!』
0Pの仮想敵。入試の時に巡り逢えずに見送った相手が見下し、機械製の豪腕を己に向けて振り落とし___
「っうわァァ!あのバカァ!!」
「天性のアホだっ!!!」
__...た。潰れる、地を響かせる音、聴こえる筈の耳を覆いたくなる音がしない。呆けた二人が同じく口を開ける周りの生徒、その視線の先には。
……
…
鋼鉄製、高密度、超重量、想像し得る
なぜなら死に急いだアイツが一人、片手で触れもせず腕を
......____「クソ親父が見てるんだから」
目の前に聳え立つ0ポイント仮想敵に、溜め込んだ冷気を叩きつける。受けきれなかった冷気が胴部を這い、体表の全てを包んだ。
変化はすぐに訪れる、鉄が軋み氷が響く音。氷の彫刻が如き姿で0ポイントの仮想敵は静止した。
(機械ってのは小さなパーツで作られ、規則正しく動いて可動する。つまり部分的にでも止めれば、範囲的に止めれる。…だが…)
「…ンだよ…あの
ロボットの股下へ潜り、左 脚部に触れた___....
「「…………………………………」」
「「…………ハッ」」
「「「ッハァアーーーーー!?」」」
驚愕。その二字が飛んで来そうなわかりやすい声、A組以外の生徒が揃ってそんな声を上げた。
制止と静止。僅かに違う2つの言葉が同時に起きた、その反応は当たり前だと言える。
「おっ!おい!!あそこ!!」
「あいつらが止めたぞ!! あの隙間だ! 通れる!」
動きが止まった巨大ロボの足元、そこは宛らトンネルのようにがら空きだ。漁夫の利を狙ってか、或いは視界に入ったからなのか。生徒数人が後に続いて通ろうとする_ッドッッガッッシャッン!!!
「っぶねっ!!んだこれ!!??」
[運動エネルギー]放出
礎の弾いたキャタピラの転輪部分が弾け飛んで来た。つまり____
「「ッッ倒れるぅぁあーー!!!!」」
大声を上げる生徒。"横へ倒れる"それを悟ったのだろう、声を皮切りに大勢の生徒がそこから逃げた。
すると、大音量を合図にしたかのように、氷漬けにされた巨体と同時に大きな音を立て
崩れるように
前と横へ倒れた。
『1−A轟アァーンドッ礎!!攻略と妨害を一度に!! 2人共なんか、あれだな…なんかっ!…ズリィな!!!』
プレゼントマイクの実況が鳴り響く、流石にその時ばかりは皆が同意した。
タッタッタッタ……
互いに距離を置き、また走り出す轟と礎。
「…………………」
「…ハハ…ッ首尾が良い…!テンション上がって来たッ」
お読み頂きありがとうございました。
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