礎 遷形のヒーローアカデミア   作:Owen Reece

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第24話 障害物競走 Part1

『YHAAAAAA!!!』

 

「"ワアアァァーーーーー!!!!"」

 

超満員の観客が叫び、会場を包む。ようやく待ち侘びた瞬間が来た。

 

お馴染みの良く通る声が上がり、大スクリーンにプレゼント・マイクが映し出される。同時にドームの周りを花火の輝きが包み、爆発音が天蓋を震わせた。

 

 

『っ群がれマスメディア!!白熱しろオォーーディエンス……!!今年もおまえらが大好きな高校生たちの青春暴れ馬…雄英体育祭が始まディエビバディアァユウレディ!!??』

 

「"eeYHHEEEEEE!!!"」

 

『OK!!これは雄英体育祭!!ヒーローの卵たちが、我こそはとシノギを削る、年に一度の大バトル!!』

 

 

 

係の方が合図を出し同時に列が動き始めた、誘導に従い歩く。雄英高校1年A組は最初の登場だ。

 

 

 

『1年ステージっ!生徒の入場だっ!!!』

 

盛大なオーケストラの音楽からドラムロールへ変わる。

 

 

『お前らアレだろ!この大バトルを観に来たの!!雄英高校に敵の襲撃を受けたにも拘らず、鋼の精神で乗り切った奇跡の新星!!!

 

ヒーロー科!!

 

ィ1年!!!

 

A組だろおぉ!!?』

 

〔観るならやっぱA組でしょお!!!〕

「"ワアアアァァァァーーーーー!!"」

 

ッバッッ!ッババッッ!!バッ!バッバババ!!!

 

 

歓喜の声とフラッシュが光の弾丸を射つ音を挙げる中、A組がゲートから歩んで行き登場してくる。

 

「う、うわあぁ…!凄い人気だ……分かってはいたけど、やっぱり緊張が…」

 

「大勢の人たちが来て、ヒーローになるために何をどう見られるのかも、今後のヒーローとしての役割…なるほど!!ヒーローにとって必要なことだな!」

 

『続いてっヒーロー科のB組!普通科C・D・E組…!!サポート科F・G・Hも来たぞ!経営科のI・J・K……』

 

次々と会場に出てくる1年の生徒達は、中央へと整列する。

 

 

 

 

 

 

 

 

ピシャアァン!と鞭の空を切る音が会場に響き渡る。

 

 

『選手宣誓!!』

 

 

全身に極薄タイツ、メガネをかけた女性 18禁ヒーロー"ミッドナイト"だ。

 

〔おお、今年1年主審はミッドナイトが担当だ!〕

〔校長は?〕

〔例年3年ステージだよ〕

 

整列した1年生徒の前、指令台にミッドナイトが鞭を片手に立っている。……コスチューム姿で。流石に生徒も少し疑問に思ったようだ。

 

「ミッドナイト先生…!なんちゅう格好だ…///」

「18禁なのに高校にいて良いものか…」

「良いっ…!!」

 

常闇が小さく呟くのを、峰田は大分興奮して答える。するとまたピシャアン!とミッドナイトは鞭を地面に叩きつけ、音を鳴らす。

 

『静かにしなさい!選手代表!!__1ーA組!爆豪勝己!!』

 

ピクッと少し反応の様子を見せ、爆豪は悠々と教壇に歩み寄る。

 

「えっ??かっちゃんなの!?」

「あれ、爆豪?入試1位って礎じゃ…」

 

「(しまった……)色々あって…辞退した」

「なんでまた……」

 

A組の視線が集まり、苦々しくも答えるが疑問に思われただけだった。爆豪 本人は、スタンドの先についたマイクの前に立つ。

 

 

 

爆豪は皆と観客の目線を浴びてるなか、一呼吸置き 口を開いた。

 

 

 

「せんせー

 

 

 

 

………

 

 

 

 

俺が一位になる」

 

「「「「はああああああああ!?」」」」_BOOOO!!!

 

生徒から一斉に怒号のブーイング。考え得る最悪の選手宣誓だ。

 

「礎っ!なんで降りたの?!アンタやりゃ良かったでしょ!?」

「ハハハッ スマン耳郎、だがもうどうしようもない」

 

「クッソッ敵が更に増えたじゃねぇか!お前も爆豪もなにやってんだっ!?」

 

瀬呂の叫びと耳郎の嘆き。共に正しいが礎には乾いた笑いと苦笑いしか出てこない。

 

 

「何だよこのヘドロ野郎ーーー!!」「フッザけんじゃねーよ!」

「調子乗んなよ!A組オラァ!!」

「どうして君は人を蔑めるようなことを言うんだ!!」

「巻き添え食らう俺たちの気持ちも考えろー!!」

 

A組の飯田と上鳴の声があるが、それよりも他の科目のブーイングの方が激しい。

 

暴動にも似た 激しいブーイングの嵐の中、爆豪は親指をクイッと下に向け、「せめて跳ねの良い踏み台になってくれ」

 

_BOOOOOOOOOOOO!!!!!

 

爆豪の発言でまたもや激しいブーイングの嵐が巻き起こされたのである。

 

「あんの野郎…どんっだけっっ自信過剰だよ!!昨日に続いて…!この俺が直々に潰したるわ!!」

 

前のB組の厳つい男は爆豪を睨みつける。先日の事で、爆豪のことが嫌いなようだ。

 

 

………

 

 

『さーてそれじゃあ、早速第1種目行きましょうっ。

毎年ここで多くの者が涙を飲むわ(ティアドリンク)!!』

 

_ッヴン

 

壇上で表示されるホログラムが現れたと同時に、ドラムロールが鳴る。画面にはカラフルなスロットマシーンのように、横線が下へ流れ落ちる。

 

『さて、運命の第1種目今年は……コレ!!!』

 

ミッドナイトの声と共に、ホログラムにハッキリと種目の名前が表示される。 

 

『『障害物競走』』

 

『A〜K、計11クラスでの総当たりレースよ! コースはこのスタジアムの外周約4km!そして我が校は自由な校風が売り文句!』

 

軽い舌舐めずり、なにやら彼女は興奮しているようだ。

 

『 ウフフフ…コースさえ守れば、何をしたって構わないわ。さあさあ、位置につきまくりなさい…』

 

ミッドナイトの説明が終わると同時に、入場には使われなかった近くにあった門が動く。

 

いくつかのパズルの一片で造られた門は幾何学的に動き、ゲートへと姿を変えた。先は長い廊下、そこから先が外周コースなのだろう。

 

大勢の生徒が位置につく。緊張や自信、不安、周りの生徒 皆の表情を見れば分かる。

 

(個性使用可、妨害あり、広くないが高さはある通路……後ろ 並ぶか)

 

 

 

………

 

 

 

 

門の上についている3つのランプ。

 

__1つ目が消える。_ゴーグルを降ろし、首を曲げて空を仰ぐ。

 

__2つ目が消える。_爪先で地を叩く。

 

__3つ目が――_『スターーーーーーート!!』

 

ミッドナイトの合図で生徒が一斉に走り出す___......

 

 

 

 

 

「さぁーて実況していくぜ!解説アーユーレディ!?」

 

「無理矢理 呼んだんだろうが」

 

『早速だがッ序盤の見所は!?』

 

「"今"だよ」

 

 

 

 

......___がスタートゲートが狭すぎる。走れない、走り抜けるスペースが見つからない。

 

「ってスタートゲート狭すぎだろ!!」

 

「狭っ!」

「邪魔だっ!!」

「どけって!おい!先頭!!」

「っ速く 行けよ!!!」

 

狭いスタートゲート。ギチギチと音が出るほどに ぎゅうぎゅう詰めになる。

 

 

 

(…ッホラ、やっぱり)__ッダンッ!!

[運動エネルギー]放出→[重力]吸収

ッダッッ!ダッッ!ダッッ!…

 

左の壁へ跳び 勢いを殺さず壁を走る。

 

 

 

 

(礎くん!?ってことはスタート地点(ここ)が___

 

 

「最初のふるい」_ッパキパキパキッ……

 

轟が生み出した冷気が地面を這い 瞬時に凍てつかせ、そのまま壁を氷が覆う。

 

 

「ッ!!(氷っ…ギリギリかっ)」_ッッダッンッ!!!

 

瞬間 思い切り壁を蹴り、氷を躱す。身体を伸ばし、腕を張る。_ッッガッッシィッ!

 

既に氷で覆われた壁の端を両手で掴み、そこを支点に四足獣のように体を丸める。

 

「(冷たッ)イィッ!」_ッバキンッ!

[運動エネルギー]放出

 

脚を伸ばして氷を砕き 身を放り出す、一連の動きは虚空を走る豹に似ていた。

 

 

 

轟の個性"半冷半熱"。この個性を知らない競争相手は、これを避けることすら出来ない。

 

「ってぇー!! なんだ凍った!! 動けん!!」

「寒みー!!」

「んのヤロォォ!!」

 

軋みを上げる氷に体を侵されている生徒達が叫ぶ。下手に砕こうと踠けば、体ごと傷つけてしまう。

 

「(これで_バギンッ…)ッ!!」

 

 

「……知ってるだろうに」

 

 

脚を進めた先から 後ろへ凍っていった地面、それを破る音。勢いをそのままに ゆらりと顔を上げ、そいつは走る。

 

視線の先、そこに目を見開き、白い歯を見せ 走る礎がいた。

その時____「そう上手く行かせねぇ!半分野郎がァ!!!」

 

爆豪の怒号と破裂する空気、所狭しと会場に響く。

 

「甘いわ!轟さん!」

「んーキラメキ☆!!」

「いきなり凍らせるとか男らしくねぇぞ!轟!!」

 

爆破を行い、跳躍___反射神経と類稀なる運動能力を併せ持つが故に、この回避を可能にした。

 

「一度受けてるっもう二度目はないぞ!」

 

凍る前の地を尾で叩き、跳ぶ尾白。戦闘訓練の結果に悔いていたのは、2人だけではなかった。

 

無論 彼だけではなかった。個性を知るクラスメイトの全員、何人か他のクラスの人間も。妨害を回避してこちらへ走る。礎はそれらから頭ひとつ抜けただけだったのだ。

 

「___当然か」

 

 

 

(下の氷 吸収してたら人が来る。...混戦になると厄介だ)_BOOOM!!

 

「待てコラ!!ネズミ野郎がぁ!!」

 

(ネズミに降格か…)

 

爆発音と並ぶ大声で叫びを上げる爆豪。気づいたら第1コーナーを曲がり、轟は氷結を止めていた。長期戦を考えての判断だろう。

 

そこへ空中で俺と並んだ奴がいた__

「轟の裏の裏をかいでやったゼ!!っざまぁ見ろってんだ!!!くらえ オイラの必殺……グレーp_WHAAM!!!

 

峰田が轟に何かをしようとしていたが、横から無機質な鉄槌が贈られる。

 

 

その正体は…入試用の仮想敵だ。偶然、目に付いた峰田を殴り飛ばした。

 

『ターゲット……タイリョウ…!!』

 

「入試用の仮想敵!?」

 

 

『さあ!いきなり障害物だ!!まずは手始め……

 

第一関門――

 

ロボ・インフェルノォ!!』

 

 

「入試ン時の0ポイント敵じゃねえか!!!」

「マジか!ヒーロー科あんなんと戦ったの!?」

「多すぎて通れねぇ!!」

 

ここで障害物の一つ、一般入試用の仮想敵が立ちはだかる。

 

 

「一般入試用の仮想敵って奴か…」

「(あぁもう…我慢が…切れる……ッ)ハハッ!」__ッザッッンッ!!

 

足を止める轟__....土を叩き前へ跳ぶ礎。

 

頬を上げ、飛び出す。小さい仮想敵は当然、反応して向かってくる。

 

『敵ハッk_ッバギュィッッ!!

[運動エネルギー]放出

 

相手の懐から左肩へ跳ぶ最中、頭を引っ掴み己の体ごと回して仮想敵の首を捻り切った。

 

 

「おいおい…ッ!アイツ1人で飛び出しちまったぞ!?」

「死ぬ気か?!」

 

"そんなわけがない"。間近で個性を見た者はそれをよく知っている___....

 

 

 

「せっかくなら もっとすげぇの用意してもらいてぇもんだ___」手を地に這わせる。

 

自分を中心に冷気が大地を包む。霜柱が土を突き抜け、顔を出した。それ程の膨大な冷気。瞬く間に生み出されたそれを___....

 

 

 

 

小さい仮想敵を乗り越え前を見上げる、当然___『………標的、確認…!』

 

0Pの仮想敵。入試の時に巡り逢えずに見送った相手が見下し、機械製の豪腕を己に向けて振り落とし___

 

「っうわァァ!あのバカァ!!」

「天性のアホだっ!!!」

 

__...た。潰れる、地を響かせる音、聴こえる筈の耳を覆いたくなる音がしない。呆けた二人が同じく口を開ける周りの生徒、その視線の先には。

 

……

 

鋼鉄製、高密度、超重量、想像し得る()()。それが雲散霧消した、そう思えた。

 

なぜなら死に急いだアイツが一人、片手で触れもせず腕を()()()()()()()させていたから。

 

 

 

 

......____「クソ親父が見てるんだから」

 

目の前に聳え立つ0ポイント仮想敵に、溜め込んだ冷気を叩きつける。受けきれなかった冷気が胴部を這い、体表の全てを包んだ。

 

変化はすぐに訪れる、鉄が軋み氷が響く音。氷の彫刻が如き姿で0ポイントの仮想敵は静止した。

 

 

 

 

(機械ってのは小さなパーツで作られ、規則正しく動いて可動する。つまり部分的にでも止めれば、範囲的に止めれる。…だが…)

 

「…ンだよ…あの脳無(バケモン)より弱い……ッ期待して損した」

 

ロボットの股下へ潜り、左 脚部に触れた___....

 

 

 

 

 

 

「「…………………………………」」

 

 

「「…………ハッ」」

「「「ッハァアーーーーー!?」」」

 

驚愕。その二字が飛んで来そうなわかりやすい声、A組以外の生徒が揃ってそんな声を上げた。

 

制止と静止。僅かに違う2つの言葉が同時に起きた、その反応は当たり前だと言える。

 

「おっ!おい!!あそこ!!」

「あいつらが止めたぞ!! あの隙間だ! 通れる!」

 

動きが止まった巨大ロボの足元、そこは宛らトンネルのようにがら空きだ。漁夫の利を狙ってか、或いは視界に入ったからなのか。生徒数人が後に続いて通ろうとする_ッドッッガッッシャッン!!!

 

「っぶねっ!!んだこれ!!??」

 

 

 

 

[運動エネルギー]放出

礎の弾いたキャタピラの転輪部分が弾け飛んで来た。つまり____

 

「「ッッ倒れるぅぁあーー!!!!」」

 

大声を上げる生徒。"横へ倒れる"それを悟ったのだろう、声を皮切りに大勢の生徒がそこから逃げた。

 

すると、大音量を合図にしたかのように、氷漬けにされた巨体と同時に大きな音を立て

 

崩れるように

 

前と横へ倒れた。

 

 

 

『1−A轟アァーンドッ礎!!攻略と妨害を一度に!! 2人共なんか、あれだな…なんかっ!…ズリィな!!!』

 

プレゼントマイクの実況が鳴り響く、流石にその時ばかりは皆が同意した。

 

 

 

 

タッタッタッタ……

 

互いに距離を置き、また走り出す轟と礎。

 

「…………………」

 

「…ハハ…ッ首尾が良い…!テンション上がって来たッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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