22話です。
「「「「「「体育祭…!」」」」」
「ックソ学校っぽいの来たあa_「待て待て!
叫ぶ切島を抑え、上鳴が喋る。
「逆に開催することで雄英の危機管理体制が盤石だと示す…って考えらしい。警備は例年の五倍に強化するそうだ」
「何より
'いや そこは中止しよう?体育の祭りだよ…'
「峰田くん…雄英体育祭見たことないの!?」
「あるに決まってんだろ そういうことじゃなくてよー…」
中止すべきだ。という意見も出たが、事が重大なために開催するという意見が多くを占める事になったんだろう。
「雄英の体育祭は日本のビッグイベントの一つ!…かつてはオリンピックがスポーツの祭典と呼ばれ全国が熱狂した。今は知っての通り規模も人口も縮小し形骸化した……そして、日本に於いて今"かつてのオリンピック"に代わるのが___『雄英体育祭』だ!!」
「
「礎くんも見ていたのか?ならば殊更に頑張らねばな」
飯田の言う通り、俺も画面にかじりついて見ていた。
(懐かしいな…向こうにいた時は夜中に開催してたから、シモンズとピザとラザニア食ってコーラをがぶ飲みしながら見てた)
「当然、全国のトップヒーローも観ますのよ。」
'知ってるってば…'
「スカウト目的でね!」
「資格修得して卒業後は、プロの事務所にサイドキック入りが定石だもんな」
「そっから独立しそびれて万年サイドキックってのも多いんだよね。上鳴あんたそーなりそう、アホだし」
「くっ!!」
耳郎が皮肉を交えつつ喋る。上鳴は落ち込んでいるが、事実だし俺達だってそうなる可能性は0じゃない。
「当然名のあるヒーロー事務所に入った方が経験値も話題性も高くなる、時間は有限。プロに見込まれれば、その場で将来が拓けるわけだ」
「年に一回……計三回だけのチャンス。ヒーローを志すなら絶対に外せない大イベントだ!」
もはや耳に定住したかのようなチャイムが鳴り、昼休みになった。
襲撃を受けてなお、このイベントは皆を未来を照らす日光が如く輝かせた。自然とテンションが上がって、盛り上がっていた。
中でも意外だったのは麗日だ。普段はおっとりしている印象が多いにも関わらず、険しめな顔で「私!頑張る!!」と言っていた。
そんな麗日を含め、4人で食堂へと歩く。すると気になっていたのか緑谷が切り出した。
「麗日さんはなんでヒーローになろうと思ったの?」
すると彼女は、二の足を踏むかのようにおずおずと意外な事を言った。
「お金欲しいからヒーローに!?」
「究極的に言えば」
どうやら疾しいようで、高速で後頭部あたりをカサカサする麗日。
「そりゃ…驚いたな…」
「なんかごめんね 不純で。飯田くんは立派な動機で、礎くんは本場からこっちに来たのに、あ〜〜私恥ずかしい。」
「何故!?生活の為に目標を掲げる事の何が立派じゃないんだ?」
飯田は相変わらず妙な手つきで語る。確かに驚きはしたが、断じて恥ずべき動機ではない。
「うん…でも意外だね…」
「ウチ建設会社やってるんだけど…全っ然仕事なくってスカンピンなの。
こういうのあんま人に言わん方が良いんだけど……」
建設だと重機使って材料やら何やらを運ばないといけないし、何より人を雇う事が必須だ。なら__
「建設……」
「…麗日の
「うん、麗日さんの"個性"なら許可さえ取ればコストかかんないね」
二人も同意見だったようで、誰ともなしに目配せをした。
「でしょ!?昔それ父に言ったんだけどね?でも…"お茶子が夢叶えてくれた方が嬉しい"って言われて…」
「「「………………………」」」
「私は絶対ヒーローになってお金稼いで、父ちゃん母ちゃんに楽させたげるんだ」
………clap!clap!clap!clap!「ブラーボーー!!麗日くん!ブラーボーー!!!」
飯田が拍手と喝采を送る。が、
「…麗日は女性だから正確にはブラーヴァだ。飯田」
「そうだったか!では礎くんも一緒に!!」
「うん」
clap!!clap!!clap!!「ブラーバーー!!麗日くん!ブラーバーー!!!」clap!!cla
p!!clap!!clap!!clap!!
と言いつつも流石に喝采は恥ずかしいので全霊の拍手を送る。
「(憧れだけじゃなくて現実を加味した上で……)あっそういえば礎くんはなんで_「HAー!HA!HA!!HA!!!緑谷少年が__いた!!そして!礎少年 元気!!?」
「「オールマイト?!」」
「ッオ!レは勿論…!元気っです!!」
二人で拍手をしていると目新しいスーツ姿のオールマイトが笑い声と共に、"来た"。突然話しかけられたので、しどろもどろに答える。
(スーツ姿って新鮮ッ俺と違って筋肉が全く隠しきれてねぇ…!)
「緑谷少年…ごはん…一緒に食べよ」
「「ブッ!(ブファ!)」」
「乙女や!!!」
思わず吹き出してしまった…「(って)麗日もか、ハハハ…!」
「(何だろう?)ぜひ…」
そう言って身長差が激しい二人は何処かへ歩いて行った。
…………
……
「デクくん 何だろね」
急遽、三人で昼ご飯を食べることになったので緑谷の事が気になった。
「オールマイトを助けようって、怪我してでも一人飛び出したんだろ?凄いよなぁ…」
「そっか個性もなんか近い感じだし!」{ッガッテン}
「そうか、蛙水くんも超絶パワーが似ていると言っていたな。オールマイトに気に入られてるのかもな、流石だ」
「…………………」
轟は偶然 耳へ届いた言葉を反復する。
「………………………緑谷……」
…………
……
…
「1時間前後…!?」
オールマイトに呼び止められ、仮眠室の椅子で互いに向かい合って座る緑谷。
筋骨隆々な姿から瘦せぎすで、骸骨のような姿に戻る。
「あぁ、私の活動限界時間だ。無茶が続いてね、マッスルフォームはギリギリ二時間は維持できるって感じ」
「そんなことに………ご 「謝らんでいいよ!全く、似たとこあるよな君と私。HAHAHA!」
トゥルーフォームでお茶を入れて重要なことを話すも、笑う平和の象徴。
「礎少年の活躍が無ければ、さらに減っていたかもしれないね」
「僕…あの時、何もできませんでした」
敵襲撃時、脳無と戦闘を思い返す。相澤先生との合わせ技で 脳無を吹き飛ばした礎。自分は何もできずに、ただ見ているだけだった。
「君も敵を前に礎少年を救わんと一撃をいれたじゃないか。それに君だけじゃなく、あそこにいた生徒全員が敵に立ち向かった」
同じ場所にワープさせられた三人揃って、前に出た。誰にでも出来る事ではない。
「それよりも体育祭の話だ。君まだ『ワン・フォー・オール』の調整が出来ないだろ。どうしようか」
「あっでもUSJで脳無に拳を撃った時、反動がなかったんです」
「あ!そういや言ってたね、何が違ったんだろ」
「(前までのとの明らかな違い…)…初めて…
「Ummm…無意識的にブレーキをかける事が出来た、のかな。なんにせよ進展したね、良かった。
…ぶっちゃけ、私が平和の象徴として立っていられる時間って実はそんなに長くない」
「そんな…」
緑谷は落ち込むが活動限界は刻々と迫り、着々と悪意を蓄えている輩の中には気付き始めている者もいる。
「君に力を授けたのは自分を継いで欲しいからだ。体育祭…全国が注目しているビッグイベントで……君が来た!ってことを世の中に知らしめて欲しい!!」
「ッ!!!!!」
…………
……
…
短い針が早く進んだと感じる放課後、つまりは___今。
帰り支度をしているとザワザワとする音が、大勢の話し声だと気がつく。
すぐ後に麗日の唸りが聞こえた。
「うおおお……何ごとだあ!?」
確認の為、俺も首を伸ばして見ると、どうやら他クラスの沢山の生徒が1-A教室前に詰め掛けているようだ。
「出れねーじゃん!何しに来たんだよ」
「敵情視察だろザコ」
(ひでぇ……)
この異常事態に冷や汗を流しながら、抗議の声を上げた峰田の言葉に答えたのは爆豪だ。彼を暴言を息をするような暴言にショックを受けた峰田は震えて彼を指差す。
「あれがニュートラルなの」
同情しつつも、付き合いの長い緑谷は諦めた様子で嘆きのように呟いた。そんなこと耳に入らず、爆豪はシレッと続ける。
「敵の襲撃を耐え抜いた連中だもんな。体育祭の前に見ときてぇんだろ」
敵情視察、と爆豪は言うが興味本位で見に来た者もいるだろう。礎としては警戒されてるならそれも良しだ。
(でも動物園の猿にでもなった気分だ、どうにか早めに道を開けてくれれば尚、良い……)
と思いつつも席を立ち、数歩 歩いて後ろの出口を見る。
(……後ろも おんなじかい…)
「意味ねェからどけッ モブども」
「知らない人の事、とりあえずモブって言うのやめなよ!!」
すかさず飯田が注意するがその声は爆豪にも、他クラスの生徒の耳にも入っていない。当然、挑発する発言にざわつく他クラス。だかそんな険悪な雰囲気の中で一つ、声が上がった。
「どんなもんかと見に来たが、ずいぶん偉そうだなぁ。ヒーロー科に在籍する奴は皆こんななのかい?」
「あぁ!?」
「こういうの見ちゃうとちょっと幻滅するなあ」
その言葉と共に、紫色の髪が印象的な男子が出てきた。全体が見えると、目の濃い隈に集中するだろうが礎は違っていた。
(…色で判断するのはアレだが嫌な髪の色してんなぁ…ってこれじゃ爆豪と同じだ)
彼は首筋を押さえていた手をおもむろに外すと再び口を開いた。
「普通科とか他の科ってヒーロー科落ちたから入ったって奴、けっこういるんだ。知ってた?」
「?」
「体育祭のリザルトによっちゃヒーロー科編入も検討してくれるんだって、その逆もまた然りらしいよ………。
敵情視察?少なくとも
(((この人も 大胆不敵だな!)))
と、今度は対照的に張り裂けんばかりの大声が上がる。
「隣のB組のモンだけどよう!!敵と戦ったっつうから話し聞こうと思ってたんだがよう!!エラく調子付いちゃってんなオイ!!本番で恥ずかしい事んなっぞ!!」
「…………………」
「…ッ無視かってめぇ!!!」
彼は気にせず人垣を右に避けて歩き出した。見かねた切島が呼び止める。
「待てコラどうしてくれんだ、おめーのせいでヘイト集まりまくっちまってんじゃねえか!!」
爆豪君は足を止めると、顔だけ振り向く。
「関係ねえよ……」
「はぁーー!?」
「上に上がりゃ、関係ねえ」
切島含め、他数人が言葉を呑んだ。
「く……!!シンプルで男らしいじゃねぇか…」
「上か……一理ある」
「騙されんなって!無駄に敵増やしただけだぞ!?」
切島はどうやら影響を受けやすいらしく、拳を握りしめ食いしばる。上鳴はそう言うが当日は他クラスどころか、自分以外が敵になる。
「…hurm…」
そう思うと、少し独りになりたいと思い。後ろの扉から教室を出て、帰路に着こうとした。が「ねぇ、入試一位の"礎"って君だろう?」
「ッッ」
聴き慣れない声で名前を呼ばれて後ろを向いた。
「そうだ、けど…」
「僕は物間。体育祭、よろしくね」
眼を細め笑みを浮かべて、手を差し出してきた。応えようと手を前に___(俺の事を知っている……)
___....出そうとしたが彼の隠し切れない強かさを感じとりコンマ数秒、腕を止めた。
「…おッ?礎ーー!よかったら途中まで帰ろうぜ!」
と切島が腕を振って声を上げ、その後ろには瀬呂が見えた。
「……だそうだ。またな、物間」
仕方ない、とばかりに肩を竦めて手を下ろし逆の手でひらひらと振って去っていく。
「もしかしてツレか?悪いことしちまったなぁ…」
「いや…違うよ。助かった」
瀬呂が首を曲げて、向こうへ行った知らない生徒を目でを追う。瀬呂は謝ったが俺は否定する。
「なんだ?もしかして爆豪みたいに絡まれたか!?」
「あいつより...何というか..温い感じだけど___なんか、性格が俺と似てるって感じだ…」
なんだそりゃ?と言う顔を二人にされたので、また歩き始めた。
「しっかし!襲撃されたってのにこんな様子じゃ、一難去ってまた一難って感じだなぁ…先行き不安になるぜ……!」
「ははっ今度は死人が出ないだけマシだろ?」
「確かに!」
切島は気がかりが増える事を嘆くが、俺の言葉で元気を取り戻したようだ。
(というか、そうかヴィランに襲撃されてもう2日も経ったのか…)
ーーーーー約48時間前 某所ーーーーー
人気の無いバー、虚空にワープゲートが開く。手で来るなり床に倒れ込む。
「ってぇ………」
「両腕両脚 撃たれた…完敗だ…」
鮮血が床に流れ、細い数本の溝を伝いつつも当人は痛みを忘れて喋る。
「脳無もやられた、手下共は瞬殺だ…子供も強かった…」
「平和の象徴は健在だった…!……話が違うぞっ__...先生ッ_『違わないよ。ただ見通しが甘かったね』
『うむ…舐めすぎたな
キーボードが置かれていない一台のディスプレイが光り、機械越しの声がする。
『ところで___....ワシと先生の共作 脳無は?』
「吹き飛ばされました…正確な位置座標を把握できなければ、いくらワープとはいえ探せないのです。そのような時間は無かった」
『せっかくオールマイト並のパワーにしたのに…まぁ仕方ないか、残念』
老獪な声の主は己の創造物が無くなった事には、さして気に留めないことが声に乗せられる。
「パワー……そうだ……一人…オールマイト並みの速さを持つ子供がいた…」
『……………へぇ』
別の声の主は興味があるのか、先程までとは違う 声には確かに色が載っていた。
「……あンのッ顔無しマスクのガキにも脳無が2度も吹き飛ばされた……アイツらの邪魔がさえなければ……ッガキッ!…ッガキ共が……!」
『ほぉ……2度もねぇ……悔やんでも仕方ない!今回だって決して無駄じゃあないんだ。精鋭を集めようじゃないか!!』
『自由に動けない我々に変わって___君がシンボルになるんだ死柄木 弔!!!次こそ世に恐怖を知らしめろ!』_プッンッ
画面が暗くなった、向こうから通信を切ったのだろう。
……………
………
『……2度もねぇ…』
『どうした、先生?その生徒に興味が湧いたかね?』
指を順に動かしカタカタと机を叩くと、先生と呼ばれる者は口を開いた。
『いやぁドクター 平和の象徴を相手に出来る
『儂は黒霧か死柄木に詳しい事を聞かない事にはなんとも言えませんなぁ…!まぁ偶然か故意にしても関心は持てますわな』
ドクターと呼ばれる者は、確証ない事には慰みにはならないようだが薄く関心の意を示した。
『…フッ幾分か面白くなってきたねぇ……!』
管で精密機器に繋がれながらも、その男は笑ってこれからの楽しみが増えた事を喜んでいた。
お読みいただきありがとうございました。
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