礎 遷形のヒーローアカデミア   作:Owen Reece

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それでは21話です。




第4章 雄英体育祭
第21話 口火


USJ襲撃のニュースを見て叔母さんは心配してるだろうと思い、家の扉を開けたがメモが一枚。

 

"旅行に行ってくる"

 

とだけ残し姿を消していた。半ば呆れ気味だったが、流石に連絡は入れておこうとメールを送った。

 

諸々の後に、明日に警察の聴取がある事を思い出し早めにベッドの上に横になるとすぐに寝てしまった。

 

 

 

 

 

………………

…………

……

 

 

 

 

 

「そうか…君も主犯の顔は見ていないか…」

 

「すいません…」

 

警察署にて聴取を受けていた。担当してくれているのは塚内 直正(ツカウチ ナオマサ)警部だ。

 

「いや、いいんだ。気に病むことはない、君はよく戦った。」

 

「そう言われると、少し紛れます。それと脳無の個性ですが…」

 

俺は朝起きてすぐに、水に沈んでいた石を拾うように脳無の個性を引っ張り出した。その所感と感覚を伝える。

 

「うん。怪力、ショック吸収、超再生と報告には上がっているけど__君は何か他に感じたかい?」

 

「いえ…私の個性は吸収はできてもそれがどんなエネルギーなのかはわかりません。というか大抵は視えたり聴こえたりするものなので、個性だとしてもあまり意味は無いんですが___....」

 

「うん?」

 

「___....その3つとは違う何かをほんの僅かですが微かに感じました。その...何か..感覚的なことなんですが他よりもずっと...ずっと恐ろしい感じでした」

 

「ふーむ……」

 

自分でもハッキリとしていない事を口にしたので、この反応は当然だと感じる。言うべきかどうかは悩んでいたが、コトが事だ。

 

「………………あまり力になれなくて…」

 

軽く首を横に振り、俯く。

 

「いやいや、どんな些細な事でも手掛かりになり得るんだ。自信を持っていいよ、此方でも脳無は詳しく調べることになっているんだ。助かるよ」

 

「…どうも……」

 

「っさて!聴取はこれくらいでいいよ、ありがとう。今日はもう帰ってもらって構わないよ、お疲れ様」

 

「そうですか。ではお先に失礼します」

 

そう言って席を立って礼をして、扉を開けた。警察署の出口までは、警察官が一人付いてくれて見送りをして下さった。

 

 

 

 

聴取を終えて帰路。

 

(正直、力になれたか不安だ。現状、主犯である死柄木の顔すら把握出来ていない。誰の責任でもないが…)

 

俺が聴取を受けても単独で行動していなかったので、あまり進展はしないだろう。

 

 

ふいに、マスク越しに見た死柄木の目を思い出す。

 

 

恐ろしい。

 

憎悪、狂気、憤怒、大凡想像し得る凶兆を孕んだ赤い目だった。

 

悪意と向き合う事。

ヒーローになる為、覚悟はしていたつもりだったのに、まるで分かっていなかった。

 

 

ッブゥゥーーン...ッブゥゥーーン......

 

「ッん」

 

ちょうどその時に学校から連絡が来た、どうやら明日の朝8時に職員室に来いという内容だった。理由はわからないが、行かない理由も無い。

 

 

 

 

 

………………

…………

……

 

 

 

 

 

連絡通り、職員室に向かう為早くに学校に到着した。少し時間があったので先に教室に向かい、荷物を置く。

 

(流石にこの時間帯だと教室には誰もいないか…)

 

時間が迫りつつあるので職員室へ歩いた。

 

 

(USJの件でやっぱり何か処分があるのか?脳無相手にいきなり やり過ぎた、とか。ベストな事をしたつもりだったんだが…)

 

不安が立ち込める中、職員室に着いてしまった。

 

 

少々息がつまるが意を決し、三度ノックをしてから教室に入る。すると、丁度席を立ったミッドナイト先生と目が合う。

 

「あら、おはよう礎くん。怪我はもう完治したの?」

 

「おはようございます。色々あったんですけど...この通り、治りました。すいません、ご迷惑をかけました」

 

「いいのよ。それで今日は何で職員室に?」

 

「相澤先生はいらっしゃいますか。昨日連絡が来てて」

 

「たぶん、そろそろ来るわよ。そのまま待ってなさい」

 

チラリと時計を見て答える。あの女(ヴィラン)とは違う。先生には色気に上品さがある。

 

(いかん。頬が垂れる……)

 

「礎、もう来てたのか」

 

「おはようございます、相澤先生」

 

急いで顔を見繕い、声の方へ向いた。

 

 

 

「…あっ?」

 

相澤先生はギプスが無くなり、包帯で右腕を吊った姿で現れた。そのすぐ後に爆豪が声を上げ、姿を見せた。

 

(…どういう面子だ?殆ど、というより爆豪とは全く喋ったことがない。)と疑問に思いつつ、俺を僅かに威嚇している爆豪を気にしながら付いて行く。

 

いや、コイツはいつも誰かしら威嚇してたか?緑谷とか……。相澤先生は彼の机と思われる場所に座ると、イスを回して僕らに向き直った。

 

「で、だ。お前らを集めた訳なんだが……」

 

俺と爆豪、両方の顔を同時に見比べるようにする相澤先生。それににつられ、爆豪を見る。が、彼もこちらを見ていたのかバチッと目があった。

 

「ッチ!」

 

と舌打ちと共に目を逸らされた。俺も相澤先生のほうに視線を戻す。彼は呆れた顔をしたが、何も言わずに本題に入った。

 

「もうすぐ雄英体育祭がある。礎も連絡が行っているだろう」

 

「はい」

 

「学年ごとに分かれて競技を行うわけだが、その為には各学年で選手宣誓をする為に代表が必要になる。…どうやって決めるかっつーと、例年通りだと一年は入試一位の生徒が選ばれる」

 

「入試一位…ですか…」

 

「ああ。お前だ」

 

(それで呼ばれたのか)…USJの事を思い出す。

 

「(命令違反したのは事実だ。俺は…)あの…話..自体はありがたい事なんですが、俺はその宣誓は辞退します」

 

「やっぱりな」

 

「ハア!?」

 

意外な程にあっさりと頷いた相澤先生とは対照的に、爆豪はドスの効いた声で俺を睨み付けた。

 

「ざっけんな俺がやる!」

 

「あぁ。だから爆豪、お前を呼んだ」

 

爆豪の宣言に簡単に頷いた先生に、彼が出鼻を挫かれ怯む。

 

相澤先生は俺が断る事が予想していたようで、殆ど表情を変えなかった。これで爆豪も呼んだ理由が理解できた。

 

「爆豪、お前にはまだ話がある。礎」

 

そう言って爆豪を少し下がらせ、俺に声を掛けた。

 

「……断るのはわかってたがなぁ…お前は色々考え過ぎだ。それじゃ人より遅れるぞ」

 

「……はい。今後は気をつけます」

 

爆豪はまだ選手宣誓についての事で残り、俺は先に職員室を出て廊下を歩く。

 

しかし教室まで幾許かも行かないうちに、後ろから床に打ち付けるような少し乱暴な足音が追いついてきた。

 

「おい、ネズミ色」

 

「……」

 

ッイラッ「テメェだ!」

 

呼び止められ後ろを向くと予想通り、爆豪がこちらを睨んで立っていた。

 

「ネズミ色って…俺は礎だ」

 

片眉を微かに上げ、顔を引きつらせ喋る。が、爆豪はさらに眉間に皺を寄せた。

 

「俺をまた庇おうってかッ……!」

 

「は??」

 

何のことなのかわからない。いつ俺が庇った?というか庇う必要性が無い。

 

「てめぇあのモヤホブをぶっ殺そうとした時、俺を庇いやがったろうがっ!」

 

(モヤ?敵の黒霧___あぁ確か切島と一緒に引っ張ったか)

 

「それがどうし_「ッ俺はてめぇに救けなんざ求めちゃいねぇ…!見下してんじゃねぇぞ クソが!」

 

(……そういうアレか。礼なんぞ言う奴じゃなかったな)

 

爆豪は続ける。

 

「てめぇは戦闘訓練ン時もそうだ…!俺を庇うような意見を言いやがって!!恩売ってるつもりか!!

今度は役を譲って優越感に浸るか!っざけてんのかっ!お前は!!!」

 

「(…プライドが高過ぎる……正直なところ面倒d_「俺は恩を売ったつもりもなにも、無い。あん時誰が敵に突っ込んで行っても俺は同じ事をした、それだけだ。(ッ何言ってる?!俺?)」

 

「ッンだt_「役は譲ったように感じてるだろうけど___....体育祭じゃ1つも譲らん」

 

「…あぁ?」

 

わざと言葉尻を捉えた、目を些か細める。

 

(何を言ってる?言わない方がいいのに___)

 

 

 

 

「……()()()()が多いんでね」

 

 

 

 

そう言って歩き始めた。だが

 

「勝つのは俺だっ!!」

 

また振り向き爆豪の目を見る。

 

 

 

 

「てめぇが誰の弟子でもなんでも、どうでもいい…!真っ正面から叩き潰す!!」

 

 

 

 

「受けて立つ。それまで負けなきゃな」

「ッるせぇ!!」

 

そのままどすどすと俺を追い抜かして1-Aに向かう爆豪を唖然と見送る。

 

(これは、宣戦布告……だ。したのは俺か?ホント何言ってるんだ、らしく無い……)

 

自分の言葉とは思えない事が口から出ていた。滅多にムキになったりはしないタチなのに、だ。

 

機能不全に陥った目覚まし時計のように心臓の鼓動が頭の中で響く。……僅かに時間が経って冷静にはなれた。

 

 

 

 

 

「…フーー…」

 

出した舌は戻らない。そう思い俺は入学当初の戦闘訓練での爆豪の動きを思い出しつつ、止まった足を動かした。

 

 

………

 

 

ホームルームが始まるまで少し時間がある。皆も来ているだろう、扉を開けた。

 

 

 

「「「「……………………お?」」」」

 

「…………ぉはよぅ……」

 

教室に入るなりクラスメイトの視線が一斉に向けられ、緊張が走る。一瞬入る教室を間違えたかと錯覚する程だった。

 

俺は挨拶をして何食わぬ顔で扉を閉めた、その時_「い゛じずぇえぃぃぃ!お前!大丈夫がぁぁあぁぁ?!!」

 

峰田が踏み出した俺の足に向かって走る。どうやら緑谷と共に席の近くにいたらしく、気持ち涙目だ。

 

「怪我は?!」

 

「怪我は…してたけど治ったよ。色々あっt「奇声を上げてたって本当?」

 

「え!奇声?なんのこと??」

 

「(マジかよ)…梅雨ちゃんにも言ったのかッ?」

 

梅雨ちゃんこと蛙水が確認の声を、緑谷が疑問の声を上げる。が、俺は近くにいた上鳴をじっとりと見る。

 

「いやいや'ふふッ'俺じゃない」

 

ニヤけつつも手だけを振って否定する上鳴。という事は___....

 

「…麗日、芦戸っ!」

 

二人並んで口笛を吹いてわざとらしく誤魔化す麗日、頭の後ろで手を組み体ごと目を逸らす芦戸。

 

 

 

……確定だ。

 

「二r「ホントに怪我は治ったの?早いのね」

 

二人に話そうとするが阻まれてしまった。梅雨ちゃんは両の手を見ようと、つま先を少し立て 背伸びをする。

 

「あぁ、うんもう治ってる。痕もわからないだろ?………あー…梅雨ちゃんと峰田、それから緑谷は俺を助けてくれたよね。ありがとな」

 

掌を見せて言葉通りだと分かってもらい、あの時の恩人に感謝を伝える。

 

「どういたしまして」

 

「お前がメチャクチャなモンぶっ放すわ、いきなり怪我するわで見てらんなかったんだよぉ!!つーか俺は頭の掴んで突っ込んだだけだって!!!」

 

梅雨ちゃんは長い舌で俺を引き寄せ、緑谷は攻撃。峰田は見えてなかったが彼なりにヴィランに立ち向かったらしい。

 

(やはり、頭のボールが個性か……)

 

「ごめんな。思ってたんだけどタイミングが凄く良かった、あれってもしかして…」

 

「「緑谷(ちゃん)だよ!!(よ)」」

「あっ…うん、僕が…」

(やっぱり)

 

二人が緑谷を指して当人は手を挙げる。生来の気質か、それとも彼固有のオタク気質が為せることなのか作戦を組み立てるのが早い。

 

もう少し話したかったがそろそろ時間なので各々、席に着くことにした。

 

 

当然___.....「麗日ァ…………」

「ッ礎くん!元気そうでッなによりッ!」

 

と俺が言うまでも無く ある意味で、いつも通りの麗日だ。芦戸も同じだろう。

 

 

 

「皆ーーー!!朝のホームルームが始まる。席につけーーー!!」

 

「ついてるよ。ついてねーのおめーだけだ」

 

朝からフルスロットルの飯田。クラスメイトを席に座らせようとするが、飯田以外全員座っていることを瀬呂が突っ込む

 

ドアが開き、今朝と変わらない相澤先生が姿を見せる。

 

「先生!お怪我のほどは?!」

 

「俺の安否はどうでもいい。何よりまだ、戦いはまだ終わってねぇ」

 

教室は静まり神妙な空気になる。他の生徒が緊張と恐怖が込み上げている……

 

俺と爆豪は内容を知っているが。

 

 

 

 

 

「―――雄英体育祭が迫ってる!」

 

「クソ学校っぽいの来たあああ!!」

 

教室の温度が3℃ほど上がったかのように盛り上がる。

 

 

 

 

 




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