礎 遷形のヒーローアカデミア   作:Owen Reece

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第19話 USJ襲撃事件終幕

オールマイトが脳無を彼方へと吹き飛ばし、事態は一気に収束へと向かった。

 

 

 

飯田が疾走し呼びに行った雄英教師のプロヒーローが次々と駆けつけ、瞬く間に有象無象の(ヴィラン)達を倒した。

 

 

 

さすがに敵も不利を悟ったのかリーダーの死柄木は、プロヒーロー"スナイプ"による銃創を負うが黒霧の個性で逃走を果たした。

 

 

 

戦闘不能になり倒れた敵達は残らず警察に逮捕され、飛ばされた脳無も拘束された。

 

 

 

負傷した教師、オールマイト、13号、イレイザーヘッド 。

加えて、重症を負った緑谷出久、礎遷形はそれぞれ保健室に運ばれ、リカバリーガールの治療を受けることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

匂いを感じた。

 

清潔すぎる場所で鼻腔を満たす独特の無機質な香りを。それからシーツや布を擦る音を聞こえ、目覚めた。

 

ほんのりと赤くオレンジに近い色の、暗い天井が目に入った。だが、ずれたピントが合った。それは窓から入った西日がカーテン越しに照らした、白い天井だと気付く。

 

自分の周りを僅かに空いた隙間以外を、四角に白い布が囲み、銀色の留め具が鈍く光る。

 

「(…保健室……学校か………)ッ!!…オールマイ_ッヅッッッ?!」

 

色のある世界で異質なそれは、礎を現実に引き戻す要因になった。だが体を動かそうとして痛みが走る。

自分が何をやったかを明瞭に、示す痛みは記憶を明確にする役目を果たした。

 

腕にギブス、右手に包帯。それに、四肢に重りを強いられていると感じる程に体が怠い。

 

「…ぞうがおれ゛ッ?ッゲホ!ゲホ!」

 

喉が乾く。此処には水を入れるピッチャーどころか物を置く机も無い。咳のせいでまた傷が痛む。

 

(…これじゃイモムシ以下だ…マジ最悪……)

 

体が重いのは脳無の個性を吸収したからだろう、個性を吸収したのは初めてじゃない。それに吸収できるのはほんの僅かだった。だが___......

 

(複数持ちの奴のはこうなるのか…オールマイト対策に怪力、超再生、衝撃の吸収…とあのイカレた顔か。吸収できんのは発動型だけだから、顔の方は関係ない。でも__....)

 

違和感がある。

 

何か余計なものまで取り込んだように感じていた。

 

俺は吸収した"個性"は変換出来ずに、吸収したその分だけその"個性"として使える。が、その個性の持ち主に触れればまだマシだが消耗が最も激しい。

 

危険過ぎる上にデメリットのが多いので、実戦で使ったのは初めてだ。と思い気づいた、コスチュームを着ていない。これは…病衣だ。

 

(治療するのに邪魔だったか。それにしてもよく脱がせれたな。...あぁそうか男衆は皆見てるか)

 

湧いた疑問を一人で解くほど余裕ができた。

 

 

 

 

(それよりも皆は無事だろうか…相澤先生、13号、オールマイトにクラスの皆。緑谷はまたあの滅茶苦茶な個性使って…大丈夫だろうか。俺を後ろに引っ張ってくれたのは……梅雨ちゃんか。ちゃんとお礼を言わないと)

 

(hurm…とりあえず、水が欲しい…どうしたもんk_「おや、起きたのかい?」

 

その時、特有の音と共に引き戸が開き、そこから見慣れた背格好の老女が入ってきた。

 

「治与ばぁちyッ!…すいません。リカバリーガール……」

 

リカバリーガールこと修善寺 治与(シュウゼンジ チヨ)看護教諭が現れた。

 

「………元気でなによりさね」

 

ベットに横になったままで行儀悪い事この上ないが、挨拶をした。

 

(俺にとっては"治与ばぁちゃん"だが此処では、リカバリーガールで通さなければならない事は明白だ)

 

 

 

「……………………」

 

「……………………」

 

妙な沈黙が続く。

 

…答えを知りたくない事は聞かない、が聞くしかない状況が人生には多くある。

 

……まさしく今がそうだ。

 

 

 

「……みんな無事…ですよね……?」

 

眠っている間に十中八九、オールマイトは敵と戦ったのだろう。彼の勝利を信じているがクラスの皆、13号や相澤先生の安否を聞く。

 

「無事さ、みんな。誰一人死んじゃいない」

 

「ッはっ……あぁ〜…良かった〜〜……」

 

張り詰めていた胸を撫で下ろす。リカバリーガールはそう言いつつ、ベットの横にあるスイッチを押してボトムを上げた。

 

(…自分の傷より他人の傷ね…循樹(ユキコ)ちゃんもいい育て方してるね……)

 

機械音と共に俺の視界が下がり、丁度ベッドの上に座っている体制になった。

 

「ただねぇ…緑谷はオールマイトを助けようとして両脚を折っちまってねぇ。」

 

眼を見開き、緑谷の具合を聞こうと口を開ける。が、「さっき治癒してきたから大丈夫」

と心を読まれたかの如く答え、そのまま続けた。

 

「当のオールマイトは元が丈夫すぎる位だから()()

13号は軽度だけど上腕から背中にかけて裂傷。病院に行ったけど、まぁ命に別状はないよ」

 

「(13号先生はそんなことに…一体、何が…)…そうですか。良かった……」

 

「アンタは左腕の骨折、右手の貫通性切創、加えて個性の使用過多による体力の消耗、お陰でアタシでも治癒しきれなくてね。目が覚めてから続きをしようとおもってたところさ」

 

我ながら酷い怪我をしたと自覚する、この程度で済んだ事は偶々としか言いようがない。

 

「主犯の二人には逃げられたけど、あの脳無ってのは拘束されたみたいよ」

 

「逃げられたんですか?」

 

「ワープの“個性”なんて、逃げに回られたら厄介なものは無いからねぇ」

 

(……全くその通りだ…敵に回るとタチが悪い)

 

「あと相澤だけどね…」

 

言葉を詰まらせるリカバリーガール。まさか、そんなに重傷なのか。

 

「…ン〜〜……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ相澤先生がどうかしたんですか!?さっき誰m「病室では静かにしろ。礎……」

 

扉の方を見ると、右腕と額に包帯を巻いた相澤先生が立っていた。

 

「ッあっ!_"ギロッ…" 'ぃ澤先生お元気そうで〜…'

 

また大声を出そうとした礎を睨み、無理矢理 小声にさせた。

 

「同じ事を言わせるな…全く……」

 

「…すいません…先生お怪我の方は……?」

 

記憶が正しければ確か脳無に…

 

「右腕の骨折と肋骨に3ヶ所ヒビが入った。頭のは軽度の裂傷、奇襲で受け身を取り損ねてな…。そん時に脳震盪を起こして、情けない事に意識が飛んだってだけだ」

 

「相澤はアンタが起きる少し前に起きてね、さっきまで警察の調書に付き合ってたよ」

 

俺が思っていたよりも、ずっと軽傷だったので驚いた。しかしどうして……脳無の怪力は身に染みて分かっている。

 

「これくらいで済んだのは脳無って輩の腕が歪んでたからだね、骨が折れて肘の辺りを突き破ってたらしいから___腕を振っても先まで力が伝わらなかったんだろう」

 

リカバリーガールの分析はおそらく正しいのだろう、そのまま聞いた。

 

「超再生といっても元通りにするだけで、骨を動かすわけじゃないからねぇ。治すのに少し難儀したとみえるよ」

 

「…そう…でしたか」

 

それを聞いて安堵し、張り詰めていた胸を下ろすことができた。

 

「…相澤先生」

 

「ん?」

 

「あの…命令違反してすいませんでした。芦戸と麗日は俺が行くって言って、その…ついて来たんです」

 

「…………………………」

 

 

 

二人は、自ら行く。と言ったので"ついて来た"は少し語弊がある、無意識のうちに礎の口から出た言葉だろうか。

 

 

 

「もし…何かしら罰則があるなら二人のは軽くしてもらえませんか?」

 

「都合のいい話だな……」

 

 

 

(停学か謹慎、相澤先生だと最悪の場合は……除籍か……)

 

 

 

「……………」

 

「…フー……罰則も何も無い」

 

「えっ?でも…」

 

「命令違反したのは確かだが、USJは雄英の敷地内で()()()だ。個性を使っても問題は無い」

 

…そう言えばそうだった……敵に襲撃されてその辺りのことが頭から飛んでいた。

 

「それに教師(おれたち)を庇ったのはお前らだけじゃない。お前は知らないだろうがあの後、爆豪、轟、切島、それに緑谷がオールマイトを助けようとヴィランの前に出た」

 

「アイツらも…」

 

「教師の指示無しに敵に突っ込んだならまだしも、守った生徒に罰などある訳がない」

 

(俺の考え過ぎだったか…良かった)

 

 

 

「(って顔だな…こいつの警戒心から来る思考はどうにもなぁ…)…お前も警察から話を聞かれるだろうから、早めに傷が治るようによく休めよ」

 

「っはい」

 

 

 

「ほら、アンタも用が済んだら家に帰りな。まだ完治してないんだ、安静にしときんさい」

 

いつのまにか、リカバリーガールが扉の前に立って相澤先生を促した。

 

「だそうだ…俺は行く。邪魔したな」

 

とりあえず罰が無かったことは良かった。まだ此処で生徒でいられる…_「ッあ、そうだ相澤先生ッ」

 

「ン?」

 

言い忘れていた、最も重要な事がある。

 

 

 

 

 

「助けていただいて…ありがとうございました…」

 

「…………それは俺もだ、礎。ありがとな」

 

ポンと包帯で覆われた自身の右腕を触れながらそう言って、相澤先生はリカバリーガールと共に保健室の外へ出て行った。

 

 

 

 

 

 

(………あと初見時モスラの幼虫みたいと思ってごめんなさい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廊下を歩いて暫く。

 

「……あの子、使()()()()()()()()()()?」

 

アメリカ(むこう)から聞かされたアイツの能力の事ですか?使いませんでしたよ、使える環境ではありましたが。危機的状況でも使う可能性は低かったかと…」

 

「…フーム……なら良いんだけどね…同僚の孫だから少々、心配し過ぎたかね」

 

「"いずれは使えるように"と任されましたからね。アイツは強くなります、焦る時期ではありませんよ。それに___......向こうの医者から、封はされてるんでしょう?」

 

「信用してない訳じゃないけど医者と呼んで良いもんかね……」

 

そこで彼女は立ち止まった。

 

「……少なくとも彼は偉大なヒーローですよ。じゃあ俺はこれで」

 

後ろを向いて答えた相澤は、そのまま歩いて行った。

 

「あぁ。お大事に」

 

そう言ってリカバリーガールは相澤の背中を見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

扉が開いてリカバリーガールが戻ってきた。

 

 

 

「さて、とっとと治療始めようかね…」

 

「えっ?リカバリーガール?あの、貴女の治癒と俺の個性って相性悪いんで、もうちょい時間空けて…」

 

 

この時まで礎は失念していた。

 

 

「なにいってんだい?アンタ脳無って輩の超再生持ってんだろう?それ引っ張り出しな」

 

「(しまった……)…どっちにしろ体力 ゴリゴリに削られるじゃ無いですか?!だったら貴女が…!」

 

「治療やれるんだったら自分でやんな!どうせ吐き出すんだ、遅いも早いも無いよ!」

 

「〜〜ッ!!それ職務放k_「ほら、早く!警察の聴取も待ってんだ、自分の足で歩けるぐらいにはしな!!」

 

この人がこと治療に関しては厳しい人だということを忘れていた………恨むぞ、脳無……。

 

 

 

 

……………

………

 

 

 

 

 

「礎が怪我するなんてなぁ…アイツは鉄壁の守りだと思ってわ」

 

「瀬呂 マジそれなッ防御だけだったらA組トップじゃね?!」

 

「「……………………」」

 

警察の聴取を早めに終え、廊下を歩いていた瀬呂、上鳴、芦戸、麗日は保健室へ向かう途中に相澤と会った。

 

そこで礎が起きたことを知り、先にそちらへ向かう事にしたのだが__....女子二人は落ち込んでいるのか、俯き加減だった。

 

「……ねぇ、やっぱり私たち行かない方がいいと思うんだけど…」

 

「私もそう思う…」

 

聞いたところ二人は礎と共に行動し、ヴィランに一矢報いたそうだ。礎は二人を先に逃がし"絶対俺の元へは戻らない"、そう約束させた。二人はそれを守り、一度も振り返らずに13号の所へと向かった。

 

 

「ンン゛〜〜二人とも気にしすぎだって。オレも八百万と耳郎の足引っ張っちまったけど、許してくれたぜ?」

 

「上鳴、それフォローになってねぇぞ…二人もアイツとの約束守っただけなんだから気にすんなって」

 

 

結果。礎は重症、相澤先生も怪我を負った。相澤先生の無事は確認できた。が、最後まで一緒に戦えなかった事を悔いていた二人は彼に謝った。

 

先生は然程気にしてはいなかったが、礎が起きたことを教えて保健室へ向かうよう促した。

 

「とにかくよ、起きたんだったら声くらい掛けて行こうぜ。な?」

 

「そうそう。キャプテン・アメリカの弟子はそんな心が狭い奴じゃねえって」

 

二人としては会うのは忍びない事この上ないだろう。気持ちを察し、慰める瀬呂と上鳴。

 

 

「うん…」

 

「そうやn_「ッンンンンヌオォッ!アッッ!!!」

 

「「「「「礎(くん)の声…!」」」」」

 

「お、おいもしかしてアイツ、怪我が…」

「そんなわけねーって!相澤先生も大丈夫って言ってたろ?!」

「ねぇ!早く行こ!」

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコッ「「「失礼します!!」」」

 

廊下を勇み足で歩き、ノックもそこそこに保健室へと押し入った。

そこには「ンンッマァァアアッッ!!」

 

なんなんだこれは…と四人は唖然とした。

 

包帯だらけ…の礎が……両膝をついて腕を胸に抱いて奇声を上げている。

 

 

 

「腹に力を入れて!底から引っ張り出すんだよ!!」

 

「アァァイ!!(()()が生まれそうだ…)」

 

 

体勢を変え片膝をつき、右手を地面に着けた。所謂……スーパーヒーロー着地だ。

 

 

 

「ほら、もっと自分の体を治すと思って!!」

 

「ッア゛ィア゛ァァアアッ!!!(実際そうだろう?!)」

 

「ァァアアッ!ッシャ!治ったぁぁッ!!ハッ…ハッ…ハッ…あぇっ…………?」

 

超再生をうまく引き出せたが、息切れが波のように訪れる。それと同時に礎は四人の存在に気づいた。

 

「…………………」口を開け、口で息をしつつも呆然とする礎。

「…………………」

「…………………」

「…………………」

「………………………'ッブフッ!'」

 

堪えきれなかったのか瀬呂が笑い始め、釣られた三人も笑い始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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