ガンダムビルドファイターズ ザイン   作:亀野郎

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最後に投稿したのいつだったか覚えてねぇです…

«登場キャラ紹介»

遠野 紅衣:トオノ クレイ…前回参照
椿 ヒロ:ツバキ ヒロ…前回参照
椿 アキ:ツバキ アキ…そもそも今回出てない
八坂 薊:ヤサカ アザミ…前回参照

あと今更ですが、原作ビルドファイターズではキャラの名前は大体カタカナ表記ですが、この作品では主に漢字で表記します。理由は後程。

それと今回から書き方を変えてみました。


LOAD:4その名はエルフ

空に溶け込みそうなほどの蒼い機体色、ガンダムストライクエルフ(XI)。エルフの由来はドイツ数字で言う11番に当たる。

 

この機体、及びそれ以前の10機のガンプラにそれぞれの機体番号が与えられている。

1番目の機体から順に、アイン()ツヴァイン()ドライ()フィーア()フュンフ()ゼークス()ズィーベン()アハト()ノイン()ツェーン()…などと。

 

このガンプラ達は後にグリム(死神)シリーズと命名されることになるが、それは恐怖や畏怖の念を込められたものだ。

_____だがその性能は常人の作品を遥かに凌駕するものであり、どれもグリムの名にふさわしい機体であった。

エルフはその11番目に該当する機体であり、現グリムシリーズの最後のナンバリング機体である。

 

蒼く澄み渡る空、太陽の光が反射して一面が光り輝く海。波は穏やかで荒れる様子は一向に無く、白波が静かな音を立てて、浜辺に押し寄せていた。見るものを欺くがの如く美しい景色だが、それは全て人工的に創られた偽りの景色だった。

_____そこにそびえ立つ二つの影。片方は人と類似した姿をしており、少々独特なシルエットではあるがそれが人をモチーフにしているということは辛うじて分かるだろう。麗美な蒼色、膝にはⅪと赤く記されていた。それに対し、もう一方の影はとてもじゃないが人といえる姿形はしていない。人外とでも言うのだろうか、しかし、その姿は不思議と見るものを引き込む“美しさ”を持っていた。

 

 

 

「行くぞ…ガンダム…ストライクエルフ!」

 綺麗になびく長い黒髪を持つ少女がエルフと呼ぶその機体は、足元の波を掻き分ける様にして臨戦態勢を整える。戦いの火蓋はなんの前触れもなく始まった。その白き天使は、エルフを眼前に捉え、耳をつんざくような駆動音と共にエルフと紅衣に飛びかかる。飛行こそできないものの、その機動性はメインカメラで捉えられないほど速い。

 

「避けて!」

 これをなんとか回避したものの、機体の動作が安定しないため、完全には避けきれなかった。最初の一撃こそ大雑把ではあったものの、その攻撃力は計り知れないものだった。

 標的を抉る恐ろしき鉤爪は、エルフの胸部装甲を掠めただけにも関わらず、一部の装甲板を弾き飛ばす。弾け飛んだ装甲板の一部はポチャンと音を立てて海面に四散する。

 

「ぎりぎり…だったな、しかしこのエルフ、聞くにも勝るじゃじゃ馬っぷりだな!」

「ご、ごめん…最終調整がまだ済んでなくて…」

「構わないさ、それより早く武器を持って来てくれると助かる」

 分かったと返事をすると、ヒロは足早に自分の部屋に向かう。そう、現在このエルフはまだロールアウトしたばかりで、実戦での安定した継戦能力がなく、装備も乏しい状態にある。

 しかし、こちらの事情などお構いなしに敵は連続攻撃をしてくる。ましてや、ファイターが操作している訳でもない、無人機だ。攻撃の勢いは留まることを知らず、更に加速していく。

 

「とてつもない速さだ…だが、そんな当てずっぽうの攻撃が当たるほど、私も鈍っちゃいない!」

 エルフの高い機動性を利用し、ハシュマルの一撃を躱しつつ距離を詰め、懐に潜り込む。

 

「そこだぁっ!」

 脹脛の装甲を展開し、ナイフシースから高周波切断具、リバースブレードが勢い良く射出される。それをマニュピレーターで受け取り、ハシュマルの下部装甲に突き立てながら、機体を取りつかせた。

ハシュマルは自身の身体に取りついた虫を払い落とそうとするが如く、縦横無尽に暴れまわる。メインカメラが激しく揺れ、その衝撃はファイターである紅衣自身にも襲いかかった。だがそれでも落とされまいと、リバースブレードを装甲に深く突き刺し、衝撃に耐える。

 

「振り払えるものなら振り払ってみろ!この手は絶対にっ____」

 だが、そう言った次の瞬間、ハシュマルの後頭部より何かが飛び出すのがカメラに映る。そしてそれが何か確認するよりも早く、機体に強い衝撃が走り、吹き飛ばされる。エルフは本体重量が軽く、機体の安定性が規定値に達していないため、勢いよく宙に舞い、地面に叩きつけられる。エルフが衝撃を受けた同じ部位の自分の身体に鈍い痛みが走るのを感じる。

 

「____ぐっ!!...今のは、なんだ...?」

 生物の尾の様にも見えるそれは、本体から独立して機動し、同時に動くことのできる、言わば手足のような物、超硬ワイヤーブレード。天使の如く美しい外観とは裏腹に、悪魔の牙を持つ化物は見るものを愕然とさせた。

 

「攻防一体か…こればかりはどうしようもないかも知れんな…」

 らしくもなく諦めの言葉が漏れる。それほどにまでこの化物は恐ろしいのだ。だが、だからと言ってこの戦いを放棄する訳ではない。すっと息を吸うと、再びコントロールスフィアを強く握りしめ、機体を前に出す。新機体の初陣にしてここまでの化物を相手するのを、紅衣は嫌では無かった。むしろ、久々にここまで熱くなれる事を心から楽しみながら、魂を燃やしていた。赤い瞳の戦士は高揚する。

 

「さぁ、もう一度こちらから行かせてもらうぞ!」

 操縦桿を握りしめ、機体を眼前の敵へ向け突貫させる。向こうも黙って見ている訳もなく、けたたましい咆哮を上げると、こちらへ向かって一直線に突撃してくる。本体と別の方向から、しなる鞭の如きワイヤーブレードがエルフを標的と定め向かってくる。

 

「二度も同じ手を喰らうかっ!」

 腰部スラスターを噴射し、上に飛び上がるようにしてそれを回避する。自在に動き、向かってくるワイヤーブレードを紙一重で回避、回避、回避。もしハシュマルを誰かが操作していたならそのファイターはおそらく、焦りともどかしさで判断能力が低下していたことだろう。決して当たるまいと避けるエルフのデュアルカメラからは、緑色の光が尾を引いていた。

 

 ーー体が熱い、こんな風になったのはいつぶりだろうか..."あの時"はよくこんな風になっていた...だんだん体が言うことを聞かなくなって、自我を忘れかけて、制御の効かぬ化け物のように...だが、今は違う。今私は、楽しんでいるんだ!

 

  そうだ、これがガンプラバトル...

 

「やっぱり、最高だなァ!ガンプラバトルはぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

 

 紅衣の叫びに呼応するように、エルフの瞳が赤く染まる。ワイヤーブレードが波を切り裂く様にして迫る。右脚のナイフシースからリバースブレードを取り出し、これを弾き飛ばす。しかし弾き飛ばされたにも関わらずその尾の勢いは止まることを知らない。三度エルフに向け、今度は後方から襲いかかる。

 だがその恐ろしき刃を紙一重で躱し、ワイヤーブレードのワイヤーとブレードの接続部を掴み取り、リバースブレードでそのワイヤーを切り裂いた。

自身の身体の一部が失われた事により、ハシュマルの猛進の勢いは減衰した。いくら感情や心を持たぬ"物”でも損傷すれば、それに影響される。その隙を逃さず、エルフを駆り、ハシュマルに肉薄する。咄嗟の事にも何とか対応しようと、ハシュマルはその爪を振り下ろすが、届かない。動きにムラがある状態ではエルフと紅衣には一撃足りとも当てる事はできなかった。懐に潜り込んだエルフに対応できなく、ハシュマルは二度目の本体への攻撃を許してしまう。リバースブレードを叩きつける様に、天使の装甲を滅多刺しにする。

 

「このまま刺し崩すっ!」

 だが、向こうも黙ってなされるがままではなかった。これまで以上に猛々しい咆哮をフィールド上に轟かせると、身体を大きく振り動かし、エルフを振り落とすとその上に覆い被さる様に馬乗りになり、巨大な三本の鉤爪を突き立てる。

 

「振り払えないっ…何か来る?!」

 予想は当たっていた。その大型のマニュピレーターの内部から、何らかのチャージ音とも思われる作動音が鳴り響く。必死に引き剥がそうとするが、その鉤爪は先程までとは比べ物ならない程に、硬く、深く地表に突き刺さっており、エルフの出力を持っても押し返す事はできなくなっていた。

 

「これは流石にもらってやるしかないかっ...!」

 

力任せに腕部を叩きつけても、びくともしない。

刻一刻と迫り来る敗北の危機、

だが、全ての不安を捨て去るがの如く、“彼”は戻って来た。

 

「紅衣ぃぃぃぃいい!!!!!!!!!」

 喉を潰してしまいそうなほどの勢いの叫びと共に、白髪の少年が足元に滑り込んでくる。

 

「ヒロ!戻って来たのか?!」

「あぁ、待たせてごめ...?!く、紅衣その目っ...」

 ヒロが見た時には紅衣の瞳は既に真っ赤に染まりきり、元の落ち着いた黒い瞳の面影は無くなっていた。

 

「大した事はない、それよりお前も随分とやられているな、顔に出ているぞ」

 対するヒロの顔も店の中を忙しく動いていたとはいえ、かなりの量の汗が滲み、息切れを起こしていた。徹夜が多かったというのもあるが、普段外に出てないつけが今に限って祟ったと内心で自分を叱咤する。だが紅衣は待っていたと安堵した表情で迎え入れてくれた。

 

「ぼ、僕は大丈夫っ!そ、それより、ハァハァ、今の状況はどうにかっ、できそうっ?」

「どうにか出来るならとっくにどうにかしている。今のこいつはどうやら“私一人”ではどうにもできないらしいっ…!」

 現状を見て打開策を得るためには、ヒロの力が不可欠だった。幸いにもハシュマルは、機体を暴れさせるエルフに、中々狙いを定められずにいた。だが、それも時間の問題だった。機体にかかる負荷はかなりの勢いで蓄積され、機体のモニター画面が通常時の青色からダメージを受け損傷をしている事を表す黄色、イエローシグナルに変わっていった。

 

「何か…何かないか…」

 額に汗が滲んでるのが自分でも分かる。集中力を損なわぬ様に考えても、中々頭が回らない。

 

「くそっ!…今のエルフにはもう何も残されては……?あれはっ!」

 何かに気がつき視線を目の前のハシュマルに移す。そう、その打開策は手の届く場所、いや、足の届く場所にあった。ハシュマルの下部に深々と突き刺さったリバースブレードのグリップが、自分を使えと言わんばかりに光を反射し、輝いていた。これだけ見ても普通の者なら何の役にも立たないと思うだろう。その性能を知らぬ者なら。だがこの武装をエルフに授けたヒロだから分かる。これしかないと。

 

「紅衣!あいつの股下、刺さっているリバースブレードを蹴り飛ばして!」

「リバースブレード…?了解した!」

 考える時間はかけない、言われた通りにエルフの足を目一杯折り曲げ、勢いよく蹴り出す。凄まじい勢いで放たれた蹴りは、リバースブレードの柄の芯をしっかりと捕らえ、その刃をへし折った。付け根の部分から勢いよく折れた刃の欠片がパラパラと舞う。そしてへし折って1秒も経たぬ内にその刃は爆炎を噴き出しながら砕け散る。爆発の規模はそれほど大きくは無いものの装甲内部で炸裂した事によって、ハシュマルの巨体が様々な部品を撒き散らしながら吹き飛ぶ。

 

「これは...初見ではまず見抜けんな、流石ヒロだ」

 内心で感嘆しつつも、機体を起こしその場を離脱、一定の距離を保ち、機体のダメージ状況を確認する。

 ーーこちらも既に虫の息か。笑っていられんな…

 

「もう後が無い…新しい武器を送り出す!そいつをあいつにぶち込んでやるんだっ!」

「あぁ、言われなくてもそうするつもりだっ!」

 ヒロが手のひら程のサイズのコンテナを発進コンソールに設置し、プラフスキー粒子の供給を開始、エネルギー100%とと言う表記が表示される。

 

「今はこいつしか用意できないけど、それでも!紅衣なら!」

 コンテナがコンソールから射出され、威力を留めないままエルフの元へと向かう。空中でコンテナの外装がパージされ、鋼色の光沢を放つ超電磁砲が姿を表す。それを確実に受け取る為に紅衣が機体を飛翔させる。だが、蒼き機体が空を跳ぶのと同時に、赤黒い血のようなオイルを撒き散らしながら、白き天使はその身体を揺れ動かし、その嘴を蒼き機体に向ける。直後、フィールド上に眩い光が迸る。やがてその光は一本の光に収束し、プラフスキー粒子で創られた偽りの空を貫く。とてつもない出力を誇るそれは、ビームというよりはレーザーに近いものだ。赤い熱線がエルフと超電磁砲に迫った。

 

「まずい!」

「さっ…せるかぁっ!!!」

 レーザーがエルフごと超電磁砲を貫くよりも先にそれを手に掴み取り、機体の右腕を咄嗟に前に突き出し、超電磁砲を庇う。数秒遅れて来たレーザーがエルフの右腕に直撃、肩部装甲を貫いて右腕は無惨に焼き千切れる。だがおかげで勝利の鍵は失われずに済んだ。

 

「まだ奥の手を隠していたか、だがその程度では私達は止められない!」

「とは、いっても紅衣、そのレールガンは調整が間に合わなくて現状で撃てるのは一発だけだ!確実に仕留めないと」

 手元のモニターに目を落とすと、ヒロの言った通り、残弾数1と表示されていた。ビーム、粒子兵器なら機体のジェネレーターに直結するなりなんなりで補給可能だろうが、実弾はそうは行かない。だがこの状況に置いても紅衣は不安を感じさせない笑みを浮かべる。

 

「一発で充分だ!」

 レールガンを手に取り、ハシュマルに最後の突貫を仕掛ける。高速で迫ってくるエルフに再び赤い閃光が迫るが、機体の重心を僅かに右に反らし、止まることなくこれをやり過ごす。高熱の余波で左頭部が抉られ、左のデュアルカメラがダウンする。だがもはやこれでは今の紅衣とエルフを止めることはできない。その鬼神の如き機動は相手に捕らえられない為だけではなく、見てる側を驚愕させる意味もあるのかもしれない。並のファイターではこの機体を使っても扱いきれず、エルフの足枷にしかならないだろう。などと言っている間に、ハシュマルの眼前まで迫ると、機体は跳躍し直上からハシュマルの白き身体に取り付き、その左手に持ったレールガンを開きかけていた口部ビーム発射砲の内部を抉りながら突き刺し、砲身がメシメシと音を立ててる事など一切気にせず、左腕ごと強引にねじ入れる。先程までの戦闘で深手を負ったのはエルフだけではない、ハシュマルとて大きく損傷し、もはや紅衣達を止める術は無くなっていた。

 

「「吹っ飛べえええ!!!!!」」

 

 レールガンの引き金が引かれ、ゼロ距離で撃ち出された弾体が電磁波を纏いながら、ハシュマルの内部で炸裂する。勢い余った弾体が装甲を貫き、外部へとこぼれ落ちた。そしてしばらくの間、両者はどちらも動かず沈黙状態だったが、十数秒後、先に膝を折ったのはハシュマルだった。

 

「やったか!?」

「それはやめて!」

 一部の界隈では縁起でもない言われる台詞を口走った紅衣に咄嗟にツッコミをいれる。

 

「…まぁ、とりあえず勝った…のかな?」

 先程まで猛威を奮っていた白き翼を持った天使は、見る影も無く無惨に朽ち果てていた。

 

「しかしまぁ、こちらもこっ酷くやられたもんだ」

 無論エルフも無傷ではなく、機体の各所の装甲はめくりあがり、抉れ、焼き切れていた。中でも右腕と頭部の損傷は一段と酷く、もはやスペアパーツと交換するしかない程であった。塗装も激しい戦闘の末、剥げ落ち、元の麗美な蒼色の機体の面影は無くなりつつあった。

 

「あはは…こりゃまた作業が増えるなぁ、積みプラ崩しはまた今度か。…いつもこうだな」

 苦笑気味に自分に対する皮肉を言うと、紅衣が一瞬の間を置いてくすくすと笑い始めた。どうかしたのかと聞くと、帰ったきた台詞は実に素直なものだった。

 

「いやぁすまない、なんと言うか、こう言ったら悪いがヒロの事を見てるとつい健気だなぁと思うんだ」

「なんだよぅ、不幸な奴だとても言いたいの?」

「ふふっ、すまんすまん…ヒロといると飽きなくて良いな」

 こっちはやる事がまだ沢山残っているというのに、無邪気に笑う紅衣が羨ましいと思ってしまう。まぁもっとも、紅衣がいないとガンプラを作る意味は無いのだが。

 

「ふふふっ、あははははっ」

「いつまで笑ってるんだよ!ほら、紅衣も直すのちゃんと手伝ってよ!」

「わかっているわかっている、くくっ」

 ーーわかってないなこやつめ…

 しかし、また一つ解決すべき問題が出てきた。そう、このハシュマルは一体誰が作り、一体何のためにこの店のバトルシステムに仕組んだのか、ということだ。思いつく宛はヒロには無く、頭を悩ます。

 

「ヒロこそどうした?そんな眉間にしわを寄せて」

「ハシュマルを仕組んだのが誰かってことだよ。誰か突き止めないと…またこんな真似されたら大変だし。ただ僕は誰かやったのか心当たりがないんだ」

 ーーあのチンピラ共…じゃあないな、あんだけお仕置き食らった後だし、またこんな真似をするとは考えにくい…

すると紅衣は何かを悟ったかの様に表情を変える。

 

「それなら心当たりがある。おそらく奴だろう」

 やつ…が誰のことかはヒロにはわからなかったが、紅衣を見る限り、この件は彼女に任せてもよいと判断した。

 

 

 

「―――結局今回も上手くいかんかったわぁ」

 例のハシュマルをシステムに組み込んだ犯人は公園のベンチに深く腰を掛け、ため息を吐きながら今回の失敗の原因を考えていた。

 ここのベンチは風通し良い通りにあり、人目にあまりつかないというのも相まって、彼女にとって東京で一番最初の安息の地となっている。無論自宅が一番ではあるが。

 

「何が駄目やったんや…そこそこ自信作だったんやけどな〜」

 とは言っても、この程度でどうにかなるとは最初から思ってはいなかった。今一度様子見のつもりで仕組んで見たものの、やはり向こうの方が上手だったようだ。

 

「やっぱファイターの紅衣ちゃんが強いっちゅーのもあるか…」

「それは違うな」

 人目につかないからこそこうして独り言を喋ってはいたが、突然後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「く、紅衣ちゃん!?い、いつからそこに!?」

 心臓がきゅっと縮んだのが分かる。一番聞かれてはならない相手に聞かれて、慌てて紅衣の方を振り向く。紅衣は何かを見透かしたかの様に微妙な笑みを浮かべている。

 

「そうだな、お前がここに座った辺りからかな」

「最初からやんそれ!」

 口角を少しあげニヤニヤと青髪の少女を見据える黒髪の少女と、汗を額に滲ませ、あたふたと慌てふためく青髪の少女。二人はこうして再開を果たした。

 

「え、えーと今のはち、違くてな!?なんというか虚言というか独り言というか」

「まさかとは思ったがやはり八坂だったかーそうかーそうだったのかー(棒)」

 もはやここまで来ると言い訳が通じる様子は無かった。言い逃れできない事を悟り、諦めて本音を口にする。

 

「ん、まぁーはい、ウチです。ウチが全部やりましたぁ」

 ヤケクソ気味にぶっちゃけると、紅衣はふふっと笑い、もういいと薊をなだめた。

 

「全部というと、やはりあのゴロツキ共にガンプラを渡したのもお前だったか」

「そうやけど...しかしぃ、なんでウチがやったってわかったん?」

「勘だな」

 どんだけ鋭い勘だと言いたくなったが、言った所で無意味だと思い、心の中には留めることにした。

 

「しかしお前こそ何故こんな回りくどい真似をしたんだ?ヒロと会いたかったのであれば普通に殴り込んでくればいいだろう?」

「殴り込んだらお店の迷惑になるしぃ…ってちゃうちゃう!そうやなくてウチが直接乗り込んだ所であいつは絶対に断るに決まっとるからや!」

「その様子だとヒロとは面識があるのか?」

「ないけど」

珍しく紅衣のツッコミが炸裂した。

 

「まぁ、一度はあるんやけど、多分ヒロはもう覚えてないと思うんや…ずっと昔のことやし…」

「昔、か。気になるな、話してくれ。なぁに、ヒロに告げ口をするつもりはない」

 

「...そんな大袈裟に言うほどでもないんやけどな」

 

 

 

―――もう5年以上も前の話になるわぁ   

 

 

 




「今日から君が、僕のダーリンだ!」

はいこんにちは。亀野郎です。お久しぶりです。
更新が遅いのはもういつもの事なので触れません(絶唱顔
今期のアニメ面白いですよね。いやホント。
それはそうとビルドダイバーズ、楽しみですね。あれのおかげて大分モチベを保ててます。

ってことで何だかんだこの作品続きますので、是非、気長にお待ち下さい。

肝心のガンプラは写真の画質改善と塗装に戸惑っているのでもうしばらくお待ち下さいぃ。
というか今思えば詳しい機体概要とかないと読んでる側も分からないですよね...すいません。何やねん高周波切断具て(^_^;)



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