ダンジョンに八雪を求めるのは間違っているだろうか 作:神納 一哉
ヘスティア
ヘスティア様と命さんは
「【
「そうすることでスキルや魔法なんかが使えるようになるとは言っていたけれども、そういうものなのかしら?」
「ゲームとかファンタジー小説とかだと、職業や適性によって使えるものが変わってくるものだから、それが【神の恩恵】によってになっているのだろうな」
「そうすると、私たちも【神の恩恵】を受けた方が無難なのかしら?」
「個人的には少し待った方がいいと思っている。というか戻れるかどうかを試して、戻れなかったときはヘスティア様に【神の恩恵】を刻んでもらおう」
「戻れるかしら?」
ぽしょりと、雪ノ下がそう呟いたので思わず俺は聞き返していた。
「どういうことだ?」
「………その、さっきも言ったけれど、私はあなたと二人きりになりたいと思ったらこの世界に来てしまっていたの。自惚れじゃなければあなたも私と二人きりになりたいと思ったのではないかしら?お互いに二人きりになりたいと願ったタイミングで、地球の神様の神意によって
「あー、地球の千葉に居た何某かの神様が俺たちをこの世界に飛ばしたと仮定すると、この世界でもその何某かの神様を見つけ出さない限り、地球には戻れないってことか」
「そうね。同じ神様じゃなければ世界を繋ぐことはできないわね。盲点だったわ」
「日本の神は
「あら、私たちをこの世界に飛ばしたのが神様だって言うのは否定しないのね」
「否定しないってか、できねえだろ。現に俺たちは今ここに居るんだし」
「………そうね。もしこの世界に飛ばした神様が千葉県限定の神様だと仮定すれば、千葉神社の
「え、千葉限定でそんなかっこいい神様居たの?俺より千葉好きなのん?」
「かっこいいかどうかは置いといて、星の神様ってなんか素敵でしょう?
「ほーん。お前も女の子してたんだな。あ、いや、悪い意味じゃなくていい意味でだぞ」
「孤立しても良いことないから、誰かさんとは違って最低限、クラスメイトと交流はしていたわよ」
「俺だって最低限の付き合いはあったぞ。戸塚とか」
「あなたの場合、そうやって二言目には戸塚くんが出てくるから、海老名さんに
「
「やめて、気持ち悪いわ」
「おお、俺もそうだわ」
お互いにぶるっと身体を震わせた後、ジト目で俺を睨む雪ノ下。
「なぜこんな話になったのかしら?ホモ
「違うから!俺、雪乃一筋だから」
「二言目には戸塚くん戸塚くん言っていたのに?」
「戸塚は数少ない、その、アレだ、友達ってやつ。雪乃は、その、恋人だろ?少し前からだけど」
「地球に居たときは恋人じゃなかったわよ」
「向こうでは、その、アレだ。助ける約束をした、気になる
「そ、そう。気にしてくれていたのね。一応」
「お、おお。実は無茶苦茶気にしていた。夜も眠れないくらい」
「………私も、あなたのことを考えて眠れなかった日があったわ」
そんなことをつぶやかれて上目遣いで見られたりすると、二人だけの世界に入ってしまうわけで、気が付くと唇が重なってたりするのは仕方のないことだろう。
一回目よりも幾分長く唇を重ねた後で、見つめ合う時間ができたりすると欲も出てきちゃうわけで、気が付けばポロリと掠れる声で漏らしていた。
「もう一回、いいか?」
雪ノ下は答えず、代わりに目を閉じ、俺に唇を差し出すように
「……っ」
一瞬、身体を強張らせたが、それも本当に一瞬のことで、やがて彼女の口は小さく開かれ、俺の舌を迎え入れてくれて、最終的には自分の舌を俺の舌に絡ませてくれた。
「……ぷはっ。悪かった」
「……いいえ。良かったわ。もう一度しましょう?」
「おまっ、いや、確かに良かったけど、これ以上はヤバいからいったん仕切り直しってことで」
「そうね。考えたらここはヘスティア様の拠点の居室だったわね」
「お、おお。そうだな。とりあえず、ヘスティア様を探しに行くか?」
「そうしましょう。しばらくお世話になるということでいいのかしら?」
「ああ。この街を案内してもらって、タケミカヅチ様に会わせてもらえるようにお願いして、できたら冒険者の仕事ってのも見せてもらおう」
「二人一緒によね?」
「ああ。二人一緒にだな」
「離さないでね」
手を握る力を強めた雪ノ下に、俺はその手を握り返すことで応えると、雪ノ下を促してソファーから立ち上がり、扉へと向かって歩き出すのであった。