ダンジョンに八雪を求めるのは間違っているだろうか   作:神納 一哉

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超ご都合主義万歳!

ヘスティアの説明が大雑把だったり、ゆきのんが甘えん坊だったりするのは仕様ですw


1 異世界

「……君は今、この世界について教えてくれと言ったかい?」

 

「ああ。確かにそう言った」

 

「長くなるよ。とりあえず中に入ろうか?」

 

「わかった。お願いする」

 

「よし、じゃあみんな、中に入ろう。お客さんだ。あ、ヴェルフ君は門扉を閉めてきてくれるかな」

 

ツインテールの少女はそう言いながら手を叩き、俺たちの方を振り返って着いてくるように促してから邸宅の扉に向かってとてとてと歩いていく。俺たちは赤髪の青年とすれ違い、ツインテールの女の子に続いて邸宅の中を進んでいき、一階の奥にある広い居室(リビング)へと通された。部屋の端の方には乱雑に木箱が置かれている。

 

「ごめんね。引っ越しの途中だったからまだ荷物が整理できていないんだ。とりあえずそこの長椅子(ソファー)に座ってくれたまえ」

 

暖炉寄りに長椅子と長机(テーブル)が置かれていて、そちらを指差しながらツインテールの少女が着席を促したので、俺たちは並んで長椅子の端の方に腰を下ろす。向かい側の長椅子の中央にツインテールの少女が座ると、俺たちの方を見てからコホンとわざとらしい咳払いをした。

 

「ところで、君たちは恋人同士なのかい?」

 

「……まあ、一応」

 

うわあ、何これ。恥ずかしい。雪ノ下は小さく頷いていた。可愛い。

 

「そうか。それなら一安心だ」

 

何が?

 

「おっと、この世界について教えて欲しいんだったね。この世界って言うことは、つまりは君たちはこの世界の者ではないということかな?」

 

「まあ、そうなりますかね」

 

「では簡単な説明をさせてもらうよ。ここは世界の中心にある迷宮都市オラリオ。地下に広がるダンジョンの上に造られた街だ。ダンジョンの直上にはこの世界一高い摩天楼施設バベルが建ち、ダンジョンには魔物が徘徊している。オラリオには神々と人々が集い、【神の恩恵(ファルナ)】を受けた人々は冒険者となり、ダンジョンを探索して魔物を狩る者もいれば、食物を作ったり物品を作ったりする者もいる」

 

「神が居て魔物が居る、剣と魔法の世界ですか?」

 

「そうだね。君たちの居た世界は違うのかい?」

 

「俺たちの世界は、神は概念でしかなかったな。魔物も居ないし、もちろん魔法なんてなかった。物語では出てきたけどな」

 

「…ヘスティアという名前に心当たりは?」

 

「クロノスとレアの娘でしたっけ?確かディオニュソスとオリンポス十二神の一柱の座を争っている」

 

「ギリシア神話ね。ゼウス、ヘラ、アテナ、アポロン、アフロディーテ、アレス、アルテミス、デメテール、ヘファイストス、ヘルメス、ポセイドン、ヘスティアがオリンポス十二神だったかしら?」

 

雪ノ下とオリンポス十二神について話す。俺は若気の至りで覚えたことをなんとなく記憶していただけなんだけど、すらすらとオリンポス十二神の名前が出てくるとは、さすがユキペディアさん。

 

「君たち、もしかして神なのかい?天界のことをよく知っているようだけど」

 

「いや、俺たちはただの人間だ」

 

「名前を聞いてもいいかな?」

 

「俺は比企谷八幡だ」

 

「私は雪ノ下雪乃よ」

 

「ハチマンって極東の神の名前じゃなかったかな?タケ、タケミカヅチに聞いたことがある」

 

武御雷。日本神話の神も居るのか。この子、やけにフレンドリーな呼び方をしているな。

 

「確かに俺の名前は日本神話の神と同じだけど、誕生日が八月八日だから八幡って名前を付けられただけだ。ところで、武御雷を愛称で呼んでいるところを見ると、もしかしてお前、神様か?」

 

「うん。まあね。ボクはヘスティアだよ。そしてここはヘスティア・ファミリアのホーム。さっき一緒に居た子たちは僕の眷族(こども)だよ」

 

「【ファミリア】?家族?」

 

「そうだね。ボクたち神が【神の恩恵】を与えた者たちのことを眷族と言うんだ。そして神と眷族の集まりを【ファミリア(家族)】と呼ぶ。ホームは名前の通り拠点(いえ)のことさ」

 

「ところで、さっきから違和感なく話しているわけだが、話し言葉は俺たちと同じだと考えていいのか?」

 

「確かに普通に話せているね。話し言葉は今使っている言葉で大丈夫だよ。ボクたちは共通語(コイネー)って呼んでいる」

 

「文字を見せてもらえるか?」

 

「いいよ、少し待っていてくれたまえ!」

 

そう言うとヘスティアは、ぱたぱたという足音を残して居間を出ていった。それを見送った雪ノ下がぽしょりと呟く。

 

「…向こうには戻れないのかしら?」

 

「次元の裂け目みたいなところに入っちまったのかね?少なくともエスコートを開始した時はまだ、向こうの世界だったと思うんだが」

 

「そうね。あなたと腕を組んで歩き出した時はまだ、見慣れた景色を見ていたと思うわ。その、あなたに告白した時、雑踏が消えたような気がするから、もしかしたらその時にはこちらに来ていたのかもしれないわね」

 

「俺が聞き返した時か。言われてみれば確かにそのあたりから周りが静かだったような気がするな」

 

「その時、私は誰にも邪魔されたくないって考えていたのだけれど。あなたと二人きりで居たいって」

 

もしかしてそれでこの世界に来ちゃったとかなの?時空を超えるって、それなんてラノベ?

 

そんなことを考えていると、軽く腕を引かれたのでそちらを見る。すると雪ノ下が潤んだ瞳で俺を見上げていた。

 

「その、二人きりなのだけれど」

 

「いや、すぐ戻ってくると思うけど」

 

「足音でわかると思うわ。だから、…私を安心させて。好きよ。八幡」

 

雪ノ下はそう言うと、顎を上げて瞼を閉じる。いつの間に雪ノ下の好感度がMAXになっていたの!?

 

「お、俺も好き、だぞ。雪乃」

 

雪ノ下の頬に手を添えて、ゆっくりと顔を近づけていく。ほっぺた柔らかい。睫毛長い。肌が白い。可愛い。

 

遠くから近づいてくる足音を聞きながら、俺は瞼を閉じて雪ノ下と唇を交わすのであった。


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