ダンジョンに八雪を求めるのは間違っているだろうか   作:神納 一哉

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雪乃と二人で朝食を食べ終わった後、二人でヘスティア様の居室に行き、【ステイタス】を更新してもらう。

 

――――――――――

比企谷(ヒキガヤ)・八幡

 

LV1

 

力:I20 耐久I16 器用:I70 敏捷:I14 魔力:F323 幸運:H 精癒:G 神秘:G 収納:F

 

《魔法》

 

鑑定眼(ティナディス)

・無詠唱で発動可能。

・物品を鑑定する。情報化できる。

・様々なものを測量する。測量の際は対象に触れる必要有り。情報化できる。

 

《スキル》

 

空間収納(マゼーボ)

・物品を亜空間に収納できる。容量は【アビリティ:収納】によって増加する。

・物品を源素(オリジン)に変換できる。

 

錬成(アイヒミア)

・空間収納内で源素を元にして記憶にある物品を作成できる。ただし世界に適合した(かたち)で作成される。

・空間収納内で物品を複製できる。

・空間収納内で物品を解体・精錬できる。

・空間収納内で物品を修復できる。

 

記録(オミリア)

・【魔法:鑑定眼】で見たもの・測ったものを情報化して保存できる。

共通語(コイネー)の言語理解・自動翻訳。

 

比翼連理(ゼブガーロマ)

・早熟する。

雪ノ下(ユキノシタ)・雪乃への愛情(想い)が続く限り効果継続。

・愛情の丈により効果上昇。

・雪ノ下・雪乃と【スキル:空間収納】【スキル:記録】を共有する。

・雪ノ下・雪乃と【経験値(エクセリア)】を共有する。

――――――――――

 

「アビリティ以外は変わっていなかったから、雪乃君のは写してないよ。発展アビリティについてはもう、見なかったことにする」

 

「雪乃のアビリティは俺と同じですからね。大丈夫です」

 

「話が早くて助かるよ」

 

空間収納が大きくなっていたので中を確認したら、どうやらミスリル鋳塊を作成中に精神疲弊(マインドダウン)で倒れたらしいことがミスリル鋳塊の数と鉱物屑ができていたことからわかったので、鉱物屑を源素に変えて、ミスリル鋳塊も他と同じ数に合わせておく。

 

――――――――――

空間収納F 72/800 上限80000

 

技能:収納 錬成 解体 精錬 修復 整理 消去

 

【保管庫】34

 

植物源素 15347 

生物源素 1037

鉱物源素 10319

硝子源素 3465

魔源素 3914

水源素 17264

 

回復草A 80

魔力草A 40

活力草A 50

瀉下草A 50

解毒草A 20

解熱草A 80

麻酔草A 80

解呪茸A 20

麻痺茸A 20

妖精茸A 20

 

鋳塊(インゴット)A 20

鉄鋳塊A 20

銀鋳塊A 20

金鋳塊A 20

白金(プラチナ)鋳塊A 20

魔銀(ミスリル)鋳塊A 20

 

ティーカップ【奉仕部仕様】A 1

飲料瓶A 1

 

回復薬A 20

上級回復薬A 20

魔力回復薬A 20

上級魔力回復薬A 20

解毒薬A 20

解呪薬A 20

エリクサーA 20

 

コボルト爪A 20

キラーアント甲殻A 20

パープルモス翅A 20

サラマンダーウールA 20

魔石E 1

魔石F 1

魔石G 2

――――――――――

 

「ヘスティア様、八幡にヘスティア様を測量させてください」

 

「いきなりなんだい!?その測量ってやつをすることで、ボクに何か不利益が出たりしないのなら、いくらでもやっちゃってくれたまえ」

 

「では八幡、遠慮なく測量してしまいなさい」

 

「それじゃあ、少しお手を拝借」

 

ヘスティア様の手を握って測量をする。ロリ巨乳って実在したんだね。雪乃の視線が怖いのは気のせいだと思いたい。

 

「八幡、ヘスティア様用の下着とニーソックス(靴下)、スニーカーと、無地でいいから露出の少ないワンピースをお願い」

 

「わかった。色は全部白でいいか?あとワンピースだが、小町が着ていたやつを参考にしてもいいか?」

 

「ええ、構わないわ。ヘスティア様はその、別に露出狂というわけじゃないですよね?」

 

「失敬だな、ボクはいたって普通の処女神だよ」

 

「では、あちらに行って着替えましょう」

 

「了解。衣類(ブツ)は空間収納に入れておくから。予備も作っておく」

 

「ありがとう八幡。ではヘスティア様、行きますよ」

 

「ぬわ~っ!雪乃君そんなに引っ張らないでくれたまえ」

 

雪乃に引きずられるようにして連れていかれ、衝立の向こうに消えたヘスティア様。

 

「むっ。雪乃君。ショーツ(これ)は肌触りがいいね」

 

「……くっ、これは由比ヶ浜さん並みの大きさだわ」

 

「なんだい、このアマゾネスが付けるような上衣は!?これじゃあ君の言っていた露出狂じゃないか!?」

 

「これはブラジャーと言って、上衣ではなくショーツと同じ分類の胸を隠すための下着になります。上からキャミソールを着て下着を隠して、その上にワンピースを着てください」

 

「…おお。エルフみたいな格好だけどいい感じだね」

 

「靴も用意しました。これの方が動きやすいと思います」

 

「ありがとう。うわっ、これ動きやすいね。大きさもぴったりだし」

 

「ベッドの上に衣類の予備を置いていきますから、片づけてくださいね」

 

「雪乃君。予備はありがたいんだけど、ぶらじゃあ(・・・・・)というのは慣れないのだけど」

 

「寝るときは外してもいいですけど、普段は着けていた方がいいですよ。暴れるのを防げるし、形も整えられますから」

 

「確かに、形が安定しているし、振り回されない気がするよ」

 

「くっ、これが巨乳に(持つ者)しかわからない境地……!」

 

雪乃……。強く生きろ。

 

「質問なんですけど、神様も生理ってありますか?」

 

「うん?天界では普通にあるけど、地上に降りた神々(ボク)たちは、降りた時点で身体年齢が固定されるから生理は来ないよ」

 

「神様に必要が無くても、普通に生理用品(ナプキン)には需要がありますよね」

 

「これは…。うん、襤褸切れを使うよりも全然いいじゃないか。素晴らしい道具だね」

 

「衣類は着てみてどうですか?」

 

「うん。悪くないと思うよ。眷族(こども)と同じ服を着ているような気持ちになるけどね」

 

「とりあえず、居室(あちら)に戻りましょう」

 

雪乃とヘスティア様が戻ってきた。参考にしたのは黄色の服だったが、ヘスティア様が着ている白でもその可愛らしさは健在のようだ。下着を着けたせいか、胸が一回り大きくなっているように見えるが、先ほどまでと違い肌色は見えていないので、エロさは薄れている。

 

「元の衣類は【保管庫】に入れてあるから、修復しておいて」

 

「了解。って、着ていた(あの)服類、ヘスティア神衣って御大層な名前で、修復できないんですけど」

 

「ふふん。天界のものだから、痛んだり汚れたりしない優れものなのだよ」

 

試しに複製をしてみようとすると、素材不明とのことだったので、長手袋を取り出して測量をして、再度複製を試みる。

 

「複製も無理みたいだ。禁忌って出る」

 

「うん、まあ神が作ったものを眷族(ひと)が作れたら拙いよね」

 

「そりゃそうですね。雪乃、衣類はヘスティア様に返しといてくれるか」

 

「それが無難ね。ヘスティア様、ベッドの上に置いてきます」

 

「あ、うん。わかった」

 

雪乃が衝立の向こうへと行き、少ししてからこちらに戻ってきて俺の横に腰を下ろしたのを見てから、俺は話を切り出した。

 

「えーと、昨日いろいろとスキルを試してみたんですが、ぶっちゃけると生産チートになります」

 

「こうして服を作ってくれたのも、八幡君のスキルなんだね」

 

「ええ。とりあえず、これをお納めください」

 

長机(テーブル)の上に回復薬、上級回復薬、魔力回復薬、上級魔力回復薬、解毒薬、解呪薬、エリクサーを10本づつ並べた。

 

「こ、これは、エリクサーだけでも一財産だよ!?これも八幡君が作ったのかい!?」

 

「結果的にはそうなりますね。まあこんな風にいろいろなものを作れるようになりましたので、雑貨屋みたいなものをやりたいと思っているんですが」

 

竈火の館(ここ)は立地的にも建物的にもお店に向いていないよ」

 

「ええ。ですからギルドに相談して店舗を借りようかと考えているんですが、とりあえず運転資金が必要ですよね?」

 

「うん。お金が大切だね」

 

「手っ取り早く稼ぐには、何がいいですか?」

 

「深層の魔物素材とか、純度の高い稀少鉱石とかかな」

 

「その魔物素材ってどこかで見れたりしますかね?触れれば完璧です。鉱石より鋳塊の方が純度は高いですよね」

 

「素材はゴブニュかヘファイストスならある程度のものは持っているかもしれないけど。純度で言えばそれは鋳塊の方が高いに決まっている」

 

それを聞いて、魔銀鋳塊の情報を見てみると、適正価格が80万ヴァリスだった。白金鋳塊は60万ヴァリスだったので、この二つをある程度複製して鍛冶系ファミリアに持っていけば運転資金は稼げそうな気がした。

 

「ありがとうございます。少し考えてみます」

 

「うん。あまり無茶はしないでおくれよ」

 

「善処します」

 

「だからそれ、やらかす奴の言葉(セリフ)だってばぁ」

 

     ×   ×   ×

 

ヘスティア様の部屋を退去した後、雪乃は調理場に戻ったので、俺は自分の部屋に戻り魔銀鋳塊と白金鋳塊を40づつ複製した。少し眩暈がしたので精神疲弊(マインドダウン)が近いのだろう。上級魔力回復薬を取り出して一息に飲み干し、空瓶を回収して再び魔銀鋳塊と白金鋳塊を40づつ複製する。それからもう一度上級魔力回復薬を取り出して飲み干して空瓶を回収し、さらに魔銀鋳塊と白金鋳塊を20づつ複製してから、上級魔力回復薬を2本錬成すると一息ついた。

 

【錬成】して、魔力回復薬で回復して、再び【錬成】する。素材は基本、土石、植物、水などを郊外の森で回収しておけば困ることは無いだろう。生物源素の元は、肉屋で廃棄予定の物を譲ってもらえば手に入るだろう。貰えなかったら安い肉でも買えばいいし。

 

とりあえずヴェルフに鋳塊を渡して、見学がてら街に出てみるか。そんなことを考えながら部屋を出ると、階段で雪乃に会った。

 

「ヴェルフに鋳塊を渡したら、ちょっと街を見てくる。雪乃はフード付きのローブとかが作れるようになるまでは、外に出ないで竈火の館(ここ)に居てくれ」

 

「昨日の感じだと、大丈夫だと思うのだけれど」

 

「ベルが居たからな。二人だけだと野郎に絡まれたときに守れる自信がない」

 

「わかったわ。変なところには行かないでね」

 

「行かねえよ。せいぜい肉屋で廃棄物が貰えるか確認してくるだけだ。ついでに鋳塊を鍛冶系のファミリアに持ち込んでみる」

 

「なるほど。それで生物源素が得られれば、他の源素は郊外で賄えるものね」

 

「そういうことだ。じゃあ、ちょっと行ってくるわ」

 

「ちょっと待って。八幡、持ち込みをするなら空間収納を偽装するための鞄を持って行った方がいいわ」

 

「そうか。わかった。リリルカが背負ってるようなバックパックを作って、適当な頭陀(ずだ)袋や木箱でも詰め込んでおくか」

 

「いってらっしゃい。気を付けてね」

 

胸の前で手を振る雪乃。可愛い。後ろ髪をひかれつつ、鍛冶場へと向かう。

 

「ヴェルフ、魔物素材とか鋳塊、どこに出せばいい?」

 

「おっ、素材はそこの台の上に置いてくれ」

 

コボルト爪、キラーアント甲殻、サラマンダーウール、銅鋳塊、鉄鋳塊、銀鋳塊、金鋳塊、白金鋳塊、魔銀鋳塊をそれぞれ20づつ作業台の上に置くと、空間収納から先ほど作ったバックパックを取り出し、その中に小さな木箱や頭陀袋を詰め込んで背負った。

 

「いやいやいやいや、待てよ八幡。どうしたんだこの素材は!?しかも魔銀鋳塊まであるし、なんだよこの純度は!?それにいったいどこから出した!?」

 

「まあ、俺のスキルが関係しているとだけ言っておこう。他にも欲しい素材があれば、それを見せてくれるところを紹介してくれれば、手に入るかもしれんぞ」

 

「白金、魔銀ときたら、超硬金属(アダマンタイト)最硬金属(オリハルコン)だろう。ヘファイストス様なら持っていると思うが…」

 

「見せてもらえるなら紹介してくれるか?そうすれば納品もできると思う」

 

「この純度の鋳塊は、鍛冶師としては喉から手が出るほど欲しいものだからな。これをおまえが造ったのなら、鋳塊に何か印を入れた方がいいぞ」

 

そう言われたので、少し考えてから俺は目の前に置いてある鋳塊にヘスティア・ファミリアの炎と鐘のエンブレムを刻み、空間収納内の鋳塊にも刻んでおいた。ついでに薬瓶や飲料瓶にも刻印しておくことにした。後でヘスティア様に渡した薬の瓶にも刻印するとしよう。

 

確認ついでに上級魔力回復薬を取り出して、薬瓶の刻印を確認してから飲み干し、薬瓶を収納して修復をかけておく。

 

ヘスティア・ファミリア(うち)のエンブレムか。まあわかりやすくていいな。よし、じゃあヘファイストス様のところに連れて行ってやるから、ついでに売り込みでもしちまえ。まあこの純度の鋳塊ならヘファイストス様も文句はつけないだろうけどな」

 

「よろしく頼む。できればヘファイストス様のところに行く前に、肉屋に寄ってもらえると助かるんだが」

 

「ん?肉屋に何かあるのか?」

 

「おそらくだが、肉を捌くのは朝にやるだろう?廃棄物が欲しいんだが、朝のうちに行かないと処分されてるんじゃないかと思ってな」

 

「廃棄物って、頭とか内臓とか骨とかか?」

 

「まあそうだな。【錬成】の素材になるんだ」

 

「なるほどねえ、それならわざわざ肉屋を探さなくても、商店街の外れのゴミ捨て場を見てみるといい。肉屋の廃棄物もそこに捨てられてるだろうし、朝ならデメテル・ファミリアの回収部隊も来ていないだろう」

 

「おお。それじゃあゴミ捨て場に案内してくれるか」

 

こうしてヴェルフに商店街のゴミ捨て場へと連れて行ってもらった。ゴミ捨て場の一角には大きな甕が並べて置いてある場所があり、その甕に生ゴミを入れるようになっていて、生ゴミ以外は柵で囲まれた場所に積み上げるようになっていた。甕の中身は定期的に農業系ファミリアが肥料として回収していくようだが、俺はそこから生物系のゴミをいただいていこうと考えている。

 

柵の中のゴミは定期的に持ち出して、郊外で焼却したり、埋めたりしているようだ。こちらも定期的に素材としていただくとしよう。甕のゴミは甕の外側に触れて中身を空間収納に取り込んで源素化してしまえばいいので問題ないが、柵の中のゴミはいきなり消えたら怪しまれるので、人が居ないときにいただくことにして、今のところは離れることにした。

 

そして無事にヘファイストス様との顔合わせを済ませ、白金鋳塊と魔銀鋳塊をバックパックから取り出した体でヘファイストス様の前に20づつ並べていく。

 

「これはヘスティアの眷族(こども)である君が作ったのかしら?」

 

「はい。ヴェルフに聞いたら鍛冶に最適な金属とのことでしたので、こちらでも需要があると思いまして売り込みに来ました」

 

「うん。品質は最高級だから喜んで買わせてもらうけど、超硬金属や最硬金属は無いのかしら?」

 

「それなんですが、神様はそれらの鉱石をお持ちでしょうか?お持ちなら、俺に見せてもらえないでしょうか?」

 

「わかったわ。両方とも持っているから鋳塊(これら)のお金を取ってくるついでに持ってくるわね」

 

ヘファイストス様が部屋を出て行くと同時に、ヴェルフが大きく息を吐く。

 

「八幡、鉱石については俺が言うのを待って欲しかった。あれだと多分、ヘファイストス様はおまえの能力に気付いたぞ」

 

「そうなのか。神様なだけあるな」

 

「なんでそんな余裕そうなんだよ」

 

「まあ神様相手ならバレてもそんな問題じゃないだろ?ヘスティア様とも仲のいい神様だし」

 

「そうなんだけどよ。なんか釈然としないな。けどまあ、ありがとうな。ヘファイストス様を信じてくれて」

 

「なんでヴェルフがそれを言うんだ?」

 

「俺、ヘスティア・ファミリアだけど、元々はヘファイストス・ファミリアだったし、今でもヘファイストス様のことはお慕いしているからな」

 

「おお、そうか」

 

部屋の中がなんとなく微妙な空気になったところで、ヘファイストス様が戻ってきた。後ろに着物を着崩した眼帯の女性を連れてきている。

 

「おう、ヴェル吉、壮健か?っと、おおっ、これは良い鋳塊ではないか!ヘスティア様の刻印が入っているってことはヴェル吉が鋳造したのか?」

 

「俺じゃこんなの造れねえよ。久しぶりだな、団長様」

 

「ちと、からかっただけだ」

 

「椿、久しぶりにヴェルフと会ったからといってじゃれないの。隣の彼にそのお金をお渡しして、鋳塊を受け取りなさい」

 

「ということは、お主がこの鋳塊を造ったのかの?」

 

お金(ヴァリス)の詰まった袋を突き出しながら、椿と呼ばれた女性が俺に近づいてくる。圧倒されたまま袋を受け取り、中を覗き込んだ後、バックパックに詰め込む体で空間収納に取り込み、金額を確認して、余剰分の白金硬貨20枚を取り出して鋳塊の傍に置いた。

 

「2800万ヴァリス、確かにいただきました」

 

「ほう。お主、(さと)いのう。少し見ただけで金額がわかるとは」

 

「ええ、それ以前に、まるで金額が判っていたかのようね」

 

「……適正価格ですから」

 

「それは間違いないわ。白金鋳塊が20個で1200万ヴァリス、魔銀鋳塊が20個で1600万ヴァリスの全部で2800万ヴァリスですからね。問題は今までに前例が無い純度の鋳塊の値段をあらかじめあなたが知っていたということなの」

 

「それはまあ、俺のスキルのおかげということで、見逃してもらえませんか?」

 

「見逃せば、鉱石類(これら)の鋳塊も収めてもらえるのかしら?」

 

両手に持った鉱石を振りながら、ヘファイストス様は微笑む。これは、ヴェルフの言ったようにバレてますね。

 

「とりあえず、鉱石類(それら)を手に取らせてもらってもいいですか。そうしないと造れないんで」

 

「それじゃあ受け取って頂戴。椿、もう3袋取ってきてくれるかしら」

 

「わかった。とりあえず鋳塊はこのまま置いておくが構わんのだな?」

 

「ええ。二度手間になるよりましでしょう?」

 

これはどう見ても超硬金属と最硬金属の鋳塊を造る流れである。手の中の鉱石を鑑定し、空間収納内に複製してからヘファイストス様に返すと、ますは超硬金属から精錬して、次に最硬金属を精錬する。それから複製を開始して、30の超硬金属鋳塊を複製したところで眩暈がしたので、上級魔力回復薬を取り出して飲み干し、次いで40の最硬金属鋳塊を複製してから再び上級魔力回復薬を飲む。そんなことを繰り返して、最終的に超硬金属鋳塊と最硬金属鋳塊を100づつ空間収納内にストックしたところで、消費した分の上級魔力回復薬を補充して作業を終了した。

 

超硬金属鋳塊は140万ヴァリス、最硬金属鋳塊は200万ヴァリスという適正価格だったので、今度は6800万ヴァリスという大金を手に入れることになったのだが、ヘファイストス様は普通に支払ってくれたし、それどころか定期的に納品をしてほしいと言ってきた。

 

「他のファミリアにも適正価格だったら納品しますけど、それでもよければ」

 

ヘファイストス・ファミリア(うち)が独占する方が問題になるからそれは構わないのだけれど、本当に定期的に納品できるのかしら?」

 

「まあ、迷宮(ダンジョン)の岩があれば、鉱石にできますから」

 

「……聞かなかったことにするわ。椿もヴェルフも、いいわね?」

 

「手前は良い金属(かね)が手に入るならば、協力を惜しまないぞ。お主が素材を回収するときは護衛をしても良いぞ」

 

「俺は同じファミリアだからな。八幡(こいつ)が狙われるようなことが無いようにするだけだ」

 

「手前は椿・コルブランドと申す。ヘファイストス・ファミリアの団長を承っているが、堅苦しいのは苦手な(ゆえ)、一介の鍛冶師として扱ってほしい」

 

「いや、それ無理」

 

「それがそうでもないんだよなあ。下っ端の俺にも気さくに話しかけてきたし」

 

「一応訂正しておくけど、椿は自分が目にかけた者に対して気さくなだけで、全員というわけではないわよ」

 

「え、そうなの?」

 

「まあヴェル吉のことはそれなりに気にはかけているからな。お主も、良い眼をしておる。名を聞いても良いか?」

 

「比企谷・八幡です。コルブランドさん」

 

「ほう、極東の者だったか。手前のことは椿と呼んでくれて構わん。よろしくな、八幡」

 

「はあ、よろしくお願いします。椿さん」

 

名前で呼ぶと満足したのか、軽く俺の背中を叩いた後、椿さんは鋳塊を持って部屋を出て行った。

 

「あなたが造れるのは鋳塊だけではないわね?」

 

「魔物素材も一度見せてもらえば、おそらくは」

 

「そのうち珍しい素材が手に入ったら差し上げるから、それを元にしていくつか納品してもらえるかしら?」

 

「わかりました」

 

「素材や鋳塊は、ヘファイストス・ファミリア(うち)以外に納品するならゴブニュのところだけにしておきなさい。あとはそうね、ヘルメスのところなら適正価格で買ってくれるわ」

 

「ゴブニュ様は鍛冶神様ですからわかりますが、ヘルメス様ですか?」

 

「ヘルメスのところには【神秘】持ちの眷族()が居るの。魔道具(どうぐ)を造るのに、いろいろ融通しているのよ。紹介状をあげるから団長のアンドロメダに渡しなさい。魔道具の作成に使うから、白金や魔銀は特に喜ばれると思うわ。それにいろいろな素材や魔道具を持っているから、見せてもらうのも勉強になると思うわよ」

 

「そんなこと言われると、ヘファイストス様の道具を見せてもらいたくなっちゃいますけど。天界の(・・・)ものではないのでしょう?」

 

「なるほど。地上の(・・・)ものなら融通が利くというわけね」

 

「まあ、そんなところです」

 

そんな感じで鍛冶神様と軽い腹の探り合いをして、ヘファイストス様の元から退出する。一応ヘスティア様にもバレたっぽいことを報告しておこう。

 

「ヴェルフにも戻ったら渡すからな」

 

「超硬金属と最硬金属をか!?」

 

「おう。お礼は迷宮(ダンジョン)で護衛してくれればいいぞ」

 

「わかった。いつでも呼んでくれ」

 

「じゃあ俺は、ちと郊外(そと)で素材を取ってくるわ」

 

「付き合うか?」

 

「いや、大丈夫。黒猫の爪(これ)もあるし」

 

「そうか。気をつけてな」

 

「おう」

 

ヴェルフと別れ、俺は昨日行った森へと向かうのであった。


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