ダンジョンに八雪を求めるのは間違っているだろうか   作:神納 一哉

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「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」の10巻96ページ途中からの超ご都合主義八雪です。

キャラ崩壊あります。

超ご都合主義ですので、苦手な人はご遠慮ください。


プロローグ

「すいません、あまり長居してもあれなので……」

 

そうとだけ答えて俺は立ち上がった。そして雪ノ下の前へと移動して彼女の前に手を差し出す。

 

「行くぞ」

 

「え?」

 

困惑した表情で俺を見上げる雪ノ下の手を引っ張って立たせると、そのままそれを引いて出口へと歩を進めた。

 

「ちょ、ちょっと比企谷くん、待ちなさい!」

 

「ヒッキー!?」

 

陽乃さんと由比ヶ浜が慌てて声をかけてくるが、そんなの知るか。まあ理由ぐらいは説明してやろうと口を開く。

 

「雪ノ下は俺が呼び出したのだから俺と出かける。それだけですよ」

 

「雪乃ちゃんはわたしが呼んだのよ」

 

「俺をダシにしてですよね。おとなしく使われる気はありませんよ。報酬として雪ノ下をいただいていきます。では」

 

由比ヶ浜に視線を向けても葉山の隣でおたおたしているだけだったので、見切りをつけて雪ノ下の手を引いて店の外へ。店を出てからも歩を緩めず、幹線道路沿いをずんずんと進みながら曲がり角を左に折れた。

 

「ひ、比企谷くん」

 

「行きたくないんだろ?」

 

「…ええ、まあ」

 

「なら、見つからないように住宅街にでも入っちまうか?」

 

「そうね」

 

「よし、じゃ、もう少し頑張れ」

 

「強引ね」

 

「嫌ならやめるけど」

 

「…嫌、ではないわ。ただ、その、もう少しスピードを落としてくれると嬉しいのだけれど」

 

そう言われたので一旦足を止める。すると雪ノ下はぎゅっと俺の手を握り返してから手を放し、そして腕を絡めてきた。

 

「しっかりエスコートしてね」

 

「お、おう。まかせろ」

 

慎ましやかな感触を腕に感じながら、ゆっくりと歩き出す。胸の高鳴りを感じ取られたりしないだろうかと気にしながら、俺は雪ノ下に話しかけた。

 

「由比ヶ浜は気付いていないみたいだったから置いてきたけど、どうする?このあと呼び出して遊びにでも行くか?」

 

「……いえ、いいわ。比企谷くんが気付いてくれたのだから」

 

「そっか。とりあえず住宅街に行ったとして、このあとどうする?」

 

「その前にお礼を言わせて。助けてくれてありがとう」

 

そう言って微笑む雪ノ下。上目遣いでそんな風に見られたら勘違いしちゃうからやめて。

 

「その、これからも、私を引っ張っていってくれるかしら?」

 

「……俺なんかでいいのか?」

 

「あなたじゃなければ、こんなこと言わないわよ」

 

「ん。じゃあよろしく頼む。雪ノ下」

 

「………雪乃と呼びなさい」

 

「は?何言ってるのお前」

 

いきなり名前呼びを強要されて、ノータイムで聞き返した。どこにそんな要素があったのかを声を大にして問いたい。

 

「私のことを引っ張ってくれるのでしょう?」

 

「おお、現に今も引っ張っているだろう?」

 

「……もしかして、違う意味で捉えられたのかしら?」

 

「なんだよ違う意味って?」

 

「私は告白を受け入れてくれたと思っていたのだけれど」

 

「告白、だと!?」

 

「ええ。私のことを引っ張っていってくれるのでしょう。一生」

 

「そういう意味だったのか。分かり辛いんだよお前」

 

足を止めて雪ノ下を見る。ぎゅっと俺の腕にしがみついて目線を合わせようとしない。

 

「…まあ、なんだ。俺なんかで良ければ、その、よろしくな。雪乃」

 

「よろしくね。八幡」

 

俺が名前を呼んだ瞬間、彼女は顔を上げて、それから頬を紅潮させて俺の名前を口にした。

 

それにしても、何この急展開。雪ノ下が助けを求めてきたから助けた。そうしたら告白されて恋人になった。はい、展開が早すぎてどうしたらいいかわかりません。

雪ノ下は俺の腕に頬擦りしてるし、どうしたらいいのこれ?

 

ちなみに心の中ではまだ彼女のことは雪ノ下呼びのままです。うん。急に変えるのは無理。

 

足元の石畳を見てから視線を上げると、目に入る景色に違和感を覚えてきょろきょろと周りを見回す。

 

さっきまで歩いていたのはアスファルトの舗装路だったはずだ。だが今居るところは石畳の上であり、高層マンションや道路標識、コンクリートの壁や生垣、電柱、自動販売機、自転車や自動車といった物の代わりに、煉瓦造りや石造りの建物が立ち並ぶ街並み、煙突から立ち上る煙、極めつけは中世の騎士のような鎧を着て剣を帯びた男性の後姿が目に入る。

 

ポケットからスマホを取り出すと、電波状況は圏外表示になっており、Wi-Fiも衛星電波も拾えそうにない。電源ボタンを長押しして電源を落とすと、再びポケットにねじ込んで雪ノ下に声をかける。

 

「…落ち着いて聞いてくれ」

 

「なにかしら?」

 

「周りを見てもらえばわかると思うんだが、どうやら俺たちは異世界ってのに来てしまったらしい」

 

「………少なくとも千葉ではないようね。でも、何故異世界と思ったのかしら?」

 

相変わらず俺にしがみついたまま、雪ノ下は辺りを見回してぽしょりと呟く。

 

「中世の鎧を着て剣を帯びた人があっちに歩いて行った。家の煙突から煙が立ち昇ってるから竈や暖炉はありそうだ。スマホは圏外で衛星電波も拾えない。後は気温が高いような気がするな」

 

「電柱は無いけれど街路灯はあるみたいね。でも電線が無いからガス灯かなにかかしら?確かに気温が高いように思えるわね」

 

「とりあえず情報収集だな。人の居そうなところ目指してみるか?」

 

「そうね。あの高い建物が街の中心かしら?」

 

俺たちから見て右斜め前方に結構な高さの建物が聳え立っている。何あれ、バベルの塔?

 

「とりあえず行ってみるか?」

 

「そうしましょう」

 

石畳の右端の方へ寄り、街の中央と思われる場所目指して歩き始める。無論、腕は組んだままだ。

 

少し歩いたところで、石造りの大きな邸宅の門から数十人の人たちが口々に何かを呟きながら出てきて、俺たちが向かおうとしている方向へと立ち去っていくのが見えた。

 

「……猫耳、しっぽ」

 

「犬耳も居たな。あとでかい斧を持った奴とか、耳の尖った人とか。マジで異世界だよな」

 

「そうね。実物を見てしまうと認めざるを得ないわ」

 

「気付いたか?あの人たち日本語を話していたぞ」

 

「ええ。確かに」

 

先ほど人々が出てきた邸宅の門の前で立ち止まり中を覗き込む。そこには邸宅の扉の前でこちら側を見て立ち尽くしている黒髪のツインテールの女の子と、そんな少女を取り囲むようにしている白髪の少年、茶髪の少女、赤髪の青年の後姿と、ツインテールの少女に向かって土下座をしている黒髪の着物を着た少女の姿が目に入った。

 

これって、どんな状況なの?修羅場ではないと思うが。

 

「君たち!もしかして入団希望者かい!?」

 

そのとき、いきなりツインテールの少女がそう叫んで俺たちの方へと駆け寄ってきた。雪ノ下はぎゅっと俺の腕を抱きしめて、顔を俺の肩に埋める。

 

「あー、ええと、その前に一つお尋ねしてもいいですかね?」

 

「なんだい?なんでも聞いてくれたまえ!」

 

「この世界について教えてくれますか?」


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