イナズマイレブン1!2!3!4!? 比企谷 八幡伝説 作:投げやーりー
円堂と木野、そして俺も加わった後、円堂は半田と言うまあまあのイケメンと染岡と言う不良みたいな奴を部員に加えた。俺も影が薄いと言うシンパシーで繋がった影野とゲーム談義で盛り上がった目金をスカウトし、選手6人体制で暫くサッカー部として活動した。
それにしてもスカウトはボッチの俺にすれば相当に厳しいものだった。正直話し相手に影野や目金がいる時点でボッチとしては相当に凄いことなのだが、話し相手が幾らでもいるリア充ウェーイwwwなやつらには一生理解できんだろうな。
特訓は新しく入ってきた奴らには円堂と同じく少しずつ重りを増やし負荷をかけていくトレーニングを実行し、1ヶ月後にはシュート、ドリブル、ディフェンスの必殺技を全員一通り覚えてもらい、更に基礎の練習を積み重ねて行った。
後はウェイト付きでミニゲームをしたり、河川敷でよくサッカーの練習をしている稲妻KFCと言う小学生サッカーチームと練習してサッカーの対人技術も磨いていく。
それにしても必殺技を教えるために俺が必殺技を身に付ける羽目に成るとは…
確かに基本は一緒だから使うだけなら簡単だが、どの技が誰に向いてるか等色々考えないといけないのは辛いな。それでもあいつらが必殺技を身に付けそれを自分のものへとしてくれれば俺はそれで良いと思っている。
だが、必殺技を数多く覚えたことで俺の戦略の幅も大きく広がった。
シュートチェイン、ロングシュート、シュートブロック、これを全部出来ると言うのは試合ではかなり有利だろう。
特にロングシュートはディフェンダーの俺にとって非常に使いやすい、長距離から放つという事でシュートブロックされる可能性や威力低下すると言う問題点があることは十分承知しているが、それでもシュートチェインによる勢いの強化は侮れるものでは無い。
実際練習試合で試したが、とんでもない威力になったのは言うまでもなかった。まさかあびせ蹴り程度の必殺技でも繋げることで河川敷のグラウンドに穴が空くと言う惨事になるなんてな…
それと、新入部員の特徴も何となく掴めてきた。
半田はポジションこそミッドフィールダーだが、ディフェンダーやフォワードも出来るらしく、俺としてはその経験を生かした上で、スタミナを鍛えてリベロとして活躍してもらいたいと思っている。
リベロであればフィールドプレイヤー全てを経験した半田にとって、上手く噛み合えば選手としての殻を破ることが出来るだろう。
後、以外に指導力が高く、KFCの小学生に人気がある。
染岡は見た目通りのストライカーかと思っていたが、パスやアシストがかなり上手い。
普段から特にこれらの練習をしている訳では無いことを考えると、これは天性の才能なのだろう。勿論ストライカーとしての潜在能力が低いと言うわけでも無い。
だが、パスやアシストの才能に気がついていないのと、気性の荒い性格とが重なり、自分だけで点を稼ごうとする場面が割りとあり強みを生かせていないのが痛いところだ。
個人的には、能力を加味してポジションはミッドフィールダーで活躍してもらいたいが、あの性格では難しそうなのでフォワードとして続投で良いだろう。
後は周りを見る能力とパスで攻撃を繋ぐ事を覚えてくれればこのチームには無くてはならない存在として活躍出来るだろう。
影野は俺より影の薄い奴だ。その薄さを生かした必殺技を習得しているため、ディフェンス、オフェンス共に活躍出来ている。本人はもっと目立ちたいらしいが、活躍は十分にしている、目立って無いだけで……
目金は運動不足な為、今のところ目立った活躍はしていない、これからの成長に期待と言ったところか…
弱音は吐くが、全くの根性無しと言うわけでも無いので
意外と化けるかも知れんな。
因みに必殺技のネーミング担当だ。
因みに俺があいつらに教えた技は、浴びせ蹴り、ひとりワンツー、そしてクイックドローと言う必殺技だ。
クイックドローは試合の動画でも度々使われている必殺技で、良く言えば使いやすい、悪く言えばショボい必殺技である。
どのような技かといえば、居合いの要領で構え、瞬時に加速しボールを奪う必殺技である。
それでも全く必殺技が無いよりはマシな状況だろう。
「おう、比企谷、ちょっといいか?」
そう俺に声を掛けたのは染岡である。
「ん?どうした染岡」
「比企谷は俺よりも強い必殺シュートをまだ覚えているんだよな?そろそろ教えてくれよ、あのレイブンショットとか」
成る程、そろそろ今覚えている浴びせ蹴りでは満足出来なく成ったか…、まあそうだよな、最初に弱い技って言ったからな……
使い込めば浴びせ蹴りでも強くなるが、そんなことするよりさっさと強いシュート覚えたほうが効率良さそうに見えるのは俺でも分かる理屈だ。
だが染岡さん、顔が怖いから詰め寄られると心臓に悪いんだよ、だから出来れば半径1m以内に近寄ってほしくない、マジで俺の寿命が恐怖でマッハだから。
それはそれとして、強さを求めて染岡は俺を頼ってきた。強くなるために考え始めたことは誉めるべきだろうが、それでは染岡は…
其だけじゃなく他のやつらも2流で止まることになる。
「そろそろいいか…」
「お、それじゃあ!」
だが、俺は染岡の期待を大きく裏切った答えを出す。
「染岡、いや、他のやつらにも言えることだが、そろそろ自分で必殺技作ってみたらどうだ?
一から作るもよし、今使える必殺技をもっと強力な必殺技に改造するもよし、俺に教えてもらっているだけじゃお前ら絶対強くなれんぞ?」
「あ?必殺技を作れったってそう簡単に出来るもんでも無いだろ?」
詰め寄んな染岡さん、顔が近い怖い。
「…例えば、俺のレイブンショットは当時俺がとある漫画に影響されてカッコいいと思っていた動物がカラスだったんだ。
だから俺はエネルギーをカラスの形にしてシュートした。」
「それが、レイブンショットになったって訳か?」
「ああ、だからお前もそんな感じでやればいいんじゃないか?別にカラスじゃなくてもお前がカッコいい、もしくは最強だと思える生物であれば、たとえそれが実際に居ても居なくても関係ないしな。要はそう言うイメージが大事なだけだし。」
うん、カッコ良かったよな…あの泥棒の王様。
まさかカラスと剣が一体化して必殺技繰り出すとは思わなかったけどな。
「……自分で作る…か」
「難しく考えなくてもいいぞ、お前はすでに浴びせ蹴りにクイックドロー、ひとりワンツーと3つも必殺技を身につけているんだ。お前は今までの練習で既に自分の力で必殺技を作れる。」
これは間違い無いだろう。身体能力的にも、技術的にもレイブンショットを編み出した時の俺を染岡を初め、サッカー部全員越えているからな。
後はあいつらの努力と発想次第だな。
「……へっ!お前にそこまで言われちゃ作るしかねぇな!必殺技をよ!すげぇの作って度肝抜かしてやるから覚悟してろよ!」
スゲーよ染岡さん、何て噛ませ犬的な台詞の数々なんだ。しかもそれを空気でも吸うように自然に話せるなんて……
まあ、やる気になってくれて良かった。多分、これから染岡に感化されてチーム全体で強くなろうと努力し初める。これによりチームメイト個人個人が個性を現し初めるだろう。そして、その個性を最大限に活かすサッカーを俺達で作って行きたい。
円堂に出会って、サッカーを初めて、人と関われて良かったと俺が思うようになるなんて考えもしなかった。
大半の人間なんて所詮は弱い奴を見つけ、見せしめにして嘲笑うことしか考えないものだと思っていた。そして、異分子をそれこそ杭を打ち二度と出てこないようしてくるような奴らばかりだと思っていた。
だが、少なくともこいつらは違った。俺の必殺技を見てもモチベーションを下げるどころか上げて、更に俺を信じて辛い基礎練習に付き合ってくれた。
そんな奴らだから俺はこいつらと一緒に居られるのだと思った。
それから、染岡に感化されたサッカー部は暇さえあれば必殺技を作り出すようになっていた。
円堂はノートの必殺技を幾つかの習得し、染岡も宣言通りにドラゴンクラッシュと言う必殺技を開発した。
半田も浴びせ蹴りから回転を加えることで発展させたローリングキックと言うイマイチパッとしない技を開発していた。
そして、俺もオーバーレイブンと言うオーバーヘッドキックで行うレイブンショットを開発した。
今までのレイブンショットであればカウンターシュートを狙えたのだが、このオーバーレイブンであれば、チェインシュートを行うことが出来るのである。
これにより、俺はシュートチェイン参加時の威力を上げることに成功したと言える。
因みに、これを見せると男子部員全員に囲まれた。
「スゲェ!なんだよ比企谷!今のレイブンショット!」
「いいなー、俺も比企谷見たいにもっとインパクトのある必殺技考えれば良かったぜ」
「チクショウ!比企谷お前!俺のドラゴンクラッシュよりカッコイイ技を編みだしやがって!こうなりゃ俺もドラゴンクラッシュを完璧にマスターしてもっとド派手な必殺技を作ってやるからな!」
「すごな、比企谷…俺ももっと目立つ必殺技を身に付けないとな…」
「比企谷君!なかなかのネーミングセンスじゃ無いですか!オーバーヘッドシュートのレイブンショットと言う意味と今までのレイブンショットと越えたレイブンショットと言う意味と掛けてオーバーレイブンだなんて!」
そう、男子部員のみだ。
木野はベンチで大笑いだ。
これがハーレムであればどれだけ嬉しかったことか……
これ以上ムサいのは勘弁して下さい。
そんなこんなで基礎練習、必殺技開発、稲妻KFCと試合のローテーションを繰り返していくうちに、俺達は2年になった。
新入部員は大柄でビビりな壁山、でやんすが口癖の栗松、アフロヘアーの宍戸、小柄だが中国拳法を習っている少林寺。
この四人が入り、サッカー部は後一人でサッカー部としての活動が可能となる。
さて、おさらいとして俺達先輩は一年に付き合い基礎練習を行うことにした。
スポーツ経験のある少林寺は基礎練習に早くも順応していったが、大柄の壁山はスタミナ不足とメンタル不足が問題で何度も挫けそうになっていたが、皆で励まし一緒に基礎練習を付き合うことで何とか基礎練習をこなすことが出来るようになった。
そして、基礎練習が一段落ついたら次は必殺技練習を行う。
一番苦心したのはここでも壁山だった。
シュートを体で受ける練習を怖がり、先ずは痛くないシュートを体で止める練習をしてもらい、わからないように徐々にボールのスピードを早くしていき、ボールを体で止めることが出来るようになった。
そしてレイブンショットを止める練習の時に、「チャーシュー麺3杯奢り」の条件を出すと、壁山は気合いを入れそびえ立つ壁を背後に出し、見事に必殺技を習得したのだった。
後日、俺は母が懸賞で当てた大盛カップ麺メガカップチャーシュー麺を3つ壁山に渡す。
後ろで後輩は「さすが比企谷先輩、せこいでやんす」
「嘘をついてないって言うのがまた比企谷先輩らしいよな」「ホントに比企谷先輩ってズル賢いよねー」
等と言っていた。栗、アフロ、弁髪の基礎練は重量2倍にしておくとして、肝心の壁山は「比企谷先輩の事だから適当に有耶無耶にすると思ってたッスけど約束を守ってくれて嬉しいッスー!俺、メガカップシリーズ好きなんッスよー!」
と、喜んでいたのでまあ、良いだろう。
そして、必殺技を身に付けた後輩達は、実力を発揮する場所として稲妻KFCとの試合を行った。
ミニゲームで学んだチームメイトの癖を後輩達も覚えていたので、初めての実戦にしてはかなり善戦してくれたと思う。
そして、練習のローテーションを後輩達に教えた後は、俺達は以前のローテーション通りに練習を行い実力を少しずつ身につけていった。
そうして、一ヶ月が経とうとしていたある日の事だった……