ウルトラマンティガ シンデレラギャラクシー   作:ヴェルミナティー

5 / 5
お久しぶりです。
投稿にだいぶ時間がかかってしまいました。



クラスメイトもアイドル? その3

()()()

 

怪獣出現の報を聞き、緊急出動したガッツウィングの機内。

その機体の機長にして副隊長の早苗は、簡易ブリーフィングにて報告された今回出現した怪獣の名前を復唱しようとしたが...

 

「姐さん、C.O.V(コッヴ)です。」

 

早苗の言い間違いを訂正したのは厳つい声の、しかし丁寧な口調のGUTS隊員【宮本 涼介】隊員だ。

 

「こっぶ」

 

「・・・ぶっ」

 

「あ?」

 

微妙にアクセントを間違える早苗、そしてそれを笑ってしまい彼女に睨まれてしまったのは早苗のバディ、年若い温和そうな青年【高雄 悠里】隊員だ。

 

「ひっ!?ごめんなさい!!」

 

慌てて謝る高雄隊員。

宮本隊員を始め、通信中の隊員達がくすりと笑う。

 

『みんな、もういいか?』

 

通信越しの島村隊長の冷静な声に全員が集中する。

GUTSの隊員達は出撃直後、現場到達まで軽口を叩き合う、しかし決してふざけてるわけではない。

それこそ命懸けかつ、誰かの命を守るため、全力を尽くすための緊張をほぐす為の手段なのだ。

だからこそ隊長も変に止めたりしないし、隊員達も切り替えをしっかり行う。

 

「ウィング1、了解。さぁみんな?行くわよ!」

 

『了解!』

 

 

 

 

GUTS出撃の数分前

 

「キュァァァァァァァァ」

 

 

「コッヴ...?」

 

僕はまたしても突如出現した怪獣と黒板に貼られた写真を見比べる。

間違いない、あれは...

 

「かっ、怪獣だぁぁぁぁぁぁ!」

 

誰かが大声で叫んだ。

その声をキッカケにクラスは大混乱に陥った。

みんなが冷静さを失い一目散に逃げ出す。

先生も慌てて制しようとするが、ダメだ。

 

「明人!俺たちも逃げるぞ!」

 

真が声を掛けてくる。

 

「あっ、うん!」

 

僕もそう応えるけど...

 

「キュァァァァァァァァ」

 

再び聞こえる怪獣の声、そして爆発音。

窓の外では怪獣による破壊活動が開始されていた。

 

「新城くん!円くん!」

 

「早よ!急いで!」

 

多田さんと堀井さんが教室のドアの近くから僕たちに呼びかける。

僕達も教室を出ようとするけど、

 

「うわっ」

 

学校全体がパニックに陥っていた。

逃げ惑う生徒達、避難だけで怪我人が出そうだ。

 

「とにかく行こう!」

 

真が先導する形で僕達も進む、が...

 

「わっ!」

 

後ろから来た生徒にぶつかられ僕は転んでしまった。

 

「円くん!?」

 

まずい、いやこれはチャンスだ。

 

「先に行って!後で必ず追いつくから!」

 

真たちは躊躇いながらも、

 

「絶対だぞ!」

 

と先に行ってくれた。

 

「よし」

 

騙した事になるけど、そうも言ってられない。僕は避難する生徒達の波に飲まれながらも、なんとか階段まで到達。そして屋上目掛けて走り出した。

 

 

 

 

「イタイのイタイの飛んでいけ〜」

 

「ミサイル発射をそう表現する人初めて見ました...」

 

機動力を生かした攻撃を仕掛けるガッツウィング1号の機内にて、やけに呑気なセリフを言うのはエースパイロット【高垣 楓】そしてそのバディ、眼鏡をかけた知的な印象な【田中 淳士】隊員だ。

 

今回の作戦に投入された新型機、そして避難未完了区域に注意を向かせないために機動性に優れたガッツウィング1号を駆る二人が先制攻撃を仕掛け、囮となる寸法だ。

 

 

「キュアアア!!」

 

 

「っ!来ます!」

 

「おっと!」

 

空から攻撃を仕掛けてくるガッツウィングが鬱陶しく思ったのか頭部から光弾を放ってくるコッヴ。

作戦の第一段階は成功だ。

 

そして、早苗達が駆る新型【ガッツウィング2号】も攻撃準備を行っていた。

 

ガッツウィング2号は機動力に勝るガッツウィング1号に対し、火力に優れた機体だ。機体前部に搭載されたハイパーレールガンから放たれる【デキサスビーム】はシュミレーションでの推定破壊力にて怪獣を一撃で殲滅可能との結果が出ているが...

 

「...うまくいってよね」

 

早苗はふとそんな事を呟く。

シュミレーションのデータと違い、生き物は常に予想を超えた行動を起こす。ましてや命が関わったなら尚更だ。

相手はただでさえ常識はずれの怪獣。

不安は拭いきれない。

 

すると、

 

「大丈夫ですよ。副隊長。」

 

顔に不安が出てしまったのだろう。

それを察した高雄隊員は笑顔で早苗にそう声をかける。

 

「...えぇ。それもそうよね。」

 

早苗も笑いかえす。

 

「やってみないとわかんないわよね!」

 

ちょうどコッヴがこちらに背を向けている。チャンスは今だ!

 

「ハイパーレールガン展開、エネルギーチャージ」

 

「了解。エネルギーチャージ」

 

宮本隊員の操作で機体前方部分が割れる形になり起動するハイパーレールガン。

エネルギーチャージ完了までは、もう少し。

 

「ウィング2、もう少し耐えて!」

 

『ウィング2、了解で...あらっと!」

 

次々放たれる光弾を巧みな操縦技術で回避する楓。

 

「エネルギーチャージ、99...100%!いけます姐さん!」

 

「了解!機体、射撃体勢よし!発射準備完了!高雄くん、トリガー任せるわよ!」

 

「了解!」

 

ロックオンサイトにコッヴを捉える高雄隊員。

そこで...

 

「キュオォォォ」

 

野生の勘かガッツウィング2号の方を向くコッヴ。

 

だが!

 

「チィッ、止めるわけいかないでしょ!デキサスビーム、発射!!」

 

「発射!」

 

高雄がトリガーを引くと同時に放たれる黄色い閃光は一直線にコッヴの胴体に向かって進んでいく。

確かな危機を感じたのだろう。咄嗟に両腕を盾にしたが...

 

「「ぶち抜けぇぇぇぇぇぇぇ」」

 

防ぐことは叶わない。

デキサスビームの一撃はコッヴの両腕を粉砕し、その胴体をぶち抜いた!

 

 

 

 

 

「あっ!」

 

生徒の波を潜り抜け屋上に、たどり着いた僕の目に映ったのらはGUTSの戦闘機?によって腹部を撃ち抜かれるコッヴの姿だった。

特徴的だった鎌の様な両腕をぶらりと下げそのまま倒れるコッヴ。

 

「終わった、の?」

 

呟きながら、僕自身も力なく崩れる。

 

「「「わぁぁぁぁぁぁ!!!」」」

 

下から歓声が聞こえる。僕もみんなと合流しないと。

 

「よかったぁ」

 

・・・なんて、言わなきゃ良かった。

 

 

「キュァァァァァァァァぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「うそーん」

 

復活、した?

 

 

 

コッヴ復活の少し前

 

「たかだか旧人類がなかなかやりますねぇ」

 

白髪の青年はビルの屋上にて薄い笑みを浮かべながら倒れ伏せるコッヴを見届ける。

 

「もっとも、あくまで想定内ですが」

 

青年は懐からカプセルを、取り出し銃型の装置に装填する。

 

『超コッヴ』

 

「さぁ、超コッヴ。アンコールですよ!」

 

電子音声が怪獣名をコールする中、青年はコッヴに銃型装置を向けトリガーを引いた。

 

 

 

 

「キュァァァァァァァァぁぁぁぁぁ!!!」

 

「そんな!」

 

「嘘だろ...!?」

 

ガッツウィング2号の機内でもコッヴの復活に対しての動揺が広がる。

さらに...

 

『ウィング1、聞こえますか!早苗さん!』

 

早苗達の元に届く通信。

 

「晶葉ちゃん!どうしたの!?」

 

通信の主はTPCの特別技術顧問【池袋 晶葉】だ。

 

『奴め、復活しただけじゃない!エネルギー反応が上昇している!』

 

晶葉の指摘から早苗はもう一度コッヴに目をやる。

 

砕かれたはずの両腕はより大型となり、頭部の角も大型化。細部も異なっている。そして怒り狂ったかの様に光弾を乱射、被害を拡大させていく。

 

「何よ、あれ...」

 

『言うならば...超コッヴ』

 

晶葉がつけた名は奇しくも正式名称だった。

 

「サ◯ヤ人じゃないんですよ!」

 

「なんでも(スーパー)つけるなよな!どうします、姐さん!」

 

早苗の答えは一つだ。

 

「攻撃再開よ!ウィング2も、いけるわね!!」

 

『もちろんイケイケで()()ますよ』

 

ウィング2、楓達も賛成だ。

 

「隊長!」

 

島村隊長に最終確認をする早苗。

勿論返答は、

 

『了解した。増援も要請している、奴をなんとしても食い止めろ!

 

ただし、絶対死ぬな!』

 

決まっていた。

 

「了解!総員攻撃...」

 

開始、と続けようとしたところで...

 

「副隊長、あれを!」

 

高雄隊員が指差す先には眩い輝きが。

 

「あれは...」

 

光が人型を形作り、そして現れる光の巨人

 

『ウルトラマン...ティガ』

 

通信越しに楓は呟いた。

 

 

 

 

「デュワ!」

 

超コッヴに向き合う光の巨人、あらためティガがファイティングポーズをとる。

 

「キュァァァァァァァァ」

 

超コッヴは突然現れたティガに対して光弾を撃ち放つ。

 

「デヤ!」

 

光のバリアを張って光弾を受け止めたティガは全弾を受けきると同時にバリアを解除して突っ込む。

そして超コッヴに左右の拳を叩きつける。

 

「キュオォォォン」

 

あまり効いていないのか、少し怯むだけの相手にティガはさらに蹴りを叩き込む。

 

「キュァァァァァ」

 

流石に効いたか、追撃を加えようとするティガだが、

 

「キュォォォォォ!」

 

逆に迎撃戦と左腕を振り下ろす超コッヴ、ティガは冷静に回避するが...

 

「グッ!」

 

絶やさず右腕を振るいティガにぶつける超コッヴ。そのパワーに思わずふっ飛ばされるティガ。

 

さらに倒れたティガに超コッヴは光弾を乱射。

ティガは爆炎に包まれてしまう。

 

それを見届けた超コッヴは再び街に目をやりそして、

 

こちらを見ている学生達を見つけた。

 

「キュァァァァァァァァ」

 

学校に前進する超コッヴ。

二機のガッツウィングがその前進を阻もうと攻撃を加えるが効果は薄い。

 

 

 

「あれ、近づいて来てない?」

 

こちらに前進してくる超コッヴに気付いた李衣菜が漏らす。

 

「近づいとる、ね...」

 

和美も続ける。

 

「...逃げろぉー!!」

 

怪獣と戦う巨人と言う光景を見ていた学生達が真の叫びで一斉に逃げ出す。

 

怪獣災害は少なくともこの日本で遭遇することが長らくなかったのだ。

ここにいる生徒や教師達だって怪獣災害の経験者はまずいない。

 

余りに非現実的なことに釘付けになってしまったのだ。

 

そんな中。

 

「あっ!」

 

逃げていた李衣菜が急に逆走する。

 

「多田!?」「リーナ!?」

 

慌てて彼女を追いかける真と和美。

 

李衣菜が向かった先には混乱の折に怪我をして倒れた女子生徒がいた。

 

男手の真が抱えて逃げようとしたその時。

 

「...あっ」

 

誰が漏らしたか、あるいは全員か。

超コッヴがこちらにの数発の光弾を放った。

 

迫り来る死に伏せることしか出来ない4人。

何発かは校舎に、そして1発は...

 

 

 

「・・・あれ?」

 

顔を上げる李衣菜の目に映ったのは。

 

 

「デュア」

 

 

自分たちを庇うように膝をついた銀と紫色の巨人だった。

 

 

 

(間に合った。)

 

ティガの中の明人が呟く。

 

学校への攻撃を察したティガは咄嗟に空戦、スピード形態。

【ティガ スカイタイプ】にタイプチェンジし、超コッヴの攻撃の前に躍り出たのだ。

 

 

「助けて...くれた...?」

 

 

ティガはそのまま李衣菜達の方を見て軽く頷くと、

 

「デュア!」

 

超コッヴに向き合った。すでにカラータイマーは鳴っている、だからどうした!

 

「キュァァァァァ」

 

ティガに向けて光弾を乱射する超コッヴ。

その攻撃をティガは手刀や蹴りで次々と砕きながら前進する。

 

そして、

 

「デュアァ!」

 

超コッヴの前でジャンプすると、飛び回し蹴りを炸裂させる。

 

「キュォォォォ...」

 

大きくよろめく超コッヴ、しかし倒れはせずに腕を振るいティガを吹き飛ばそうとする。

バク転で回避するティガだが、距離が開いてしまった。

 

「キュォォアァァァ!!」

 

再び頭部から光弾を放とうとする超コッヴ、だが。

 

 

「させません!」

「ありったけ、撃ち込めぇぇぇぇ!!!」

 

 

二機のガッツウィングが超コッヴの頭部に全力攻撃。

攻撃阻止に成功した!

 

「デュア!」

 

腕をクロスさせ、マルチタイプにチェンジしたティガはそして、

 

「ハァァァ...デュワァァァァァァ!!」

 

エネルギーチャージからの必殺技【ゼペリオン光線】を炸裂させた!

 

その閃光は超コッヴの体に直撃し、

 

「キュォォォォォ...」

 

大爆発させたのだった。

 

 

 

 

「ウルトラマン...」

 

ティガの周りを旋回するガッツウィング2号。

その機内で早苗は呟く。

すると...

 

 

「・・・」

 

 

言葉は発しないがコクリとガッツウィングに対し頷いたティガはそして、

 

 

「シュワ!!」

 

 

空へと飛び去っていった。

 

「ありがとう、なのかしらね?」

 

早苗は小さな笑みを浮かべた。

 

 

 

 

「円くーん!」

 

「明人ー!!」

 

「どこやぁー!」

 

李衣菜達ははぐれたままだった、明人を探していた。

校舎は破壊されてしまっている、もしかしたらと言う不安が3人を襲うが...

 

「おーい!おーい!」

 

「あっ!円くん!!」

 

手を振りながらみんなの元に駆け寄る明人に3人もまた、笑顔で向かうのだった。

 

 

 

 

 

その日の夜、TPCより公式発表があった。

それは謎の光の巨人を今後【ウルトラマンティガ】と呼称、油断はできないが少なくとも敵対的な存在ではないと言う発表だった。

 

 

「ウルトラマン...ティガ...」

 

明人は、人々がくれたその名を噛みしめるのだった。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。