＊小説掲載サイト「小説家になろう」に重複投稿しています。
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あきっぽい人
あきっぽい人
はじめると
すぐやめる
別のことをはじめても
すぐやめる
こころ変わりの激しい人
あきっぽい人
はじめると
中途半端でやめる
他のことも
中途半端で終える
なにもかもが中途半端な人
あきっぽい人
たくさんのことを
おわらせる
あきっぽい人
たくさんのことを
中途半端ながらも知っている人
あきっぽい人
たくさんのことを
すぐやめる
あきたら
すぐやめる
自分の自由を理解している人
あきっぽい人
中途半端で
本格的な人には
追い付けない
そして諦める
自分の実力を理解している人
あきっぽい人
道を誤り
黒に染まった
中途半端で
すぐに引き上げられた
悪人にもなれない人
あきっぽい人
自立して
会社に入った
中途半端な知識で
必死にしがみついた
中途半端なことをいかせる人
あきっぽい人
中途半端に出世して
中途半端に家族を持った
中途半端に仕事をして
中途半端に家族と過ごした
中途半端に楽しむ人
あきっぽい人
息子を育て
自立させた
気付けば中年
中途半端に年をとった
あきっぽい人
中途半端に仕事をこなし
中途半端に妻と過ごし
中途半端に友人を持ち
中途半端に部下を育てた
あきっぽい人
きづけば引退
皆に泣かれた
中途半端な男は
中途半端ながらも必死に過ごした
不快ではない中途半端な距離から
自分に接し
中途半端ながらも自分の失敗をカバーし
しかし決して怒らないわけではない
この男が皆は好きだった
あきっぽい人
余生は妻と過ごした
中途半端に楽しんだ
あきっぽい人
愛した妻に先立たれ
自分も後を追うように旅立った
あきっぽい人
なにもかもが中途半端だった男を
たくさんの人が好きだった
中途半端ながらも人に接し
決して不快ではない思いを相手にさせた
そんな男が好きだった
あきっぽい人
なにもかもが中途半端だった男は
自分がなにもかもが中途半端であることを理解し
その中で必死に過ごした
あきっぽい人
男は中途半端であることを
誰よりも理解していた
男の中途半端とは
ただの普通であった
普通を何よりの幸せと考え
人生を楽しく過ごせる人
あきっぽい人
男は確かにあきっぽかった
それは結局なおらなかった
それでも男は必死に生きて
捨てないものもたくさんあった
あきっぽい人
男の理想は高くなかった
理想が高ければ高いほど
自分のような人間は
苦しまなければならないと知っていた
あきっぽい人
男の葬式はささやかだった
それでもたくさんの人が来た
男は高みを目指さなかった
男は必要以上を欲さなかった
それでも彼は必死に生きた
周りに迷惑を散らさないように
男なりの努力だった
そんな彼を
みんなは記憶の片隅にのこした
あきっぽい人
自分のことを理解して
自分にあった目標を見つけ
自分の幸せを見つけた
幸せだけは放さなかった
あきっぽい人
男は言った
自分の人生なんだから
好きにすればいい
何を始めたっていい
何を捨てたっていい
でも幸せだけは
放しちゃだめだ
とくに俺みたいな人間に
幸せなんて
めったにやってこないから
男は一つだけ間違えた
その男の幸せは
男自身が手繰り寄せ
何度も何度も手繰り寄せ
そうしてつかんだ
ものなのだから
最後まで読んでいただいた方。
ありがとうございました。