取り残された軍人と潜水艦   作:菜音

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今回はシリアスです。
後、いつもより長いです。


悲劇の姫 9日目

 

 

ここは、軍人の取り残された島ではなく、大陸に近い所にある島。

 

 

この島は現在、深海棲艦に占領されています。

 

 

この島には人間で言うところの深海棲艦の研究・養成施設が存在しています。

 

 

 

アジア諸国による連合軍を打ち破り、アジアに進出した深海棲艦は順調に駒を進めて遂に日本の領海に迫った。

 

 

そこで日本の国防軍が抵抗を試みた海戦が行われた。

 

 

当初、深海棲艦側はこの戦いに負けるとは思っていなかった為駆逐艦クラスを中心とした軽装艦隊を向かわせた。しかし、予想外の事が発生した。

 

この海戦に参加していた黒瀬 凪人が艦娘のドロップを成功させ、艦隊は損害を受けて撤退。

 

アジア侵略における始めての敗北だった。

それ以降、人類側に艦娘が参戦したことにより相手を軽んじていた深海棲艦は次第に押されはじめた。

 

 

 

これに対抗するべく深海棲艦は新型艦を建造する事にした。

 

この島はその為の施設の1つである。

 

 

 

 

施設の一角にある部屋

 

 

ここにはいくつかの水槽が並べられていて中には怪しい液体に満たされていて白い髪、白い肌の小さい人型が丸まっていた。

 

 

そして、そこには研究員である少し形状の異なるチ級達が作業していた。

 

そこに1人の深海棲艦が入ってきた。

 

 

「首尾ハドウダ?」

 

彼女は集積地棲姫。この施設のボスである。

 

「ハッ!順調デゴザイマス!」

研究チ級の一体が答えた。

 

「ソウカ‥‥、潜水艦初ノ姫ハモウマモナクカ。」

 

 

この区画では潜水艦クラス初の姫級の研究を行っていた。そして、ここの水槽にいる子達こそが成長して、

人類から潜水棲姫と呼ばれる事になる深海棲艦になるのである。

 

 

「フフフ、コレラガ完成スレバ‥‥、フフフフ!」

集積地棲姫はメガネに触れながら怪しげな笑みを浮かべます。

 

 

 

丁度その時でした。

 

砲撃音が鳴り響きます。そして軽く揺れを感じます。

おそらく何処かに命中したのだろう。

 

集積地棲姫は急いで指揮所に戻ると部下に状況を確認します。

 

「何ガ起キタ?!」

 

「ニンゲンガセメテクマシタ!」

 

「馬鹿ナ!ココハ我等ノ支配圏!艦娘ドモハマダ‥‥」

 

「ソレガ、セメテキタノハフツウノカンタイデス!」

 

 

 

 

 

この基地を攻撃したのは中国をはじめとするアジア連合軍の残党艦隊である。

 

先の海戦で敗れたものの一矢報いてやろうと挑んできたのである。

 

 

連合軍司令「負けても構わん!我等アジア人海兵の意地を化け物どもに見せてやれ!!」

 

 

「ヤロメー!!資材ガ!施設ガ!燃エル!!コレイジョウヤラセルナ!!」

 

すぐさま基地の艦隊や試作深海棲艦が迎撃を初めて連合軍は成す術もなく壊滅、しかし、彼等も意地を見せた!

 

「クッソ!喰らえ!」

 

轟沈寸前のミサイル巡洋艦が苦し紛れにミサイルを発射!

 

思わぬ攻撃に対象しきれなかったミサイルの1発が潜水悽姫の養成区画に命中した。

 

 

 

ミサイルが命中した区画は損害を受けていた。

機材は壊れて炎上し、煙に包まれていた。

 

しかし、通常兵器は深海棲艦には効かないので研究員は無事だったが彼等は戦闘仕様ではないためか、衝撃で吹き飛んでいた。

 

そして、養成水槽の1つが割れてしまった。

 

中から液体が流れ出て、一緒に中の個体も出てしまった。

 

「がは!かは!、はぁ、はぁ‥‥」

 

彼女は生まれて初めて自分で呼吸をしたが、そこは炎と煙に包まれた部屋。

 

ちゃんとした生まれ方をしていたら、しっかり成長してから生まれていれば問題はありませんでした。

しかし、彼女は未成長で生まれてしまった。

そして、まだ生まれたての彼女には厳しすぎた。

 

「ウゥ!ゴホン!こほ‥‥」

 

強い熱と煙を思いっきり吸い込んでしまった彼女は喉を焼いてしまったようだ。

 

(く、苦しい?!の、喉が!)

 

彼女は痛さのあまり首を掴みながらもその場から逃げようとしました。

 

しかし、彼女の不運は続いた。

 

2発目のミサイルが隣の区画に落ちたのでした。

直接の害はありませんでした。

しかし、その爆発の衝撃波がまだ幼い彼女を襲うのだった。1度目の直撃や2度目の衝撃波で壁は崩れていて、彼女は海に放り出されてしまった。

 

 

 

(た、助けて!誰か!)

 

彼女は姫級。言葉を発することはできる。しかし、彼女は喉をやられた為声を出すことは出来ない。

 

彼女は成す術もなく波に揉まれて、海流に流されてその海域から姿を消してしまった。

 

 

 

 

「姫様、消火オワリマシタ。」

 

「ソウカ、デ、被害ハ?」

 

艦隊を全て海に沈めた後、集積地棲姫は被害の確認をしていた。

 

 

「各区画ガ少々ヤラレタグライデス、タダ‥‥、」

 

「タダ?」

 

「潜水艦ブロックノ個体ガ一体消失シマシタ。」

 

「フン、水槽カラ出テシマッタ以上、潜水悽姫ニハナレナイ‥‥、可哀想ダガ放ッテオケ!」

 

「ハイ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どれだけ流されたであろうか?

わからない。まだ生まれたばかりなのだから‥‥。

 

深海棲艦は建造される際にある程度の知性は与えられる。しかし、知識と言うものはそれから教えられるか自分で知っていくしかない。

 

 

何も分からず放り出されてしまった。

 

 

 

 

 

大分流されてきた気がする。

ここは、どこだろう?

 

どこかの島の浜辺のようです。

しかし、彼女は動けません。

 

彼女は完全に衰弱しきっています。

おそらくこの幼い深海棲艦はこのままでは死んでしまうであろう。

 

 

 

(だ、誰か‥‥た、すけ、て‥‥)

そこで彼女の意識は完全に途切れます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この生活が始まってそろそろ1ヶ月

 

 

 

私はいつも通りに見回りをしています。

カナとソラはお昼寝しています。

 

(あの二人も少し身長が大きくなったからなぁ‥‥、そろそろ泳ぎの練習でもさせるか‥‥)

 

と考えてどこで泳ぎの練習をするか海沿いを回っていると港から大分離れた所に浜辺がありました。

 

(お!浜辺だ!ここならいいかもしれない。)

 

あ!でも自分も泳げない‥‥、等と考えていると、人が倒れていました。

 

「あ、あれは!?」

 

私は急いで駆け寄りました。

 

しかし、それは人ではなくいつものパターンでした。

白くて長い髪、病的に白い肌、おそらく深海悽艦であろう。しかし、この子はよく見ると白い肌は火傷が酷くて痛々しく、髪はボサボサ、そして見るからに分かるほど衰弱しきっていた。

 

「息は‥‥ある!」

だけども弱々しい、今にも消えそうだ!

 

私は彼女を抱き抱えると急いで拠点に戻った。

 

 

 

 

 

「(-.-)Zzz・・」ごしごし

 

「( ̄O ̄)zz」ほぁぁ

 

戻ると丁度二人は目を覚ましていた。

軍人が帰ってくると寄ってきたが抱えている少女を見るとあわてふためいてひれ伏してしまった。

 

「(>‐<)~~~~~」ヒェー

 

「(>_<)」びくびく

 

 

 

とりあえず布団をしてい彼女を寝かせてあげた。

まずは体温を戻さないと!

 

次に軍施設跡から持ってきていた点滴をうつ器具を用意した。果たして、深海悽艦に効果があるか分からないけど‥‥、出来うることはしよう!

 

 

 

それからは大変だった。

彼女は一向に意識が戻らず、その間に彼女の火傷を直す事にした。薬を塗ったり、包帯を巻いたりと‥‥。

 

さらに彼女は高熱を出したので濡らしたタオルなどで汗を拭いてあげた。この手の熱は無理に冷やさない方が良い。

 

私は衛生兵ではないのであまりしてあげられることはありません。

 

後はこの子に頑張ってもらうしか‥‥

 

それにしてもこの子は一体?

おそらく今までの流れからするとこの子も潜水艦だろうけどこんな子、資料で見たことない。

 

それに二人の彼女を見たときのあの驚きよう‥‥今確認されている潜水艦クラスで最上位はソ級‥‥。

 

そのソラですらあの畏怖です。

そしてカナのソラの時以上の反応‥‥。

 

もしかして、新型!?

 

 

 

 

少女はうなされていた。

夢に出るのは燃える部屋、そして暗い海。

目覚めると突然焼かれて、そのまま何も出来ずに海に流された続け‥‥。

 

苦しい‥‥、苦しい‥‥、苦しいよ‥‥。

 

誰か、助けて!

 

 

すると少しずつ光が差し込んできます。

彼女は光に包まれながら感じ取りました。

 

 

助かった‥‥?

 

 

 

 

 

目覚めるとそこは浜辺ではなく、知らない空間です。

隣を見ると人間があぐらをかいて寝ていました。

 

 

私は本能的に距離を置こうとしました。

しかし、体が思うように動きません。

 

相手は人間‥‥、本能的機能が敵と判断します。

 

しかし、心のどこかでこの人は敵ではないと感じました。

 

なので彼女は恐る恐る人間の服の裾を引っ張っりました。

 

「う、うん?」

 

人間が目を覚ましました。

 

「お、お前!良かった!!目が覚めたのか?!」

 

どうしてこの人間は嬉しそうなのだろう?

私がどうなっても関係ないはずなのに‥‥。

 

 

「お前私の言葉が分かるか?」

 

人間が訪ねてきた。私は答えようとしたが声がでない。

まだ喉がやられているようだ。

 

「‥‥、‥‥けほん、けほん」

 

「あまり無理はするな。喉は酷い火傷でまだ当分は直らないと思うから。」

 

私は頷いた。

 

「言葉は‥‥分かるみたいだな。所で全身酷い火傷だったけど何があった?」

 

私はうつむいた。私も何が起きたのか分からないのだから‥‥

 

「ああ!声も出ないのに酷な事を聞いてごめんね?でも、よく頑張ったな。」

 

そういうと人間は私の頭に手を置くとなで始めた。

 

「!」

はじめは何をしているのか分からないかった、

だけど次第に気持ちいいと思い始めた。

 

「苦しかったな。」

 

こくこく、苦しかった‥‥

 

 

「辛かったな。」

 

こくこく、辛かった‥‥

 

 

人間のなでなでが気持ちいいのと今までの思いが爆発して、気付いたら私は人間の懐で泣いていた。

 

 

人間はずっと私を抱きしめてなで続けてくれた。

そして、一通り泣き止んだ所で尋ねてきた。

 

「お前、行くところあるか?」

 

私は首を横に振った。

 

 

「そうか!ならここにいる?」

 

私は驚いた、そして喜んだ。こんか優しい人の所ならば喜んでお受けする!

 

「(〃⌒ー⌒〃)」コクリ!

 

「そうか!ならこれからよろしく!」

 

(さて、名前は何にしようか‥‥、この子は恐らく新型だから今までのみたいな付け方できないし‥‥。)

 

そういえば、この子カナやソラと違って髪は真っ白です。全体的に白いなーこの子‥‥。

真っ白、まっしろ‥‥、うん!マシロにしよう!

 

「君の名前なんだけどマシロでもいい?」

 

人間はそう聞いてきた、私は考えた。

そういえば、私には私を示す名前がない。

このさえだ、この人に決めて貰うのも悪くない!

 

「(〃^ー^〃)」コクリ!

 

「良かった、気にってもらえた!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして軍人の元に新しい潜水艦が加わりました。

 

 

潜水悽姫になれなかったなり損ない。

 

しかし、のちに独自の発展の遂げていく彼女らの事を後にこう呼ぶ。

 

 

 

 

 

「潜水新棲姫」と‥‥。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




御待たせしました。
待望の?潜水新棲姫ちゃんです!

本当は潜水棲姫を出したかったのもあるけどね。

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