今回は終戦前の軍人のハロウィンでのお話です。
カナ達は出てませんが軍人さんが仕事しているので見てあげて下さい。
ハロウィン
それは毎年10月31日に行われる秋のイベントの一つである。
元々は古代ケルト人が起源と考えられている祭であり秋の収穫を祝い、悪霊などを追い出す宗教的な意味合いのある行事であった。
ところが、現代では特にアメリカで形を少し変えた行事として定着し、本来の宗教的な意味合いはほとんどなくなっている。
子どもたちが魔女やお化けに仮装しては近くの家々を訪れて「トリックオアトリート」と言ってお菓子をもらったりするものである。
これについてはキリスト教からは容認から批判まで様々な見解があるそうだけど詳しくは知らない。
これをアメリカから輸入する形で受け入れた日本ではさらに独自の変化を遂げる。
もはや原型がなくなり大人から子供まで、みんながお化けや魔女、果てはアニメのキャラととにかく仮装するイベントになっている。
だからこの時期になると都市では仮装する若者達であふれ賑やかになったものです。
しかし、このハロウィン現象とも言うべきこれはある時期を境に一時期消滅した。そう、深海棲艦の出現である。
現れて数ヶ月で欧州を壊滅させたこの化け物の群れ。
これを受けてもまだ現実味を得なかった日本人はハロウィンをはじめとするイベントを心待ちしてたし企業もそれに向けた商戦の事ばかり考えてたのかもしれない。
けれど、深海棲艦の侵攻は早く、欧州を喰らうとそのままインド洋、アジアへと迫る。次第に日本へと押し寄せたった一年で全ての行事が消え失せた。
それからも長い長い戦争の中、辛うじて日本本土への攻撃はなかったもののいつ敵が来るかわかない時期が続いた。これは恐怖や不安によって心の余裕のない‥‥人々が暗い顔で過ごし日々が続いた事を意味したと、どこかの批評家が後にはしゃべってたよ。
そしてついに軍や鎮守府の奮戦の甲斐があり、深海棲艦を本土から遠ざけることに成功する。
次第に良くなる戦況は人々の表情を明るくし徐々にゆとりと安心を取り戻した。
政府の頑張りで治安は守られ、軍の犠牲によって都市自体は破壊されなかった日本である年の10月31日に再びハロウィンの仮装をする人々が現れはじめた。
ところが、黒瀬提督が指揮を取る初代鎮守府の作戦失敗による大敗で再び失われたのである。
私が日本に生還して一年‥‥
今年もハロウィンの季節になってきた。
「どうしてこんなことに‥‥」
私は現在、神戸で魔女の格好をしていた。
いや、別に遊んでいるわけではなくこれも仕事です。
私は艦娘達と神戸で行われている海軍×ハロウィンのイベントをしている。
何でも政府と軍が企画したものだそうだ。現在の白神提督の鎮守府の活躍で再び戦況が好転している。
国民に安全であることを印象付ける為にかつて自然に復活して安定の象徴ともなったハロウィンを今度は意図的に復活させようと言うものだ。
奪われたハロウィンを取り戻せ!
をキャッチコピーに政府がイベントをセッティング、軍が盛り上げるとの事だ。
大方、政府はハロウィンをきっかけに国民に各イベントの復活、国内の生産や消費の再生、軍は宣伝効果でも期待しているのだろう。
たしかに、艦娘みたいな可愛い子達が行けばイベントも盛り上がりそうだし、何よりかつて失敗した艦娘へのイメージ回復や理解を深めるのにも打ってつけかもね。
「まぁでも艦娘達だけだと何か問題があると不味いから同伴してくれ。」
と上からの命令です。
私、海軍じゃなくて陸軍なのに‥‥
「ヘイ!雪村シスター!浮かない顔してマース!せっかくのイベントですからスマイルネー♪」
私の隣を歩くのはドラキュラに仮装した金剛である。
金剛は私の従妹が鎮守府で仕事していて彼女が私の事を姉さんと呼ぶから姉妹だと勘違いしている。
「楽しそうだね金剛は。」
「ハイ!普段はこんな風に一般の人とおしゃべりするチャンスなんてありませんからネー。それに」
「ああの!写真とらせてください!」
お、仮装した女性だ。
「いいですヨ。twoshotでとりますカ?」
「はい!是非!」
私達が歩いていると来場者が金剛に握手や写真を求めて来る。何故か女性ばかり‥‥
「ありがとうございました♪」
「いえいえ、イベントをEnjoyしてくださいネー♪」
お礼を言って去る女性客と笑顔で応対する金剛。
女性はかなり嬉しそうでウキウキだった。
「こんな風に喜んでもらえて私はハッピーネー♪」
金剛も楽しそうだ。
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それからも金剛や比叡、熊野に鈴谷と大型艦のみんなの様子を見て回った。艦娘にちょっかいをかける不貞の輩がいるやと思ったけど‥‥
ちなみに比叡は海賊、熊野はキョンシー、鈴谷はゾンビである。
「金剛達は何故か女性ばかり集まってるな、熊野達は子供ばかりだったけど‥‥」
この様子だと彼女らには問題は無さそうだ。
さてさて、他の子達の所に行くか‥‥
熊野と鈴谷の下を後にして他の艦娘を探しに行く。途中艦娘に間違われて握手を乞われたりしながらその道中で私はある仮装に目を奪われた。
「まさか!」
今のは深海棲艦!それも潜水艦の‥‥
「カ級!?」
私は走って近づいたがよく見るとそれはただの仮装だった。そのカ級の人以外にも深海棲艦の仮装をしている人が多い。
お化けみたいと言う意味ではあながち間違いではない。それに深海棲艦の潜水艦は特に幽霊ぽいしね。
たまに近くを通った軽巡の子が深海棲艦の仮装の人に絡んで行く。艦娘達も深海棲艦の仮装に驚きつつも面白がっているようだ。
むこうでは「潜水艦だ!退散!」「あれー」
なんて馬鹿騒ぎしているよ。
「カ級か‥‥」
カナ達‥‥元気にしているかな?
潜水艦の仮装を見ていると無性にカナ達の事を思い出してしまう。なんでかな、カナ達とは全然似てないのに‥‥
いつか、あの子らをここに連れて来てもこれならバレないね。そのいつかが来るのかな‥‥
「本来悪霊を追い払う行事で深海棲艦の格好をするなんて、まるで深海棲艦を追い払っているみたい‥‥」
まるで私の下から彼女らが追い払われてるような気になってきた。
「いけないいけない!仕事仕事!」
うん、今は仕事モード!
さーて、他の子を探すぞ!うん?
「ねえ!君可愛いね!」
「あの‥‥困ります‥‥」
おっと!遠くで駆逐艦が男に絡まれている。
「君も艦娘?艦種は?」
「え、えーと‥‥」がくがく
「お兄さん艦娘について詳しくないから教えて欲しいな~。そうだそこで飲み物でも飲みながら‥‥」
「知りたいのなら展示コーナーか係員の方へ行かれては?」
「うん?」
駆逐艦の子を今にも連れ去りそうだった男の後ろに軍人さんが立っていた。
「いや、あれに書いていることじゃなくてもっと具体的に‥‥」
「ほーう?勉強熱心で結構ですね。なら、特別に別室にて授業をして差し上げてもいいですよ?」
私は軍の憲兵権限の印を見せる。
すると男は
「あ!そうだ!俺もう帰らないと‥‥失礼します‥‥」
男はすぐに逃げた。
軍人さんは無線を繋げる。
「こちら巡回中の雪村、今の男をマークして。もし他の子に手を出すようなら問答無用で警備に連行して。」
『こちら監視、了解!』
「ふう‥‥大丈夫だった?」
「はい、ありがとうございました雪村さん。」
「いいの仕事だから。1人なの?他のみんなは?」
「その‥‥みんなとはぐれちゃって‥‥そうしたら今の目に‥‥」
「そう、なら他の子と合流するまで一緒にいてあげる。」
「本当ですか!ありがとうございます!」
その子はよっぽど恐かったのか私の手を握る。
彼女は無事に姉妹達と合流できた。
その後も一部の艦娘による催し事や軍関係者の開くお店などでハロウィンイベントは1人逮捕者が出た事を除いて大成功を収めたのだった。