取り残された軍人と潜水艦   作:菜音

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この小説の略称つけるとしたら何になる?


終わりの始まりは訪れる 20日目

 

 

 

 

ソラに連れらて海岸にやって来た軍人達。

 

そこにはマシロが待っていた。

 

「あ!マスター。こっち!」

 

マシロ、この子も少し大きくなりました。

元々喋れたらしいけどあの痛々しい火傷で喉をやられたせいで声を出せなかったけどそれもようやく治癒しています。ただ彼女の口から自分は姫かもしれないと言われた時は驚いたものだ。

 

おっと!今はそんな事を思い出している時ではない。

 

「その人はどこ?」

 

「あっち!」

 

マシロの指す方を見ると人型が波によって打ち上げられていた。

 

黒くて長い髪。白い肌。この建物の様な装備にこれでもかと砲を載せている彼女は‥‥

 

「ル級か‥‥」

 

ル級は深海棲艦の戦艦クラスでその絶望的な防御力と圧倒的は破壊力はこれまで多くの人類側の船を沈めてきて、その見た目の美しさと恐ろしさから『黒い殲滅者』と呼ばれている。

 

潜水艦ではなく戦艦か‥‥

 

こんな奴までもが流れ着くなんて‥‥

 

「とにかく、意識があるか確認しよう。」

 

腹をくくり軍人はル級に近づく。

その様子をカナ達は心配そうに見つめる。

 

 

「あの‥‥大丈夫です?」

 

軍人は軽く揺すってみた。

 

「ウウウッ」

 

ル級が少し呻いた。どうやら息はあるようだ。

 

「生きてる!あの!しっかりしてください!」

 

軍人は大声で呼び掛けた。すると‥‥

 

「ウウ‥‥こ、ここは?」

 

「気がつきましたかよかった‥‥」

 

ガシャン!

 

気が付いたル級は軍人に主砲を向けていた。

 

「お前は誰だ!」

 

軍人は砲を向けられながらもじっくり彼女を観察する。

 

彼女の服は所々焦げていてボロボロ。白い肌も傷や火傷が目立ち、何より自分向けている砲以外は完全に破損していた。

 

これに軍人は疑問を感じた。

一体どうしたらこんな事になるんだ?

 

彼女ル級は、報告だとミサイル攻撃や空母の艦載機による爆撃ですら傷1つ与えられなかった敵です。それが彼女の防御を突破してあろうとこか轟沈寸前にまで追い詰めるなんて一体何が‥‥

 

「おい!聞いているのか!?」

 

おっと!それどころではなかった!まずは自分の命と彼女を救わなければ!

 

「アナタは酷い怪我をしています。今すぐ治療させてください!」

 

「何を言う!人間が!」

 

ル級が砲に弾を装填したようだ。不味い!

 

「やめて!」

 

そんな中私とル級の間に話って入った者がいた。

 

カナだ!

 

「カナ何をしている!?逃げろ!」

 

「なんだお前?同族か?」

 

「お願い!マスターに治療させて!マスターを撃たないで!」

 

カナはル級に頼む。

ル級は強情で砲を構えるがカナは怯まなかった。

 

そのまま両者は向かい合い、折れたのはル級だった。

 

 

「分かったよ。同族のよしみだ。その人間に助けられよう。」

 

「ふぅ」

 

なんとかなって良かった‥‥。

とりあえずは一旦拠点まで連れて帰ってそこで傷を見よう。そして、それから彼女からいろいろ聞いて見よう。

 

 

 

 

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拠点・海猫荘

 

 

 

「はい、終わりましたよ。」

 

とりあえず汚れを落として傷口を消毒、包帯を巻いておいた。深海棲艦に人間の手当てが役に立つがどうかはこれまでのカナ達との生活で実証済みだ。

 

「‥‥フン!」

 

ル級は私人間なんかに助けられて不服のようだけどね。

 

 

「人間、お前は変わっているな。」

 

「そうですか?」

 

「そうだ。私は貴様等の敵だぞ?その敵が弱っているのにわざわざ助けるなど‥‥」

 

「ここでは人も深海棲艦もありませんよ、それを言ったらこの子達も深海棲艦です。」

 

ル級はカナ達を見る。

 

初めて私以外の大人を見る彼女らは少し警戒しているのか部屋には入らず扉から顔を覗かせてこちらを見ている。

 

 

「そもそもそれが不思議だ。我らの潜水艦どもは警戒心が強く変わりダネが多い、それが人間なんぞにあそこまでなつくなど異常だ。」

 

そうなのか‥‥?

 

「その潜水艦が、ましてや姫と思われる者までお前を慕っているのだ。だから、お前は特別に見逃してやるしお礼も言っといてやる!」

 

そう言うとル級は姿勢を正してこちらに向き直る。

 

「あ、ありがとう‥‥手当てしてくれて‥‥」

 

普段深海棲艦は感謝する機会が少ないのかな?

不器用である。

 

いや、戦艦クラスの深海棲艦からすれば人間なんかに礼を言うのはしゃくなのだろう。頑固だなぁ。

 

いやいや、もしかするとツンデレかも‥‥

 

 

 

と、この思考は一旦置いておいて、私は今一番疑問に思っている事を口にした。

 

 

「あのル級さん。その怪我はどうしたのですか?」

 

「ル級?‥‥ああ、人間どもが決めた私らの呼称か。」

 

「気に触りますか?」

 

「いや、私別に名前とかないからそれでも構わんよ。それで何で怪我の理由とか知りたい訳?」

 

「いえ別に深い意味は無いのですが、私達の兵器では巡洋艦クラスですら傷付けるのに苦労するのにましてや戦艦にこれだけのダメージを与える手段が思いつかなくて‥‥」

 

私は素直に疑問を言った。

 

それを受けてル級は少し驚いた顔をした。

 

「お前、何言ってるの」

 

「実は深海棲艦にこの海域が襲われてからの事は何も知らなくて‥‥できればこの数年で何が起きたのか教えて貰えませんか?」

 

「敵にそんな事を聞く?」

 

ル級はもはや呆れた顔をしている。だが、ふと何かをあきらめたようで、

 

「まあ、人間一匹に教えた所で何にもならない。人間に借りを作ったままもシャクだしね。」

 

「あ、ありがとございます!」

 

「じぁまずはこの海域を制圧した後からの話ね。」

 

 

 

 

 

 

 

私はル級からここ数年の出来事を簡潔に聞かされた。

どうやら私の知らない間に世界は大きく変動していたらしいです。

 

 

 

このル級は沖ノ島海域を再占領していた艦隊の旗艦だったそうです。なぜ再占領なのか?

 

 

どうやらこの島が砲撃された後私の予想どおりで深海棲艦の艦隊の進撃を軍は食い止める事は出来ず、日本本土近海まで迫られたらしいです。

 

その後、日本国防海軍の残存艦隊と深海棲艦の前衛艦隊が激突。日本が落ちるのも時間の問題とされていたが、『艦娘』と呼ばれる深海棲艦と互角に渡り合える存在が参戦したことで前衛艦隊を撃退する事に成功する。日本は艦娘を運営する鎮守府を設立。深海棲艦と戦える力を得た日本は叡知を駆使し反攻作戦に乗りだし、次第に深海棲艦の支配圏を奪還していったそうです。

 

どうやらこの海域はおろか南方海域や西方海域も解放されていたようですが何故か私の電波はスルーされてしまったようです。

 

 

そして、勝利を納め続けた鎮守府は遂に太平洋の深海棲艦中枢泊地を攻略しこの戦争に終止符を打つ『終作戦』を決行。しかし、その作戦の失敗により人類は再び制海権を失いこの海域も深海棲艦に支配されたそうです。

 

つまり知らない間に二回も支配が変わっていたのであった。

 

 

ところが鎮守府に新任の提督が入ったことで再び勢いを取り戻して再占領された海と奪い返していて、深海棲艦は沖ノ島を奪還されたとのことです。

 

 

「そんな事が‥‥」

 

「聞いていてあれだがお前スルーされて可哀想だな」

 

敵に可哀想がられた‥‥

待てよ?

 

「沖ノ島が落ちたと言うことは‥‥またこの海域にも」

 

「来るだろうな。今度はスルーされるなよ」

 

心配された!

 

でも、今の自分には別の心配事がある。

今来られたらル級が危ない。

 

「人間が心配するな。私は長居するつもりはない。明日にはここを立たせてもらうぞ。」

 

ル級は心配なさそうだ。

 

 

しかし、問題はそれだけではない。カナ達も深海棲艦だ。もしかしたらその艦娘に見つかったら‥‥、もしそうでなくても捕まって何をされるかわからない。

 

 

艦隊はどこまで来ているのか?

ここから沖ノ島だと猶予は後どれ位あるんだ?

 

 

 

私がそう考えている時だった。

 

「マスター!」

 

 

これまで部屋には入って来なかった、と言うか今までいなかったマシロが入って来た。

 

「マシロどうたの?」

 

「マスターの部屋のあの機械からお声がする!」

 

なんだって?!

 

 

私は慌てて自分の部屋に走った。

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

「ギザザザ‥‥」

 

 

 

本当だ!外からの受信を受けてる!

 

『こちらガザザザ日本国防ガザザザ第ガザザザ』

 

日本!?間違いない!

 

私は急いで通信機器を受信を調整した。

はじめはノイズが酷かった音声も徐々に緩和されてようやく聞こえるようになった。

 

『こちら日本国防海軍第2艦隊。そちらのSOSを受信した応答せよ!』

 

くっ!なんて事だ‥‥

思っていたよりも早く友軍は来ているようだ。

 

 

 

「マスター?返事しないの?」

 

カナは不思議そうな顔をしている。

 

 

しかし、私はとうとう返答する事はなく通信は切れていた。これでしばらくは時間が稼げるはず。しかし、軍の通信機器からのSOSがあったのだ、位置も解っている。後回しにされるだけでどのみちここに捜索隊が来るだろうな。

 

 

ここに来て、これまでやってきた事が仇となるか‥‥

 

 

 

 

 

いや!

 

 

 

 

これでいい‥‥

 

おかげで決心がついた‥‥

 

軍人はそれまで抱えていた頭をあげた。その顔には決意、いや覚悟が出来ていた。

 

「マスター?」

 

「大丈夫?」

 

カナとマシロが心配そうに見上げてくる。

 

 

「大丈夫‥‥ありがとう。」

 

私は二人を撫でてあげる。

 

「きゅん♪」

 

「ふにゅ♪」

 

 

二人のなごむ顔を見ているとこちらも和むな‥‥

 

時計を見ると時刻は1700

そろそろ夕御飯の支度かな

 

 

「マシロ、ソラを呼んできてくれる?カナは先に台所行って下ごしらえしててもらっていいかな?後でいくから‥‥」

 

「うん!分かった♪」

 

「まかせてなの♪」

 

二人は元気良く部屋を出てそれぞれの頼まれ事に向かっていた。さても、今のうちに

 

 

 

カナ‥‥ごめんね。

私はカナの後ろ姿を見て思わずそう思ってしまった。

 

 

 

 

私は先程の部屋に戻りました。

 

部屋にはル級とソラがチェスをすると言うなかなかな光景が広がってました。

 

 

「ソラ、マシロが探してたよ?」

 

「マシロちゃんが?行ってくる♪ル級さんまたね」

 

ソラが退室するのを確認すると私は口を開いた。

 

 

「チェス‥‥出来るんですね。」

 

「我々にも前世の‥‥‥‥。ふん、何故かチェスの知識があるのだ」

 

今興味深い事を言っていたが、今は無視だ。

 

 

「ル級さんにお願いがあります。」

 

「なんだ?借りはさっき返したつもりだが?」

 

私はル級に土下座をした。生まれてこのかた、土下座したのは始めてだ。まさか人間ではないとはね。

 

 

「何のつもりだ‥‥」

 

「無理を承知でお願いします。どうか‥‥」

 

私はル級が聞いてくれなければ頭を上げないつもりだ。相手は深海棲艦だ。決裂して砲撃されても可笑しくない。

 

その覚悟をル級は感じ取ったのか目を瞑って考えた後、諦めて

 

「言ってみろ。聞くだけ聞いてやる。」

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

「いただきます。」

 

「「「いただきます♪」」」

 

「い、いただきます‥‥」

 

 

夕御飯の時になりました。

 

 

 

今日は島で取れたて物をふんだんに使った料理ばかりだ。

 

 

いつもは四人だが今日は一人分多く作ってます。

ル級の分だ。

 

 

「おいしい♪」

 

カナは基本的嫌いなものが無いので本当に美味しそうに食べてくれますね。

 

 

「こらソラ!トマト食べなさいよ!」

 

「うぎゃ~!!」

 

ソラはトマトが苦手なんです。

何でもあの食べたときのぐちゃが嫌いなんだとか。

 

ちなみにマシロはナスを食べません。

 

 

「人間の食べ物か‥‥」

 

「ル級さん、お口に合いますか?」

 

「食べれないことはないぞ」

 

ル級は普通に食べてくれます。

 

 

 

食事も終わり、食後にお茶を飲み始めた所で話を切り出しました。

 

 

 

「みんな!聞いてくれ。」

 

私の声でみんながこちらを向く。

 

「どうしたのマスター?」

 

マシロが聞いてくる。

その隣ではカナがわくわくしている。

 

ソラは‥‥眠たそうだねぇ。

 

 

「今から大事な話をする。」

 

 

これからの私達を決める決断を

 

 

 

 

 






実際に書いてみると長過ぎたので二つに分けました。
この次が本当の最終話です。軍人の決断の行く着く先に何がまっているのか?

感想など切実に御待ちしております!

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