学園黙示録~魔法を持って行く物語   作:武御雷参型

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第四十三話

床主東署の通信指令室に俊輔達はなだれ込む。

 

「ここも全滅か……まぁ、シグナム達が先に殲滅してくれているんだ………判っていた事だけどな」

 

俊輔は通信指令室内部に誰もいない事に、当たり前のように感じてしまっていた。

 

「ねぇ、沙耶ちゃん。あそこ、電気がついてるよ?」

 

「退きなさい‼」

 

ありすに言われ、沙耶は優しくありすを退け電気がつくモニターを見る。

 

「ジェイアラートは生きているわ‼」

 

「じぇ、じぇい……なんだ?」

 

「J-ALERT、全国瞬時警報システムの事よ‼」

 

沙耶はまさか本当に警察に対EMP対策が成されているとは半信半疑であたが、生きていると判れば話は別である。すぐにキーボードを操作するが、幾らやっても欲しい情報が出る事は無かったのである。

 

「ダァァァ‼ なんでこうも私達に関係ない情報ばっかり出るのよ‼」

 

沙耶はキーボード横を叩く。すると、ありすが沙耶が知らぬ間にキーボードの一部をクリックした。

 

「何してんの‼ ちびっこ‼」

 

「だ、だって……触ってみたかったもん」

 

沙耶に怒られ、ありすは涙目になる。しかし、沙耶がモニターを見た瞬間、アリスの頭を優しくなでた。

 

「怒鳴ったけど、ちびっこ。よくやったわ‼」

 

「ふぇ?」

 

ありすが触った場所は、今、俊輔達が欲しい情報を映し出すボタンだったのである。

 

「床主でも、自衛隊による救出作戦が行われているわ‼」

 

「救出? 救援の間違いじゃないのか?」

 

沙耶の言葉に孝は救援物資を送るのではないのかと勘違いしていた。しかし、今の世界では救援よりも救出の方が速いのである。

 

「街がこの有様よ? 救援よりも救出の方が生きている人間を助けるには正しいわ」

 

「そう言う事ですか……でも、どう言う予定なんです?」

 

コータも理解したのか、自衛隊による救出作戦の予定を沙耶に尋ねる。

 

「明後日の午後に数時間だけしか、救出作戦が実行されないわ……色々と物資が足りないのよ。仕方が無いわ。そして、救出作戦が行われるのは………新床第三小学校よ。私達の母校」

 

この言葉に麗、孝、永は驚く。

 

「そう言う事なら、話は早い。行くぞ‼」

 

「待って‼」

 

冴子が新床第三小学校に向かう様に言うが、麗が待ったを掛ける。

 

「あたしのお母さんとお父さんはどうなるのよ‼」

 

「沙耶、時間はまだあるな?」

 

「え、ええ。まだ大丈夫よ………イレギュラーが無ければの話だけどね」

 

「そう言う事なら、先に麗のお父さんの所に向かうぞ‼」

 

俊輔の言葉で、麗の父親の職場に向かうのであった。

 

だが、無駄足であった。いや、無駄足と言えば無駄足だが、麗の父親は生きていたのである。

麗の父親の職場に置いてあるホワイトボードには、麗の父親の筆跡で“生存者は、新床第三小学校へ‼”と書かれていたのである。

これには、麗も嬉しく永に抱き着いたのであった。

 

 

孝はすぐに作戦を決め、全員に通達した。

 

「麗の親父さんは新床三小にいる筈だ。そして、僕のお袋も‼ そして、自衛隊の救出作戦は明後日。だから、やる事は二つ。一つは、麗の実家に向かい、お袋さんの安否確認。その後で、新床三小に向かう。異論は?」

 

孝の言葉に全員、首を横に振る。

 

「良し、行くぞ‼」

 

俊輔達は、ティーガーとパーシングに乗り込む。シグナム達は魔力消費を抑える為に、ティーガーとパーシングのキューポラなどに腰掛ける。

 

「全車、パンツァーフォー‼」

 

『二両しかいませんけどね』

 

「言うな」

 

俊輔の号令で、二両は麗の実家へと向かうのだが、その前に補給物資を手に入れる必要があった。

 

「俊輔、コンビニが先にある筈よ。そっちに向かいなさい」

 

「空、先にコンビに向かうぞ‼」

 

『了解です‼』

 

二両はコンビニへ向かい、まだ食べられるものだけを戦車内部に持ち込んで行く。だが、雨も降り始め今からの紅軍は危険と判断した孝であったが、俊輔はそうでは無かった。

 

「戦車内部にいれば、余程の事が無ければ安全だ。それに、俺達には戦車と言う動く戦艦が居るんだぞ? 問題ない」

 

「でも、視界とかそう言う問題は………」

 

「それに関してだが、この戦車たちは特殊でな………防水対策もされているし、装甲の厚さも戦時中のよりも上がっている。生きている奴らに撃たれ様が、問題ない」

 

「窓は「防弾対策されているけど、なにか?」あっはい」

 

コータの言葉にも俊輔は論破する。

 

「なら、進むぞ」

 

「了解、リーダー‼」

 

補給も終わり、ティーガーとパーシングは雨の中、疾走していく。だが、段々と奴らの数が増してくるのである。

 

「奴らが段々と増えてきやがる‼ どうなってるんだよ‼」

 

「元からいたんでしょうが‼」

 

俊輔のぼやきに沙耶がツッコム。すると、孝が思い出したかのように俊輔に横の壁を通る様に言う。

 

「俊輔‼ 横の壁は板だ‼ 簡単に通れるはずだ‼」

 

「どう言う事だ?」

 

孝の言葉に俊輔は怪訝な声で尋ねると、孝は小さい頃に鬼ごっこで、横にある家の壁を壊した事を話す。

 

「そう言う事か……空、俺に続け‼」

 

『了解です‼』

 

俊輔は空の返事を聞くと、超新地旋回しティーガーを壁に向けると、アクセルを踏み込んだ。それにより、壁はティーガーの重量に呆気なく負けて、壊れてしまう。そして、先にある家を戦車で風穴を開け、ぶち破ったのである。

 

「アンタ、やり過ぎよ………」

 

「どうせ、この家の住人は奴らになっているんだ……問題ねぇよ」

 

俊輔が言う様に、壁を打ち抜いた家には奴らとなった中にしかいなかったのである。

 

「さぁ、行くぞ‼」

 

二両はそのまま孝の指示で、麗の実家に向かうのであった。


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