孝達は無事にメゾナンス内部に入り一息つく事が出来た。
麗や沙耶達、女子メンバーは入浴へと向かって行き、孝とコータの二人は、鞠川の友人の部屋へと入って行く。
「楽しそ~だな~」
「セオリーを守って覗きにでも行く?」
「いやいや、覗きに行かないから」
孝とコータは二つのロッカーの前で、どう壊そうか悩んでいた。だが、そのBGMには入浴している女子メンバーのキャッキャウフフの声を聞きながらではあるが………
「これで、何も入っていなかったら頭が痛いな」
「そうだね、でも僕には確信があるよ」
「どこからそんな自信が湧くんだか」
一つのロッカーを壊した孝達。壊したロッカーの中には銃弾がごっそりと入っていた。必然的にもう一つのロッカーの中には銃が入っていると言う事になる。だが、本当にあるかどうかは、壊してみないと判らなかった。
「じゃぁ、行くぞ‼」
孝とコータ、永はロッカーの淵に釘抜きを差し込み、梃の原理でロッカーの扉を壊す事にした。
「1,2の3‼」
三人が力を合わせてロッカーの扉を壊す事に成功するが、壊した勢いで三人は床に転がる。
「イテテテ……コータ‼」
「や、やっぱりあった‼」
孝とコータが目にしたのは三丁の銃であった。
コータは徐に一つの銃を手に取る。
「スプリング・フィールドM1A1 スーパー・マッチか………セミオートだけど、M14シリーズだとフルオートは弾の無駄遣いだからね」
コータはスーパー・マッチを構える。
「マガジンには20発のも入る‼ 日本だと違法だよ、違法‼ これは………」
スーパー・マッチを床に丁寧に置くと、もう一つの銃を手に取る。
「ナイツSR-25狙撃銃………いや違うな。これは。日本じゃ手に入らない品物だから、AR-10を徹底的に改造した物か‼」
コータは孝をそっちのけで、銃の構造に弩嵌まりしていた。
孝は仕方が無く、ロッカーに仕舞っているもう一つの銃を手に取った。それを見逃すコータでは無く、直ぐに食いついた。
「それはイサカM‐37 ライオット・ショットガン⁉」
コータの絶叫は絶頂へと行く。
孝は弾は入っていないが、それをコータに向けた・
「うおわぁぁぁ⁉ たとえ弾が入っていないからって、銃口を人に向けちゃダメだ‼ 向けて良いのは……」
「奴らだけ………でも………」
孝の言葉にコータは黙る。
孝と麗が合流する前に見た光景を思い出していたからである。
「あいつらは、理性を失って生きている人も殺していた。でも、僕達は理性を失っちゃいけないんだ」
「そう……だね………」
孝とコータの中に決意が込められるのであった。
一方、俊輔と空の二人は、装備品を戦車の中に収納していく。
「俊輔君、こんなものかな?」
「ああ、忘れ物は無いか?」
「確認して来ます」
俊輔の言葉に空は再度、家の中に入って行く。
「俺はもう原作の記憶が薄れて来ているな………」
俊輔は転生してからと言うもの、原作の記憶が曖昧になって来ている事に気付く。
「まぁ、あいつらだけでも守れる力があるんだ。活用する他無いだろう」
「そうだな」
「うぎょわ⁉」
俊輔の隣に白叡が現れる。
「いきなり出て来るな‼ 驚くだろうが‼」
「すまない。だが、作者が俺の存在を忘れかけていたが思い出してくれて、ここで登場したんだ」
「メメタァ」
白叡の言葉に俊輔は頭が痛くなる思いであった。
「それで、この近辺の状況はどうなっている?」
「悲惨なもんだ。生存者は家の中に籠城をしている。入れる数も限られているから、見捨てられていく生存者も多い」
白叡の報告に俊輔は「だろうな」と呟く。
現に白叡の報告通り、この近辺では中の良かった者達だけで家に籠城しているケースが多かった。
「助けてやりたいが………」
「数に限りがある………だろ?」
「ああ、どうしようもない事だな」
俊輔と白叡は自分達の非力さに悔やむ思いであった。
「だが、第一に考えるのは」
「あいつらの事だな」
二人が見た先は、孝達が休憩をしている鞠川の友人宅の声であった。
「騒ぎすぎだろ、アレ」
「まぁ、ここよりもっとうるさい所があるがな」
「ん? ああ」
白叡が見た先には、橋の上で警察官が出している声であった。
〈たとえ、家族であっても襲い掛かって来る者達から離れなさい‼ 繰り返す、離れなさい‼ 襲い掛かって来る者達は、全員、感染者である‼〉
「まぁ、大丈夫だろ。あそこにはあそこのやり方があるんだからな」
「見捨てるのか?」
「……………」
白叡の言葉に俊輔は黙り込む。
「俺達は自分達を護るだけで精いっぱいだ。他の人間を助ける余裕は無い」
「だが、そうでもなさそうだぞ?」
「は?」
「あれを見てみろ」
「あいつら‼」
白叡が指さした先にはベランダに銃を抱えているコータが居た。その隣で孝が双眼鏡を使い、何かコータに伝えていた。
しかし、状況は刻一刻と緊迫していった。家の周りには先程までいなかった奴らがウヨウヨし始めていたからである。
「なんでだ‼ なんでこんなにも居るんだよ‼ 橋の方に行ったんじゃなかったのかよ‼」
塀の向こう側には奴らが入ろうと姥貝ていた。
「チッ、どうしようもねぇな‼ シグナム‼」
「ハッ、我が主」
俊輔の声にシグナムが答え、直ぐに駆け寄った。
「ヴォルケン達を率いて地下の車を出させろ。運転は出来るだろ?」
「はい、それと使用する車はどうしますか?」
「今、地下に置いている車は?」
「スカイライン、ヴェルファイア、ハイエース、73式中型トラックです」
「全部使えるのか?」
「使えます。整備不良は無いですね」
「どうしてだ?」
「アポロニアス様と言えば判りますか?」
「あっ(察し)」
すべての車両に、俊輔と空を転生させた神が関わっていたと言う事はそう言う事である。
「五台か………運転が出来るのが空と俺、リインフォース、シャマル、シグナム、ザフィーラ、白の七名。行けるな」
「ですが………奴らの存在の事だろう?」
「はい………」
ヴィータを除き全員が車両の運転が出来るが、それはこんな状況では無かったらの話である。俊輔と空の二人が搭乗する戦車、ティーガー、パーシングに至っては、最悪、奴らを轢きながら進む事は出来るが、スカイラインやヴェルファイア、ハイエースに至っては普通の車両である。
奴らとて、元は人間である。ぶつかればどうなるか想像が出来る。
73式中型トラックは、前面にガードを装備させれば進めない事も無かった。
「仕方が無い、スカイラインとヴェルファイア、ハイエースは諦めt「ちょっと待って下さい。俊輔君」なんだ、空?」
「もう一台、残っていますよ?」
「なんだって?」
空の言葉に全員が驚く。
「付いて来て下さい」
空の先導の元、地下へと進んでいく。
「ここにもう一台隠されています。僕もさっき知ったばかりなので、いきなりになってしまいましたが……」
「まぁ、良い。それで、さっきの言葉には何かニュアンスが含まれていたが?」
「はい、見て頂けたら判ります」
空はそう言うと内部へ進んでいく。
「これは………」
全員が見た物とは…………
次回は脱出の所から始めたいと思います。