やはり俺の真っ白生活は間違っている。 作:red garden
「それで、あなたはどの教科が苦手なのかしら?」
雪ノ下はそう確認してきた。
「あ、うん。国語と社会科目、理科科目の暗記部分…」
「あら、それだけなら何とかなりそうね」
俺は申し訳なくなり頬を掻いた。
「それ以外全部かな…それも1桁ぐらい…」
雪ノ下さんが固まる。
「そ、それはとても深刻ね…思ったより状態はまずいみたいね」
後ろのほうは何を言っているかわからなかったが、どうやら戸惑っているみたいだ。
彼女は顎に手を当てしばらく考えたあと一つうなづき。
「私が面倒を見る以上、赤点は取らせないわよ」
こちらを真っ直ぐに見てそう言った。
「よ、よろしくお願いします!」
頭を下げた。いや本当によろしくお願いします。
「とりあえず、しばらくは私が提示した教科書の範囲を自習できる時間にやってもらい、わからない部分などを放課後、私が空いている時間に教えるという方針でいきましょう」
俺は頷く。そういう方針ならありがたい。数学とか答え見ても、もう何が何だかわからないしね。
「まず今日は…数学の教科書を見させてもらえるかしら」
俺は鞄から教科書を取り出し渡す。
「ふむ…なら、明日までにここからここのページまでをやってきて頂戴」
彼女は平然とそう言うがなかなかの量がある。
別に時間がないわけではないが、家ではのんびりしたい。
詰まる所やることは一つ。
「今からやらせていただきます!」
俺は机を引っ張り出して指定されたページを解き始める。
おっと、眼鏡を掛けるのを忘れていた。
鞄からケースを取り出し眼鏡を掛ける、赤縁の一般的なデザインのものだ。
「よし、頑張るか」
数学は苦手科目の中でも、とくに嫌いな科目だ。
さっさとやって解放されたい。
…
…
…
さっそくわからん。
「天月さん、そこはここの公式を当てはめるのよ」
隣に座って雪ノ下さんは教えてくれる。
って近くないですか!?いや同性だから問題のない距離なんだろうけど…
こんなに可愛い娘が近くにいると、ちょっと落ち着かないな。
がるるるるーっ。
そんなことを思っていると比企谷が威嚇してきているのに気づく。
…へぇ、そうか。売られた喧嘩は全部買う主義だ。
俺も睨みを利かせ威嚇し返す。
ぐゔゔゔゔーっ!
「ヒィッ」
おっと怖がらせてしまった。
「…そんなところで気持ち悪い唸り声をあげてないで座ったら?それと、天月さんもそんな男にかまってないで問題を解いて」
「え、あ、はい。すいません」
「うぃっす」
絶対零度に当てられて比企谷は大人しく引き下がる。
そして、俺も大人しく引き下がる。
うん。彼女は怒らせたらいけないね。気を付けないとね。
俺は問題を解くのを再開する。
雪ノ下さんは、時折俺にアドバイスをしながら比企谷と言い争っている。
彼が奉仕部に歓迎されたり、国語学年3位という意外な高スペックさを傍目に聞いたりしていた。
臭いものだって自覚はあるのね、という雪ノ下さんの発言に笑ってしまったのは許してください。
鼻つまみ者だけにな、と言った比企谷の発言で、笑いが止まらなくなったのも許してください。
笑ったことが気に障るのなら謝ります。
だから、二人して怪訝な顔でこちらを見ないでください。傷ついてしまいます。
そして、静寂の中に俺の笑い声だけが響く。
そんな状況で平塚先生がドアを荒々しく開け、もう一度現れた。
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進路指導アンケート
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総武高等学校 2年 ―組
ふりがな あまつき ひせい
氏名 天月 緋惺
出席番号 ― 女
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あなたの信条を教えてください
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笑顔で、楽しく、自分らしく
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卒業アルバム、将来の夢なんて書いた?
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看護師
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将来のために今努力していることは?
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人付き合いをうまくいかせる努力
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先生からのコメント
あなたらしい信条でいいと思います。ただ、自分らしく生きるために
勉強を疎かにされては困ります。勉強さえできれば、あなたならいい
看護師になれると思います。人付き合いに関しては、あなたはもっと
いろんな人とミュニケーションをとってください。
それが一番の近道だと思います。
おもしろい文章が書けるように頑張ります