やはり俺の真っ白生活は間違っている。   作:red garden

7 / 9
視点もどります


どこまでも真っ直ぐな彼女との邂逅。

 

 

 

 

平塚先生はからりと戸を開け、教室に入った。

比企谷に続いて俺も中に入る。

教室には一人の少女が座って、本を読んでいた。

彼女が雪ノ下雪乃…確かにものすごい美少女だ、画面で見た彼女の何倍も美しい。

まるで、触れれば溶けてしまいそうな、そんな美しさだ。

 

彼女は文庫本にしおりを挟み顔を上げた。

 

「平塚先生。入るときにはノックを、とお願いしたはずですが」

 

雪ノ下、平塚先生はそんな忠告をしただけで変わってくれる人間ではないぞ。

 

「ノックしても君は返事をした試しがないじゃないか」

 

「返事をする間もなく、先生が入ってくるんですよ」

 

ほら見たことか。

彼女は先生の言葉に不満げな視線を送った。

 

「それで、そのぬぼーっとした人と彼女は?」

 

ぬぼーっという表現に吹き出しそうになった。

あぶない、あぶない。

 

「まず彼から説明しよう。彼は比企谷、入部希望者だ」

 

「2年F組比企谷八幡です。えーっと、おい。入部ってなんだよ」

 

彼のそのつぶやきから始まる3人のやりとりがしばらく続いた。

最初は笑いをこらえられたが、小悪党と言い出したあたりからこらえられなくなった。

信頼に値する小悪党ってなんだよ、あんなの笑っちゃうだろ。

知っているセリフでも、実際に聞くと違ってくるものなんだな。

 

「まぁ、先生からの依頼であれば無碍にもできませんし……。承りました」

 

雪ノ下がほんっとうに嫌そうにそう言いひとまず区切りがついた。

 

「そうか、それで今度は彼女の件だ。おい、天月。いい加減笑いをこらえろ」

 

そして話は俺のことにうつる。

 

「あははははっ、あ。っう、うん。すいません」

 

俺は笑いを止め、咳払いをして謝った。

 

「まったく…彼女は天月。彼女も入部希望者、そしてクライアントでもある」

 

「2年無所属、あっ席は一応F組にあるみたいです。天月緋惺です。よろしくお願いします」

 

俺は頭を下げた。

 

「彼女、成績がかなり悪いんだ。ただ本人があまり何とかしようとはしていなくてな」

 

先生は俺をちらりと見る。

 

「す…すいません」

 

俺はもう一度頭を下げた。本当すいません…ご迷惑かけて…

 

「そこで、天月に入部してもらい部活動を手伝う傍ら、空き時間には雪ノ下に勉強を見てもらおうと思ってな」

 

雪ノ下は顎に手をやり、少しの間考えたあと口をひらいた。

 

「そのような交換条件でしたら、私は構わないのですが」

 

そして、そこでいったん言葉を区切り俺のほうをちらりと見る。

 

「彼女、天月さんの成績はそこまでひどいものなのですか?総武高校に入学できているのですし、決して頭が悪いわけではないと思うのですが」

 

「いや、かなり悪い。このままいけば間違いなく、もう一度2年生をやり直すことになる」

 

説明を受けた雪ノ下は今度はしっかりと俺のほうを見る。

 

「天月さん、あなた授業中に居眠りでもしているの?最低限授業を真面目に受けていれば、進級を危ぶまれるほどの成績にはならないと思うのだけれど」

 

授業を引き合いに出された俺は返す言葉が見つからず、助けを求める意味を込め平塚先生を見る。

 

「彼女、訳あって保健室登校なんだ。そのせいで授業を受けられていなくてな、自習だけしかしていない」

 

「なるほど、わかりました。天月さんの件も承ります」

 

「よし、なら後は頼んだぞ」

 

平塚先生はそういって出て行った。

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。