それは他人ではなく自分であること。
あの閑話から1年1か月後の11月末期
一夏たちは3年になりある大会のため東京に来ていた。
それは・・・
「等々この日が来たね。」
「おいらたちの最後の試合にはうってつけの場所だな。」
綾斗、葉がそれぞれの思いを打ち明けその場所を見た。
「お前らー早く行こうぜ。俺たちが来ないと始まらねーぞ。」
すると一夏は少し先で二人に声をかけた。
「ごめんごめん。でも一夏なんか前よりも変わったな。」
「あー確かに。去年の一夏は何だか思い詰めていたからな?」
「あー、なんか悪いな。」
「いやいいよ。それに一夏も何か思っていたしね。」
「ま。相談に乗れなくてもよちょっとはおいらたちに頼ってもいいんだぜ。
副部長。」
「いやそれだと君部長じゃん。」
「おいらはそういうタイプじゃないんだけどな?」
「まあ。一輝前部長の指名だしね。」
綾斗と葉は一夏の心にある何かを言った後頼るようにと言った後綾斗はとんでもないことを言った。
一夏は副部長・葉は何と部長になっていたのだ。
理由はと言うと一輝曰く「(全員をまとめるだけでなく全員の潤滑剤として必要なものを持っているから。)」という理由である。
一夏の場合は「(葉のサポート役兼影のリーダーとして頼みたい。)」ということである。
詰まるところペッパーとトニーみたいな会社上の関係性みたいな感じである。
しかしなぜ一夏が思い詰めていたのかと言うと去年のあの事件が原因である。
あの後一夏は暫くの間あの時の出来事が夢に出てくることが多くなり睡眠薬を飲まなければ眠れなくなり更に焦りからかご飯と寝るとき以外は同所にこもって自主練・休みにはISの演習と言った明らかに自分を追い込みすぎていると周りもそう思っているが余りにも力に対しての執着が強く剣道部でも一輝はそれを危険視していた。
そしてそれは佑唯もそれを思っていた。
そしてある日佑唯は唯依と一緒にあることをしに道場へと行った。
そこではすでに一夏が素振りをしていた。
足元の汗の量や床の擦れ具合でどれだけ練習しているのかを佑唯は見抜き一夏にこう言った。
「一夏君。そろそろやめないか?このままでは倒れてしまうぞ。」
「もう少し待って下さい。あと少しで終わりますから。」
ちなみにこのやり方は何回もやって最後には無理やり出て行かされるという末路があるのだが今回の佑唯は趣向を変えた。
「一夏君私と試合しないか?」
「へっ?」
「私が負ければもう何も言わない。だが私が勝てば私のいうことに従ってもらう。それならどうだ?」
「・・・わかりました。」
佑唯は一夏に試合を申しだした後賭けを言い渡した。
最初は戸惑った一夏も内容を聞いた後了承した。
一夏は道場から出ると外で待機していた唯依から新しい道着とスポーツ飲料水とレモンのはちみつ漬けを差し入れされそれを口に含んだ後道場へと向かった。
そこにいたのはいつも知っている佑唯ではなく一人の剣士としての姿だった。
(あの感じ箒のお父さんの龍韻と同じかそれ以上の気迫を感じるな。)
それぞれ防具を付けて中央に立った後唯依が間に入ってこう言った。
「試合は3本勝負。どちらかが2点取った時点で勝ちとする。」
唯依はそう言った後両名を確認し、そして・・・「始め!!」と言った。
最初は一夏が動いた途端佑唯がそれよりも早く対応し胴を捕った。
「1本!胴あり!!」
一夏は食らったとわかった瞬間びっくりしていた。
(早すぎる。まるでこっちが出すところが分かるみたいだ。)
「一夏君」
「!!」
佑唯は一夏にこう言った。
「君は今何かにおびえている。自分に。そして何かから逃げるように剣を振っている。それでは私から一本とれないよ。」
それを聞いた一夏は内心ふつふつと出る怒りが出ないようにしていた。
(あんたにわかるのかよ!!人を殺して助けられなかった命があってそんな現実も知らない人間が何言ってんだよ!!!)
一夏はそう思った後所定の場所に戻り剣を構えた。
佑唯はさらにこう言った。
「一夏君君のことは防人君から聞いた。確かに君がやったことは正しいのかどうかわからない。でもねこれだけは聞いてほしい。君は失ったものばかり見て・・・助けられた人たちの笑顔を忘れたのかい?」
佑唯は一夏に失ったものばかりではないだろうといった途端一夏はある少女を思い出した。
あの銀色の髪をした少女は自分に行ってくれた言葉、そして帰る前に見たあの子たちの笑顔を思い出した。
その時一夏はあることを思い出した。
「(自分が殺した命を背負って生きろ。)」
「(ちょっとは周りを頼れ。)」
防人が言った意味それを理解していない自分がまだいたのだとわかったのだ。
すると一夏は面の中で笑いこう思った。
「(なんだよ俺全然だめだなー。そんな大切なこと忘れて俺って・・・
馬鹿だなー。)」
すると一夏の顔から憑き物が落ちたような顔になり佑唯を見た。
そして佑唯も同じような顔になりこう思った。
「(一夏君。君はこれからも同じことが起きるだろう。それでも前を向きなさい。そして誰もが認める”自分”になりなさい。)」
そして唯依の号令と共に今度は両者同時に剣を振った。
ちなみに一夏はぼろ負けだった。
そのあと道場で寝そべっていたところに唯依が来てこういった。
「一緒に帰ろ。」
「ああ」
この日初めて一夏は本当の意味でのただいまを言った。
あの時からあの夢は見なくなったけど・・・俺は何言っていたんだー!!!。
あの後一夏は唯依に「一緒に寝ないか?」と言った後数秒たち顔を真っ赤にして怒っていたが最終的に一晩だけということで了承してもらったが・・・すぐに後悔した。
一緒の布団で寝た後唯依のいろいろ柔らかい2つの物体が当たって別の意味で眠れなくなりそうだったので最近覚えた念仏を唱えてやっと寝たのだ。
しかもその後朝方裕也さんが来てそれを写真に収めた後佑唯さんに見せて本人笑いながらも背後に阿修羅がランボーも真っ青な武装でこっちを見ているので生きた心地がしなかったなー。
と思い出していた一夏のすぐ後ろで綾斗と葉はこういった。
「一夏大丈夫かなー」
「試合前に集中したいんじゃね?」
何か的外れな感じはするがとりあえず大丈夫だろうと思い今日の試合の出場者の名簿を見た。
「しかし何で男女混合だろうな?」
「今年はだけじゃないよ。先輩曰く8年前からやっているって。」
本来大会は男女別々だがISや戦術機の配備以降男女一緒にやらないかと言う企画があり今回もそれと同じだろう。
そしていろいろな意味で思い出していた一夏が現実に戻り綾斗達が見ていた名簿で女子のほうも見るとある選手に目が留まった。
黒髪のポニーテールをした少女。
そしてこの顔つきを知っているのだ。
そしてその名簿にこう書かれている。
開成女子中学校3年 篠ノ之 箒と
罪を知り戸惑いながらも前を向くがよい
そしてその罪と向き合い自らを律すれば己は新たになる。