夏休みと簪の決意。
ここは学園島。
ここには多くの学生たちが武器について学び、体験し、共に戦う場所。
そんな人工島の一角にあるIS学園。
ここもまたその一つ。
「それではこれで1学期は・・・修了したとする。」
『イヨッシャー!』
千冬の言葉を聞いて生徒全員が大声でそう言った。
今日から夏休み。
生徒にとって祝福の時期なのだ。
そして同時に・・・最悪な物が提出される。
「それじゃあ通信簿だが・・・貴様らの親には既に郵送で届けられているから
お前たちには生徒手帳に直接送ってやる。ありがたく思え。」
『ォぎゃあああ!!』
千冬の言葉を聞いて今度は生徒全員が悲鳴を上げた。
然も千冬自身は笑顔なのだから尚質が悪い。
そんな中で一夏は生徒手帳から送られた通信簿を見て安堵していた。
何とか規定値を超えていたそうだ。
そんな中で一夏は親友でもある刃更に声をかけた。
「刃更、どうだった!?」
そう聞くと刃更はこう答えた。
「まあまあかな。そういやお前夏休みどうするんだ?」
刃更がそう聞くと一夏はこう答えた。
「俺は京都の篁技研に戻ってセカンドシフトしたこいつの調整と
データ取りだな。」
一夏はそう言いながらブローチになっている自身のISの待機形態を見せた。
あの戦いの際にセカンドシフトしたことに伴い機体データと新しい換装兵器製造に向けて微調整しなければならないのだ。
「そういう刃更はどうするんだよ?」
実家に戻るのかと聞くと刃更はこう返した。
「いや、親父は殆ど家にいねえからここで過ごそうと思ってんだ。」
「会社には?」
一夏がそう言うと刃更はこう続けた。
「其れなんだがよ、どうも社長が色々と出かけなきゃあいけない所が多すぎて
社員がフォローしなきゃいけねえようだけど忙しいから当面は来なくて
大丈夫って言われたからなあ。」
手持ち無沙汰だなと言って頭を掻いていると一夏はこう言った。
「それだったら篁技研に来ないか?京都の案内したいしお前も暇だろ?」
そう言うが刃更はこう答えた。
「いや良いよ。俺は何とかするしどうせ楯無さんがさぼってるから生徒会の仕事しなきゃあいけないし。」
終盤ぶつくさ文句言うようにそう言っていると一夏はアハハと
苦笑いするしかなかった。
他のメンツはどうするんだろうなと聞くと一夏のすぐ近くにいる箒が
こう答えた。
「私は内定した会社に行くことになった。」
それを聞いた一夏は驚いてこう言った。
「え!お前何で!?」
そう聞くと箒は呆れた様子でこう言った。
「忘れたのか?姉さんが誕生日に渡されたISの帰属先を決めることになってな。国内にある製造会社に就職したんだ。」
箒はそう言いながら簪に手をかけた。
あの騒動の際に箒の姉であると同時にISの生みの親、『篠ノ之 束』が
一から作ったIS『緋燕』については色々と各会社から紹介状が山の様に
届いたのだ。
それに選別をした際に箒はその人間の語る夢に共感して決めたのだ。
「まあ、東京県内だしいつでも会えるさ。」
そう言って箒はじゃあと言って出て行った。
他のメンツはと言うと・・・外国勢は全員これだ。
『本国に戻って機体調整!!』
特に三年のレインに至ってはこれが正念場であり国家代表生になれるかどうかの瀬戸際のようで本国でいい結果を出そうと頑張っているようだ。
そんな中でレインは一夏にこう耳打ちしたのだ。
「もし代表生に内定したら・・・あれ以上の事をシヨウぜ♡」
そう言ってきたのだ。
そしてロシアの代表生でもある楯無は本家や分家のご挨拶。
日本の代表候補生でもある簪はと言うと・・・。
「そういえば更識さんは?」
一夏はそう聞くと刃更はこう答えた。
「ああどうも・・・機体の受け取りで今日行ったようだぜ。」
「さてと。」
簪はそう言いながら山奥にあるIS研究所でもあり自身が所属する場所。
『倉持技研』に向かっていた。
目的はと言うと・・・。
「早く『打鉄弐式』を受け取りしなきゃ。」
そう、嘗て学年別個人トーナメントでシャルロット・デュノアによって
『VTシステム』勝手にインストールさせられただけではなく暴走迄起きたので
ISコアの洗い出しと機体の再調整などで今日になってしまったのだ。
その為に修了式をボイコットしてここに来たのだ。
すると簪は何やら辺りを見渡していた。
「気を付けないと・・・」
「何がダイ?」さわり。
「ヒャアアアアアアアアア!!」
簪は何やらお尻に何かが這うような感じがしたので後ろを見ると
そこにいたのは・・・。
「やっぱ未成年のお尻は良いねえ。」
そんな変態発言をしているのは・・・。
山田先生と同程度の胸を持ち、ISスーツを着た・・・全身びっしょりの
女性がそこにいた。
「何やってんですか?・・・『篝火』さん」
そう、彼女こそここの所長。
『篝火 ヒカルノ』である。
「いやあ、暑かったからさあ。魚釣りしてたんだよ。」
「それでですか。」
は~と言いながら簪は篝火を見ていた。
一応はここで所長するぐらいの頭が良いのに性格がこんなんなのだ。
よく見れば川で捕ったであろう魚を右手に持って担いでいた。
「あのう、それで篝火さん。」
「ああ、『打鉄弐式』ならもう出来てるよ。」
「!!本当ですか!?」
簪はそれを聞いて嬉しがっていると篝火はこう告げた。
「それに記録データを見て対策と君が戦ったオランダの代表候補生の
戦闘データをもとに新しい武装も追加されたから見た目が
少し違うかもしれないけどね。」
「!!」
それを言われて簪は目を細めた。
あの時に自分がVTシステムを求めたきっかけの戦い。
忘れようにも忘れられないのである。
そう思っている中簪は刃更の事を思い出した。
自分の事をあそこまで助けようとしてくれた刃更はまるで自分がよく見る・・・ヒーローのようであったこと。
「/////////!!!」
簪はそれを思い出して顔が真っ赤になった。
然も心音が速まっているのも感じた。
そしてこうも想った。
「(今度は刃更と並んで戦えるようにしなきゃ!!)」
そう思っている中篝火はある部屋に着いた。
「ここだよ。」
そう言って薄暗い部屋に光を付けるとそこにいたのは・・・。
「これが・・・。」
「そう、これが新しい『打鉄弐式』改め『打鉄弐式・剣』だよ。」
新しくなった『打鉄弐式』は今までの武装だけではなく
ミサイルポッドがあったところにレーダー探知機らしきものが見えた。
「あのう、これって。」
「ああ、こいつの説明だね。」
篝火はそう言って説明した。
「先ずは武装なんだけど新しく腕に付けたこのシザーブレード『際翼』は
片方づつ使えることも出来るからトンファーとしても使えるよ。」
「それとあの『山嵐』のポッドに付いているレーダー探知機は
脳波制御システムを利用して短距離ならミサイルを操作することが出来るって言う代物なんだ。」
後は普通通りだけれどねと言うと篝火はこう聞いた。
「それじゃあ今から機体テストするけどさ、・・・覚悟は良い?」
そう聞くと簪はこう答えた。
「ハイ!」
そう言って簪は準備することとなった。
そして篝火は『打鉄弐式・剣』を見てこう言った。
「今度こそ守ってよね。」
そう言って自分も準備することとなった。
強化外装・九八式改型 『打鉄弐式・剣』
本機は嘗てVTシステムによって大破された『打鉄弐式』を改良した機体
VTシステムなどの外部からの使用外のパソコンや情報端末からのログインの際に
逆にウイルスをばら撒かせてそれらを機能停止させることが出来る。
更に近接格闘兵装を新たに保有させ、オランダ代表機に対抗できるようにした。
また、第3世代兵装の思考制御を新たに導入して短距離でのミサイルの操作が
可能となった。
兵装 『打鉄弐式』の初期武装全般。
思考制御ミサイル
近接格闘シザーブレード『際翼』*4(両手に弐本ずつ)