篁 佑唯の機転により事なきことを得た後、一夏の乗っていたISの調査を整備士が総出で調査をし、本人は体に異常がないのかの確認のため千冬が入っている医療室の隣にある検査機器(人体実験できるものはなし。)を使ってあらゆる角度から検査をした。
髪の毛を1本取ったり、血を少し取って調べたり、MRIを使って調べた。・・・が、
出たのは「異常なし」という言葉のみであった。
彼らは一夏から採取したものを国連軍日本支部の医療機関で調べるということで決まり彼が乗ったISをコアごとどうするのかを検討し、決定次第開発するということで合意した。
そしてこのことは赤穂副総理は総理官邸に、武は本社に、防人たちは坂口隊長と一緒に一夏を連れて千冬のいる部屋に向かった。
彼らは部屋に入ったとき千冬は何やらさっきまで慌ただしかったのは何なのかと聞いたとき、坂口はこう言った。
「織斑 千冬さんですね?私はここにいる防人 衛、火渡 哲也、楯山 千歳君の隊長をしている坂口 照星と言います。」
「あ、これはどうも。あの時はお世話になりました。一夏の姉の千冬と申します。」
坂口は丁寧な口調で千冬に対してあいさつをし、千冬もあの時のお礼も兼ねて
自己紹介をした。
「さて織斑 千冬さん実は一夏君のことで重大な報告があります。そこの彼も聞いてくれるとありがたい。」
千冬は、坂口の言葉を聞いた瞬間布団のシーツを握りしめた。
今回自分は勝負に負けたことで一夏と一緒に暮らせることができないという通告をしてきたのかと思い顔を青くして聞いた。
そして坂口が口を開いた瞬間千冬は目を閉じて聞いた。
「一夏君がIS動かしました。」
「・・・へっ?・・・」
予想を大きく裏切る言葉に本人は知らずに変な声を出した。
「いやいや待ってくださいよ。何ですかその冗談は?」
響は思考停止した千冬の代わりにそう聞いた。
「いや本当なんですよ。今それで現場は混乱状態ですので報告しに来たんですよ。」
響はその言葉に呆然した。
当たり前であろう。「ISは男性に対して起動することはない」という常識を根本から覆すほどのことだからだ。これを発表すれば一夏は間違いなく
モルモットにされるだろう。それは防人たちも避けたいことだ。
「そこでこういうのはどうでしょう。一夏君が小学校を卒業するまでの間あなたが提示したように軍内部の庁舎に入れるというのはどうでしょうか?」
千冬はその言葉を聞いた瞬間体から力が抜けて安堵した。
(やった。これでもうしばらくは一緒に暮らせる・・・待てよ卒業まで?)
「あの卒業後はどうするんです?」
千冬は一夏の中学校の進路先をどうするのかと聞いた。
いくら何でも義務教育の放棄はしないだろうと思った。
「それから先は追ってこちらから報告しますよ。」
未だ不安が残るが、とりあえずの難問はクリアしたということもあり千冬はほっとした様子で一夏を抱きしめた。
一先ず目先の問題はクリアしてもさらに問題が増えるのは人が人であるからであろう。