パイプオルガンが鳴りやまぬ中一夏はサラにさっきまでに起きた色々な事を話した。
あの事件の後のドイツの事、自暴自棄になっていた自分を佑唯に諭された事、剣道の試合で嘗ての幼馴染にあった事、IS学園での出来事、夜架が戦いを挑んだこと、他の人間も同じように裏社会に入った事、そして死ぬ前の作戦でのことを話した。
サラはそれを時には笑い、時には悲しみ、時には怒りと様々な顔の表現を変える事に一夏は少しずつ落ち着きを取り戻し、そろそろ逝こうかと思った矢先サラが一夏の服を掴むとこう言った。
「一夏、呼んでるよ。」
「え、まさか閻魔様か?」
「ううん。彼女だよ。」
そう言って振り向くとパイプオルガンが鳴りやんでいたことに気づいた。
パイプオルガンを弾いていた少女は壇上から降りると一夏にこう聞いた。
「貴方はここで止まるのか?」
「え?」
少女は更にこう続けた。
「貴方はどうして力を求め、何の為に闘うのか?」
「何の為に・・・か・・・。」
一夏はその答えに対して嘗て自分が思った事を思い出した。
『だったらその心、取り戻してやる!あいつらのためにも・・・
俺自身のためにも。』
「俺は・・・。」
嘗て自分は人を殺した。
「まだ救えていない人がいる。」
幼馴染の1人は親と離れ離れになった。
「俺は1人にさせちゃいけない人がいる。」
ここまで自分を作ってくれた人たちがいる。
「俺はまだ何も返させてない。」
そして・・・
「俺はまだあいつらを笑顔にさせていない。」
一夏は大声でこう言った。
「俺はまだ何もやり遂げていない!俺はまだ何も出来ていない!!」
そして振り絞るようにこう叫んだ。
「俺は仲間を!!あいつらを世界中の不条理って奴から守りたい!!俺自身の明日を掴み取るために・・・闘う!!!」
「・・・なら行け。皆の元に。」
「え・・・?」
その少女の言葉に一夏は素っ頓狂な声を出した。
「皆が待ってる場所へ。」
サラは一夏の腕を掴んでこう言った。
「私の分まで生きて!そしてその何百倍の人たちを心の底から笑顔にして!!
お姉ちゃん達の心の雲が晴れるぐらいに!!!」
そして一夏は扉の外から出る瞬間サラにこう言った。
「じゃあなサラ!今度は老衰するまでの話を聞かせてやるからな!!」
「うん待ってるよ一夏。ここで待ってるから。」
そして一夏が外に出た後少女はサラにこう言った。
「これでいいんだねサラ。自分の正体を告げないまま。」
「うん。だってまだ一夏はその段階にするにはまだ早いからね。」
そう言うとサラは少女にこう言った。
「それじゃあ準備しないとね。」
「ああ、私達の歌を一夏に聞かせよう。」
外ではIS学園から来た医療班がナノマシン入りのカプセルを持ってやってくるのを
長谷川先生が待っていると突如携帯のブザーが鳴ると一夏がいる治療室の監視カメラのある映像を見て長谷川先生は猛ダッシュで向かった。
長谷川先生が治療室に入るとそこには一夏の心臓部分が紅く光輝いていたのだ。
「な、何だこれは!!??」
徐々に光が収まると今度は一夏の髪が銀色に輝き始めたのだ。
すると同時に何か嫌な感じを長谷川先生は本能的に察知するとその光が薄れ始め、
やがて収まると一夏が起き上がったのであった。
あまりのことに長谷川先生は唖然としているとはっと気が付いて
一夏の方にへと向かった。
「織斑、大丈夫か!!まだ安静にしておけ。お前はさっきまで生死の境を彷徨っていたってこれは!!」
長谷川先生は一夏の体の触診をすると折れていた骨がいつの間にか何事もなかったかのように元に戻っていたのだ。
そして体中の包帯を取ると火傷も無くなっていたのだ。
「こんな・・・これは一体・・・!!」
「どうしました長谷川先生?」
長谷川先生の驚いた顔を見て一夏は問いかけると長谷川先生はこう言った。
「俺ちょっと用があるんでこれで!!」
そういって一夏はベッドから降りて部屋の外にへと向かった。
そして長谷川先生はさっき見たものを感じて違和感について分かった。
「(成程、前に私がクラス対抗戦の後の触診したときに抱いた違和感はこれだったのか・・・確かにそうならば私の力が反発するのも頷けるものだ。・・・織斑、お前一体何者なんだ?)」
長谷川先生はあの時一夏の眼が・・・紅く輝いていたことを思い出した。
「(あれは間違いなく私が思っていたのとは別の何かがある。
そうナニカが・・・。)」
長谷川先生が思考に囚われているころ一夏は格納庫に入った。
すると自分の機体の近くで束が機体を整備しているのを見かけた。
「束さん!!」
「え・・・いっ君!!」
束は一夏がいるのに驚くと一夏は束にこう聞いた。
「束さん!!俺の〈黒式〉は?」
「えっ?出撃するのいっ君!!駄目だよさっきまで寝ていたんだし、それにこれじゃあ足手纏いというか動かすことだって無理だよ!!」
そう言うと一夏は「黒式」を見た。
全身のパーツが砕かれていて中には精密機器が丸裸の状態になっているだけではなく武装もスラスターとして使っていたビット以外は壊れており追加兵装も
見る影もなくなっていた。
「だから今は休んでなよって・・・ちょっと待ってオペレーターの眼鏡ちゃんから
通信が来たって・・・ええちーちゃんがやられたってちょっと待ってよ!!」
一夏はその通信を聞くとボロボロの「黒式」に乗ってこう言った。
「頼む〈黒式〉!!俺はもうあんな後悔はしたくないんだ!!もう目の前で誰かが死ぬところを見たくないから!!!」
そして一夏はこう大声で言った。
「俺に力を貸してくれ!!〈黒式〉---!!!」
すると〈黒式〉が光り輝き始めた。
「へ、まさかこれって!!・・・うわっ!!」
すると突風が吹き荒れ、束が吹き飛ぶと一夏と〈黒式〉が何処かにへと消えたのであった。
そして山田先生はオペレータールームで戦況を束に報告するとレーダーにあるデータが映った。
「へっ、何ですかこれ!!??」
その光景を山田先生は見る事しかできなかった。
覚悟を決めた青年は仲間の元にへと向かった。