サンリオ・サーガ   作:鈴木遥

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首席ダンサーたちの 上下関係がわからないと思うので、年齢が高い順に並べていきたいと思います。なお、オリジナルとは多少異なるかもしれません 。ご了承ください。

階級

護衛隊長(ジェネラル) ポチャッコ(19歳)

看護長(マザー) マロンクリーム(19歳)

副隊長(ボウガン) ペックル (18歳)

副隊長(ランス) コロコロクリリン(18歳)

整備師(メカニカル)バットバツマル(16歳)

看護補佐(ナース) シナモンロール(14歳)



ーーーーーーーーーーーーここまでが親衛隊

王子(プリンス) ダニエル・スター(16歳)

姫(プリンセス) キティ・ホワイト(16歳)

手品師(マジシャン)ケロケロケロッピ(16歳)

侍女(メイド)ウィッシュミーメル(15歳)

調理師(シェフ)ポムポムプリン(15歳)

歌い手(コーラス)キキ&ララ(11歳)

なお、本作のパレードシーンに出て来るキャラクター達は上記の皆さんのみですが、 実際ピューロランドのパレードにはもっとたくさんのキャラクターが出てきます

またここに書いてあるやつよりどう見ても年上だろってキャラクターが書いてない時、すいません話の編成の都合上 第2期がもしあれば彼らの後輩として登場させる予定です どうぞ笑って読んでやってください





奇跡と小悪党は多摩市の華

・天音空は、多摩市の一角にある場末の居酒屋に、大急ぎで向かっていた。

 

それと言うのも、サンリオ主席ダンサーたちの来日を2日前に控えた昨日。

突然、外務省のトール・J・長谷川から、主席ダンサーたちの親衛隊長に任命されたのだ。

 

三原は例の如くニコリともしなかったが、同期たちは空の門出を祝おうと、前夜祭を企画してくれた。

 

電車の都合で遅刻しかけた空には、渋谷の大画面に映る 大ニュースすら耳に入ってこなかった。

首席ダンサーの一人、キティ・ホワイトの行方不明や、 先ほど多摩市に落ちたとされる謎の飛行物体のことさえも……。

 

「ハァ……ハァ……やべぇ、遅刻だ遅刻!」

 

居酒屋『召瑠変(メルヘン)』に飛び込もうとした時、入り口の側の【翼たぬき】の置物の横に、誰かがうずくまっているのが見えた。幼い少女の様だが、ネコ耳が生えている。

一目でピューロズだと分かった。

 

身なりからして、かなりええとこの娘の様だが、こんな田舎町で一人でうずくまっているのも妙な話だ。

 

「お嬢さん。こんなとこ座ってっと冷えるぜ?今夜は特に気温低いからな……。」

 

「お兄さんも、ピューロズ(わたしたち)の事キライなんでしょ……?」

 

目の前の少女が何を言っているのか、空には一瞬理解できなかった。

 

「……何で?」

 

「怖いおじちゃんが、よそ者は出ていけって、お前は悪魔だって……。」

 

彼女の言うことを疑うわけではないが、空はにわかには信じられなかった。

いや、信じたくなかったと言った方が良いのだろう。

 

ピューロズたちが地球に来た頃、 鎖国思想の人間たちが彼らを歓迎しなかった時期があった。

 

古い世代ほどその風潮は濃かったし、田舎に行けば未だにピューロズが歓迎されないこともあると言う。

 

確かにここもそれほど都会には近くないが、よりにもよってピューロランドを間近に構えるこの街に、そんな古い浅はかで愚かな考えの持ち主がいるなどと、考えたくはなかったのだ。

 

この少女をよそ者と罵ったその老人だって、ピューロズとの交流の恩恵を散々受けているはずなのに……。

 

宇宙へ進出などと歌われてはいるが、まだまだ地球人は内部に改善せねばならない点がある。

そう思うと空は、なんだかやるせなかった。

 

「んな訳ないよ!お兄ちゃんはなぁ、君たちピューロズと仲良くなって、君たちといつか仲良く暮らす為に働いてるんだぜ?キライな訳、ないって!」

 

「いつかって……いつ?」

 

「う〜ん、難しいな……よし、そんじゃ手始めに、友情の証に美味いもん食わしちゃる!」

 

空は不自然に意気込みガッツポーズを決めた。

 

「無理よ、寒い。もう歩けない。」

 

さすがの空も困ったが、すぐそばで輝くちょうちんを見て、すぐにひらめいた。

 

「それじゃあお嬢さん、オレが目隠しすっから、あと5歩、歩けるかい?美味いもんが待ってるからさ。」

 

彼女は空に言われるがまま、目を伏せ、立ち上がり、5歩

進んだ。ガラガラと乾いた音がし、彼女の鼻に香ばしい香りがした。

 

「あ〜ら空ちゃん、久しぶりに来たと思ったら可愛いお嬢さん連れて。姪っ子ちゃんかい?」

 

空が初めて来店して5年になるが、相も変わらずこの店の女将は若々しい。艶のある黒髪を後ろで束ね、透き通る様な白い肌は、20代後半と言っても通じるだろう。

 

が、実齡は本当に誰も知らない。

多摩市のオヤジ達のアイドルである彼女の魅力は、そのミステリアスから来ているのかも知れない。

 

「いやいや、そこで会った迷子でね。交番行く前に、腹ごなしさせよーかと……。」

 

「オイ空ァ!遅〜い!」

 

テーブル席から、既に「出来上がった」海原ユウと、彼女に手を焼く同期たちが空を呼んだ。

 

「わりー、ユウに皆、遅くなった。」

 

「それにしてもお前、俺ァこんな豪快なユウちゃん初めて見たぜ!」

 

同期の田中が頭を押さえながら言った。

 

「もう敵いませんよ、このテーブルでここ数分、一番のんでますから……。」

 

「うるへぇいっ!あらしはまらまらイケるわァイ!」

 

そうのたまう彼女は、 顔は真っ赤でろれつも回っていない 。まらまらどころか、完全に出来上っている。

「あ〜、こりゃもうダメだ、寝落ちするまでテキトーに相づち打ってください。」

 

「そ〜ら〜、あんらあらしを差し置いて、その娘はらによ〜、ロリコンに目覚めたか、めらめたのか、あ〜!」

 

「はいはい、 遅れた俺が悪かったから、もうその辺にしとけ……女将、とりあえず生とオレンジジュース、モツ焼きと、後、お嬢さん、何食いたい?」

 

「……アップルパイ。」

 

空はちょっと困った様に、キティと女将を見比べる。

 

「……らしいんだけど、大丈夫?」

 

「アタシを誰だと思ってんのさ。今じゃ『HERO』のマスターより、作れるモン多いからね。お嬢ちゃん、少しお待ちなさいな。」

 

それからものの10分でアップルパイを作り上げ、そこからモツ焼きやナポリタン、シーザーサラダなどを堪能。

 

寒さと不安で疲れ切っていた彼女の心と体は、女将の料理や気さくな大人たちの馬鹿騒ぎによって癒され、いつしか起きているのは、彼女と空だけになった。

 

「……美味かったかい?」

 

「うん、とっても。ごめんなさい、お金持ってなくて……。」

 

「気にすんな。オレがやりたくて食わせたんだから、美味かったなら良し……ところで、今さらなんだけど、お嬢さん名前は?」

 

「あ、ごめんなさい。私、キティ・ホワイトって言います。地球には、ダンスパーティーをしに……。」

 

ゴトン!

 

 

雷が全身をほとばしったかの様な衝撃で、空は思わずコップを落とした。

 

「……キティ・ホワイト!?」

 

「私の名前、知ってるの!?」

 

いや知ってるも何も、あなた守ることですよ!オレの今回の大仕事は!

 

『ええええええええ!?あの、キティ・ホワイトォォォォォォォォォ!?』

 

どうにか誤魔化そうとする空だが時既に遅く、店内の客は皆野次馬と化していた。

宇宙で突如行方不明になり、連日ニュースを騒がせるサンリオの首席ダンサーが、目の前にいるのだから当然だが。

 

女将の案内を受け、何とか店の裏口から脱出した空とキティ。

 

だが、野次馬と化すことも無く、カウンター席から鋭い目で二人を追う、奇妙な男たちがいた事に、誰も気付かなかった。

 


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