魔法少女リリカルなのはStrikerS ~ Remember my heart ~ 作:アルフォンス
約9か月ぶりに更新いたします。
最近、コロナウイルスの影響で色々大変かと思いますが、この話が少しでも楽しんでいただければ幸いです。
「さて、あいつはどうしてるだろうな。ここと時差7時間だからな……」
早速俺は、スクリーンを開き、通信を開く。
すると―――――。
『こんにちは、フィルさん♪ 愛しの彼女のルーちゃんです』
「相変わらずだな。ルーテシア」
紫髪の女の子―――――。
俺の彼女のルーテシア・アルピーノが出た。
『まぁ、元気と言ったら元気なんですけど……。やっぱり、なかなか会えないのは寂しいな……』
「……すまない」
ルーテシアの寂しい笑みを見ると、俺がどれくらい彼女に甘えてきたか痛感する。
『良いんです。こうやっていつも定期的に通信してくれますし、忙しいのにワープで来てくれたりしてるんですから』
「それくらい当たり前だろ。自分の大切な彼女なんだし……」
『ふふっ、それ、エリオに聞かせてあげたいかも。キャロがいつもエリオ君が仕事ばっかりしてるって言ってるし』
「あ、あいつな……。俺みたいになってどうするんだよ」
どうりで、最近キャロから通信で愚痴が多いと思った。
俺の悪いところだけを抽出してどうするんだよ―――――。
『そういえば、今日はどうしたんですか? 確かお仕事だったはず?』
「ああ……。実はな、上司に大目玉食らったんだよ」
『それ、仕事面じゃないですよね。ということは……。フィルさん、全く休んでなかったでしょう!!』
「……当たりだ。今日から3日間強制休暇だ」
まさか、いきなりこんな休暇を言い渡されるとは思っても見なかった。
でも、上司の言ってることは正論だから何も言えないしな―――――。
『それじゃ、家に来ませんか!! カルナージだったら、次元航空船でも、そんなに時間をかけなくても来られるでしょう!!』
「……そうだな。でも、良いのか? いきなりお邪魔して」
『フィルさんだったらいつでもオッケーですよ♪』
「それじゃ、お言葉に甘えてお邪魔することにするよ。準備が出来たら、ワープで行くからよろしくな」
カルナージくらいなら、プリムが無くてもワープは可能だ。
さてと、準備をしてルーテシアの所に行くとしましょうか。
* * *
「~♪」
「あら、ルーテシア、ずいぶんご機嫌ね」
「だって、フィルさんが今から来るんだもん♪」
だって、最近は通信でしかお話しできなかったんだもん。
やっぱり、彼氏が来てくれるのは嬉しいな。
「あらあら、ずいぶん急なのね。一体どうしたのかしら?」
「……フィルさん、向こうの上司から強制休暇取らされたんだって」
「……いつかこうなると思ってたけど……フィル、本当に休まないものね」
そう、フィルさんは、本当に休みという休みを取らない。
私とデートしたりするときは、休みを取ってくれるんだけど、基本的に自分の休みを取ったりはしない。
「だからママ、今日から3日間は、私達で一杯おもてなしをして、フィルさんにリフレッシュしてもらうの!!」
「ええ、私も協力するわよ。なんせ、ルーテシアの未来の旦那さんになる人だものね」
「ま、ママったら……」
でも、本当にフィルさんにはここでしっかりと休んで欲しい。
私は、未来のティアナさんみたいに特別な関係じゃないけど、でも、フィルさんが好きという気持ちは、未来のティアナさんにだって決して負けないもん。
私は、私が出来ることでフィルさんの支えになるだけ!!
* * *
「着いたな……。久し振りだよな」
前にここに来たのは、約2月前だったな。
考えてみれば、それだけ、ルーテシアと会っていなかったんだな。
俺がペンション前で、周りの景色を見てると―――――。
「フィルさ―――――ん!!」
元気よく響き渡る声―――――。
「よっ、お言葉に甘えさせてもらいに来たよ」
「いらっしゃい!! 待ってたよ!!」
「すまないな。いきなりお邪魔しちゃって……」
「それは言いっこなし。お部屋も用意してますので、まずはゆっくりと休んでください」
俺は、ルーテシアの案内で、用意された部屋に行くことになった。
少し大きめのベッドと、テレビなど一通りの物が用意されている。
元々、ここはなのはさん達がよく合宿に使ったりするので、勝手知ったる場所とも言える。
「さてと、少し休んだらメガーヌさん達の所に行って手伝わないとな……」
さすがに踏ん反り返ってるわけにはいかないしな。
俺は、簡単に着替えて食堂にいるメガーヌさんの所に向かったが……。
* * *
「……いきなり追い出されてしまった」
「当たり前!! フィルさんに休んでもらいたいのに、ここに来てまで働いてどうするんの!!」
「だがな……。何もしないってのは……」
もう、フィルさん気使いすぎ!!
ママだって、せっかくの休日なんだからゆっくりして欲しいって思ってるんだよ!!
「……フィルさんの言うことも分かるよ。でも、ここにいるときくらいは私のことを考えて欲しい。一緒にいられる……大切な時間だから」
「……あっ」
こういう言い方は卑怯なのは分かってる。
でも、大切な人と少しでも一緒にいたいのは本当だから……。
「……そうだな。お前の言うとおりだな」
「そうだよ!! こうしていられる時間は限られてるんだから、いっぱい一緒にいよ!!」
* * *
俺たちは、ルーテシアの提案で川に行って一緒に泳ぐことにした。
左胸の傷も、今では殆ど目立たなくなっていて、ミッドにあるプールとかにも行けるようになっている。
最初はこの傷はずっと残しておこうと思っていたんだけど、これがあると行動に制限がかかってしまい、ルーテシアに嫌な思いをさせてしまうので、手術で傷を消すことにした。
それでも、わずかに傷跡が残ってしまったが、日常生活には全く支障がないのでほっとしている。
でも、この傷痕を見る度にあの女のことを思い出す。
――――戦闘機人、クアットロ。
俺の大切な物を全て奪ったあの女。
未来においても、この世界においても憎んでも憎みきれない。
そんなことを考えていたら……。
「えい♪」
「うわっぷ!!」
ルーテシアに背中を押されて川に落とされてしまった。
「おまえ、何考えてるんだよ!!」
「少しは頭が冷えた」
「えっ?」
「さっきのフィルさん、すっごく怖い顔してた。何を考えてたの?」
「そっか……。ごめんな。そんな怖い顔してたか?」
どうやら無意識に顔に出てしまってたんだな。
もう、過去のことなのにな……。
「でも、いきなり突き落とすことはないんじゃないか!?」
「ふーんだ。せっかくフィルさんのために可愛い水着を着てきたのに、全然見てくれないんだもん!!」
そう言われてルーテシアの方を見ると、合宿の時とは違い、ルーテシアの髪にあわせた紫のビキニとパレオを着ていた。
「……ごめんな。でも、その水着すごく似合ってる。だから……その……なんだ」
「なーにかな♪」
ルーテシアの奴、絶対わざとやってるだろ。
俺が照れてるのを分かっていて、自分の胸を強調して見せてやがる。
「頼むから……俺を挑発するのは止めてくれ。俺は……そんなに理性は……強くない」
「へぇ~。そうなんだ~♪」
ルーテシアは小悪魔的な笑顔で、俺に抱きつき胸を思いっきり押しつけてきやがる。
この間初めて結ばれたときに分かったけど、ルーテシアは年齢相応に女としての色香もある。
出る所もでているし……。
「……だったら、フィルさん。いっぱい私を感じて……。忌まわしい記憶が消えるくらいに……」
「!? お前……」
さっきまでとは違い、ルーテシアはつらそうな表情をして、涙を流している……。
「……分かるよ。あんなにつらい表情は、未来のことを……考えていたんだよね。私は……こうしてフィルさんを包んであげることしかできない。それが……とても悲しいよ」
「……ルーテシア」
「フィルさん……」
いつのまにか俺たちは口付けを交わしていた。
どちらからともなく、それが当たり前のように……。
そして、俺はルーテシアに抱き寄せられて……。
「なんか……いつもと、逆だよな」
「良いの。今日は、私がフィルさんのことを包み込んであげるって決めたんだから……」
「……ありがとな」
俺は、母親に抱きしめられた記憶はないが、こうしてルーテシアに抱きしめられてると、荒んだ心も安らいでいく感じだ。
「ごめんなさい……。ママみたいに、もっと……胸があったら良かったのに……」
「そんなことないさ……。充分堪能させてもらってるよ」
「その言い方……ちょっと、えっちです」
しかたがないだろ……。
好きな女の子に、こうされて何も反応がないって方がおかしいだろうが……。
「……よかった」
「えっ?」
ルーテシアが、ほっとした表情でふと言葉を漏らす。
「私でも……フィルさんに安らぎをあげられてるんだね……。私にはこれくらいしかできないけど……」
「……充分だよ。こうして……そばにいてくれるだけで……いい」
「……うん」
―――――愛する人と一緒にいられる時間。
それは、かけがえのない大切な物だから……。
* * *
「……はい、動かないでね」
「さすがにこれは……恥ずかしいのだが」
私だって恥ずかしいんだよ。
ひざまくらなんて、ノリで言うことはあるけど、実際にするのはやっぱり照れちゃうんだからね……。
でも、今のフィルさんに必要なのは安らぎ。
少しでも、こうして人の温もりに触れて、心を癒して欲しいから……。
「……不思議だよな。こうしてると……なんか、ほっとする」
「本当?」
「ああ……。なんか、安心するんだよな。こうしてお前に包まれてると……」
「そっか……」
それは、私も一緒だよ。
フィルさんと……。
大好きな人と一緒いると、本当に安心するんだよ。
「だったら、いつでもこうしてあげる。私は、フィルさんの彼女……なんだからね」
「……ありがとう、ルーテシア」
そして、フィルさんはすぅっと眠りに入ってしまった。
「……眠っちゃったね」
私は、そっとフィルさんの髪を撫でて、そのまま包み込むように抱きしめる。
さっきの時もそうだった。
未来でのことは、フィルさんにとって永遠に忘れられないこと。
クアットロを倒し、この世界を平和にしても、この人の心は、傷だらけのまま―――――。
傷だらけの心は、決して元に戻ることはない。
でも、二人でたくさん優しい思い出をつくっていこう。
二人でなら、つらいことだって乗り越えられるんだからね―――――。
* * *
「……休み、終わっちゃったね」
「そうだな……」
今日でフィルさんのお休みはお終い。
明日からは、また、大変なお仕事が待っている。
「絶対無理はしないでね……。お願いだから……」
「ああ……」
―――――だめ。
この人は、一人にしてたら絶対にまた無理をしまくる。
時期尚早と思って我慢してたけど……。
―――――決めた!!
もう、待ってるのは止めた。
こっちからフィルさんの所に行って、ずっと一緒にいるんだ。
元々待ってるのは性に合わない。
そばにいて、一緒に支えていく。
それが、私の愛の形―――――。
―――――未来のティアナさん。
私、絶対にまけないからね!!
皆様、現在自サイトのみで公開しています『とある休日シリーズ』になりますが、こちらでも見てみたいという方がいらっしゃいましたら、アンケートにお答えいただけたらと思います。
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見てみたいので公開してほしい
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まあまあ興味がある
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どちらでもいい
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興味がないので公開はしなくて良い