魔法少女リリカルなのはStrikerS ~ Remember my heart ~   作:アルフォンス

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第6話 進展

初出動から数日後、俺たちは訓練がチーム戦から、個別スキル訓練に移行していた。

個人訓練になると、それぞれがメニューが違ってきていて、内容も濃くなってきていた。

 

 

 

「おら、いくぞ!! てやぁぁぁぁ!!」

 

「マッハキャリバー!!」

 

《Protection》

 

「でやぁぁぁぁぁ!!」

 

「くっ!! うわぁぁぁぁぁぁ」

 

 

あたしはプロテクションで、ヴィータ副隊長のハンマーを何とか防いだが、攻撃が重く徐々に押されていた。

そして、第2撃があたしをとらえると、後方の木まで押し戻されていた。

 

 

「っっっ、いたた……」

 

「……なるほど、やっぱりバリアの強度自体はそんなに悪くねえな」

 

「えへ……ありがとうございます」

 

「あたしやお前のポジション……。フロントアタッカーはな。敵陣に単身で切り込んだり、最前線で防衛ラインを守ったりするのが主な仕事なんだ。防御スキルと生存能力が高いほど、攻撃時間を長く取れるし、サポート陣にも頼らないで済む……。って、これはなのはにも教わったな」

 

「はい、ヴィータ副隊長」

 

「受け止めるバリア系、弾いて逸らすシールド系、身に纏って自分を守るフィールド系。この三種を使いこなしつつ、ポンポン吹っ飛ばされないように、下半身の踏ん張りとマッハキャリバーの使いこなしを身につけろ」

 

「頑張ります!!」

 

《学習します》

 

「防御ごと潰す打撃は、あたしの専門分野だからな………。グラーフアイゼンにぶっ叩かれたくなかったらしっかり守れよ」

 

「はい!!」

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

「エリオとキャロはスバルやヴィータみたいに頑丈じゃないから、反応と回避が最重要。例えば……」

 

 

フェイトさんは攻撃スフィアが放った二発の弾を、左右のステップでかわし、その後も低速でわかりやすいように見本を見せてくれた。

 

 

「まずは動き回って狙わせない。攻撃が当たる位置に長居しない……ねっ……」

 

「「はい!!」」

 

「これを低速で確実に出来るようになったら………スピードを上げていく……」

 

「「あっ!!」」

 

「こんな感じでね……」

 

 

さっきと同じ事だが、今度は攻撃のスピードも上がっていたので、難易度はかなり上がっていた。

しかし、フェイトさんは目でとらえきれないスピードで攻撃をかわしていた。

しかも、いつの間にか僕たちの後に立っていた。

 

 

「……す、すごい」

 

「今のもゆっくりやれば、誰でも出来るような基礎アクションを、早回しにしているだけなんだよ」

 

「「は、はい」」

 

「スピードが上がれば上がるほど、感やセンスに頼って動くのは危ないの……。ガードウイングのエリオはどの位置からでも攻撃やサポートを出来るように、フルバックのキャロは素早く動いて、仲間の支援をしてあげられるように、確実で有効な回避アクションの基礎をしっかり覚えていこう」

 

「「はい!!」」

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「うん、良いよティアナ、フィル。その調子」

 

「「はい!!」」

 

「ティアナ達みたいな精密射撃型は、いちいち避けたり逃げたりしてたんじゃ、仕事が出来ないからね」

 

「はっ!! バレット、レフトV、ライトRF」

 

《All Right》

 

 

あたしが弾丸のセレクトをしていると、別のスフィアが後方から接近していた。

 

 

「ちっ!! プリム、ティアの後方のスフィアを落とす」

 

《了解!!》

 

 

その動きに気付き、なのはさんはフィルの方にスフィアを多くとばしてきた。

そして、あたしも何とか回避は出来たが、その場を大きく動いてしまっていた。

 

 

「ほら、そうやって動いちゃうと後が続かない……。いつもフィルの助けが、ある訳じゃないんだよ!!」

 

「くっ……」

 

《Barrett V and RF》

 

 

なのはさんはあたし達に、それぞれ直射型と不規則型のスフィアをとばしてきた。

今度はあたしもその場で対応して、迎撃用のバレットを放つ。

 

フィルはさっきから、殆どその場を動いていないでスフィアの対応をしていた。

避けきれないで喰らいそうなのは、フィールド系の防御で最低限のダメージに押さえていた。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「さすがに、この数はきついな……」

 

《マスター、本格的なセンターガードの訓練は受けてなかったんですよね……》

 

「ああ、未来ではティアの動きをまねて、何とか対応していたに過ぎないからな」

 

 

元々、そこまで強くなかった俺は、ティアと一緒にやることで乗り切ってきた。

だから、俺はある意味ティアの劣化コピー状態だ。

 

 

《マスターはどこのポジションでも出来ますけど、専門職にはかないませんからね……》

 

「………そうなんだよな。おまけに現状じゃ、攻撃用のバレットと防御を同時にしていたんじゃ、すぐにガス欠してしまう……」

 

「フィル、防御をフィールドに頼らない。状況を広域で判断して、それに併せた攻撃で対応する!!」

 

 

プリムはクロスミラージュと違って二丁にはならない。

ティアと同じ事をやるなら、自身の対応速度を上げるしかない。

 

 

「だったら、これならどうだ!!」

 

 

俺は前後から来るスフィアに、最初は前のスフィアを落とし、身体を反転しないで誘導弾を作り、スフィアの動きを読み、それで後のスフィアには対応した。

 

 

「そう、視野を広く、出来るだけ最小限の動きで最大の効果を出す……射撃型の神髄は!!」

 

「あらゆる相手に、的確な弾丸をセレクトし命中させる……」

 

「判断力と命中精度!!」

 

《Reload》

 

「チームの中央に立って、誰より速く中長距離を制する。それがわたしやティアナやフィルのポジション、センターガードの役目だよ」

 

「はい!!」

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

訓練場の外で俺とシグナム姐さんは新人達の訓練の様子を見ていた。

 

 

 

「いやぁ、やってますな……」

 

「初出動が良い刺激になったようだな……」

 

「いいっすね、若い連中は……」

 

「若いだけあって成長も早い。まだしばらくの間は危なっかしいだろうがな」

 

「……そっすね」

 

「シグナム姐さんは、参加しないんで……」

 

「私は古い騎士だからな。スバルやエリオのように、ミッド式と混じった近代ベルカ式の使い手とは勝手も違うし、剣を振るうしかない私は、バックス型のティアナやキャロ、それにフィルに教えられるようなことは何もないしな……」

 

 

 

確かに、姐さんは人に細かく教えるタイプじゃないしな。

今の段階じゃこれでいいのかもな。

 

 

 

「まっ、それ以前に私は、人に物を教えるという柄ではない。戦法など、届く距離に近づいて斬れくらいしか言えん………」

 

「ははは……すげぇ奥義ではあるんっすけど………まぁ、確かに連中には、まだちぃっと早いっすね……」

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

なのはさんの笛が鳴り、午前の訓練が終了した。

 

 

「じゃぁ、午前の訓練終了……」

 

「「「「「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」」」」」

 

 

俺たちフォワードは午前の訓練で、くたくたになっていた。

やっぱり個別スキルになると、メニューの内容もきつい。

 

 

 

「はい、お疲れ……個別スキルに入ると、ちょっときついでしょう……」

 

「……ちょっと……というか……はぁ……はぁ……」

 

「……はぁ……はぁ……かなり……」

 

「フェイト隊長は忙しいから、そうしょっちゅうつきあえないけど、あたしは当分お前らにつきあってやるからな」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 

 

スバルはヴィータ副隊長の申し出に、苦笑いで答えていた。

確かに訓練じゃ容赦ないからな。ヴィータ副隊長は………。

 

 

 

「それからライトニングの二人は特になんだけど、スターズの三人もまだまだ身体が成長している最中なんだから、くれぐれも無茶はしないように……特にフィル。初出動の時みたいな行動はもうしないでね!!」

 

「ぐっ……は、はい……なのはさん……」

 

「そうですよ。フィルさん、もうあんな真似はしないでくださいね……。あのときは……フィルさんが死んじゃうって……」

 

 

キャロはあの時のことを思い出し、また泣き出しそうになっていた。

 

 

「……キ、キャロ、俺が悪かったから、頼むから泣かないでくれ!!」

 

「ふふっ、フィルもキャロには頭が上がらないみたいだね。でも、良い薬になったでしょう。フィルにも悲しんでくれる人はいるんだって事が分かったんだしね」

 

「フェイトさんまで……本当に勘弁してください。あの後ティアに、さんざん説教されたんですから……」

 

「当たり前よ!! あんたの無茶は今に始まった事じゃないけど、あれはやり過ぎよ!!」

 

「ティア、分かったから………もう勘弁してくれ……」

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「「フィル!!」」

 

「な、何だ二人とも、そんな血相を変えて……」

 

「あのね、あんたあれはどういうつもりよ!!」

 

「えっ……?」

 

「こないだの事件のことだよ……フィル、何であんな無茶したの。あれじゃあたしのこと言えないよ!!」

 

 

ああ……。キャロのことだな。

だけど、あの時はあれしか方法がなかったんだ―――――。

 

 

 

「……あのことは済まなかったと思う。でも、キャロの力を受け入れさせるには、あれしか思いつかなかったんだ……」

 

「だからといって、あんたが死んだら意味がないでしょう!!」

 

「そうだよ!!」

 

「……とにかく、二度とあんな無茶はしないで!! お願いだから……もう少し自分を大切にして!!」

 

 

 

結局ティア達が自分の部屋に戻ったのはそれから一時間後だった。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「まぁ、フィルのことはここまでにしてお昼にしようか」

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

 

俺たちはお昼の為、食堂に向かっていると、ちょうど八神部隊長が外回りに行くところだった。

 

 

「あっ、みんなおつかれさんや」

 

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

「はやてとリインは外回り……」

 

「はいです、ヴィータちゃん」

 

「うん、ちょうナカジマ三佐と話をしてくるよ……。スバル、お父さんとお姉ちゃんに何か伝言とかあるか?」

 

「いえ、大丈夫です……」

 

 

まぁ、ナカジマ三佐やギンガさんとは普段から連絡取ってるしな。

 

 

「じゃぁ、はやてちゃん、リイン、行ってらっしゃい」

 

「ナカジマ三佐とギンガによろしく伝えてね……」

 

「うん」

 

「行ってきま~す」

 

 

八神部隊長とリイン曹長は、隊のジープでナカジマ三佐の108部隊の所へ出かけていった。

そして俺たちも、フォワード陣全員で食事を取ることになった。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「……なるほど、スバルさんのお父さんとお姉さんも陸士部隊の方なんですね」

 

「うん、八神部隊長も一時期、父さんの部隊で研修してたんだって」

 

「へぇ……」

 

「しかし、うちの部隊って関係者つながりが多いわね。確か隊長達も幼なじみ同士だったわよね」

 

「ああ、なのはさんと八神部隊長は同じ世界出身で、フェイトさんも子供の頃、確かその世界で暮らしてたはずだ……」

 

「確か……管理外世界の97番でしたっけ……?」

 

「そうだ」

 

「97番って、うちの父さんのご先祖様が住んでいた世界なんだって……」

 

 

スバルがスパゲティを食べながら話してるが、話す時は全部飲み込んでからにしろ……。

 

 

「そうなんですか……」

 

「そういえば、名前の響きとか何となく似ていますよね、なのはさん達と……」

 

「そっちの世界には、あたしも父さんも行ったことがないし、よくわかんないんだけどね……あれ、エリオはどこ出身だっけ?」

 

「あっ……僕は……本局育ちなんで……」

 

「「「あっ……」」」

 

「本局……住宅エリアって事……」

 

「本局の特別保護施設育ちなんです……。8歳までそこにいました……」

 

((この……バカ!!))

 

(……ゴメン)

 

 

 

ティアと俺はスバルに念話で注意したが、もう少し早く言うべきだった。

エリオのことは以前聞いていたんだから、止めることは出来たはずなのに……。

 

 

 

「あ、あの……気にしないでください……。優しくしてもらってましたし……ぜんぜん普通に幸せに暮らしていましたから……」

 

「そういえば、その頃からフェイトさんはお前の保護責任者だったな?」

 

「はい、物心を付いた頃から色々お世話になっていて、魔法も僕が勉強を始めてから、時々教えてもらってて……本当にいつも優しくしてくれて……僕は今もフェイトさんに育っててもらってるって思ってます……」

 

「フェイトさん、子供の頃、家庭のことで、ちょっとだけ寂しい思いをしたことがあるって………」

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

ー108部隊隊舎ー

 

 

 

 

「今日はどうした? 古巣の様子を見にわざわざくるほど、暇な身って訳でもねえだろうに」

 

「えへへ……。愛弟子から師匠へのちょっとしたお願いです」

 

 

呼び鈴のブザーが鳴ると、一人の女性がリインと一緒に入ってきた。

 

 

「失礼します……」

 

「ギンガ!!」

 

「八神二佐、お久しぶりです」

 

「ギンガ………。積もる話もあるだろうが、後にしてくれや」

 

「す、すみません、八神二佐失礼します……」

 

「またな、ギンガ。後でゆっくり話そうな……」

 

「はい」

 

 

ギンガとは一旦分かれ、私は本題をナカジマ三佐にお願いすることにした。

 

 

「お願いしたいんは、密輸物のルート捜査なんです」

 

「お前のところで扱っているロストロギアか……」

 

「それが通る可能性が高いルートがいくつかあるんです。詳しくはリインがデータを持ってきていますので、後でお渡ししますが……」

 

「まっ、うちの捜査部を使ってもらうのはかまわないし、密輸調査はうちの本業っちゃ本業だ。頼まれねぇことはないんだが……」

 

「お願いします……」

 

「八神よ……他の機動部隊や本局捜査部でなくて、わざわざうちにくるのは、何か訳があるのか」

 

「密輸ルートの捜査自体は彼らにも依頼しているんですが、地上のことはやっぱり、地上部隊の方がよく知っていますから」

 

 

半分は本当のことなんやけど、もう一つの理由をまだ気付かれるわけにはいかへん。

 

 

「まっ、筋は通っているな………いいだろう。引き受けた」

 

「ありがとうございます」

 

「捜査主任はカルタスで、ギンガはその副官だ。二人とも知った顔だし、ギンガならお前も使いやすいだろう」

 

「はい、六課の方は、テスタロッサ・ハラオウン執務官が捜査主任になりますから、ギンガもやりやすいんじゃないかと……」

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

八神部隊長と別れた私は、リイン曹長に今後のことを聞いていた。

 

 

「そうですか……。フェイトさんが………」

 

「そうです。六課の捜査主任ですから、一緒に捜査を当たってもらうこともあるかもですよ」

 

「これは凄く頑張らないといけませんね」

 

「はい。あっ、そうだ。捜査協力に当たって、六課からギンガにデバイスを一機プレゼントするですよ」

 

「デバイスを……」

 

「スバル用に作ったのと同型機で、ちゃんとギンガ用に作り直してるんですよ」

 

「それは……。その……凄く嬉しいんですが……実は……」

 

 

そう、私は以前フィルと約束をしていた。

私のデバイスは彼が作ってくれるって………。

 

 

遠い昔の約束なんだけどね……。

 

 

 

「というか、このデバイスは、フィルがギンガ用に開発した物なんです……。だから他の人には扱えないって言ってました」

 

「えっ……? まさかフィルが六課にいるんですか!?」

 

「えっ、スバルから聞いてませんでしたか? フィルはスターズのフォワードとして働いているんですよ。最も、シャーリーとデバイス作成も担当してますので、かなり大変なんですけどね………」

 

「スバルったら、肝心なことを言ってないじゃない………。そのことは、後でじっくり聞くとして……」

 

「それとフィルから伝言があるんです……『いつかの約束……守りましたよ……』です」

 

「!!」

 

 

―――――覚えてくれたたんだ。

 

 

フィルが士官学校時代にスバル達と4人で話した、他愛のない話だったのに……。

それを今まですっと忘れないでいてくれたんだ………。

 

 

 

「ギンガ……。フィルとの約束が何なのかは分かりませんが、フィルはデバイスを作るのに、かなりの無理をしたんです。訓練と並行でやっているから、中々時間が取れないって言ってましたけど……。それでもシャーリーと一緒に必死で完成させたんです」

 

「だから……受け取ってください……。フィル達の思いを……そして、大切に使ってあげてください……」

 

「ありがとうございます……。リイン曹長……そしてフィル……」

 

 

私はフィルの思いに涙が止まらなかった。

ありがとう……。

 

大切にするね……。

 

 

だから―――――。

 

 

フィルもこれ以上無茶はしないでね―――――。

 

 

 

 

*     *    *

 

 

 

「スバルに続いて、ギンガまでお借りする形になってしもうて、ちょっと心苦しくあるんですが」

 

「なに、スバルは自分で選んだことだし、ギンガもハラオウンのお嬢と一緒の仕事は嬉しいだろうよ………。しかし、まあ気がつけばお前も俺の上官なんだよな。魔導師キャリア組の出世は早いな」

 

「魔導師の階級なんて唯の飾りですよ。中央や本局に行ったら、一般士官からも小娘扱いです」

 

「……だろうな。っとすまんな、俺まで小娘扱いしてるな」

 

「ナカジマ三佐は、今も昔も尊敬する上官ですから………」

 

 

 

ナカジマ三佐は、いろんな事を私に教えてくれた数少ない尊敬出来る上司だ。

 

 

 

「……そうかい」

 

「失礼します。ラット・カルタス二等陸尉です」

 

 

私達の前に、カルタス陸尉からの通信が入り、ナカジマ三佐からカルタス陸尉へ捜査協力についての話をしてくれた。

 

 

「おう、八神二佐から外部協力任務の依頼だ。ギンガ連れて会議室でちょいと打ち合わせをしてくれや」

 

「はっ、了解しました」

 

「つうこった」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「打ち合わせがすんだら、メシでも食うか」

 

「はい、ご一緒します」

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

ー時空管理局、首都中央地上本部ー

 

 

 

 

「レリック自体のデータは以上です」

 

「封印はちゃんとしているんだよね?」

 

「はい、それはもう厳重に。それにしても良く判らないんですよね。レリックの存在意義って?」

 

「うん……」

 

「エネルギー結晶体にしては良く判らない機構がたくさんあるし、動力機関にしてもなんか変だし」

 

 

確かにエネルギーとして使えるけど、それでも不可解な点がいっぱいある。

 

 

「まぁ、すぐに使い方が判るものなら、ロストロギア指定はされないもの。……ん、こっちはガジェットの残骸データ?」

 

「はい、こっちはシグナムさんやヴィータさんが捕獲してくれたものと変わりありませんね。新型も内部機構はそう大差ないし……」

 

「……ん、ちょっと待って。さっきのⅢ型の残骸の写真。気になるのが写っているの」

 

「は、はい」

 

 

私の気のせいなら良いんだけど、内部機構の中にあったもの。

あれは、まさか……。

 

 

「これ……宝石? エネルギー結晶かなんかですかね」

 

「……ジュエルシード」

 

「えっ?」

 

「随分昔に私となのはが探し集めていて、今は局の保管庫に管理されているはずのロストロギア」

 

「ほぁ、なるほど……。って、何でそんなものが!!」

 

「シャーリー、ここ、この部分を拡大して。何か書かれている」

 

 

シャーリーに拡大してもらったプレートには名前見たいのが書かれていた。

 

 

「これ、名前ですか?ジェイ……」

 

「ジェイル・スカリエッティ」

 

「えっ?」

 

「……ドクター・ジェイル・スカリエッティ。ロストロギア関連事件を初めとして、数え切れない位の罪状で、超広域指名手配されている一級捜索指定の次元犯罪者だよ」

 

「次元犯罪者……」

 

「ちょっと事情があってね。この男の事は何年か前からずっと追っているんだ」

 

「何でそんな犯罪者が、こんな分かりやすく自分の手がかりを……」

 

「本人なら挑発、他人だとしたらミスリードねらい。どっちにしても、私やなのはがこの事件に関わっているって知っているんだ」

 

 

だけど、もし本人ならロストロギア技術を使って、ガジェットを制作出来るのも納得出来るし、レリックを集めているのも想像出来る。

 

 

「シャーリー、急いでこのデータをまとめて隊舎に戻ろう。隊長達を集めて、緊急会議をしたいんだ」

 

「はい、今すぐに……」

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

「ん、了解や。すぐ戻るから対策会議しよう。丁度捜査の手も借りれた所やしな」

 

 

 

ナカジマ三佐とギンガと夕食を食べていた所に、フェイトちゃんからの通信が入った。

フェイトちゃんからの通信は、驚くことがあった。

 

まさか、そんな大物が関わっているなんてな。

 

 

「何か進展ですか?」

 

「うん、事件の犯人の手がかりがちょっとな……」

 

「と言う訳で、すみませんナカジマ三佐。私はこれで失礼させていただきます」

 

「おう」

 

 

私はせめてここの勘定を払おうと伝票を取ろうとしたら、先にナカジマ三佐が奪い取った。

 

 

「そんな!?」

 

「さっさと行ってやんな。部下が待ってるんだろ」

 

「はい、ギンガはまた私かフェイトちゃんから連絡するな」

 

「はい、お待ちしています」

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

データをまとめた私達は車で急いで六課に向かっていた。

 

 

「ドクター・スカリエッティでしたっけ。あの広域指名手配犯」

 

「うん」

 

「その人がレリックを集めている理由って例えばどんな?」

 

「あの男はドクターの通り名の通り、生命操作とか生体改造に関して異常な情熱と技術を持っている。そんな男が、ガジェットみたいな道具を大量に作り出してまで探し求めるからには………」

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「ゼストとルーテシア、活動を再開しました」

 

「ふむ。クライアントからの指示は?」

 

「彼らに無断での支援や協力は極力控えるようにと、メッセージが届いています」

 

「自立行動を開始したガジェットドローンは、私の完全制御下と言う訳じゃないんでね。勝手にレリックの元に集まってしまうのは、大目に見て欲しいね」

 

「お伝えしておきます」

 

「彼らが動くならゆっくり観察させてもらうよ。彼らもまた貴重で大切なレリックウエポンの実験体なんだからね」

 

 

さて、君たちはどう動くかね。機動六課―――――。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

機動六課、訓練場

 

 

 

「はい、夜の訓練お終い」

 

「「「「「ありがとうございました」」」」」

 

「「「「「お疲れ様でした」」」」」

 

「は~い」

 

「ちゃんと寝ろよ」

 

 

 

フォワードの訓練が終わった後も、なのはは今日の訓練のデータをまとめていた。

こいつ本当に連中に付きっきりだな。

 

 

 

「しかし本当に朝から晩まで……疲れんだろ?」

 

「わたしは機動六課の戦技教官だもの。当然だよヴィータちゃん」

 

「後あれだ。なんつうか。もっと厳しくしないで良いのか。あたしらが昔受けた新任教育なんて、歩き方から挨拶まで、もう何でもかんでも厳しく言われてたんじゃんか」

 

 

 

あれは、地獄としかいいようがなかったぞ。

口うるさく本気で言われたからな―――――。

 

 

 

「戦技教導隊のコーチングって、どこもこんな感じだよ。細かいことで叱ったり、怒鳴りつけている暇があったら、模擬戦できっちり打ちのめしてあげる方が、教えられる側は学ぶことが多いって、教導隊では良く言われているしね」

 

「おっかねえな……。おい……」

 

「わたし達がするのは真っ新な新人を教えて育てる教育じゃなくて、強くなりたいって意志を持った魔導師達に、今よりハイレベルの戦闘技術を教えて導いていく戦技教導だから……」

 

「ふぅ、何にしても大変だよな……。教官ってのも」

 

「でも、ヴィータちゃんもちゃんと出来ているよ。立派立派」

 

「撫でるな!!」

 

 

隊舎に戻る途中、なのははレイジングハートに頼んで、データを送ってもらっていた。

連中はどんだけ幸せか気付くまで、結構時間が掛かるだろうな。

 

自分勝手に戦っている時も、何時だってなのはに護られてる幸せに―――――。

 

 

 

あたしはスターズの副隊長だからな。お前のことはあたしが護ってやる。

 

皆様、現在自サイトのみで公開しています『とある休日シリーズ』になりますが、こちらでも見てみたいという方がいらっしゃいましたら、アンケートにお答えいただけたらと思います。

  • 見てみたいので公開してほしい
  • まあまあ興味がある
  • どちらでもいい
  • 興味がないので公開はしなくて良い

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