魔法少女リリカルなのはStrikerS ~ Remember my heart ~   作:アルフォンス

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この話は、ティアナとのクリスマスストーリーになります。
恋人同士のささやかなひとときをお楽しみください。



After Storys
Christmas Memories ~ featuring ティアナ ~


JS事件が無事解決し、機動六課も穏やかな日が続いていた。

あの事件以来、大きな犯罪は起こっていない……。

 

俺とティアも、なのはさんからの地獄の訓練に明け暮れていた。

そんなある日、俺とティアははやてさんに呼び出されていた。

 

 

「クリスマス……パーティ……ですか?」

 

「せや、フィル達には馴染み無い風習やろうけど、地球では12月の24日と25日はクリスマスといって、ちょっとしたお祭りがあるんや」

 

 

確かに、ミッドチルダにはそんな風習は存在していない。

地球の文化は、ある程度聞いたことがあったが、詳しくはないからな……。

 

 

 

「そこで、24日の夕方に、ささやかながら六課の食堂でパーティをやろうと思うんや」

 

「それは面白そうですね。地球の文化に触れる良い機会ですからね」

 

 

 

こんな機会は、地球の文化を知っている人がいるときでなければ出来ないことだ。

たまにはこういったイベントも良いと思う。

 

 

「そこでや!! これだけの大人数の料理を食堂のスタッフだけじゃ、用意するのは難しいんや。普段の業務をしながら、さらに別にパーティ用の料理となると、負担も大きくなる」

 

「確かにそうですね」

 

 

六課の食堂は基本的に24時間営業だ。

これは夜勤者が利用するため、どうしても夜も営業する必要がある。

 

 

「だから、パーティの料理を、私とフィル、そしてティアナの3人でしようと思うんや」

 

「「えええっ!!」」

 

「む、無茶ですよ!! いくら何でも3人じゃ無理があります!!」

 

 

夜勤者が参加できないと考慮しても、参加予定人数は50人は超える。

その料理を、3人でこなすのはとても厳しいぞ。

 

 

 

「大丈夫や、ティアナは知ってると思うけど、私もそこそこ料理は出来るし、フィルに至っては六課で1・2を争うほどの腕前や。ティアナもフィルの癖とかは熟知してるから、補佐としては最適やしな」

 

「そ、それは……そうかもしれませんが……」

 

 

確かにティアなら、俺の補佐として最高のパートナーになると思うが……。

 

 

 

「もし、引き受けてくれるなら、前日の23日から25日までを二人に休暇をあげるよ」

 

「「えっ……?」」

 

「準備期間もかかると思うし、それに……」

 

 

はやてさんは、ポンと俺とティアの肩に自分の手を乗せ……。

 

 

「私からのせめてのクリスマスプレゼントや。パーティが終わった後は、二人で恋人の時間を過ごしてや……」

 

「「はやてさん……」」

 

 

 

はやてさんはとても優しい笑みでそう言ってくれた。

それは、まるで、母親が自分の子供に見せる慈しみの笑みだった。

 

 

 

「ありがとう……ございます。その仕事喜んで引き受けますね」

 

「あたしも、出来る限りお二人のサポートをします!!」

 

「ありがとうな。フィル、ティアナ。それじゃ前日の朝から料理の仕込みが大変になると思うけど、一緒に頑張ろうな」

 

「「はい!!」」

 

 

こうして、俺たち3人はクリスマスパーティに向けて、前日から徹夜で料理を作ることになった。

仕事に関しては、エリオ達が代わりにしてくれたので、支障は来さなかった。

 

ヴィータ副隊長に至っては……。

 

 

『おめえとはやてが作る料理、期待してるからな。ギガうめえのを作ってくれよ!!』

 

 

完全にパーティの料理で頭がいっぱいで、仕事のことを言ったら……。

 

 

『今のお前の仕事はうめえメシを作ることだ。こっちのことは、あたしやなのはがしっかりするから、心配するんじゃねえよ!!』

 

 

そう言われ、隊員オフィスから追い出されてしまうほどだった。

 

 

「フィル、これは気合いを入れて作らなきゃね!!」

 

「ああ、みんなが俺たちの分まで頑張ってくれてるんだ。とびっきり美味しいのを作ってやるさ!!」

 

「期待しとるで、私もフィルの料理を楽しみにしてるんやで」

 

「はい、最高の料理を作りますよ!!」

 

 

 

みんながこれだけ期待してくれてるんだ。

俺もその期待にしっかりと応えなくちゃな!!

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「こんな所にいたんだな……フィル」

 

「ヴァイス陸曹……」

 

 

今俺は、外に出て夜風に当たっている。

外の風が火照った身体をクールダウンしてくれて、とても気持ちいい。

 

実はパーティ中盤、俺はこっそり外に抜けだしていた。

あんまり騒がしいところが得意ではないのもあるんだけど……。

 

 

「まぁ、シャーリー達がいたらゆっくりも出来ないだろうな……」

 

 

ヴァイス陸曹はポケットからたばこを取り出し、火をつけて吸い始めた。

 

 

「おめぇも吸うか?」

 

「止めておきます……。昔なら吸ったでしょうけど」

 

 

 

未来の世界で、俺はかなりたばこを吸っていた。

気を紛らわせるのに、たばこか酒くらいしかなかったから――――。

 

 

 

 

「そっか……。まぁ、今はティアナがいるんだしな」

 

「ええ……」

 

 

 

しばらく俺とヴァイス陸曹は、たわいもない話をしながら過ごしていた。

考えてみれば、こうして男同士で話すのってあまりなかったな。

 

 

 

「……おっと、ちょいと長く話しすぎたな。これ以上時間をとらせたら……」

 

 

ヴァイス陸曹が指をクイッとやって、後ろを指すと――――。

 

 

 

「そこの木陰で隠れてるティアナにどやされそうだからな」

 

「えっ……ティア!?」

 

「あ、あはは……なんか出るに出られなくなってしまって……」

 

「ということで、お邪魔虫は消えるとするぜ。後は二人で楽しみな!!」

 

「ちょ、ちょっと!!」

 

 

ヴァイス陸曹は、そう言ってさっさと隊舎の中に入ってしまった。

 

 

 

「もう……ヴァイス陸曹ったら……」

 

「あ、あはは……何かあからさまにされると、反応に困るぞ……」

 

「本当よね……」

 

 

確かにティアと二人きりになるのは嬉しいけど、この事が後日、からかわれることになるのは嫌かな……。

でも、ヴァイス陸曹はそんなことはしないか……。

 

飄々としてるようで、男気がある人だし――――。

 

 

 

「でも、やっと……二人きりの時間が出来たわね」

 

「そうだな……」

 

 

するとティアは、俺のそばに来て俺の肩により掛かってきた。

こうして、好きな人の温もりを感じているときはとても幸せを感じる。

 

 

「ねぇ……まだ25日にはなっていないわよね」

 

「ああ、まだ1時間は残っているな……」

 

 

時計を見ると午後11時を指していて、まだイブの時間は残されていた。

 

 

「だったら、あたし達の部屋にもどって……一緒に過ごさない?」

 

「だな……」

 

 

残った時間は、二人きりの……。

 

恋人同士の時間だから――――。

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「さて、ケーキでも食べるとするか」

 

「ええ」

 

 

部屋に戻ったあたしたちは、さっそく明かりを消して、テーブルにケーキを用意しキャンドルに火を付ける。

用意したケーキは、事前にフィルが手作りでつくっておいたものだった。

 

 

「うん、美味しい♪ やっぱりフィルのケーキって何度食べても美味しいわね!!」

 

「そう言ってもらえると作った甲斐があるな」

 

 

本当、何度食べてもフィルが作るケーキは美味しいわね。

甘さもしつこくないし、何よりあたし好みの味なのよね。

 

それに……。

 

 

 

「ねぇ……このケーキ……もしかして?」

 

「覚えていたか?」

 

「……当たり前でしょう」

 

 

そう、このケーキはあたしがフィルと出会って、一番最初に作ってくれたチーズケーキだった。

別名ドゥーブルフロマージュ――――。

 

これを最初に食べたとき、あたしもスバルも本当にびっくりして、1ホールあったのに全部食べてしまったのだ。

 

 

 

「これを超えるケーキをどうしても作りたかったのに、最後まで超えられなかったのよね……」

 

「あはは、ティアは負けず嫌いだからな」

 

「ふふっ、確かにあの頃のあたしは躍起になって、これを超えたいと思っていたわよね」

 

 

あの頃、フィルに何度もレクチャーして貰って、何度も挑戦したんだけど、どうしてもこの味を作ることができなかった。

今もチャレンジしてるけど、未だにそれは出来ていない。

 

 

 

「でも、今はフィルがこうしてあたしのために作ってくれる。その方がずっと嬉しい」

 

「ティア……」

 

 

やっぱり大好きな人に作ってもらう方が何倍も美味しい。

例え自分で出来たとしても、こんな満足感は得られないと思うから……。

 

 

「さてと、食べ終わったし、後片付けくらいはするわね」

 

「いいよ。俺がするって……」

 

 

ケーキを食べ終わって、後片付けをしようとしたとき、フィルが自分でしようとしていた。

せめて、これくらいしなきゃ悪いわよ……。

 

 

 

「それだったら、俺が洗うからティアはそれを拭いてくれるかな」

 

「オーケー。任せておきなさい」

 

 

 

結局あたし達はこんな感じで、後かたづけを終えた二人はフロアに戻り、揃ってソファーに座り寄り添いながらまったりとしていた。

特に何かをするでもない。二人はただ寄り添いあい、お互いの暖かさを感じるだけ……

 

あたし達は普段は訓練漬けのため、どこかのアミューズメントパークに行くとかいうようなデートはほとんどなく、天気のいい日は芝生に二人で寝転がったり……などということがほとんどだ。

 

しかし二人とも言いたいことは一つだけ……。

 

 

(二人でいる時間が大切だから……)

 

 

――――二人の時間。

 

 

それは暖かくも甘い……二人だけの宝物。

 

 

しかし……楽しい時間ほど短く感じるモノで……。

 

 

フィルはふと、部屋にある置き時計に目をやる。

 

 

時間は午前0時

 

 

「イブ……終わっちゃったね」

 

「でも、クリスマスは終わっていないだろ。だから……」

 

 

そう言って、フィルは棚から小さな箱を取り出し……。

 

 

「えっと……メリークリスマス。ティア」

 

 

フィルはどこか照れくさそうな表情で、あたしにその箱を渡してくれた。

 

 

「……ありがとう……フィル」

 

 

ぶっきらぼうだけど、本当はどれだけあたしのことを思ってくれてるかは分かっている。

このプレゼントだって、必死で探してくれたに違いないから……

 

だからね……。

 

 

「フィル……あたしもね……プレゼントがあるんだよ」

 

 

あたしもソファーの下に隠しておいた包みを取り出し、それをフィルに渡した。

 

 

「メリークリスマス……フィル」

 

「……ありがとうな。ティア」

 

 

フィルもまた笑顔で受け取ってくれた。

 

よかった……。

 

喜んでくれたみたいね。

 

 

「開けても……いいか?」

 

「うん……その代わり、あたしも開けるから?」

 

「ああ……」

 

 

あたしとフィルは二人して、互いのプレゼントの包装を解く。

お互いのプレゼントは二つずつ。

 

あたし達は、まず大きい包みの包装を解いていった。

あたしが受け取ったフィルからのプレゼントは……。

 

 

「これ……ライダー用のジャケットね」

 

「ああ、ツーリングが好きなティアにはもってこいだと思ってな……」

 

 

茶基調で、落ち着いたデザインのジャケットは着てみると、とてもしっくり来る物だった。

 

 

「ありがとう……とっても嬉しい」

 

 

そして、フィルも包みを開いていく。

フィルは何かに気がついた様子だった。

 

 

「……これ?」

 

 

あたしがフィルにプレゼントしたのは、黒いセーターとマフラー。

 

 

「……もしかして、手編みか?」

 

「うん。前からずっと編んでいたんだけど、こんな機会があって良かった。ずっと渡せないでいたから……」

 

 

フィルがセーターを自分の身体に合わせている。

袖の長さとかも問題ないみたいね。

 

 

 

「……大切にするよ。ティア」

 

「……うん、大切にしてね。頑張って編んだんだからね……」

 

 

そして、残るプレゼントはお互いに一つ……。

偶然なのか、二人のプレゼントの大きさは殆ど同じ……。

 

その包装を解いていく間、あたし達にはある種の予感があった。

 

 

((もしかして……))

 

 

そして、包装紙はなくなり、品物が見えてきた。

 

 

「「あっ……」」

 

 

あたし達の漏れた声が重なっていた。

お互いの手元には……一本の腕時計。

 

銀色の落ち着いた意匠の時計だった。

 

両方とも、もちろん、男性用、女性用の違いはあるけど、それは明らかに同じデザイン。

それをみて、あたし達はすぐに顔を見合わせ……。

 

 

「フィル……もしかして……?」

 

「……どうやら、そう、みたいだな……」

 

 

あたしとフィルはお互いのポケットからある物を取り出した。

 

 

それは……。

 

 

お互いにプレゼントしたのと全く同じ腕時計……。

 

 

この時計はもともとペアウオッチで売られていた物だ。

どうやら、あたしとフィルは同じペアウオッチを、お互いにプレゼントしてしまったみたいだ。

まさか、こんなところで気が合うとはね……。

 

 

あたし達は呆然と顔を見合わせ……。

 

 

そして……。

 

 

最後は同時に吹き出し……。

 

 

「「あっははははは!!」」

 

「何やってるんだろうな……俺たち」

 

「全くよね……」

 

 

二人は同じように、元々ポケットにしまっていた時計を再び戻し、互いにプレゼントした時計を腕に嵌める。

そして、お互いに微笑んでいた。

 

 

「ありがとう……フィル。大事にするね」

 

「ありがとうな、ティア。大事にするよ」

 

 

お互いに腕に嵌めた時計を見せてから、あたし達は苦笑していた。

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「あのね……フィル」

 

「んっ?」

 

 

今日は、もう遅いからそろそろ寝ようとしたとき、ティアが……。

 

 

「もっと……フィルのこと感じたいな」

 

「……いいのか?」

 

 

恋人同士がこうしていて、そんな言葉を言われる。

それが意味することは、限定される。

 

俺もいくら鈍感朴念仁とか言われていても、そのくらいは分かるつもりだ。

ティアも自分から誘ったが、顔は真っ赤になってモジモジしている。

 

 

「……うん、もうひとつだけプレゼントがあるんだ……」

 

「えっ……?」

 

 

そう言って、ティアはロングヘアだった髪を、リボンで結んでポニーテールにして……。

 

 

「あたし自身も……プレゼントしたいから……」

 

 

ポニーテールにしたティアは、いつもの雰囲気とまた違った魅力に溢れていた。

それに可愛い恋人にここまで言われて何もしないなんて、アホがすることだ。

 

俺はティアを抱き上げる。

所謂、お姫様抱っこだった。

 

 

 

「きゃっ!?」

 

「プレゼント……ありがたくもらうからな」

 

「うん……」

 

 

俺はティアを抱いたまま、寝室に足を踏み入れ……。

 

 

「あっ……」

 

 

そのまま、ティアをベッドに下ろし、俺もティアの上に乗って……。

 

 

「今日は……寝かさないからな」

 

「うん……いっぱい、いっぱい抱きしめてね」

 

 

俺はティアの唇を少し強引に奪う。

ティアもびっくりしていたけど、すぐに受け入れてくれ、互いの舌は何度も求め合い……。

 

 

数分後……。

 

 

キスが終わった後は、唾液で出来た銀の糸ができあがっていた。

 

 

「もっと……もっと感じたいよ」

 

「ああ、俺もだ……」

 

 

俺たちは互いに衣類を脱ぎ去り、その後は何度も互いの存在を確かめ合った。

 

 

 

 

身体

 

体温

 

 

それこそお互いの身体の全てを確かめ合うように求め合った。

 

 

そして――――。

 

 

「お願い……もう、きて……フィル」

 

 

 

――――聖なる夜。

 

 

俺たちは、何度も求め合い……。

 

 

お互いの体温が感じる度に、お互いの存在が一つだと感じられ……。

 

 

俺もティアも、その快感の海に溺れていった。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「ねぇ……起きなさいよ。フィル」

 

 

なんか俺の身体が揺すられているようだが……

 

 

「んっ……」

 

「起きないわね……んもう……しょうがないわね」

 

 

すると、俺の頬になにか温かい感触が触れた。

 

 

ちゅっ

 

 

(えっ……)

 

 

この温かい感触、もしかして……

俺は慌てて起き出す。

 

 

 

「……やっと、起きたわね。お寝坊さん♪」

 

「……おはよう、ティア」

 

「おはよう、フィル」

 

 

 

やっぱり、あの感触はティアの……。

そう思ったら顔が真っ赤になるのを感じた。

 

 

「……あたしだって恥ずかしかったんだからね。ばか……」

 

 

ティアも同じ事を思ったのか、やっぱり顔が真っ赤になっていた。

 

 

「でも、嬉しかった。こうして、好きな人に起こされるんだからな」

 

「……ばか。でも、フィルが望むなら、いくらでもしてあげる……からね。だから……」

 

 

ティアは俺にぎゅっと抱きつき……。

 

 

「これからもずっと一緒だからね。フィル♪」

 

 

俺の頬にキスをしてきた。

そして、俺も……。

 

 

「ああ、ずっと、ずっと一緒だからな。ティア」

 

「うん♪」

 

 

 

聖なる夜……。

 

 

俺たちは、お互いの絆をより深められた……。

 

 

恋人同士の大切な一時……。

 

 

クリスマスはそんな時間を与えてくれた――――。

 

 

これからもティアのことを大切にしていきたい。

 

 

二人のクリスマスは、これからもずっと続いていくのだから……。

 

 

皆様、現在自サイトのみで公開しています『とある休日シリーズ』になりますが、こちらでも見てみたいという方がいらっしゃいましたら、アンケートにお答えいただけたらと思います。

  • 見てみたいので公開してほしい
  • まあまあ興味がある
  • どちらでもいい
  • 興味がないので公開はしなくて良い

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