魔法少女リリカルなのはStrikerS ~ Remember my heart ~ 作:アルフォンス
今回の物語は、リオとのストーリーになります。
「うーん、やっぱ外の空気は気持ちいい~」
さっきまで寝ていたんだけど、のどが渇いて目が覚めちゃったら、なんだか眠れなくなっちゃって、みんなに内緒でちょっとだけ外に出ちゃった。
まぁ、コテージの庭だから、大丈夫だよね。
「でも、本当にすごかったな、模擬戦……」
なのはさん達も、もちろんすごかったんだけど、特にフィルさん。
あたしは初めてフィルさんの戦い方を見たんだけど、本当にあの人は病み上がりの人なの?
ヴィヴィオが言うには、フィルさんは本当に大怪我をしてしまって、正直、もう二度と戦うことが出来ないとまで言われていた。
でも、それを必死になってあそこまで回復して今では執務官として活躍してる。
「あたしも、もっと頑張らなきゃだね」
ガサガサ
「あれ?」
物音がして、あたしはコテージの反対側へと行ってみた。
ここは無人世界だから、あたし達以外の人はいないはず。
となると、動物か何かかな?
そう思って見に行ってみると、そこにいたのは……。
「……フィルさん」
模擬ターゲットで射撃訓練をしていたフィルさんの姿だった。
「んっ? リオか。どうしたんだ、眠れないのか?」
「はい、さっきまで寝てたんですけど、起きちゃったら眠れなくて、外の空気吸ってたんです。そう言うフィルさんは?」
「まぁ、似たようなもんだな。模擬戦じゃ1ラウンドしか戦わなかったし、すこし身体を動かしてたんだ」
あたしも、ヴィヴィオ達から理由聞くまでは、どうしてもっとやらないんだろうって思ってたんだけどね。
でも、ヴィヴィオ達がとめるのは当たり前。
病み上がりの人に、無理なんかして欲しくないからね。
「フィルさん、のど乾いてませんか? これ、よかったら一緒に飲みませんか?」
あたしは、持ってきていたスポーツドリンクをフィルさんに渡す。
「ありがと、助かったよ」
フィルさんは、飲み口に口を付けないように飲んでいた。
「フィルさん、飲み口に、口付けても大丈夫ですよ」
「さすがにそれは悪いだろ。一本しかないし、俺が口付けたの渡すのは、な」
「それ、今更です。こないだヴィヴィオに思いっきりやってましたし……」
この前、自分が口付けたジュースをヴィヴィオに渡して、それをヴィヴィオが飲んじゃってたんだよ。
ヴィヴィオ、思いっきり顔真っ赤になってたけどね。
「よく覚えてたな。そういえば、あの時は何も考えずしてたからな」
「ですから、あたしも気にしませんから、ね」
「じゃ、今度はそうさせてもらうよ。もう、結構飲んじゃったからあとはリオが飲んでくれ」
そう言って、フィルさんはあたしにドリンクを返し、結局残りのスポーツドリンクはあたしが飲み干してしまった。
「あっ、そういえばフィルさんに聞きたいことがあったんです」
「んっ? 何を聞きたいんだ」
「ヴィヴィオとコロナのデバイスです。いつ、二人に作ってあげるって約束したんですか?」
ヴィヴィオとコロナが、すっごく良い笑顔してたから、ちょっとだけ気になってたんだ。
何か特別なことがあるのかなって?
「まぁ、詳しいことはここでは省くけど、二人ともすっごく頑張っていたから、それを手助けできればと思ってやっただけだよ」
「二人ともすっごく喜んでましたよ。あたしもソルフェージュが無かったら、お願いしてたかも……」
「リオのソルフェージュは良いデバイスだよ。結構使っていただけあって、互いの信頼関係も作られてるしな」
「えへへ」
最初は、あたしも苦労したんだけど、今ではソルはあたしの大切な相棒。
もっと、使いこなせるように頑張らなきゃね。
「インターミドルに出るときは、リオ達のデバイスのメンテナンスは引き受ける予定だから、して欲しいことがあったら遠慮無く言ってくれ」
「はいっ!!」
「さて、少し冷えてきたし戻るとするか」
フィルさんに言われて、あたしも戻ろうとしたとき……。
「うわっ!!」
足下の石につまずいてしまったが……。
「おっと」
フィルさんが、あたしを片手で抱きとめてくれた。
でも、無理な体勢で抱きとめてくれたから、フィルさんがそのまま背中から倒れてしまった。
「大丈夫か、リオ」
「は、はいっ!! でも、フィルさんの方が……」
あたしよりも、フィルさんの方が心配だよ。
背中から落ちたんだし……。
「大丈夫、ちゃんと受け身取ってるしな。それより、ごめんな……」
「えっ?」
なんで、フィルさんが謝るんだろ。
むしろ、謝るのはあたしの方なのに……。
「受け止めるとき、その……胸の近く掴んじゃっただろ。もっと、うまくすれば良かったんだけどな」
「そ、そんなことないです!! フィルさんが咄嗟にしてくれなかったら、あたしは怪我してたかもしれないんですから……」
フィルさん、気にしすぎです。
助けてもらって、そんな事言う人なんかよっぽどの人じゃなきゃ言わないですから……。
「そう言ってもらえると助かるよ。ルーテシアから聞いたけど、昨日、温泉でセインの奴がふざけてお前の胸掴んだだろ。だから、そういうのに敏感になってるかなって思ったから……」
「あっ……」
―――――実は、ちょっとだけ気にしてたんだ。
相手がいくら女の子とはいえ、やっぱり、いきなり胸を掴まれるのは怖かったから。
「だから、このオフトレでこれ以上嫌な思い出……作って欲しくなかったからな」
「フィルさん……」
―――――いま、分かった。
コロナとヴィヴィオが、フィルさんを想ってるのが。
こんな風に大切に思われてるなんて、今まで無かったから……。
「大丈夫です。むしろ、あたしには良い思い出、出来たかな」
こんなふうに、フィルさんと一緒にいられたんだから……。
ヴィヴィオ、コロナ、ゴメンね。
あたしも、フィルさんのこと好きになっちゃったかな。
* * *
「これ、すっごく重いです」
「魔力負荷とはいえ、筋力を鍛えることも出来るからな。慣れるまでは思うように動けないだろうな」
マリーさんが考えてくれた魔力負荷バンド。
それを付けながら、あたしたちは特訓をしている。
ヴィヴィオはノーヴェコーチと、コロナはオットーと、そしてあたしはディードとフィルさんが担当してくれることになった。
二人とも、フィルさんがあたしに付くのはブーイングだったけど、一応順番で回るんだし、それに二人ともデバイス作ってもらってるんだから、これくらいのハンデはありだよね。
「リオお嬢様、焦らずいきましょう。時間はまだあるんですから」
「うん、そうだね」
春光拳と炎雷を組み合わせた戦い方は無限にある。
それを使いこなしていくのが、あたしの戦い方だから……。
「ソルフェージュの方はこっちに任せてくれ。完璧に仕上げてみせるからな」
実際、フィルさんの手によって、ソルはあたしが使っていたときよりハイスペックになっている。
ディードの話だと、おっそろしくカスタマイズしたって言ってたし……。
それって、相当のお金懸かってるよね。
あたしのソルって結構ピーキーだし、ワンオフで作ったから部品高いし……。
「あたし、使いこなせるかな? 今のソルのこと……」
「それはリオ次第だ。でも、俺は信じてる。お前ならソルフェージュと一緒に成長していけるって……」
―――――フィルさんのあたたかい瞳。
ヴィヴィオ達も、みんなフィルさんに見守られてきたんだよね。
「あたし、いっぱい頑張って絶対に勝ち抜きます!!」
それが、あたしの精一杯の気持ちだから……。
* * *
「さて、みんな送ってくから、それぞれの車に乗ってくれ」
「「「はーい」」」
アインハルトは、はやてさんの車に、コロナとヴィヴィオはなのはさん達の車で送ることになった。
リオはというと……。
「えへへ、ありがとうございます!!」
俺が、サンダーで送ることになった。
というより、俺がリオだけわざと別にしたのだ。
その理由は……。
「わーい!! フィルさんのバイクだ!!」
あまりにも笑顔過ぎる今のリオを、ヴィヴィオ達と一緒にするのは良くないと思ったからだ。
―――――今のリオは、無理して笑顔を作ってる。
この状態を放っておくことはできない。
「それじゃ、しっかりつかまってろよ」
「はい!!」
俺は少しだけ速度を速めて、ヴィヴィオ達のそばから離れた。
* * *
「うーん、潮風が気持ちいいですね~」
「そうだな……」
フィルさんが、突然『リオが疲れてなかったら、少し気分転換に行こうか』と行ってくれて、あたしはせっかくだから海がみたいと言って、サンダーでここまで連れてきてくれた。
「あはは、チームナカジマ初等科、全滅です。あたしも頑張ったんですけど……」
「みんな立派だったよ。初出場であそこまでいければすごいさ……」
フィルさんの笑顔が今はとても苦しい。
いつも、あたし達を見守ってくれた笑顔。
あたし、もう、笑っているのは無理だよ……。
「……そう、なんですけど、ね」
―――――分かってる。
あたしだって、あそこまで戦えるとは思っていなかったから……。
コーチやディード、そしてフィルさん。
みんながあたし達を必死でサポートしてくれたから……。
だからこそ……。
「……勝ちたかった。応援してくれたみんなに、喜んで欲しかった……」
その笑顔にもっと応えたかったのに……。
もう、涙を抑えるのは無理だった。
すると……。
「……フィル、さ、ん?」
フィルさんがあたしを包み込んでくれて……。
「……今は、思いっきり泣きな。もう、無理して笑う必要はないから……」
「うわああああああん!!」
あたしはフィルさんの胸の中で、思いっきり泣いていた。
* * *
「……えへへ、もう大丈夫です。いつものあたしです」
「ああ、さっきとは違う本当の笑顔だ。わかるよ……」
きっと、フィルさんは気がついてたんだ。
あたしが無理して笑っていたのを……。
「一つだけ聞いても良いですか?」
「ん? なんだ」
「どうして、あたしだけ別行動にしたんですか?」
ヴィヴィオもコロナも、きっと同じ様に無理してたのに。
それが分からないフィルさんじゃないはず。
「……ヴィヴィオも、コロナも無理はしてたけど、あの時はリオがいちばん危なかったんだ。明らかに無理してるのが分かってたし、それに……」
「それに?」
「リオの心が、泣いてるのが伝わってきたから……」
―――――ずっとそうだった。
この人は、いつも本当にいてほしいときに、そっと支えてくれてた。
ディードと一緒に特訓に付き合ってくれたときも……。
ハリー選手と戦ったときに、応援してくれたときも……。
そして、今も……。
「本当に……やさしいです。フィルさん」
「優しくなんかないさ。そういうのはノーヴェやなのはさん達の役目だよ……」
―――――そんなことない。
「そんなことないです。今だって、こうしてあたしのことを包んでくれてる。そんなフィルさんのことが、あたしは……」
あたしにとって、あなたは……。
「大好きになったんですから」
誰よりも大好きな人なんですから。
* * *
本来、このくらいの歳の女の子は、恋に恋することが多い。
でも、リオはしっかりとした考えを持っている。
だから、今の言葉も、リオの本当の想いなんだろう。
でも……。
「……分かってます。いまのあたしじゃ、フィルさんにふさわしくないことは……。でも、年が離れてるって理由だけであきらめたくないんです。あたし、いっぱい努力して、もっと可愛い女の子になります。だから……」
リオは、意を決し、強い意志を持った瞳で……。
「あたしに時間をください。せめて、フィルさんに彼女が出来るまでの間で良いですから……」
自分の想いを必死に伝えてきた。
「……リオ」
―――――完全に俺の負けだな。
俺は、さっきまで年が離れてるから、もっと良い奴が見つかると言うつもりだった。
だけど、リオがこうして必死に伝えてきたんだ。
それを理由にするのは卑怯だよな。
「……分かった。俺に彼女が出来るとは思わないが、リオが中等科を卒業するまで、今の想いを持ってくれてるなら、その時に改めて答えるよ」
「ありがとうございます!!」
この子なら、本当に頑張る気がする。
あれだけ一生懸命にする女の子なんだから……。
だから、今の俺が出来る精一杯のことは……。
「これを、約束の証としてリオに預かって欲しい」
「これは……?」
《マスター……。まさか、これ!!》
リオに、必ず約束を守るという、しっかりとした証を渡してあげることだけだ。
* * *
「……綺麗なカートリッジ、これは?」
これは、プリムに使ってるカートリッジと言うことはわかる。
以前にフィルさんに見せてもらったことがあるから……。
でも、これは普通のカートリッジとは違って、銀色に輝いている。
《……本気なんですね。『スパイラルカートリッジ』を渡すなんて……。もう、これ作れないんですよ》
「分かってるよ。ゆりかご事件の後、設計図から何まで消去してしまったからな。残ってるのはこれ一個だけ……。だからこそ、かな」
「どういうことなの、プリム?」
すると、プリムから語られた内容は衝撃的な物だった。
フィルさんがあたしに預けてくれたカートリッジは、『スパイラルカートリッジ』といってプリムのラストリミットを解放する唯一の鍵。
そして、スパイラルシステムのことも教えてくれた。
スパイラルシステムは、自分の命を魔力に変換する最強であり最悪のシステム。
《というわけです。あれだけなのはさん達や私が処分してくださいと言ってたのに、それだけは持ってました。それを預けたと言うことは……。マスターは、本気でリオのこと待ってるつもりです》
「フィルさん……」
「これくらいしか、リオの想いに応えてあげられないからな。待ってるよ、でも、他に良い奴が出来たら、俺のことは気にしないでくれよな……」
まったく……。
あたしがどれだけの想いで伝えたと思ってるんですか!!
フィルさん、女の子のこと舐めすぎです。
だから……。
「あたし、絶対にフィルさんのハートをゲットしますから!!」
覚悟してくださいね、フィルさん♪
* * *
6年後
あたしは、フィルさんをあの時と同じ海岸で待ち合わせをしていた。
夕方なら時間がとれると言うことで、あの時と同じ夕暮れ時になってしまったけど……。
これも何かの運命を感じるな……。
すると、フィルさんがサンダーに乗ってこっちにやってきた。
「待たせて済まなかったな、リオ」
「いえ、あたしがお呼びだてしたんですから、気にしないでください」
正直、あたしの心臓はバクバク言ってて、ドキドキが止まらない。
「まさか、本当に16まで彼氏作らなかったとはな……」
「それ、フィルさんも同じです。彼女作らなかったなんて……」
「約束だからな。リオが彼氏を作らない限り、今日まで待ってるってのは……」
本当に実直な人です。
でも、あたしはその約束のおかげで、今日まで頑張ってきたんです。
苦手だったお料理も、色んな人に教えてもらったし。
強さだって、フィルさんと一緒にいられるようにいっぱい強くなった。
お勉強だって、学校の勉強だけでなく、ヴィヴィオと同じ司書資格を取ったりして頑張った。
フィルさんが好きだって想いは、あのときよりずっと大きくなってるんですからね!!
「あらためて伝えます。あたし、リオ・ウェズリーはフィル・グリードさんのことが大好きです!!」
すると、フィルさんは……。
「あっ……」
あたしを自分の方へ抱き寄せて……。
「こんな俺を、ずっと想ってくれてて……ありがとう、な。そんな真っ直ぐな心を持ってるリオだから……。俺も好きなんだ」
「……嘘じゃないですよね。もう、撤回はききませんからね」
「撤回なんかしないよ。6年前に預けた『スパイラルカートリッジ』にかけてな……」
「だったら、もう一つ……証、ください」
あたしは瞳を閉じると、その意味を分かってくれて……。
夕焼けの空の下―――――。
あたしとフィルさんは、キスを交わした。
それは6年間……。
ずっと思い続けてきたあたしの想いがかなった瞬間だった。
* * *
「んっ……ちゅ……はぁ……」
「ずいぶん、積極的にキスしてくるな……」
それは当たり前だよ。
6年分の想いが、あたしをうごかしてるんだもん。
この6年の間、何もなかった訳じゃない。
フィルさんが、ヴィクターさんやティアナさんとつきあい始めたという噂話が、何度も入ってきたりしてやきもきした回数は数知れない。
「あたりまえだよ。やっとあたしの想いが叶ったんだから……。だから、今日はいっぱい抱きしめてください」
「遠慮はしなくていいんだな……」
「そんなことしないでください。あたし、今日という日を忘れたくないんです。想いが叶った大切な日を……」
「……わかった」
そういって、フィルさんはあたしの胸を両手で何度も触れてきて……。
「あ、ん……ふぁ……」
そんなに大きくないあたしの胸に舌を這わせる。
「……敏感だな、リオは」
「ヴィクターさんやアインハルトさんみたいに大きくないけど、コロナよりは大きいんですからね」
コロナもあたしと同じで、胸のサイズはそんなに大きくないけど、頑張ってなんとかコロナには勝ってる。
ヴィヴィオやアインハルトさんには勝てないけど……。
「ああ、すごく触りごごちがいいよ。ずっと触れていたいくらいにな……」
「だったら、これから何度も触ってください。あたしも、こうしてフィルさんに愛されると嬉しいですから……」
そして、ついに……。
「本当に……良いんだな?」
「あたし、ずっと待ってたんです。フィルさんと一緒になるの……。だから、きて、ください……」
あたし達は本当の意味で一つになる。
―――――理性なんか必要ない。
今必要なのは、本能に身を任せることだけ……。
破瓜の傷みも、フィルさんと一つになれたという想いが快楽に変えてくれるから……。
* * *
「えへへ~♪」
「本当に女の子ってタフだよな……」
「そうですよ。女の子は好きな人の前だと、いっぱい甘えたくなるんですよ~♪」
あたしも、まさか何度もするとは思わなかったけど、でも、今日という日を素敵な思い出にしたかったから……。
「そっか……。だったら、たくさん甘えてくれ。俺も出来る限り受け止めてやるから……」
「……もう、あたし遠慮なんかしないですから、覚悟してくださいね!!」
「……それじゃ、俺も遠慮しないで、リオのこと求めようかな」
「ちょ、ちょっとフィルさん!? あ、ん……」
そう言って、フィルさんはあたしの胸をまた揉みはじめて……。
「なんだろうな……。好きな女の子の身体にずっと触れていたいって思ってしまう。すまん、これじゃ……節操なしだよな」
「……そんなこと無いですよ。あたしだって、好きな人にはさわってほしいって思うんですから……」
「リオ……」
「だから……」
あたしは、フィルさんの首に、八重歯で甘噛みをして思いっきり甘える。
そして、フィルさんもあたしの胸を揉みながら、そのままベッドで求め合う。
互いの身と心が、溶け合うまで……。
* * *
「それじゃ、今日はあたしが運転しますね」
「なんかいつもと逆なのは新鮮だよな……」
せっかくバイクの免許を取れたんだし、こうしてフィルさんのバイクに乗ってみたかったんだ。
「じゃ、安全運転で頼むな」
そう言って、フィルさんはあたしの腰をしっかりと掴むが……。
「そこじゃないですよ。手はここですよ~♪」
あたしはフィルさんの手を、自分の胸の所に持ってった。
恥ずかしいけど、これくらいしないとあたしの気持ち伝わらないから……。
「ちょ、ちょっと待て!? ここはリオの胸だろうが、女の子の胸を、な……」
「それ、今更です。さっき、ベッドであたしの胸を何度も揉んだんですから」
「だけどな……」
「それに、フィルさんには、あたしをいつも感じて欲しいんです。ほら、心臓がドキドキしてるの伝わりますよね」
フィルさんに触れられて、あたしの心臓はさっきからドキドキしっぱなしだよ。
「……すっごく伝わってくるよ。リオの鼓動がな」
「うん……」
《あの……。リオさん、相棒、発進するなら発進しましょう。ラブコメはもう、お腹いっぱいですから……》
「うぐっ……」
「あぅぅ……」
結局、発進するのに10分以上経ってからになってしまった。
それでも、手の位置はそのまま胸にしてもらったけどね。
* * *
「それじゃ、さっそくお夕飯作りますね~」
近くのスーパーで一通りの買い物をした後、あたしは夕飯を作り始めた。
今日は、あたしが覚えた得意料理を食べてもらうんだ。
「なんか悪いな。全部やってもらって……」
「良いんです。今日は、あたしの手料理をいっぱい食べてもらいたいですから♪」
「そっか……」
そう言って、フィルさんはリビングに戻って、プリムとソルフェージュの整備をし始めてた。
こういうときは、のんびり待っていて欲しかったな。
それじゃ、あたしは出来るだけ早くお夕飯を作るとしますか!!
「おまたせしました!!」
「オムライスか。これ、結構難しいのに、よく卵を包めたな」
「えへへ~♪ あたしたくさん練習したんですよ」
これが出来るようになるまで、ずいぶん苦労したな。
卵を買って、作ってはコロナ達に食べてもらってを繰り返して、やっと出来るようになったんだからね。
「ただ……。これは恥ずかしいぞ」
そう言って、フィルさんが指さしたのは、ケチャップで、ハートマークを思いっきり書いたオムライス。
「良いじゃないですか。あたし達しかいないんですから……」
「確かにな。それじゃ頂くよ……」
フィルさんがスプーンでオムライスを食べようとしたとき……。
「だめですよ、自分で食べたら」
「えっ?」
「はい、あーんしてください♪」
フィルさんは、びっくりしてスプーンを落としちゃったけど、その方が好都合。
「え、えっと……」
「あーん♪」
結局フィルさんが根負けして、オムライスを食べてくれました。
恥ずかしいのは分かりますけど、あたしだって恥ずかしいんですからね。
でも、こうやって甘えられるのは恋人同士の特権なんですから……。
* * *
「もう、着いちゃいました」
「結構、遠回りしたんだけどな……」
あたしとフィルさんの家はそんなに離れていない。
だから、バイクだと15分もかからないで着いちゃう。
「……本当は、もっと一緒にいたかったです」
「さすがに二日連続はダメだろう。親御さんだって心配するからな……」
フィルさんだったら、家の親も大歓迎してくれる。
前々から、フィルさんのこと気に入ってたし、彼氏にするならフィルさんみたいな人見つけろっていわれたし……。
それに泊まってくるって言ったときも……。
『2~3日帰らなくても良いからね♪』
などと、親公認でお泊まりオーケーだったし……。
「……それじゃ、寂しくないように、キス……してくれますか」
「……本当、甘えん坊さんだな。リオは」
「フィルさんにだけ、です。あたしが甘えるのは……」
―――――街灯が照らす中。
あたしたちはどちらからともなく……。
お休みのキスを交わす。
「……お休みなさい、フィルさん」
「ああ、お休み。リオ」
これからも、たくさん甘えますけど、それ以上に頑張ってもっと可愛い女の子になりますから……。
だから、ずっとあたしのそばにいてくださいね。
P.S:あの夜のキスしてた現場を、ヴィヴィオ達に思いっきり見られてしまってて、しかも、写メまで撮られてしまっていた。
そのことで、色んな人に追求されることになり、付き合うことも言ったんだけど……。
これが原因で、ヴィヴィオやコロナが……。
『略奪愛って、ありだよね』
などと、とんでもないことを言い出すし……。
冗談って言ってるけど、あの眼は絶対本気の眼だ!!
はぁ……。
あたしの恋は、本当に波瀾万丈になりそうです。
皆様、現在自サイトのみで公開しています『とある休日シリーズ』になりますが、こちらでも見てみたいという方がいらっしゃいましたら、アンケートにお答えいただけたらと思います。
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見てみたいので公開してほしい
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まあまあ興味がある
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どちらでもいい
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興味がないので公開はしなくて良い