魔法少女リリカルなのはStrikerS ~ Remember my heart ~   作:アルフォンス

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今回は、フィルの相棒のプリムの物語になります。
これも、一つの愛情の形になると思います。


if ending プリム

《マスター、頑張ってください!! もう少しでヴィヴィオのレリックは砕けます!!》

 

「ああ……分かっているさ……。何としても、ヴィヴィオは助けてみせる!!」

 

 

俺は、ヴィヴィオを助けるためにブラスター3を使って、最後の力でスターライトブレイカーを放ち続けていた。

だけど、俺の魔力だけでは、レリックはそう簡単には砕けてくれない。

なのはさんは、さっきのディバインバスターで全て使い果たしてしまっている。

 

もう、俺がやるしかないんだ!!

 

 

 

「くっ……。だめ、か」

 

 

 

クアットロとの戦いで、殆ど魔力を使ってしまい、さらにブラスター3まで使っている。

それに、プリムのフレームもひび割れし、いつ砕けてもおかしくない状態だ……。

 

 

 

《……マスター》

 

「なんだ……」

 

《…………ごめんなさい。マスターとの約束……生きるって約束……破りますね》

 

 

 

次の瞬間、プリムのコアの部分の宝玉が輝きだし、フィルの魔力がふくれあがっていった。

その魔力は、なのはさんに匹敵するほどだった。

 

 

 

「な、なんだ!? いったいどういう事なんだ!?」

 

《黙っていてごめんなさい……。これが、女神が私に、最後の切り札として組み込んだ最後のシステム……ブラスターエクセリオン》

 

「ブラスター……エクセリオンだと……」

 

《マスターが最後の手段として作ったのは、スパイラルシステム。スパイラルは、術者の生命力を魔力に変換しますが、これは、私のエネルギーを全て使って、術者に力を与えるんです……》

 

「プリム、今すぐブラスターエクセリオンを解除しろ!! このままじゃお前が!!」

 

 

 

プリムのひび割れはさらに進行してきている。

ブラスターエクセリオンのパワーで、フレームが耐えきれないんだ。

 

 

 

*    *    *

 

 

 

《マスター……私は、あの時から……ずっと……後悔してきたんですよ。ティアナさんを助けられなかったときから……ずっと……》

 

 

 

――――あの時。

 

 

私にもっと力があれば、ティアナさんを助けられた……。

 

 

もう、あんな思いはたくさんです!!

 

 

 

《だから……今度は……後悔したくないんです!!》

 

「!!」

 

 

 

私は残されたエネルギーを使い、スターライトブレイカーのエネルギーをさらに増幅させる。

その魔力球はさっきよりふた回り以上大きくなっていた。

 

 

 

「やめろ……それ以上……それ以上、エネルギーを使うな!! やめるんだぁぁぁぁぁああぁぁ!!」

 

 

 

マスターは引き金を離そうとしたが……。

 

 

 

《マスター……私は、もうどのみち助かりません……ですから……お願いです》

 

 

 

私に……最後の仕事を……させてください……。

マスターの大切な物を守るための……。

 

 

 

「………わかった。プリム……」

 

《ありがとう……マスター……》

 

 

 

――――マスター。

 

 

私、マスターのデバイスで本当に良かったです。

 

 

いつも、大切に使ってくれて……。

 

 

どんなときも私のことを信じてくれて……。

 

 

 

 

私は……。

 

 

 

「《ブレイク……》」

 

 

 

そんなあなたが……。

 

 

 

 

「《シューーーート!!》」

 

 

 

大好きでした……。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「あああああっっっっ!!」

 

 

 

レリックが砕けると同時に、大爆発がおこり、ヴィヴィオが居たところに巨大なクレーターが出来ていた。

煙がまだはれないので、クレーターの中の様子はまだ分からないが……。

 

 

 

 

「ヴィヴィオ……」

 

「来ないで………」

 

 

 

俺の目に映ったのは、ヴィヴィオが自分の力で立とうとしている姿だった。

何度も転んでいたが、それでも諦めようとせず、何度も立ち上がろうとしていた。

 

 

 

「ひとりで……たてるよ……」

 

「あ……ああ………」

 

「強くなるって……約束したから……」

 

 

 

なのはさんも俺も涙が止まらなかった。

 

 

 

「ヴィヴィオ!!」

 

 

 

なのはさんは、自分の力で立ち上がったヴィヴィオを抱きしめていた。

 

 

だけど……。

 

 

その代償は……。

 

 

 

《マ……マスター……よ……よかった……ですね……ヴィヴィオが……元に戻って……》

 

「プリム……プリム……」

 

 

 

ブラスターエクセリオンを使ってしまい、フレームが修復不能な状態になり、今こうやって起動していることが奇跡だった。

 

 

 

「プリム……大丈夫だからな。すぐに元通りにしてやるからな……」

 

《無理ですよ……ここまで……壊れてしまったんですから……マスター》

 

「馬鹿言ってるんじゃない!! 必ず俺が元通りにしてやる!! 部品がないのなら、どこからでも調達する!! 魔力がいるのなら俺の魔力を全部やる!! だから、俺のそばにいてくれ!!」

 

《ありがとう……ございます……。その言葉だけで……充分ですよ……》

 

 

 

プリムのひび割れはさらに進行し、今にも完全に砕けそうだった。

 

 

 

《マスター……私は本当に幸せなデバイスでした……。マスターと苦楽を共にでき……時には喧嘩したり、時にはマスターの本音を聞けたりしたんですから……。本当に……私はしあわせでしたよ……》

 

「……何言ってるんだよ……。まだこれからだろ……俺にはまだまだお前が必要なんだ……」

 

 

 

お前は、俺の心の支えなんだ……。

 

 

 

俺を、一人にしないでくれ……。

 

 

 

《大丈夫ですよ……。マスターなら、もっと高性能なデバイス作れますよ。これからはそのデバイスが……マスターを……助けてくれますから……》

 

「……関係……ねえよ。俺にとって、相棒は……心の一部は……お前だけなんだ。プリム、俺も……お前のこと……好きだったよ」

 

《………マスター……私のマスター……幸せに……幸せになって……くださ…いね。いつ…も、心はマスターと…一緒…です……か…ら》

 

 

 

 

そして……。

 

 

 

 

プリムはひび割れたコアを残し、完全に砕け散ってしまった……。

 

 

 

 

 

「………プリ……ム……」

 

 

 

そのコアを拾うが……。

 

 

 

「プリム……プリム………この……ばか……やろうが。お前がいなくなって……何が幸せにだよ。お前がいなきゃ……俺は……俺は……」

 

 

 

いつも、俺のそばで支えてくれたプリム……。

 

 

 

母のように……。

 

 

 

姉のように……。

 

 

 

友人のように……。

 

 

 

そして……。

 

 

 

恋人のように……。

 

 

 

 

俺にとって、あいつは……プリムは、ただのデバイスじゃない。

かけがえのない、大切な……存在だったんだ……。

 

 

 

「……プリム……返事してくれよ……。いつものように、俺を励ましてくれよ……。俺は、お前がいなきゃ……一人では……何も出来ないんだよ……」

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

プリムか砕けてしまったあと、フィルは上を向いて必死で涙をこらえていた。

声をかけようとしたけど、今のフィルの悲しみの表情をみたら、何も出来なかった。

 

 

わたしでは、プリムを失った悲しみは埋められないから……。

 

 

 

「フィル……」

 

「……何でだよ……こんなの……こんなの……ありかよ……」

 

 

 

その後、はやてちゃんが救出にきてくれて、ラグナロクでゆりかご内にあったコアを破壊し、わたし達は脱出し、アースラのアルカンシェル・ノヴァでゆりかごを完全消滅させた。

 

 

こうして、JS事件は幕を閉じることになった。

 

 

 

 

一つの……。

 

 

 

――――大きな犠牲を払って。

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

あれから、フィルは新しいデバイスを作り直し、今までと変わらないように振舞っていた。

でも、あくまでそう見せているだけ……。

 

 

それは、誰が見ても無理してるのがわかりきっていた。

 

 

 

 

「今のフィル、見ていて痛々しいよ。あたしにだってわかるくらいだよ……」

 

「フィルさん……。プリムを無くしてから、自分を……痛めつけてる感じがします」

 

「うん……。今まではプリムがフィルさんのことを見ていてくれたから……」

 

「そうですね……。フィルさん、いつも通りに見せようとして、それが逆に辛いです……」

 

 

 

みんなの言うとおり、プリムの存在はデバイスとしてだけじゃない。

未来からずっと一緒に苦楽を共にした、いわば自分の心の一部……。

 

 

それを失って平然としていられるほど、あいつは強くない……。

 

 

 

「……あいつね。訓練が終わった後、いつも、海を眺めてるの。壊れてしまったプリムのコアと一緒にね……」

 

 

 

この間、偶然その姿を見てしまった。

 

 

――――声を殺しながら泣いていたあいつの姿を。

 

 

 

 

「ティア……。あたしたちには、何もできないのかな……」

 

 

 

どんな方法でも良い……。

プリムを復活させる方法はないの!!

 

 

それしかあいつの心を救ってあげられない……。

 

 

 

「一つだけ……あるかもしれないわ」

 

「「「「えっ?」」」」

 

「正直、これは賭よ。もし、プリムが何らかの端末に自分のデータを残していたら……」

 

 

 

可能性はかなり低いが、マリーさんならもしかしたら……。

 

 

 

「とにかく、マリーさんの所に聞いてみましょう」

 

 

 

 

あたし達は、翌日、八神部隊長にお願いをして、マリーさんにコンタクトを取ってもらった。

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「……そっか。分かったよ。最初にあったときに、プリムの構造とデータを取らせてもらってるから、それをもう一度みてみるね」

 

「お願いします!!」

 

 

 

これが最後の希望……。

これでダメだったら、もう打つ手はないわ……。

 

 

 

「あったわ!! プリムのデータ」

 

 

マリーさんが端末から見せてくれたのは、数字の羅列。

はっきり言って何が何だか分からない……。

 

でも、一緒にいた八神部隊長が……。

 

 

 

「これ……。どっかで見たことあるで」

 

「「「「「えっ!?」」」」」

 

「はやてさんは、見覚えがあるわよね。リインを作ったときにね……」

 

「そうや!! これはユニゾンデバイスの!!」

 

 

 

この数字の羅列は、プリムの心って事なの!?

ものすごいデータの量だけど……。

 

 

 

「ここにあるのはプリムの一部に過ぎない。本当に復活できるかは、フィル君が持っているコアにかかってるかも……」

 

「でも、これとコアがあれば、復活の可能性が!!」

 

「うん、インテリジェントとしては無理だけど、ユニゾンデバイスとしてなら、もしかしたら……」

 

「ティアさん!!」

 

「ええ!!」

 

 

 

フィル、あたし達が出来るのはここまでよ。

あとはあんたが頑張る番だからね……。

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

 

「うん、それでええはずや」

 

「はい」

 

 

 

 

二ヶ月前――――。

 

 

フォワードのみんなが、マリーさんの所にあったプリムのデータの一部を持ってきてくれた。

それを見たとき、俺は涙が止まらなかった。

 

 

 

プリムのコアに残されたデータだけじゃ、蘇らせることは出来なかったからだ。

持ってきてくれたデータは、俺がもっとも欲しかったデータ。

 

 

プリムの核になる部分のデータだった。

 

 

ティア達は、俺のためにここまでのことをしてくれた。

ここで、俺がくよくよしていたら、ティアたちにも、プリムにも合わせる顔がない。

 

 

 

俺は、はやてさんにユニゾンデバイスの作り方を聞き、それとティア達が持ってきてくれたデータとプリムのコアを元に、俺のリンカーコアを使ってユニゾンデバイスを作成していた。

 

 

 

「はやてさん……本当にありがとうございます。ユニゾンデバイスはシークレットなのに、俺のために……」

 

「気にせんといてや。フィルには本当に返しきれない恩があるんや。私で出来ることなら何でもするよ。だから、プリムを復活させてあげてや」

 

「はやてさん……」

 

「どうやら……目を覚ますようやで……」

 

 

 

カプセルの中にいた、新しい身体を得たプリムは、フェイトさんが水色の髪になった感じの女性だった。

大人の女性と言うよりは、どちらかというと10代の半ばくらいの感じだ。

 

 

 

「……ここは?」

 

「ここは、機動六課、メンテナンスルームだ。プリム、どうだ。その身体は?」

 

「あなたは……誰ですか?」

 

「!!」

 

 

 

俺のことを覚えていない!?

まさか……コアの方に欠落があったのか。

 

 

 

 

「こんなん……こんなん……酷すぎるで。世界は、フィルをどれだけ悲しませれば気が済むんや!!」

 

「……初めまして……俺はフィル・グリード。君のマスターだよ」

 

「マスター……ですか。あなたが……?」

 

「ああ……君を作ったのは、俺だよ。よろしくね、プリム」

 

「マスター認証確認、フィル・グリード……登録完了しました」

 

「分かっていても……辛いな……フィル」

 

「……はい」

 

 

 

俺たちはプリムのことを、悲しんでいたが、次の瞬間、六課全体に警報が鳴り響いていた。

通信ウィンドウが開き、グリフィスさんが今回の事件のことを話し始めた。

 

内容は、クラナガンのデパートと空港で大火災が同時に起こってしまい、地上の局員だけでは対応しきれないとのことだった。

 

 

 

 

「どうやら……いきなり実戦みたいですね」

 

「無茶や!! テストも無しで!! そんなのは認められへん!! この件はティアナ達に行ってもらう!!」

 

「はやてさん、隊長達がいない今、ティア達に一カ所は行ってもらうとしても、もう一カ所は俺が行くしかないです」

 

 

 

隊長達は、別件で今は本局に行ってしまっている。

だから、俺たちフォワードで何とかするしかない。

 

 

 

「それは……」

 

「俺は行きますよ……」

 

「……分かった。出来るだけ早く、なのはちゃん達にそっちに向かわせる。絶対無茶はあかんよ!!」

 

「はい!! いくぞプリム!!」

 

「はい……。マスター……」

 

 

 

やっぱり、いつものプリムじゃない。

会話も機械的でまだ、赤ん坊の状態だ。

 

それだったら、これから築いていけばいいんだ。

プリムが俺のそばにいてくれれば、何でも出来るから……。

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

クラナガン 第三空港

 

 

 

「マスター……。これからどうしますか?」

 

 

 

空港に着いた俺たちは、燃えさかる炎に行く手を遮られていた。

情報によると、まだ取りのこさえられた人がいて、それそれ別々にいるため二手に分かれなければならない。

しかも、他の局員は消火活動と、もう一つの火災の対応で精一杯だったのだ。

 

 

 

 

「プリム、お前は反対側に行き、もう一人を救出してくれ。頼んだぞ……」

 

「はい……わかりました……」

 

 

 

俺とプリムは二手に別れ、それぞれの救助を行うことにした。

 

 

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

 

「うわあああああん!! ママァァァァァ!!」

 

「大丈夫ですよ……今安全なところに連れて行きますからね……」

 

「ヒック……ヒック……お姉ちゃん……ありがとう……」

 

 

 

私はマスターの命令通り、取り残された子供を救出することに成功した。

でも、何か引っかかる……。

 

 

マスターと一緒に行動しなかったこと……。

 

 

それが、さっきからずっと引っかかっている……。

 

 

前にもこんな事があった……。

 

 

確か……。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

「……これ以上は、持たない、か」

 

 

 

プリムと別れた俺は、もう一人の救助者を見つけ出し、何とか保護は成功したんだけど、転移をするときに床が崩れてしまい、途中で転移をキャンセルしたため、一人しか転移させられなかった。

 

 

 

そのせいで俺はここに取り残されてしまい、さらにデバイスもないから、転移をもう一回することも出来ない。

ラウンドシールドで炎から身を守るのに精一杯だった。

 

 

 

「……状況は違うけど、一つの魔法しか使えないってのは、ティアを失ってたときと同じだな……」

 

 

 

あの時はバインドで精一杯で、スターライトブレイカーを、同時進行できないという状況だったけど……。

 

 

 

「ある意味……これが、俺の最後にふさわしいのかもな……」

 

 

 

――――プリム。

 

 

これで死んだら……。

 

 

お前はきっと怒るだろうな……。

 

 

だけど……。

 

 

 

「愛する人がいない……。この世界で……いるのは……もう辛いんだよ……。プリム……」

 

 

 

今の俺には、ラウンドシールドを張る魔力も、もう残されていなかった。

おまけに、柱に足が挟まれて動くことも出来ない……。

 

 

柱が崩れてきて、俺の方に倒れてきた。

 

 

 

「………もう……だめか……」

 

 

 

死を覚悟したが、衝撃は何も来ない。

そう思い、目を開けてみると……。

 

 

 

「マスター……ご無事ですか……」

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

間一髪の所で、私はラウンドシールドでマスターを助けることが出来た。

これは当たり前のことなんだけど、なぜか懐かしい感じがする。

 

 

 

「今……助けます」

 

 

 

私は、まだ防御魔法と補助魔法しかインストールさせていないので、攻撃魔法で柱を破壊することは出来ない。

 

だから、近くの鉄棒を使って柱をどかすしかなかった。

 

 

 

「プリム……すまない……」

 

 

 

なぜだろう……。

 

 

 

この人を見ていると、何か暖かい物を感じる。

 

 

 

この感情は……。

 

 

 

いったい何なんだろう?

 

 

 

 

「でも、本当に……良かった。プリム、無事だったんだな……」

 

 

 

なぜ、この人は自分のことより私の心配をするんだろう。

自分のことより、人のことを優先する。

 

 

 

「あっ……」

 

 

 

今のビジョンは何だ?

 

 

 

「私は生まれてから……間もないのに……今のはいったい?」

 

 

 

まただ……。

 

 

浮かんだのは、マスターとオレンジ色の髪の女性。

 

 

そして、マスターの慟哭……。

 

 

 

「うっ……ぁぁぁぁ……」

 

 

 

頭が痛い……。

 

 

でも、さっきからこの人を見ていると、色んな事が浮かんでくる。

 

 

この人は、私にとってどんな人なんだ?

 

 

 

またフラッシュバックされたのは、今度は……。

 

 

 

「砲撃……マスターが?」

 

 

 

それは、銃型のデバイスで、少女に砲撃魔法を放っているシーンだった。

その後は、そのデバイスが砕けてしまい、マスターが悲しみで打ち震えているところだった。

 

そのデバイスの名前も、プリム……。

 

 

 

「なんで……こんな記憶が……」

 

 

 

私がフラッシュバックの整理をしようとしていたが、状況はそれを許さず反対側から、また柱が崩れてはじめた。

 

 

 

「プリム!! 俺のことは良い!! お前だけでも逃げろ!!」

 

「何言ってるんですか……。デバイスがマスターを見捨てていけるわけありません!!」

 

「お前だけでも逃げろ!! この状況じゃ二人とも共倒れになってしまう!!」

 

「出来ません!! 命令は不当と見なし拒否します!!」

 

「……許せ……よ……」

 

「えっ……?」

 

 

 

次の瞬間、マスターは私の身体を突き飛ばしていた。

その直後、柱が崩れ、マスターの方に落下していた。

 

 

 

「マスターァァァァァ!!」

 

「……さよなら……プリム……」

 

「あっ……」

 

 

 

今の言葉、聞いたことがある……。

 

 

そうだ……。

 

 

思い出した!!

 

 

私は……。

 

 

マスターの相棒のプリム……。

 

 

未来でも、こっちでも唯一無二の愛する人……。

 

 

 

 

 

――――フィル・グリード。

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

「プリム……さよなら……だな……」

 

 

 

今度こそ、俺は死を覚悟し、今までのことを思い出していた。

 

 

未来で一緒に戦ってきたこと。

 

 

 

こっちに戻ってきて、プリムと一緒にクアットロの対策を考えたこと。

 

 

 

ティアとなのはさんとのことで、悩んでいたときに一緒に考えてくれたこと。

 

 

 

 

そして……。

 

 

 

 

ゆりかごでのこと……。

 

 

 

 

 

「マスター!! 今助けます!!」

 

「えっ……?」

 

 

 

声と同時にプリムが使っていたのは、俺の得意魔法、ブラストブレイザー。

今のプリムにはまだインストールしていないのに?

 

 

―――――まさか!!

 

 

 

「ブラストブレイザー!!」

 

 

 

プリムの放った白銀の砲撃は、落ちてくる柱を破壊し、炎もかき消していた。

その後、プリムは俺の足に挟まっている柱も破壊し、俺は自由になることが出来た。

 

 

 

「マスター、ワープは出来ますか?」

 

「いや……魔力が足りない。これじゃ無理だ……」

 

「それじゃ、ユニゾンして出力をあげますよ」

 

「えっ……?」

 

「ユニゾン・イン!!」

 

 

 

ユニゾンをした瞬間、俺は魔力がふくれあがりワープに必要な魔力を得ることが出来、そして、その魔力でワープをし、俺たちは無事脱出することが出来た。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

事件が終わり、俺とプリムは、海が見える公園に来ていた。

 

 

 

 

「まさか……お前……」

 

「はい……記憶……全部思い出しましたよ。マスター」

 

 

 

プリムの記憶が戻った……。

そのことで、俺は涙が抑えられなくなり……。

 

 

気がついたら、俺はプリムを力の限り抱きしめていた。

 

 

一度は、失ってしまった俺の半身……。

 

 

でも、俺の元に帰ってきてくれた。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

「マスター……あの……もう一度……私の気持ち……聞いてもらって良いですか」

 

「ああ……もちろん」

 

 

 

あの時は、最後だから話せたけど……。

いざ、こうして気持ちを伝えようとすると、緊張で逃げ出したい。

 

 

 

だけど、ウジウジしているのは私の性分じゃありません!!

もう一度、マスターに私の気持ちを伝えるんです!!

 

 

 

「マスター……。いえ、フィル・グリードさん。私は……あなたのことを……心から……愛しています……」

 

 

 

デバイスが人にこんな感情を持つのは、変だと分かっています。

でも、もう一度だけ……私の思いを伝えたかったんです!!

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

「プリム……」

 

 

 

プリムの告白は、俺にとって何より嬉しかった。

俺もプリムと同じ気持ちだからだ。

 

 

俺のことを誰よりも分かってくれていて、誰よりも愛してくれている。

 

 

 

そんなプリムのことを、俺は愛しているんだ。

 

 

 

俺はプリムのことが愛おしくて、自分の方へ抱き寄せていた。

 

 

 

 

「マスター……」

 

「名前で……呼んでくれないかな。自分の恋人にマスターは無いだろ」

 

「えっ……? それじゃ……それじゃ!!」

 

「ゆりかごで言ったけど、もう一度言うね。愛しているよ……プリム」

 

「フィル……」

 

 

 

俺はプリムの頬に手を添え……。

 

 

 

彼女も意味を理解し、瞳を閉じ……。

 

 

 

「プリム……」

 

 

 

 

夕日が照らす中……。

 

 

 

俺とプリムは……。

 

 

 

お互いの気持ちを……。

 

 

 

確かめ合うキスをした……。

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

半月後

 

 

 

 

 

「はい、フィル。あーんしてください♪」

 

「ここでか……?」

 

「はい♪」

 

「ここは、六課の食堂だぞ」

 

 

 

そうですね。ここは六課の食堂ですね。

さらに、お昼時ということもあって、満員御礼です。

 

 

 

「みんな……見ているんだけどな……」

 

「いいじゃないですか。それとも私にされるのは……いやですか……」

 

「そんなこと無いから、好きな人にされるのに、いやなはず無いだろ!!」

 

 

 

よかった……。

やりすぎて嫌われてたって思ったから……。

 

 

 

「ああ!! もう、いい加減にして!!」

 

「「ティア (さん)!?」」

 

「プリムが記憶が戻ってから、そうやって毎日毎日いちゃついて!! 一緒にいるあたし達の身にもなってよ!!」

 

「「あっ……」」

 

 

 

た、確かにここ半月、私達って、こうやっていたかも……。

 

 

 

「あんた達が両思いで、一度は永遠の別れをしたんだから、気持ちは分かるけど……」

 

「もう、あれから半月は経っているんだから、そろそろ勘弁して。でないとみんな口から、砂糖をはき出すわよ……」

 

「そ、それは……大げさじゃないですか」

 

「はぁ……大げさじゃないから……。止めろとは言わないから、もう少しだけみんなの前では押さえて!!」

 

「「す、すみません……」」

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

「やっちゃったな……」

 

「ですね……私もつい嬉しくて」

 

「それは、俺も……だから……」

 

「フィル……」

 

 

 

訓練が終わり、俺たちは部屋に戻り、ベッドに座ってお互いに身体を寄せていた。

プリムの長い髪を、撫でていると、プリムも気持ちいいらしく、目を細めて俺の方に、頭をコトンと乗せてきた。

 

 

 

「プリム……」

 

「はい……」

 

「あのな……俺……お前のこと……欲しいんだ……」

 

「あの……もしかして……それ」

 

「プリムを……抱きたい……」

 

 

 

プリムは、一瞬驚いていたがすぐに……。

 

 

 

「やっと……言ってくれたんですね。ずっと……待っていたんですよ……」

 

「ごめんな……俺、お前に嫌われるのが怖くて……言えなかった……」

 

「ばか……。そんなわけ無いじゃないですか。私はあの時、恋人同士になったときから、ずっと……フィルに抱かれたいって思っていたんですから……」

 

 

 

俺は、もう押さえきれなくなり、プリムをベッドに押し倒していた。

 

 

 

「もう……遠慮しないからな……」

 

「遠慮なんか……しないでください。むしろ、フィルこそ覚悟してくださいね。今までの思いを、いっぱい抱きしめてもらうまで、止めませんからね♪」

 

 

 

俺たちは最初から、お互いを求め合うキスになり、息が続く限りそれを繰り返し、唇が離れる度にお互いの間に銀色の糸が出来るほどだった。

 

 

 

「いっぱい……いっぱい……してくださいね……フィル」

 

「プリム……」

 

 

 

俺たちは、月光を照らす部屋で……。

 

 

 

何度もお互いを求め合い……。

 

 

 

それは、朝まで……。

 

 

 

途絶えることがなかった……。

 

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

 

3年後

 

 

 

 

「フィル、朝ですよ。起きてください!!」

 

「ん……もう少し寝かせてくれよ……」

 

「だめですよ。今日は久しぶりのデートなんですから、早く起きてください!!」

 

 

 

六課が解散してから、俺はフェイトさんの元で執務官補佐を一年ほどして、試験を一発で合格してフリーの執務官として動いている。

もちろんプリムは、俺の大切な相棒として一緒にいる。

 

ユニゾンデバイスになったことで、スパイラルとブラスターエクセリオンは正式に排除した。

封印だとまた使ってしまうため、二人で話し合い排除という形を取った。

 

 

それにユニゾンの方が遙かに魔力も上がるし、身体への負担も少ない。

現にユニゾンしてなら、ブラスター使用のなのはさんとも短時間だが互角に戦えるほどだった。

 

 

そのせいで、時々なのはさんと模擬戦をすることになってしまったけどね。

 

 

そして俺たちは、今一緒に暮らしている。

籍は入れられないけど、気持ちは夫婦なのだから……。

 

 

 

 

「ったく……昨日あれだけ激しかったんだから……。もう少し寝かせてくれよ……」

 

「ば、ばか!! 何言ってるんですか!! フィルの……ばか……」

 

 

 

こうやって、照れているプリムはやっぱり可愛いな。

だから、ついプリムをからかいたくなってしまう。

 

 

 

「でも……今日もいっぱい……してくださいね。フィルにしてもらうと、本当に愛されてるんだなって思うから……」

 

「ああ……俺もプリムとしていると、気持ちが安らぐんだ。だから……いっぱいしてもいいか」

 

「さっきも言ったでしょう。いっぱいしてくれなきゃ……拗ねちゃいますからね♪」

 

 

 

 

プリムと俺……。

 

 

 

俺たちは、未来からずっと一緒で、互いに、かけがいのない存在だった。

 

 

 

一度は悲しみでどうしようもなくなったけど……。

 

 

 

今はこうして一緒にいて、お互いの支えになっている……。

 

 

 

プリムも俺も、どちらが欠けても駄目なんだ……。

 

 

だから、俺たちはずっと一緒にいる……。

 

 

命が続くかぎり……。

 

 

 

願わくは……。

 

 

 

この幸せな時間が永遠に続くことを……。

 

皆様、現在自サイトのみで公開しています『とある休日シリーズ』になりますが、こちらでも見てみたいという方がいらっしゃいましたら、アンケートにお答えいただけたらと思います。

  • 見てみたいので公開してほしい
  • まあまあ興味がある
  • どちらでもいい
  • 興味がないので公開はしなくて良い

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