魔法少女リリカルなのはStrikerS ~ Remember my heart ~ 作:アルフォンス
これも、一つの愛情の形になると思います。
《マスター、頑張ってください!! もう少しでヴィヴィオのレリックは砕けます!!》
「ああ……分かっているさ……。何としても、ヴィヴィオは助けてみせる!!」
俺は、ヴィヴィオを助けるためにブラスター3を使って、最後の力でスターライトブレイカーを放ち続けていた。
だけど、俺の魔力だけでは、レリックはそう簡単には砕けてくれない。
なのはさんは、さっきのディバインバスターで全て使い果たしてしまっている。
もう、俺がやるしかないんだ!!
「くっ……。だめ、か」
クアットロとの戦いで、殆ど魔力を使ってしまい、さらにブラスター3まで使っている。
それに、プリムのフレームもひび割れし、いつ砕けてもおかしくない状態だ……。
《……マスター》
「なんだ……」
《…………ごめんなさい。マスターとの約束……生きるって約束……破りますね》
次の瞬間、プリムのコアの部分の宝玉が輝きだし、フィルの魔力がふくれあがっていった。
その魔力は、なのはさんに匹敵するほどだった。
「な、なんだ!? いったいどういう事なんだ!?」
《黙っていてごめんなさい……。これが、女神が私に、最後の切り札として組み込んだ最後のシステム……ブラスターエクセリオン》
「ブラスター……エクセリオンだと……」
《マスターが最後の手段として作ったのは、スパイラルシステム。スパイラルは、術者の生命力を魔力に変換しますが、これは、私のエネルギーを全て使って、術者に力を与えるんです……》
「プリム、今すぐブラスターエクセリオンを解除しろ!! このままじゃお前が!!」
プリムのひび割れはさらに進行してきている。
ブラスターエクセリオンのパワーで、フレームが耐えきれないんだ。
* * *
《マスター……私は、あの時から……ずっと……後悔してきたんですよ。ティアナさんを助けられなかったときから……ずっと……》
――――あの時。
私にもっと力があれば、ティアナさんを助けられた……。
もう、あんな思いはたくさんです!!
《だから……今度は……後悔したくないんです!!》
「!!」
私は残されたエネルギーを使い、スターライトブレイカーのエネルギーをさらに増幅させる。
その魔力球はさっきよりふた回り以上大きくなっていた。
「やめろ……それ以上……それ以上、エネルギーを使うな!! やめるんだぁぁぁぁぁああぁぁ!!」
マスターは引き金を離そうとしたが……。
《マスター……私は、もうどのみち助かりません……ですから……お願いです》
私に……最後の仕事を……させてください……。
マスターの大切な物を守るための……。
「………わかった。プリム……」
《ありがとう……マスター……》
――――マスター。
私、マスターのデバイスで本当に良かったです。
いつも、大切に使ってくれて……。
どんなときも私のことを信じてくれて……。
私は……。
「《ブレイク……》」
そんなあなたが……。
「《シューーーート!!》」
大好きでした……。
* * *
「あああああっっっっ!!」
レリックが砕けると同時に、大爆発がおこり、ヴィヴィオが居たところに巨大なクレーターが出来ていた。
煙がまだはれないので、クレーターの中の様子はまだ分からないが……。
「ヴィヴィオ……」
「来ないで………」
俺の目に映ったのは、ヴィヴィオが自分の力で立とうとしている姿だった。
何度も転んでいたが、それでも諦めようとせず、何度も立ち上がろうとしていた。
「ひとりで……たてるよ……」
「あ……ああ………」
「強くなるって……約束したから……」
なのはさんも俺も涙が止まらなかった。
「ヴィヴィオ!!」
なのはさんは、自分の力で立ち上がったヴィヴィオを抱きしめていた。
だけど……。
その代償は……。
《マ……マスター……よ……よかった……ですね……ヴィヴィオが……元に戻って……》
「プリム……プリム……」
ブラスターエクセリオンを使ってしまい、フレームが修復不能な状態になり、今こうやって起動していることが奇跡だった。
「プリム……大丈夫だからな。すぐに元通りにしてやるからな……」
《無理ですよ……ここまで……壊れてしまったんですから……マスター》
「馬鹿言ってるんじゃない!! 必ず俺が元通りにしてやる!! 部品がないのなら、どこからでも調達する!! 魔力がいるのなら俺の魔力を全部やる!! だから、俺のそばにいてくれ!!」
《ありがとう……ございます……。その言葉だけで……充分ですよ……》
プリムのひび割れはさらに進行し、今にも完全に砕けそうだった。
《マスター……私は本当に幸せなデバイスでした……。マスターと苦楽を共にでき……時には喧嘩したり、時にはマスターの本音を聞けたりしたんですから……。本当に……私はしあわせでしたよ……》
「……何言ってるんだよ……。まだこれからだろ……俺にはまだまだお前が必要なんだ……」
お前は、俺の心の支えなんだ……。
俺を、一人にしないでくれ……。
《大丈夫ですよ……。マスターなら、もっと高性能なデバイス作れますよ。これからはそのデバイスが……マスターを……助けてくれますから……》
「……関係……ねえよ。俺にとって、相棒は……心の一部は……お前だけなんだ。プリム、俺も……お前のこと……好きだったよ」
《………マスター……私のマスター……幸せに……幸せになって……くださ…いね。いつ…も、心はマスターと…一緒…です……か…ら》
そして……。
プリムはひび割れたコアを残し、完全に砕け散ってしまった……。
「………プリ……ム……」
そのコアを拾うが……。
「プリム……プリム………この……ばか……やろうが。お前がいなくなって……何が幸せにだよ。お前がいなきゃ……俺は……俺は……」
いつも、俺のそばで支えてくれたプリム……。
母のように……。
姉のように……。
友人のように……。
そして……。
恋人のように……。
俺にとって、あいつは……プリムは、ただのデバイスじゃない。
かけがえのない、大切な……存在だったんだ……。
「……プリム……返事してくれよ……。いつものように、俺を励ましてくれよ……。俺は、お前がいなきゃ……一人では……何も出来ないんだよ……」
* * *
プリムか砕けてしまったあと、フィルは上を向いて必死で涙をこらえていた。
声をかけようとしたけど、今のフィルの悲しみの表情をみたら、何も出来なかった。
わたしでは、プリムを失った悲しみは埋められないから……。
「フィル……」
「……何でだよ……こんなの……こんなの……ありかよ……」
その後、はやてちゃんが救出にきてくれて、ラグナロクでゆりかご内にあったコアを破壊し、わたし達は脱出し、アースラのアルカンシェル・ノヴァでゆりかごを完全消滅させた。
こうして、JS事件は幕を閉じることになった。
一つの……。
――――大きな犠牲を払って。
* * *
あれから、フィルは新しいデバイスを作り直し、今までと変わらないように振舞っていた。
でも、あくまでそう見せているだけ……。
それは、誰が見ても無理してるのがわかりきっていた。
「今のフィル、見ていて痛々しいよ。あたしにだってわかるくらいだよ……」
「フィルさん……。プリムを無くしてから、自分を……痛めつけてる感じがします」
「うん……。今まではプリムがフィルさんのことを見ていてくれたから……」
「そうですね……。フィルさん、いつも通りに見せようとして、それが逆に辛いです……」
みんなの言うとおり、プリムの存在はデバイスとしてだけじゃない。
未来からずっと一緒に苦楽を共にした、いわば自分の心の一部……。
それを失って平然としていられるほど、あいつは強くない……。
「……あいつね。訓練が終わった後、いつも、海を眺めてるの。壊れてしまったプリムのコアと一緒にね……」
この間、偶然その姿を見てしまった。
――――声を殺しながら泣いていたあいつの姿を。
「ティア……。あたしたちには、何もできないのかな……」
どんな方法でも良い……。
プリムを復活させる方法はないの!!
それしかあいつの心を救ってあげられない……。
「一つだけ……あるかもしれないわ」
「「「「えっ?」」」」
「正直、これは賭よ。もし、プリムが何らかの端末に自分のデータを残していたら……」
可能性はかなり低いが、マリーさんならもしかしたら……。
「とにかく、マリーさんの所に聞いてみましょう」
あたし達は、翌日、八神部隊長にお願いをして、マリーさんにコンタクトを取ってもらった。
* * *
「……そっか。分かったよ。最初にあったときに、プリムの構造とデータを取らせてもらってるから、それをもう一度みてみるね」
「お願いします!!」
これが最後の希望……。
これでダメだったら、もう打つ手はないわ……。
「あったわ!! プリムのデータ」
マリーさんが端末から見せてくれたのは、数字の羅列。
はっきり言って何が何だか分からない……。
でも、一緒にいた八神部隊長が……。
「これ……。どっかで見たことあるで」
「「「「「えっ!?」」」」」
「はやてさんは、見覚えがあるわよね。リインを作ったときにね……」
「そうや!! これはユニゾンデバイスの!!」
この数字の羅列は、プリムの心って事なの!?
ものすごいデータの量だけど……。
「ここにあるのはプリムの一部に過ぎない。本当に復活できるかは、フィル君が持っているコアにかかってるかも……」
「でも、これとコアがあれば、復活の可能性が!!」
「うん、インテリジェントとしては無理だけど、ユニゾンデバイスとしてなら、もしかしたら……」
「ティアさん!!」
「ええ!!」
フィル、あたし達が出来るのはここまでよ。
あとはあんたが頑張る番だからね……。
* * *
「うん、それでええはずや」
「はい」
二ヶ月前――――。
フォワードのみんなが、マリーさんの所にあったプリムのデータの一部を持ってきてくれた。
それを見たとき、俺は涙が止まらなかった。
プリムのコアに残されたデータだけじゃ、蘇らせることは出来なかったからだ。
持ってきてくれたデータは、俺がもっとも欲しかったデータ。
プリムの核になる部分のデータだった。
ティア達は、俺のためにここまでのことをしてくれた。
ここで、俺がくよくよしていたら、ティアたちにも、プリムにも合わせる顔がない。
俺は、はやてさんにユニゾンデバイスの作り方を聞き、それとティア達が持ってきてくれたデータとプリムのコアを元に、俺のリンカーコアを使ってユニゾンデバイスを作成していた。
「はやてさん……本当にありがとうございます。ユニゾンデバイスはシークレットなのに、俺のために……」
「気にせんといてや。フィルには本当に返しきれない恩があるんや。私で出来ることなら何でもするよ。だから、プリムを復活させてあげてや」
「はやてさん……」
「どうやら……目を覚ますようやで……」
カプセルの中にいた、新しい身体を得たプリムは、フェイトさんが水色の髪になった感じの女性だった。
大人の女性と言うよりは、どちらかというと10代の半ばくらいの感じだ。
「……ここは?」
「ここは、機動六課、メンテナンスルームだ。プリム、どうだ。その身体は?」
「あなたは……誰ですか?」
「!!」
俺のことを覚えていない!?
まさか……コアの方に欠落があったのか。
「こんなん……こんなん……酷すぎるで。世界は、フィルをどれだけ悲しませれば気が済むんや!!」
「……初めまして……俺はフィル・グリード。君のマスターだよ」
「マスター……ですか。あなたが……?」
「ああ……君を作ったのは、俺だよ。よろしくね、プリム」
「マスター認証確認、フィル・グリード……登録完了しました」
「分かっていても……辛いな……フィル」
「……はい」
俺たちはプリムのことを、悲しんでいたが、次の瞬間、六課全体に警報が鳴り響いていた。
通信ウィンドウが開き、グリフィスさんが今回の事件のことを話し始めた。
内容は、クラナガンのデパートと空港で大火災が同時に起こってしまい、地上の局員だけでは対応しきれないとのことだった。
「どうやら……いきなり実戦みたいですね」
「無茶や!! テストも無しで!! そんなのは認められへん!! この件はティアナ達に行ってもらう!!」
「はやてさん、隊長達がいない今、ティア達に一カ所は行ってもらうとしても、もう一カ所は俺が行くしかないです」
隊長達は、別件で今は本局に行ってしまっている。
だから、俺たちフォワードで何とかするしかない。
「それは……」
「俺は行きますよ……」
「……分かった。出来るだけ早く、なのはちゃん達にそっちに向かわせる。絶対無茶はあかんよ!!」
「はい!! いくぞプリム!!」
「はい……。マスター……」
やっぱり、いつものプリムじゃない。
会話も機械的でまだ、赤ん坊の状態だ。
それだったら、これから築いていけばいいんだ。
プリムが俺のそばにいてくれれば、何でも出来るから……。
* * *
クラナガン 第三空港
「マスター……。これからどうしますか?」
空港に着いた俺たちは、燃えさかる炎に行く手を遮られていた。
情報によると、まだ取りのこさえられた人がいて、それそれ別々にいるため二手に分かれなければならない。
しかも、他の局員は消火活動と、もう一つの火災の対応で精一杯だったのだ。
「プリム、お前は反対側に行き、もう一人を救出してくれ。頼んだぞ……」
「はい……わかりました……」
俺とプリムは二手に別れ、それぞれの救助を行うことにした。
* * *
「うわあああああん!! ママァァァァァ!!」
「大丈夫ですよ……今安全なところに連れて行きますからね……」
「ヒック……ヒック……お姉ちゃん……ありがとう……」
私はマスターの命令通り、取り残された子供を救出することに成功した。
でも、何か引っかかる……。
マスターと一緒に行動しなかったこと……。
それが、さっきからずっと引っかかっている……。
前にもこんな事があった……。
確か……。
* * *
「……これ以上は、持たない、か」
プリムと別れた俺は、もう一人の救助者を見つけ出し、何とか保護は成功したんだけど、転移をするときに床が崩れてしまい、途中で転移をキャンセルしたため、一人しか転移させられなかった。
そのせいで俺はここに取り残されてしまい、さらにデバイスもないから、転移をもう一回することも出来ない。
ラウンドシールドで炎から身を守るのに精一杯だった。
「……状況は違うけど、一つの魔法しか使えないってのは、ティアを失ってたときと同じだな……」
あの時はバインドで精一杯で、スターライトブレイカーを、同時進行できないという状況だったけど……。
「ある意味……これが、俺の最後にふさわしいのかもな……」
――――プリム。
これで死んだら……。
お前はきっと怒るだろうな……。
だけど……。
「愛する人がいない……。この世界で……いるのは……もう辛いんだよ……。プリム……」
今の俺には、ラウンドシールドを張る魔力も、もう残されていなかった。
おまけに、柱に足が挟まれて動くことも出来ない……。
柱が崩れてきて、俺の方に倒れてきた。
「………もう……だめか……」
死を覚悟したが、衝撃は何も来ない。
そう思い、目を開けてみると……。
「マスター……ご無事ですか……」
* * *
間一髪の所で、私はラウンドシールドでマスターを助けることが出来た。
これは当たり前のことなんだけど、なぜか懐かしい感じがする。
「今……助けます」
私は、まだ防御魔法と補助魔法しかインストールさせていないので、攻撃魔法で柱を破壊することは出来ない。
だから、近くの鉄棒を使って柱をどかすしかなかった。
「プリム……すまない……」
なぜだろう……。
この人を見ていると、何か暖かい物を感じる。
この感情は……。
いったい何なんだろう?
「でも、本当に……良かった。プリム、無事だったんだな……」
なぜ、この人は自分のことより私の心配をするんだろう。
自分のことより、人のことを優先する。
「あっ……」
今のビジョンは何だ?
「私は生まれてから……間もないのに……今のはいったい?」
まただ……。
浮かんだのは、マスターとオレンジ色の髪の女性。
そして、マスターの慟哭……。
「うっ……ぁぁぁぁ……」
頭が痛い……。
でも、さっきからこの人を見ていると、色んな事が浮かんでくる。
この人は、私にとってどんな人なんだ?
またフラッシュバックされたのは、今度は……。
「砲撃……マスターが?」
それは、銃型のデバイスで、少女に砲撃魔法を放っているシーンだった。
その後は、そのデバイスが砕けてしまい、マスターが悲しみで打ち震えているところだった。
そのデバイスの名前も、プリム……。
「なんで……こんな記憶が……」
私がフラッシュバックの整理をしようとしていたが、状況はそれを許さず反対側から、また柱が崩れてはじめた。
「プリム!! 俺のことは良い!! お前だけでも逃げろ!!」
「何言ってるんですか……。デバイスがマスターを見捨てていけるわけありません!!」
「お前だけでも逃げろ!! この状況じゃ二人とも共倒れになってしまう!!」
「出来ません!! 命令は不当と見なし拒否します!!」
「……許せ……よ……」
「えっ……?」
次の瞬間、マスターは私の身体を突き飛ばしていた。
その直後、柱が崩れ、マスターの方に落下していた。
「マスターァァァァァ!!」
「……さよなら……プリム……」
「あっ……」
今の言葉、聞いたことがある……。
そうだ……。
思い出した!!
私は……。
マスターの相棒のプリム……。
未来でも、こっちでも唯一無二の愛する人……。
――――フィル・グリード。
* * *
「プリム……さよなら……だな……」
今度こそ、俺は死を覚悟し、今までのことを思い出していた。
未来で一緒に戦ってきたこと。
こっちに戻ってきて、プリムと一緒にクアットロの対策を考えたこと。
ティアとなのはさんとのことで、悩んでいたときに一緒に考えてくれたこと。
そして……。
ゆりかごでのこと……。
「マスター!! 今助けます!!」
「えっ……?」
声と同時にプリムが使っていたのは、俺の得意魔法、ブラストブレイザー。
今のプリムにはまだインストールしていないのに?
―――――まさか!!
「ブラストブレイザー!!」
プリムの放った白銀の砲撃は、落ちてくる柱を破壊し、炎もかき消していた。
その後、プリムは俺の足に挟まっている柱も破壊し、俺は自由になることが出来た。
「マスター、ワープは出来ますか?」
「いや……魔力が足りない。これじゃ無理だ……」
「それじゃ、ユニゾンして出力をあげますよ」
「えっ……?」
「ユニゾン・イン!!」
ユニゾンをした瞬間、俺は魔力がふくれあがりワープに必要な魔力を得ることが出来、そして、その魔力でワープをし、俺たちは無事脱出することが出来た。
* * *
事件が終わり、俺とプリムは、海が見える公園に来ていた。
「まさか……お前……」
「はい……記憶……全部思い出しましたよ。マスター」
プリムの記憶が戻った……。
そのことで、俺は涙が抑えられなくなり……。
気がついたら、俺はプリムを力の限り抱きしめていた。
一度は、失ってしまった俺の半身……。
でも、俺の元に帰ってきてくれた。
* * *
「マスター……あの……もう一度……私の気持ち……聞いてもらって良いですか」
「ああ……もちろん」
あの時は、最後だから話せたけど……。
いざ、こうして気持ちを伝えようとすると、緊張で逃げ出したい。
だけど、ウジウジしているのは私の性分じゃありません!!
もう一度、マスターに私の気持ちを伝えるんです!!
「マスター……。いえ、フィル・グリードさん。私は……あなたのことを……心から……愛しています……」
デバイスが人にこんな感情を持つのは、変だと分かっています。
でも、もう一度だけ……私の思いを伝えたかったんです!!
* * *
「プリム……」
プリムの告白は、俺にとって何より嬉しかった。
俺もプリムと同じ気持ちだからだ。
俺のことを誰よりも分かってくれていて、誰よりも愛してくれている。
そんなプリムのことを、俺は愛しているんだ。
俺はプリムのことが愛おしくて、自分の方へ抱き寄せていた。
「マスター……」
「名前で……呼んでくれないかな。自分の恋人にマスターは無いだろ」
「えっ……? それじゃ……それじゃ!!」
「ゆりかごで言ったけど、もう一度言うね。愛しているよ……プリム」
「フィル……」
俺はプリムの頬に手を添え……。
彼女も意味を理解し、瞳を閉じ……。
「プリム……」
夕日が照らす中……。
俺とプリムは……。
お互いの気持ちを……。
確かめ合うキスをした……。
* * *
半月後
「はい、フィル。あーんしてください♪」
「ここでか……?」
「はい♪」
「ここは、六課の食堂だぞ」
そうですね。ここは六課の食堂ですね。
さらに、お昼時ということもあって、満員御礼です。
「みんな……見ているんだけどな……」
「いいじゃないですか。それとも私にされるのは……いやですか……」
「そんなこと無いから、好きな人にされるのに、いやなはず無いだろ!!」
よかった……。
やりすぎて嫌われてたって思ったから……。
「ああ!! もう、いい加減にして!!」
「「ティア (さん)!?」」
「プリムが記憶が戻ってから、そうやって毎日毎日いちゃついて!! 一緒にいるあたし達の身にもなってよ!!」
「「あっ……」」
た、確かにここ半月、私達って、こうやっていたかも……。
「あんた達が両思いで、一度は永遠の別れをしたんだから、気持ちは分かるけど……」
「もう、あれから半月は経っているんだから、そろそろ勘弁して。でないとみんな口から、砂糖をはき出すわよ……」
「そ、それは……大げさじゃないですか」
「はぁ……大げさじゃないから……。止めろとは言わないから、もう少しだけみんなの前では押さえて!!」
「「す、すみません……」」
* * *
「やっちゃったな……」
「ですね……私もつい嬉しくて」
「それは、俺も……だから……」
「フィル……」
訓練が終わり、俺たちは部屋に戻り、ベッドに座ってお互いに身体を寄せていた。
プリムの長い髪を、撫でていると、プリムも気持ちいいらしく、目を細めて俺の方に、頭をコトンと乗せてきた。
「プリム……」
「はい……」
「あのな……俺……お前のこと……欲しいんだ……」
「あの……もしかして……それ」
「プリムを……抱きたい……」
プリムは、一瞬驚いていたがすぐに……。
「やっと……言ってくれたんですね。ずっと……待っていたんですよ……」
「ごめんな……俺、お前に嫌われるのが怖くて……言えなかった……」
「ばか……。そんなわけ無いじゃないですか。私はあの時、恋人同士になったときから、ずっと……フィルに抱かれたいって思っていたんですから……」
俺は、もう押さえきれなくなり、プリムをベッドに押し倒していた。
「もう……遠慮しないからな……」
「遠慮なんか……しないでください。むしろ、フィルこそ覚悟してくださいね。今までの思いを、いっぱい抱きしめてもらうまで、止めませんからね♪」
俺たちは最初から、お互いを求め合うキスになり、息が続く限りそれを繰り返し、唇が離れる度にお互いの間に銀色の糸が出来るほどだった。
「いっぱい……いっぱい……してくださいね……フィル」
「プリム……」
俺たちは、月光を照らす部屋で……。
何度もお互いを求め合い……。
それは、朝まで……。
途絶えることがなかった……。
* * *
3年後
「フィル、朝ですよ。起きてください!!」
「ん……もう少し寝かせてくれよ……」
「だめですよ。今日は久しぶりのデートなんですから、早く起きてください!!」
六課が解散してから、俺はフェイトさんの元で執務官補佐を一年ほどして、試験を一発で合格してフリーの執務官として動いている。
もちろんプリムは、俺の大切な相棒として一緒にいる。
ユニゾンデバイスになったことで、スパイラルとブラスターエクセリオンは正式に排除した。
封印だとまた使ってしまうため、二人で話し合い排除という形を取った。
それにユニゾンの方が遙かに魔力も上がるし、身体への負担も少ない。
現にユニゾンしてなら、ブラスター使用のなのはさんとも短時間だが互角に戦えるほどだった。
そのせいで、時々なのはさんと模擬戦をすることになってしまったけどね。
そして俺たちは、今一緒に暮らしている。
籍は入れられないけど、気持ちは夫婦なのだから……。
「ったく……昨日あれだけ激しかったんだから……。もう少し寝かせてくれよ……」
「ば、ばか!! 何言ってるんですか!! フィルの……ばか……」
こうやって、照れているプリムはやっぱり可愛いな。
だから、ついプリムをからかいたくなってしまう。
「でも……今日もいっぱい……してくださいね。フィルにしてもらうと、本当に愛されてるんだなって思うから……」
「ああ……俺もプリムとしていると、気持ちが安らぐんだ。だから……いっぱいしてもいいか」
「さっきも言ったでしょう。いっぱいしてくれなきゃ……拗ねちゃいますからね♪」
プリムと俺……。
俺たちは、未来からずっと一緒で、互いに、かけがいのない存在だった。
一度は悲しみでどうしようもなくなったけど……。
今はこうして一緒にいて、お互いの支えになっている……。
プリムも俺も、どちらが欠けても駄目なんだ……。
だから、俺たちはずっと一緒にいる……。
命が続くかぎり……。
願わくは……。
この幸せな時間が永遠に続くことを……。
皆様、現在自サイトのみで公開しています『とある休日シリーズ』になりますが、こちらでも見てみたいという方がいらっしゃいましたら、アンケートにお答えいただけたらと思います。
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見てみたいので公開してほしい
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まあまあ興味がある
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どちらでもいい
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興味がないので公開はしなくて良い