魔法少女リリカルなのはStrikerS ~ Remember my heart ~ 作:アルフォンス
「嫌だよ!! 居なくならないでよ!!」
私は、我慢しきれなくなって、フィルに抱きついた。
そして、そのままフィルの胸で泣き続けた。
そんな私を、フィルは優しく抱きしめて、頭を撫でてくれた。
「……俺も、本当は一緒にいたかった。一緒にいて、色んな所に行ったり、笑ったり、怒ったり、泣いたり……して、みたかった……」
「だったら、一緒にしていこう!! フィルはまだ、全然幸せになって無いんだよ!!」
約束したじゃない……。
ずっと、そばにいるって……。
未来からずっと辛いことばっかりだったフィル。
やっと、これから幸せをつかめるんだよ――――。
それなのに……こんなのって……。
「幸せだったよ……。フェイトと出会って、恋人同士になって……。そして、俺にたくさんの優しさをくれた……。たった一つだけ、心残りは、そばにいられないことかな……」
「フィル……」
フィルは私を抱きしめ、泣きながらそう言ってくれた。
目を開き、顔を見上げてみると、フィルの身体が、淡い光に包まれていた。
そして、フィルが段々と……消えていっている……。
「どうやら……本当に……お別れだ……」
「嫌だよ!! こんなの………こんなの……嫌だよ!!」
「フェイト……」
「お願いだよ………消えないでよ!! ずっと、私のそばに居てよ!!」
抱きしめたフィルの体から、温もりが消えていっている……。
その体は、光の粒になって空へと昇っていってる。
「……こんな俺を、好きになってくれて……本当に……ありがとう。幸せに……なってね……」
『ばかいってんじゃないわよ!! あんたが消えてどうするのよ!!』
* * *
「えっ……?」
謎の声がしたと同時に……。
俺の身体は復元されていき……。
最後には……。
完全に元の身体になっていた。
「フィル……フィルっっっ!!」
「フェイト……?」
「フィル……ぐす……フィル……ヒック………フィル!!」
俺の胸でフェイトは、大声で俺の名前を呼びながら、ずっと泣き続けていた。
「フェイト……ごめん……本当にごめんな……」
「フィル……もう二度と消えないよね……。ずっと、私のそばに……いてくれるよね……」
「……ああ……ずっと一緒だ」
「フィル……」
俺たちは、お互いの存在を確かめ合うように、キスをした。
二度と別れたくない………。
そんな思いを込めて……。
『幸せになりなさいよ……。フィル……』
「ティア?」
「どうしたの、フィル?」
「いま……ティアの声が、聞こえた気がしたんだ……」
ポケットを探ってみると、あの時、ティアから託されたクロスミラージュが無くなっていた。
まさか……。
あの声はティアだったんだ。
ティアが、俺のことを救ってくれたのか……。
ティア……お前からもらった命、大切にするよ。
「……フィル」
「どうしたの?」
「……今日は……はなれたくない……」
「俺もだよ……」
フェイトも俺も、今日は離れたくない……。
俺たちは、俺の部屋に行くことにした。
最初は、ベッドに座って話していたけど……。
でも、今は、お互いのぬくもりをすぐにも感じたい。
俺たちにあるのは、その気持ちだけだった。
俺は、フェイトをベッドに押し倒し……。
「あっ……」
「……フェイト」
「フィル、今日はいっぱい……いっぱい抱きしめてね。はなれちゃ……いやだからね」
「そのつもりだよ。今日は……寝かさないからな……」
「うん……」
* * *
「あ……んっ…」
フィルが私のブラをはぎ取り、優しく胸を触る。
こうしてフィルに触れてもらうと、フィルが感じられる。
でも、今日は優しいのはいや……。
もっと、激しく私を求めて欲しい……。
「フィル……。もっと……もっと強く求めて……。あなたがここにいるって……私に感じさせて……」
「……良いんだね」
「うん……。遠慮なんかしないでね」
私もフィルの身体を、積極的に愛する。
キスも優しい口付けじゃなく、本能で求める乱暴なキス。
でも、それでもまだ足りない――――。
「……もう、良いよ。一つになって、感じ合おう……ね……」
そして、私達は身も心も一つになる。
それこそ互いの足りない所を補完し合うように……。
結局、私達は朝日が昇るまで互いを激しく求め合っていた。
* * *
「はい、フィル。あーんして♪」
「あーん」
「おいしい?」
「美味しいよ。フェイトが食べさせてくれてるんだもんな……」
「そうだよ。このプリンには、私の思いをいっぱい込めてるんだよ。いっぱい食べてね♪」
「フェイト……」
「えへへ~♪」
俺とフェイトは今、クラナガンの喫茶店にいた。
この場所は、以前からフェイトと話していて、来てみたかったところの一つだった。
あの夜、フェイトが持っていたクッキーはこの店の物だった。
なぜここに来ているかというと……。
実は、はやてさんが、フェイトから、こないだの俺のことを聞いて、臨時でお休みをくれたのだ。
『フィル……もう、二度と離れたらあかんよ。フェイトちゃんと一緒の時間、大切にしてな……』
はやてさんの言葉には、本当に色んな思いが込められていた。
だから、一緒にいられる一時を大切にしたい……。
そんなことを思っていると……。
「ん? なんか表が騒がしいね」
「行ってみるか」
俺とフェイトは、外の騒ぎが気になって、喫茶店を出て、その場所に来てみると……。
「あっ、ハラオウン執務官!! 丁度良いところに!!」
「どうしたんですか?」
「実は……」
現場にいた管理局員によると、現在銀行強盗が立て籠もってしまい、人質こそいないが数十人が籠城している状態で、さらにその家の数人はAAランク以上の魔導師がいるとのことだった。
「というわけなんです。我々だけでは、どうしようかと思っていたのです……」
「フィル……」
「仕方ないな……」
「ここは私達が何とかします。皆さんは、現場の周囲の安全確保をしてください」
『了解しました!!』
フェイトの指示で、現場にいた局員達は、周囲の安全確保を行うことになった。
そして、俺たちは犯人達の説得をするために、建物の中に入った。
「おい!! 管理局が撤退していくぞ!!」
「どうせ、俺たちの事をビビッたんだろ!!」
『ははははははは!!』
建物の中にいた強盗団は、管理局が撤退したと思い、高笑いをしていた。
だが、彼らは知らない……。
これから始まる地獄絵巻を……。
後に、この事件は一部の人間で、ある意味JS事件よりも恐ろしいと言われる事になった。
* * *
「動くな!!」
「管理局です!! 無駄な抵抗しないで、手を挙げてください!!」
「へっ!! なめんじゃねえよ!! たった二人でなにができるって言うんだよ!!」
「それにしても、偉くべっぴんが来たじゃねえか!! そっちの男は冴えないみたいだけどな……」
「………いま、何て……言ったの……」
「聞こえなかったのかよ、姉ちゃん!! そんな何の取り柄もなさそうな男と一緒にいて、かわいそうだなっていったんだよ!! あははははは………えっ……?」
男達が俺のことをバカにして笑っていたが、その内の一人が壁に叩きつけられるのを見て、顔色が一変した。
「な、何が起こったんだ!!」
「……あなたたち……今の言葉……取り消しなさい……」
フェイトがバルディッシュを起動させ、いつの間にか、ライオットザンバーを手にしていた。
しかも、カラミティの方だった。
その一撃でさっきの男は、壁に叩きつけられたのだ。
まるでホームランを打つように……。
「おい!! そこの優男!!」
「なんだ……」
「あいつは誰なんだ!! AAランクのあいつを、ああもあっさり倒すなんて!!」
「知らないのか? フェイト・T・ハラオウンを……」
『な、なにぃぃぃぃぃぃ!!』
犯人達は、フェイトのことを知ると、一斉に驚き始めた。
やっぱり、フェイトの名前は有名なんだな。
「フェイト・T・ハラオウンだと!! あの金色の夜叉かよ!!」
「もしくは死神と言われている、あのフェイト・T・ハラオウンかよ!!」
「………おい、今なんて言った?」
「だから!! 金色のや……しゃ……」
犯人が言葉をいい終わる前に、一筋の白銀の魔力弾を、犯人の頬をかすめる。
「……俺のことは、かまわねえ。だけど……」
「フェイトのことを、そんな風に言うのは許さねえ!! お前ら、まとめて地獄を見せてやる!!」
俺は、プリムをブレイズモードにして、犯人達に全員バインドをかける。
そして、フェイトもライオットザンバーの刃を、犯人達に向けていた。
「さて、あなたたち……」
「覚悟は……」
「「出来ているでしょうね (だろうな)!!」」
『ひぃぃぃぃぃぃぃぃ………』
* * *
「うーん、今日も良い天気やな」
いまごろ、フェイトちゃん達はクラナガンで楽しんでいるやろうな。
あの二人は、今まで本当に辛いことばかりやった。
せめて忙しくないときは、一緒に遊びに行ったりして楽しんでな……。
そんなことを思っていたら、レジアス中将から緊急通信が入ってきた。
『八神!! 聞こえるか、八神!!』
「聞こえてますって……。どうかしたんですか? そんなに慌てて?」
『これが慌てずにいられるか!! これを見ろ!!』
「なんや……。ぶはっ!!」
レジアス中将から送られた映像を見て、私は思わず口に含んでいたコーヒーを吹き出してしまった。
「な、ななななな!!」
なにをどうやったら、こんなことになるんや!?
二人の目が単色になってるし……。
どうみても、フェイトちゃんもフィルも完全にブチ切れてるやないか!!
『……こういうことだ。八神、あの二人をどうにか止めてくれ……』
「……レジアス中将……私に死ねっていうんですか……。いったい、現場の局員は何しとったんや……」
『実はな、建物にいる犯人達は、AAランクの魔導師が数人いて、現場の局員では対処できなかったんだ。丁度、あの二人が現場の近くに来た物だから……』
現場の局員がフェイトちゃん達に、助っ人を頼んだ……というわけか……。
はぁ……。お願いやから、もう少ししっかりしてほしかった。
『何とも情けない話だ。休暇中のあの二人の力を借りなければならないとは……』
「フェイトちゃん達には、後日ちゃんと休暇をあげるわ。それよりも……」
画面上の二人は、犯人達にバインドをかけて、身動きをとれない状態になっている。
普段の二人なら、これで終わるのに、さらに二人は攻撃魔法を使おうとしていた。
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと!! あれはまさか!? プラズマランサー・ファランクスシフト!!」
二人の周りには、数十発のプラズマランサーが展開されていた。
しかも、二人分……。
『……八神』
「なんですか……」
『………こんなことは言いたくないが……儂は、犯人に同情するよ……』
「……不謹慎やけど、私もです」
正直言って、あれを喰らったら、ある意味スターライトブレイカーを喰らうより地獄や。
38の光球から秒間7発、4秒間で計1064発の雷の槍が撃ち出される。
しかも、プラズマランサーで……。
『「あっ……」』
『みぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁ!!』
そんなことを思っていたら、犯人達が、ファランクスシフトの嵐で、この世の地獄を見せられていた。
後に、この事件を見た人間は、こう語る。
この二人を、本気で怒らせてはならない。
あれは、高町なのは以上だ……。
この事件以降、犯罪者の間では、高町なのはよりも、フィルとフェイトのコンビの方が恐れられるようになった。
* * *
4年後
「フィル、何見てるの?」
「なに、昔のことをちょっと思い出したのさ」
俺が、昔の写真を見ていたら、後ろからギュッと抱きついてきた。
こうしてると、フェイトの胸が背中に直に感じる。
一応、俺も健全な男なので、色々と、その、まぁ……。
「あれから……いろいろあったな……」
「そうだね……」
六課が解散した後、俺達はそれぞれ新しい道を歩むことになった。
エリオとキャロ、ルーテシアは辺境自然保護隊に転属。
スバルは特別救助隊からスカウトされ、フォワードトップとして活躍中。
ティアはクロノ提督の口利きで、執務官補佐をすることになった。
自分が執務官だったこともあり、教えられるだろうとのことで、クロノ提督の補佐として、クラウディアに配属になった。
ヴァイス陸曹は武装局員資格を再取得し、ヘリパイロット兼狙撃手の道に戻った。
はやてさんは特別捜査官として復帰。守護騎士一同と共に任務を続けている。
ヴィヴィオは正式になのはさんの養子になり、名前も高町ヴィヴィオとなり、本人の希望で聖王教会系列の魔法学院に通っている。
なのはさんはJS事件での昇進は辞退し、教導隊に戻り、戦技教導官としてそして空戦魔導師としての道を選んだ。
戦闘機人の連中は、ギンガさんの更正プログラムを受け、それぞれ管理局内で働くことになった。
何人かはナカジマ三佐が、養子として引き取った。
今でも、ノーヴェやウェンディ達とはよくつるんだりしてるけどな……。
そして俺は、一年間フェイトの元で執務官補佐をして、執務官試験を合格し、そのあとすぐ地球にいるリンディさんの元に、正式に結婚の挨拶に行った。
リンディさんとエイミイさんは、すぐに祝福してくれたのだが、クロノ提督だけが……。
『大切な妹を、お前なんかにやれん!!』
その言葉に、フェイトが本気で切れてしまい、義兄であるクロノ提督に、バインドをした後、プラズマランサー・ファランクスシフトと、さらにリミットブレイクしてライオットザンバーで、ホームランしてしまったのだ。
しかも、女性陣は止めるどころか、ボロボロになって戻ってきたクロノ提督を、さらにボコっていた。
正直……お気の毒になるくらいだった……。
そんなこんなで、ハラオウン家の女性陣の手で、俺とフェイトは無事一緒になることが出来た。
「あの時、クロノったら、フィルのこと認めようとしないし……」
「まぁ……クロノ提督からしたら、俺はかわいい義妹を奪い取る害虫みたいなものだからな……。でも、クロノ提督、あの後本当に悲惨だったよな」
実は、これだけで終わらなかった。
この話を聞いたなのはさんが、クロノ提督を呼び出して、フェイトと一緒に二人でブラストカラミティを放ったのだ。
あの技は、俺も昔、模擬戦で喰らったことがあったけど、洒落にならない威力だ。
俺の時は手加減されてたけど、クロノ提督が喰らったのはフルパワーのカラミティ。
よく再起不能にならなかったよな……。
* * *
「……あの時は、かなり怖かったぞ」
「そんな不安にならないで……フィルには、あんな事は絶対しないから!!」
「本当に?」
「お願い……信じてよ。私は、フィルを誰よりも愛してるんだから……」
「でもな……」
フィルは、こっちをちらちら見ながら、不安な顔の演技をしていた。
んっ、もう……あれをしなきゃだめなの……。
「……これが、私の気持ちだよ」
そう言って、私はフィルに抱きつき、キスをする。
もちろん普通のキスじゃ満足なんかしない。
そのまま、何度も求め合うキスをし、終わった後はその証が出来上がっていた。
「すっごく伝わった……。理性が飛びそうになるくらいに……」
「えへへ♪ いっぱい、愛して欲しいんだもん♪」
「だったら、俺はフェイトに嫌われないように、いっぱい愛さなきゃな……」
「そうだよ。いっぱい、かわいがってくれなきゃ、すねちゃうからね♪」
フィル、あなたはずっと辛い思いをしてきた。
でもね、そんな辛い思いはもうしなくて良いんだからね。
あなたはもう一人じゃない。
私がずっと一緒だから……。
だから、いっぱい楽しい思い出を作っていこうね♪
皆様、現在自サイトのみで公開しています『とある休日シリーズ』になりますが、こちらでも見てみたいという方がいらっしゃいましたら、アンケートにお答えいただけたらと思います。
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見てみたいので公開してほしい
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まあまあ興味がある
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どちらでもいい
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興味がないので公開はしなくて良い