魔法少女リリカルなのはStrikerS ~ Remember my heart ~   作:アルフォンス

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第4話 ファースト・アラート

ティア達が機動六課に来てから二週間がたった。

訓練の方も、更に厳しいものとなってきて俺たちはそれについて行くのに精一杯だった。

 

 

 

 

「はい、整列!!」

 

「「「「「はぁ……はぁ……はぁ……」」」」」

 

「じゃ、本日の早朝訓練。ラスト一本。みんなまだ頑張れる?」

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

「じゃ、シュートイベーションをやるよ。レイジングハート」

 

《All、Right……Axel Shooter》

 

 

なのはさんの周りに11個のアクセルシューターが現れる。

相変わらずのハイスペックぶりだ。

 

 

「わたしの攻撃を5分間被弾無しで回避し続けるか、わたしにクリーンヒットを決めればクリア。誰か一人でも被弾したら最初からやり直しだよ。頑張っていこう」

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

 

そうは言うが、正直ボロボロの俺たちじゃ5分間も回避し続けるのは厳しい。

 

 

「みんな、今の状態から考えると、回避の策を取るのは賢明じゃない。そうなると残されてるのは……」

 

「そうね、正直5分間もしのぎきれる自信はないわ」

 

「あたしも無い」

 

「同じくです」

 

 

そうだろうな……。

だったら取れる手はただ一つ!!

 

 

「じゃ、何とか一発入れるしかないな。やれるなキャロ」

 

「はい」

 

「ようし、いくよエリオ!!」

 

「はい、スバルさん!!」

 

 

スバルはリボリバーナックルを、エリオはストラーダを構え、臨戦体勢になった。

 

 

「準備はオッケーだね。それじゃ、レディ……ゴー!!」

 

なのはさんの右腕が下ろされ、アクセルシューターの大群が俺たちに襲ってきた。

 

「全員撤退、回避!! 2分以内に決めるわよ!!」

 

「「「「おう!!」」」」

 

 

ティアの合図で俺たちは散開し、スバルはウイングロードでなのはさんの背後に回った。

 

 

「うぉぉぉぉぉぉぉ」

 

 

ティアと俺はビルの中に移り、シュートバレットでなのはさんを狙った。

 

 

「……っ、アクセル!!」

 

《Snipe.Shot》

 

 

三つのアクセルシューターが俺たちに向かってきた。

しかし、命中したのは俺たちが作ったシルエット。

 

 

「……シルエット。やるね、ティアナ、フィル」

 

 

そして上空からスバルが、本命の攻撃を仕掛けた。

 

 

「うりゃぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 

なのはさんはラウンドシールドを展開し、スバルの拳を防ぐ。

スバルはなお突破を試みるが、強固な防御力を誇っていて突破できなかった。

 

さらに、アクセルシューターがスバルに襲いかかってきた。

スバルはローラーでバックし、何とか直撃は避けた。

 

 

 

「うん、良い反応……」

 

「う、う、うわぁぁぁぁぁ」

 

 

しかし、バランスを崩してしまい、後退を余儀なくされてしまった。

さらに、シューターがスバルを追ってきていた。

 

 

「スバル、バカ!! 危ないでしょ!!」

 

「ゴメン……」

 

「待ってなさい、今撃ち落とすから……」

 

 

ティアがアンカーガンで、撃ち落とそうとしたその時……。

 

 

ガチャ…。

 

 

「えっ!?」

 

 

 

引き金を引いたが、アンカーガンが作動不良を起こしてしまい魔力弾が撃てなかった。

 

 

 

「うわぁぁぁ、ティア~。 援護~」

 

「この肝心な時に!!」

 

「替われ。俺がやる!!」

 

 

ティアの代わりに、俺が援護用のシュートバレットを撃つ。

だが……。

 

 

 

「くそ!! 駄目だ。俺のも、もう使い物にならない!!」

 

 

鈍い音とともに、引き金が完全にいかれてしまった。

やっぱり、突貫作業で作ったアンカーガンじゃこれが限界か!?

 

何とかスバルの援護は出来たが、これじゃ俺もティアも戦闘続行は無理だ。

何とか決めてくれよ。エリオ!!

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「我が乞うは、疾風の翼。若き槍騎士に………駆け抜ける力を」

 

《Boost Up ………Acceleration》

 

 

 

僕はキャロの補助魔法ブーストアップ・アクセラレイションで、ストラーダの機動力をアップしてもらい、なのはさんに仕掛けるチャンスを狙っていた。今の僕たちじゃ、これしか手がない。

だからこの一撃に全てをかける。

 

 

 

「あの、かなり加速が付いちゃうから気をつけて……」

 

「大丈夫!!。スピードだけが取り柄だから……いくよストラーダ!!」

 

 

 

ストラーダのバー二アが出力が上がり、後はタイミングを見てなのはさんに仕掛けるのみ!!

なのはさんはフィルさんの誘導弾とフリードのブラストレイ避け、僕に向かってきた。

 

 

 

「エリオ、気付かれたぞ!! 今しかない。やれぇぇぇぇ」

 

「いっけぇぇぇぇぇ」

 

《Speer angriff》

 

「てやぁぁぁぁぁぁ」

 

 

僕のストラーダとなのはさんが空中で激突し、黒煙を上げていた。僕は何とか近くのビルに着地したが……。

 

 

「エリオ!!」

 

「外した?」

 

「……どうだろうな」

 

 

黒煙が収まり、なのはさんの姿が見え始めた。

 

 

《Mission complete》

 

「おみごと、ミッション・コンプリート」

 

「本当ですか……」

 

「ほら、バリアを抜いてジャケットまで通ったよ」

 

 

なのはさんは自分の左胸にある、焦げた部分を指しエリオの攻撃が通ったことを言った。

俺たちの作戦がうまくいったんだ。

 

 

「じゃ、今朝はここまで。一旦集合しよう」

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

 

なのはさんも地上に降りてきて、バリアジャケットを解いて僕たちの所にやってきた。

 

 

 

 

*    *   *

 

 

 

 

 

「さて、みんなもチーム戦にだいぶ慣れてきたね」

 

「「「「「ありがとうございます!!」」」」」

 

「ティアナとフィルの指揮も筋が通ってきたよ。二人とも指揮官訓練受けてみる……」

 

「い、いやぁ……。あの……。戦闘訓練だけで一杯いっぱいです……」

 

「お、俺もティアと同じです……。それに指揮官って柄じゃありませんよ……」

 

 

ティアならともかく、俺はそんな柄じゃない。

陰で、みんなの助けをする役割の方が性に合う。

 

 

「うふふふふ……二人とも謙遜しちゃってさぁ~」

 

 

俺たちが和んだ空気でいると、フリードが何かに気付いたみたいな様子だった。

 

 

「キュク……キュクゥゥゥ?」

 

「ん、フリードどうしたの?」

 

「何か焦げ臭いような……」

 

「あっ、スバル。あんたのローラー」

 

 

ティアの声で俺たちはスバルのローラーを見てみると、煙が吹き出していた。

訓練で酷使しすぎたせいだ。

 

 

「あっちゃぁぁぁぁ、しまった……無茶させちゃった」

 

「オーバーヒートかな……。後でメンテスタッフに見てもらおう」

 

「はい……」

 

「ティアナのアンカーガンとフィルのデバイスも結構厳しい………」

 

「はい……騙し騙しです……」

 

 

ティアのアンカーガンは、訓練学校時代から使っていたからな。

むしろ良く持った方だ―――――。

 

 

「俺のは完全にアウトです。これじゃ新しく作った方が早いです」

 

「……みんな、訓練にも慣れてきたし、そろそろ実戦用の新デバイスに切り替えかな……」

 

「「「「新……デバイス?」」」」

 

 

訓練が終わった俺たちは、一旦シャワーを浴びにいく為に寮に戻ることになった。

 

 

「じゃ、一旦寮でシャワーを浴びて、着替えてロビーに集まろうか」

 

「「「「「はい」」」」」

 

「ん、あの車って……」

 

 

俺たちが寮へ向かう途中、黒いスポーツカーが俺たちの前で止まった。

中にはフェイトさんと八神部隊長が乗っていた。

 

 

「すご~い、これフェイト隊長の車だったんですか」

 

「そうだよ、地上での移動手段なんだ」

 

「みんな練習の方はどないよ……」

 

「あ……ああ……」

 

「頑張ってます……」

 

 

スバルが返答に困っていたが、ティアナが代わりに答えた。

 

 

「エリオ、キャロごめんね。私は二人の隊長なのに、あまり見てあげられなくて………」

 

「あ……。いえ、そんな……」

 

「大丈夫です……」

 

 

エリオもキャロも、フェイトさんに心配させないようにしているんだろうな。

もう少し子供らしく色々と言っても良いんじゃないか……。

 

 

「五人とも良い感じで慣れてきているよ。いつ出動があっても大丈夫」

 

「そうか、それは頼もしいな」

 

「二人はどこかにお出かけ……」

 

「ちょっと6番ポートまで……」

 

「教会本部でカリムと会談や。夕方には戻るよ」

 

「私は昼前には戻るから、お昼はみんなで一緒に食べようか」

 

「「「「「はい」」」」」

 

「ほんならな~」

 

 

 

 

*    *    *    

 

 

 

なのは達と別れ、はやてと私は、はやてを聖王教会本部に送る為に向かっていた。

 

 

「聖王騎士団の魔導騎士で管理局本局の理事官。カリム・グラシアさんか……私はお会いしたことがないんだけど………」

 

「そやったね……」

 

「はやてはいつから……」

 

「私が教会騎士団の仕事に派遣で呼ばれた時で、リインが生まれたばっかのころのはずやから………。8年くらい前かな」

 

「そっか……」

 

 

もう、そんなに経つんだね。

ここまで来るのに色々あったし―――――。

 

 

「カリムと私は信じてるものも、立場も、やるべき事も全然ちゃうんやけど……。今回は二人の目的が一致したから……。そもそも六課の立ち上げ、実質的なところをやってくれたんは、ほとんどカリムなんよ」

 

「そうなんだ……」

 

「おかげで私は人材集めの方に集中できた」

 

「信頼できる上司って感じ……」

 

「う~ん。仕事や能力は凄いんやけど……。あんまり上司って感じはせえへんな。どっちかっていうと、お姉ちゃんって感じや」

 

「ふふ、そっか……」

 

「まぁ、レリック事件が一段落したらちゃんと紹介するよ。きっと気が合うよ。フェイトちゃんもなのはちゃんも……」

 

「うん、楽しみにしている……」

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

訓練がおわり、あたし達はシャワー室で汗を流している。

こうしていると、身体の疲れが少しは取れるわね。

 

 

「えっと、スバルさんのローラーブーツとティアさんの銃、それにフィルさんの銃って、ご自分で組まれたんですよね……」

 

「うん、そうだよ」

 

「訓練校でも、前の部隊でも、支給品って杖しかなかったのよ」

 

「あたしは魔法がベルカ式な上に、戦闘スタイルがあんなだし……ティアとフィルもカートリッジシステムが使いたいからって」

 

「で、そうなると自分で作るしかないのよ。訓練校じゃオリジナルデバイス持ちなんていなかったから、目立っちゃってね……」

 

 

目立つと言うことは、陰湿ないじめにも遭いやすいと言うことだった。

ずいぶんあたしもフィルもやられたけど、あたし達はそれに負けなかった。

 

でも、それはあいつが一緒にいてくれたからだと思う。

 

 

「あっ、もしかしてそれで、スバルさん達、お友達になったんですか……」

 

「腐れ縁とあたしの苦悩の日々の始まりって言って……」

 

「あははは……」

 

「でも、デバイスは、ティアよりもフィルの方が目立ってたよね」

 

「あいつのデバイスは素人のレベルじゃないわ。それこそ資格持ちの人が作るものよ……」

 

 

実際フィルは、訓練校時代でもデバイスマイスターへの進路を進められていたくらいだしね。

 

 

「それに、以前よりさらに改良していたね。プリム……」

 

「あたしが必死で作ったアンカーガンと同じものだって、今回の訓練に間に合わせる為に、2日で作ったしね」

 

「ええっ、あの銃をたったそれだけの日にちで……」

 

「……正直へこんだわよ。あたしがこれを、どれだけ苦労して作ったか……。それをたった2日で作られたんじゃ………」

 

 

あいつの技術力は認めるけど、さすがにプライドが傷つくわよ。

 

 

「しょうがないよ。フィルはその辺が得意分野なんだから……」

 

「まぁ、フィルにはあたしも、デバイスの事じゃ色々参考になったしね………」

 

「やっぱり、フィルさんって凄いんですね……」

 

「まぁ、あんまりフィル達を待たせてもまずいし、そろそろ出ようか」

 

「そうね……」

 

「はい」

 

 

あたし達は着替えに戻り、先に上がっていたフィル達と合流しロビーに向かった。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「騎士カリム、騎士はやてがいらっしゃいました」

 

「早かったのね。私の部屋に来てもらってちょうだい」

 

「はい」

 

「それから、お茶を二つ……ファーストリーフの良いところをミルクと砂糖付きでね」

 

「畏まりました」

 

「よしっと……」

 

 

私は重厚な扉をノックすると―――――。

 

 

「どうぞ……」

 

 

扉を開けると、そこにいたのは……。

 

 

「カリム、久しぶりや」

 

「はやて、いらっしゃい」

 

 

私とカリムは久しぶりの再会をし、その後少し雑談を交えて、部隊の話になっていった。。

 

 

「ごめんな。すっかりご無沙汰してもうて……」

 

「気にしないで。部隊の方は順調みたいね」

 

「ふふ、カリムのおかげや」

 

「うふふ、そういうことにしておくと、色々お願いもしやすいかな」

 

「なんや、今日会って話すのはお願い方面か」

 

「……」

 

 

カリムは雰囲気が変わり、カーテンを閉めガジェットの資料をいくつか出した。

 

 

「これ……ガジェット……新型?」

 

「今までのⅠ型のほかに二種類。戦闘性能はまだ不明だけど……これ、Ⅲ型は割と大型ね」

 

「本局にはまだ正式報告はまだしていないわ。監査役のクロノ提督には、さわりだけお伝えしたんだけど……」

 

「ッ、これは!!」

 

 

私はカリムの出したデータの中にあった、ある物体に気付き驚いた。

 

 

「それが今日の本題。一昨日付で、ミッドチルダに運び込まれた不審貨物……」

 

「……レリックやね」

 

「おそらく、間違いないわ。Ⅱ型とⅢ型が発見されたのも昨日からだし……」

 

「ガジェットがレリックを見つけ出す予想時間は……」

 

「調査では早ければ今日明日……」

 

 

カリムの話を聞いていて、私はある疑問が浮かんだ。

 

 

「せやけどおかしいな。レリックが出てくるのが、ちょう早いような……」

 

「だから会って話したかったの。これをどう判断すべきか、どう動くべきか……」

 

「……」

 

「レリック事件も、その後に起こる事件も対処を失敗するわけには……いかないもの」

 

「……」

 

 

私は画面を操作すると、情報画面を閉じ、カーテンをあけた。

 

 

「はやて?」

 

「まぁ、何があってもきっと大丈夫。カリムが力を貸してくれておかげで、部隊はいつでも動かせる。即戦力の隊長達はもちろん、新人フォワード達も実戦可能。予想外の緊急事態にも、ちゃんと出来る下地が出来ている。そやから大丈夫!!」

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

「うわぁ……。これが……」

 

「あたしたちの新デバイス……ですか……」

 

 

俺たちの前に4機の新デバイスがあり、まるで持ち主を待っていたかのようだった。

 

 

「そうでーす。設計主任はフィルと私。協力者は、なのはさん、フェイトさん、レイジングハートさんとリイン曹長」

 

「ティアナのはクロスミラージュ、スバルのはマッハキャリバー。エリオとキャロのは今まで使っていたのと同じ名前だよ……」

 

 

ティア達がデバイスを見ていると、エリオとキャロがあることに気付く。

 

 

「あれ? ストラーダとケリュケイオンは変化無しかな……」

 

「うん、そうなのかな?」

 

「違います!! 変化無しは外見だけですよ」

 

「リインさん……」

 

「はいです」

 

 

エリオとキャロの前にリイン曹長が現れ、ストラーダやケリュケイオンの事を話し始めた。

 

 

「二人はちゃんとしたデバイスの使用経験はなかったですから、感触に慣れてもらう為に、基礎フレームと最低限の機能だけで渡してたです」

 

「あ、あれで最低限……」

 

「……本当に」

 

「みんなが扱うことになる4機は、六課の前線メンバーとフィルとメカニックスタッフが、技術と経験の粋を集めて完成させた最新型。部隊の目的に併せて、そして、エリオやキャロ、スバルにティアナ、個性に合わせて作られた、文句なしに最高の機体です」

 

 

そういうとリイン曹長は4機のデバイスを宙に浮かせ、さらにデバイスの存在意義のことを話してくれた。

 

 

「この子達はみんなまだ生まれたばかりですが、色んな人の思いや願いが込められてて、いっぱい時間をかけてやっと完成したです」

 

 

そしてリイン曹長はティア達に、それぞれデバイスを渡してくれた。

 

 

「だから唯の道具や武器と思わないで、大切に。だけど性能の限界までおもいっきり、全開まで使ってあげて欲しいです」

 

「そういえばさっき、フィルが設計主任になったって言ってたけど?」

 

「そうだ!! さっきは聞き流してしまったけど、いつ俺が設計主任になったんだ!!」

 

「だって、基礎設計はフィルがやったものでしょう。私はそれを元に完成させたんだから……」

 

その事はティア達には言わない約束でしたよね。

あくまでアドバイザーとして登録しているんだから!!

 

 

「「「「ええっっっ!!」」」」

 

「フィルがあたし達のデバイスを設計したって本当なんだ!!」

 

「じゃ、訓練を一緒にしながら、ずっとデータ取りも並行して……」

 

「……フィルさん」

 

「フィル。あんた本当に………。あたし達のデバイスまで……」

 

 

ティアが申し訳ない気持ちが一杯なのか、ずっと下にうつむいたままだった。

俺はそんな顔が見たくてやったんじゃない。

 

 

―――――だから言いたくなかったんだ。

 

 

「前の部隊で一緒にやっている時、約束したろ。今使っているデバイスで対応できなくなったら、いつか俺が新しく考えてやるって……。まぁ余計なことしちゃったかもしれんがな……」

 

「………そんなことないわよ。あんただって、あたし達と一緒に訓練をしていて、身体はボロボロのはずなのに……」

 

「俺は今、自分が出来ることを精一杯やっただけだ。俺はティアのそんな顔が見たくてやったんじゃないんだ。だから……」

 

「あっ……」

 

 

俺はクロスミラージュを握っているティアの手に、自分の手を添えて、出来るだけ優しく言った。

 

 

「……だから、そんな風に思わないでくれ。俺はティア達が生きてかえってくる為なら、どんなことだってする。これもその一つなんだ……」

 

「だけど………」

 

「だったら、俺たちが作ったそのデバイスを大切に、そして使いこなしてくれ。きっとクロスミラージュもそれを望んでいるから………」

 

「………うん」

 

 

それこそが、俺が本当に望むこと。

ティア達が生きて帰ってくること。

 

それだけでいいんだ……。

 

 

 

「あの~あたし達もいるんですけど………」

 

「「あっ……」」

 

「まったくフィルって時々、素でそういうことを、恥ずかしげもなく言うよね………。でも、本当にありがとう、フィル……」

 

「………礼ならシャーリーさんに言ってくれ。俺はウイングロードの解析が出来なくて、お前のデバイスは頓挫していたんだからな……」

 

「そういったとこ、相変わらず素直じゃないよね。フィルって………。やっぱ似たもの同士だよ。お二人さん」

 

「「スバル!!」」

 

「「「「「ははははっ」」」」」

 

 

スバルのおかげで、こんな調子になってしまったが、これらのデバイスは俺とシャーリーさん達が、全能力を使って完成させたんだ。決して足手まといにはならないはずだ。

 

 

「ごめん、ごめん。おまたせ……」

 

「なのはさん!!」

 

「ナイスタイミングです。ちょうどこれから機能説明をしようかと……」

 

「そう、すぐに使える状態なんだよね」

 

「はいです!!」

 

 

シャーリーさんは四機のデバイスの画像を出し、説明を始めた。

実はこのデバイス達はとても高性能な為、ある仕掛けをしてあるのだ。

 

 

「まず、その子達みんな、何段階かに分けて出力リミッターをかけてあるの。一番最初の段階だと、そんなにビックリするほどパワーが出る訳じゃないから、まずはそれで扱いを覚えていって」

 

「で、各自が今の出力を扱いきれるようになったら、わたしやフェイト隊長、リインやシャーリーの判断で解除していくから……」

 

「ちょうど、一緒にレベルアップしていく感じですね」

 

「あっ、出力リミッターって言うと、なのはさん達にもかかってますよね」

 

「ああ……。わたし達はデバイスだけでなく、本人にもかかっているんだけどね」

 

「「「「ええっ」」」」

 

「能力限定って言って、うちの隊長と副隊長はみんなだよ。わたしとフェイト隊長、シグナム副隊長にヴィータ副隊長」

 

「はやてちゃんもですね」

 

「うん」

 

「え~と……」

 

「ほら、部隊ごとに保有できる、魔導師ランクの総計規模って決まってるじゃない」

 

「あ……。え……そうですね………」

 

「一つの部隊で優秀な魔導師をたくさん保有したい場合は、そこに上手く収まるように魔力の出力リミッターをかけるんですよ」

 

「まぁ……。裏技っちゃぁ……裏技なんだけどね」

 

 

そう、管理局では一つの部隊が保有できる魔導師の総合ランクが決まっている。

そのせいで、こういった事が起こっているのだ。

 

 

「うちの場合だと、はやて部隊長が4ランクダウン、隊長達は大体2ランクダウンかな」

 

「4つ!! 八神部隊長ってSSランクのはずだから……」

 

「Aランクまで落としてるんですか」

 

「はやてちゃんも色々苦労しているです……」

 

「なのはさんは……」

 

「わたしは元々S+だったから、2.5ランクダウンでAA。だからもうすぐ、一人でみんなの相手をするのは辛くなってくるかな」

 

「隊長さん達ははやてちゃんの、はやてちゃんは直接の上司のカリムさんか、部隊の監査役のクロノ提督の許可がないとリミッター解除が出来ないですし………。許可は滅多なことでは出せないそうです」

 

「……そうだったんですね」

 

 

リミッター、か……。

それで本当に大丈夫なのか?

 

非常時にそんな手続きをやってられるのか?

 

 

 

「まぁ、隊長達の話は心の片隅くらいでいいよ。今はみんなのデバイスの事……」

 

「「「「はい……」」」」

 

「……」

 

「フィル?」

 

「い、いや……何でもない……」

 

「そう……」

 

 

シャーリーさんがみんなのデバイスのデータを表示し、説明を始めた。

 

 

「新型はみんなの訓練データを基準に調整されているから、いきなり実戦で使っても違和感はないはと思うんだけど……」

 

「午後の訓練の時にテストでもして、微調整をしようか」

 

「遠隔調整も出来ますから、手間は殆どかからないと思いますよ」

 

「ふぅ、便利だよね最近は。レイジングハートは遠隔調整が出来ないから………」

 

「俺のプリムのそうですよ。最も普段から自分で調整してますから、遠隔機能は必要ないんですけどね………」

 

「あっ、そうそう。スバルのリボルバーナックルとのシンクロもうまくいったから、収納機能と瞬間装着の機能が付いてるぞ」

 

「本当!! ありがとうフィル、シャーリーさん」

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

はやてを送った私は、首都高速を全速で飛ばしながら、グリフィスと通信をしながら、公安地区の捜査部に向かっていた。

 

 

「……うん、はやては向こうに送ったから。そろそろ会談が始まっているんじゃないかな?」

 

「はい、お疲れ様です」

 

「私はこの後、公安地区の捜査部に寄っていこうと思うんだけど、そっちは何か急ぎの用事とかあるかな?」

 

「いえ、こちらは大丈夫です。副隊長お二人は交替部隊と一緒に出動中ですが、なのはさんが隊舎にいらっしゃいますので……」

 

「そう……。っ、えっ!?」

 

 

私が通信を切ろうとして時、第一級警戒態勢のアラートが鳴った。

一体何があったんだろう?

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「このアラートって……」

 

「一級警戒態勢!?」

 

「グリフィスくん!!」

 

「はい、教会本部から出動要請です!!」

 

「なのは隊長、フェイト隊長、グリフィス君。こちらはやて!!」

 

 

聖王教会に行っていた八神部隊長から通信が入った。

同時にフェイト隊長とも通信回線が開いていた。

 

 

「こちらフェイト、状況は……」

 

「教会調査団で追っていたレリックらしきものが見つかった。場所は、エイリム山岳丘陵地帯。対象は山岳リニアレールで移動中」

 

「移動中って!?」

 

「まさか!!」

 

「……そのまさかや。内部に進入したガジェットで、車両の制御が奪われている……。リニアレール車内のガジェットは最低でも30体。大型や、飛行型の未確認タイプも出ているかもしれへん」

 

 

 

やっぱりリニアレールを狙ってきたか。

どうやら、歴史は繰り返されるみたいだな。

 

 

「いきなりハードな初出動や……。なのはちゃん、フェイトちゃん、いけるか?」

 

「わたしはいつでも!!」

 

「私も!!」

 

「スバル、エリオ、キャロ、ティアナ、フィル。みんなもオッケーか!!」

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

「よし、良い返事や。シフトはAー3。グリフィス君は隊舎での指揮。リインは現場管制」

 

「「はい!!」」

 

「なのはちゃんとフェイトちゃんは現場指揮!!」

 

「うん!!」

 

「ほんなら、機動六課フォワード部隊……出動!!」

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

「……了解、みんなは先行して。私もすぐに追いかける!!」

 

「うん」

 

 

フェイトさん、出来るだけ早くお願いします。

それまで俺たちも全力で食い止めますから―――――。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「シャッハ、はやてを送ってあげて。機動六課の隊舎まで最速で!!」

 

「畏まりました、騎士カリム!!」

 

 

シャッハは、はやてを送る為、急いで準備をしていた。

 

 

「聖堂の裏に出て。シャッハが待ってる……」

 

「おおきにな、カリム。今日のお茶おいしかったよ……」

 

「ふふ……」

 

「ほんなら、行ってきます!!」

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

「急いでください!! 出動準備は出来てます!!」

 

 

ヴァイス陸曹がすでにヘリの準備をしていて、俺達は急いで乗り込む。

全員が乗り込んだのを確認し、ヘリは全速力で現場に向かって飛び立った。

 

 

「新デバイスでのぶっつけ本番になっちゃったけど、練習通りで大丈夫だからね……」

 

「はい……」

 

「頑張ります……」

 

「エリオもキャロ、それにフリードもしっかりですよ」

 

「「はい!!」」

 

「キュクゥゥゥゥ」

 

「危ない時はわたしやフェイト隊長、リインがちゃんとフォローするから、おっかなびっくりじゃなくて、思いっきりやってみよう」

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

 

いよいよ戻ってきての初実戦だ。ここでしくじらないようにしないとな……。

 

 

 

 

俺たちはそれぞれの不安や思いを持ち、現場である山岳地帯に向かっていた。

 

皆様、現在自サイトのみで公開しています『とある休日シリーズ』になりますが、こちらでも見てみたいという方がいらっしゃいましたら、アンケートにお答えいただけたらと思います。

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  • どちらでもいい
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