魔法少女リリカルなのはStrikerS ~ Remember my heart ~ 作:アルフォンス
基本は本編の流れに沿ってますが、フィルは誰ともつきあってません。
「はい、これで今日の治療はお終いです」
「ありがとう、ごめんね。いつもこんな辺境なところまで来てくれて……」
「いえいえ、基本的にはワープできてますから、大丈夫ですよ」
JS事件が終わって1年、機動六課も解散し、私は養生のためこの無人世界カルナージに来ている。
ここは人は誰もいないけど、自然がとても溢れていて、空気も澄んでいるので養生目的には最適な場所とも言える。
医療の問題は、フィルがいつも定期的に見に来てくれて、問題はない。
メディカルポッドがあれば、大概のことは大丈夫なので本当に助かる。
このメディカルポッドは、アースラに付いていたのを、そのまま取り付けて使っている。
但し、使い方が複雑なので、基本的にはフィルにお任せになってしまうけど……。
「それにしても、もう殆ど良くなってきていますね。これでしたら、あと半年くらいで現役復帰も出来ますよ」
「それもフィルのおかげよ。あの時……私を助けてくれなかったら……。今頃は……」
もしかしたら、あのまま廃棄処分という形で死んでしまったかもしれない。
実際、私のポッドは停止寸前だったのだから……。
「ママ、そんな悲しいこと言わないで!!」
「ルーテシア、あなたいつから?」
「ママがポッドの中から出てきてから、ここにいたの。ママ、今はこうしてフィルさんのおかげで良くなってきてるんだよ。だからそんなこと言わないで!!」
「ごめんなさいルーテシア。つい……ね……」
娘に悲しい思いをさせていたんじゃ、母親として駄目よね。
「そうですよ、メガーヌさん。今はこうして親子二人で幸せに暮らせてるんですから……ね……」
「そうね……」
ルーテシアは六課解散と同時に、私の養生のため休業という形を取っている。
本当は止めさせたかったんだけど、フィルに対する殺傷設定の魔法砲撃の罪は、決して消せる物ではなく、六課で働いていた分だけでは、あと少しだけ足りなかったのだ。
その事はルーテシアも納得していて、私が良くなったら、復帰する予定だ。
本人曰く、どこに復帰するのかは決めているらしい……。
「今はしっかりと治すことが大事なんですからね。そのためでしたら、俺に出来ることでしたら何でもしますよ。と言っても、あまり出来ることはありませんけど……」
そんなことはない。
こうして週一で私の治療に来てくれることがどんなに助かってるか……。
それだけじゃない……。
ルーテシアだって、本来の明るさも取り戻してきている。
六課にいたときから、段々と性格は戻ってきていたけど、この一年で見違えるように変わってくれた。
「さてと、二人ともお腹がすいたでしょう。何か作るから少し待っていてね」
「やったぁ!! 私フィルさんのお料理大好き♪」
「ははっ、それだったらよりをかけてつくるからな」
そう言ってフィルは台所に向かい、手際よく料理をし始めた。
フィルの料理の腕前は、プロ顔負けな所がある。
こうしてフィルが来てくれたときいつも作ってくれるのだけど、私の方が自信をなくすほどなのだ……。
「さて、出来たよ。二人ともいっぱい作ったから、沢山食べてね」
フィルが作ってくれたのは、ルーテシアの大好物のハンバーグを始め、私の好物のお野菜の煮物まである。
しかも、煮物の方は私のために、味を薄く作ってくれているという気配りも忘れていない。
「美味しいっ!! やっぱりフィルさんのお料理は最高!!」
「本当に美味しいわ。いつも思うけど、同じように作ってもこの味は出せないのよね……」
「ははっ、俺からしたらメガーヌさんの料理の方が美味しいと思うな。俺、メガーヌさんの料理大好きだし」
「ふ、フィル……その……ありがとう……」
フィルはとても良い笑顔でそんなことを言ってくれた。
この子はこうやって天然で女性をドキッとさせる言葉を言うことがある。
「むぅ……」
ルーテシアは頬をふくれさせ、むくれてしまっている。
ふふっ……ヤキモチを焼いてるのかしらね。
「フィルさん、今度は私が手料理を作りますから、是非食べてくださいね♪」
「ありがとう、楽しみにしてるね」
そう言ってフィルは娘の頭を撫でている。
「えへへ♪」
ルーテシアもまんざらでもなく、ニコニコしている。
元々フィルのことが好きだもんね。ルーテシアは。
* * *
「さてと、今日の所はこの辺で失礼しようかな」
「「ええっ!!」」
「フィルさん、今日は泊まってってよ!!」
「そうね。もうこんな時間だし……」
時計を見ると、午後9時を指していた。
「でも、女性二人の所に男性の俺がいるのも……」
「そんなの気にしないわよ。フィルだったら、むしろ……」
「えっ……?」
「……泊まっていって……欲しいかな……」
なぜか、今日はもっと一緒にいたい気持ちだった。
普段ならフィルを困らせることなんて言わないのに……。
「ふぅ……それじゃ今日はお言葉に甘えさせてもらいますね」
「やったぁ!! それじゃ、フィルさん、こっちで私と一緒にゲームして遊びましょう!!」
「お、おい……そんなに引っ張らなくても、時間は沢山あるし……」
ルーテシアはフィルの手を取って、自分の部屋へと連れて行ってしまった。
「本当……フィルって……優しいのよね……」
いつもルーテシアや私のために色々としてくれる。
治療だけでなく、心のケアもしてくれていた。
こうして、娘と一緒に暮らしているけど、やっぱり女手だけじゃ出来ないことも多い。
それをフィルは本当に手助けしてくれてた……。
この家を建てるときだって、ガリューと一緒に慣れない大工仕事もしてくれたし、ルーテシアが休職するときも、立場が悪くならないように、色々と働きかけてくれた。
「フィル……グリード……か……」
そして、私自身もそんな彼に段々惹かれていった。
いつも一生懸命で、真っ直ぐで……そして……。
自分よりも、大切な人を優先してしまうその心に……。
でも……。
あなたの幸せはどこにあるの……。
* * *
「う、う~ん……やっと眠ってくれたよ……」
さっきまでルーテシアと色んなゲームをやって、中々決着が付かず、さきほどようやく眠ってくれたのだ。
そして、少し外の風に当たりたくて、俺は家の庭に出て、外の空気を吸っていた。
「……でも、本当に良かったよな。ルーテシアも、メガーヌさんも心から笑ってくれるようになって……」
《これも、マスターが必死でメガーヌさんを助けたからですよ。そうでなかったら、ルーテシアは心が壊れていましたから……》
「俺は大したことをしていないよ。ここまで回復したのはあの二人の努力さ。俺がしたことはほんの些細なことさ……」
実際、俺がしたことなんて大したことはしていない。
この親娘が幸せなのは、二人の努力のたまものだ。
「後はガリュー達が手助けしてくれたからだよ。ルーテシアにとって、ガリュー達は大切な友達だしね」
《マスター……》
「そろそろ……俺がすることも終わりだな。メガーヌさんも回復してきたし……それに……」
「これ以上……初恋の人の傍にいるのは……辛くなるから……」
* * *
「う、嘘……でしょう……」
私はふと目がさめてしまい、少し外の空気を吸おうと庭に出ようとしたが、フィルとプリムが話しているのを見てしまい、出るに出られなくなってしまったのだ。
本当は盗み聞きするつもりなんか無かったのに……。
「フィルの初恋の相手が……私…?」
実はフィルの事は大分昔から知っていた。
孤児院でフィルのことを知り、そこでレジアスさんに引き取られてからも、よく遊んだりしていた。
昔のフィルは、私のことをお姉さんとよく慕っていてくれた。
まさか、その時のことを覚えていてくれたとは……。
「フィル……」
私がもう少しフィルの近くに行こうとしたとき……。
ペキッ
「!!」
足下にあった枝を踏んでしまい、物音を立ててしまう。
「誰!?」
フィルはその音に気づき、私の方へ振り返ると、ハッとし……。
「メガーヌ……さん……」
* * *
「どうして……ここに……?」
さっきまで誰もいなくて、ここには俺とプリムしかいなかったのに……。
メガーヌさんの気配に全く気づかなかった。
「ちょっと……眠れなくて、外の空気を吸いに……ね……」
「そう……ですか……」
「……」
それから、メガーヌさんは一言言ってから、言葉を発さなくなってしまった。
「あ、あの……」
「フィル……一つだけ……聞きたいことがあるの……」
さっきまでメガーヌさんはずっと黙ってしまっていたが、意を決し……。
「あ、あのね……私のこと……どう思ってくれてるのかな……」
「どう……と言いますと……?」
「私のこと……その……異性として……見てくれてるのかな……」
「!!」
ま、まさか……。
「ごめんなさい……。プリムとの会話……聞いてしまったの……」
「そう……ですか……」
やっぱり聞かれていたんだな……。
そうでなかったら、普段のメガーヌさんがこんな事言うわけがないから……。
「あの時のこと……覚えていてくれたんだね……」
「……はい」
メガーヌさんが言うあの時とは……。
俺は、クラナガンの郊外で捨てられていた孤児だった。
それを偶々任務中のメガーヌさん達に拾われて、ある孤児院に預けられていた。
そこでしばらくの間は、幸せに過ごしていたんだけど――――。
次元犯罪者がやってきて全ての物を蹂躙してしまい、孤児院は無くなってしまった……。
その後レジアスの親父さんに助けられ、そこでメガーヌさん達に再会し、色々お世話になったんだ。
その時から俺は、メガーヌさんのことを優しいお姉さんと慕っていて、子供心ながら好きになってしまったんだよな……。
これが俺にとって初恋になったんだよな……。
「まさか、フィルがそんな風に思っていてくれたなんて……」
「ばかですよね……。メガーヌさんには旦那さんがいたのに……あの時の俺は本当にガキでしたから」
その旦那さんも病気で亡くなってしまい、残されたのは幼いル-テシアだけだった。
それでもメガーヌさんは必死にルーテシアのために頑張ってきた。
「そんなこと……無いわよ。私は、嬉しいわ。フィルの……気持ちが……」
「良いですよ。気を遣わなくて……。俺みたいなガキが、メガーヌさんには釣り合わないですから……」
実際俺みたいなガキじゃ、大人の女性のメガーヌさんには釣り合わない。
だからこそ、この気持ちは言わないでいた。
* * *
フィルの言葉は私にとって驚きを隠せないでいた。
私のことを、そんな風に思っていたくれたなんて……。
その事はとっても嬉しい……。
だけど……。
「ねぇ……フィル。釣り合うって誰が決めるの。それは、貴方じゃないわ。この場合は私でしょう」
「メガーヌさん……」
「フィル……貴方は本当に素敵な男性よ。私だけでなく、娘のルーテシアや召喚獣達にまで色々してくれた。そんなに私達のことを思ってくれる人は、貴方以外に誰もいない!!」
「だから……」
私はフィルを自分の方へ抱き寄せ……。
「……そんな風に自分を卑下しないで……それじゃあんまりにも……辛いわ」
そんな風にいつもいつも自分を殺していたら、誰が貴方のことを見てくれるの……。
誰が貴方を愛してくれるの……。
そんなのあまりにも悲しいから……。
「メガーヌ……さん……俺…」
「私は……私はね。フィルのことが大好きよ。こうやって、いつも私やルーテシアのことを思ってくれる貴方のことが……大好きよ」
いつもフィルは私達のことを本当に思ってくれた。
そんな貴方だからこそ、私は惹かれたのよ……。
「フィル……貴方のその性格は美点だけど、同時に駄目なところでもあるわ。もう少しあなたは自分に自信を持って……ね……」
「……でも」
「それじゃ……」
私は……。
「んっ……」
フィルの唇にキスをしていた……。
「メガーヌさん……」
「これが……私の素直な気持ちよ。フィル、あなたの本当の気持ちを……聞かせて欲しいかな」
* * *
突然メガーヌさんにキスをされ、俺は頭の中が真っ白になってしまった。
そして、メガーヌさんは俺に自分の気持ちを伝えてくれた。
だけど……。
「……俺で……俺で本当に良いんですか。メガーヌさんだったら、もっと素敵な男性が……」
すると、メガーヌさんはふぅっ、とため息を吐きながら……。
「だから、それがいけないの。もっと自信を持ちなさい。あなたは私が好きになった人なんだからね」
メガーヌさんはまた俺をギュッと優しく包み込むように……。
「私と一緒に……いて欲しいな……」
「はい……」
「フィル……」
メガーヌさんは一旦俺を離し、その後瞳を閉じる。
その意味が分からないほど、馬鹿じゃない……。
俺はメガーヌさんの頬に手を添え……。
星空が照らす中……。
俺たちはそのまま……。
唇を合わせ、気持ちを確かめ合った……。
* * *
「メガーヌさん……俺、こういうの経験無いんです……」
「そっか……それじゃ私が初めてになるんだね……」
今まで俺は女性とそう言った経験が全くない。
恋愛経験のなさが災いしているな……。
「いいわよ……。私がいっぱい……いっぱい教えてあげるから」
メガーヌさんは俺にキスをすると、最初はただ唇が触れているキスだったけど、段々と舌を絡めてきて、深いキスをしてきている。
こうしてキスをしているだけで、メガーヌさんの気持ちが伝わってくる。
息継ぎの度に、銀色の糸ができあがるほどキスは情熱的な物になっている。
「メガーヌさん……」
「フィル、メガーヌって呼んで。恋人に【さん】付けは無いんじゃない……」
「それも……そうですね」
「ふふっ……フィルはここが弱いのかな……」
そう言ってメガーヌさんは、俺のありとあらゆる所を攻めてくる。
その度に俺の身体は、今までにない感覚に襲われた。
「ねぇ……フィル。フィルからも……お願い……」
「はい……」
今度は俺がメガーヌの上着を脱がし、さらにブラのホックをとり、その大きな胸が露わになると、手が吸い込まれていた。
「あっ……ん……」
胸に触れると、メガーヌは敏感に感じてくれ、その度に俺の支配感がどんどん生まれてきた。
「ねぇ……フィル、一つになりましょう。お互いが決して離れないように……ね……」
そして……。
俺はメガーヌに包まれるように一つになり……。
その感覚は今までに感じたことがない安心感に包まれていた……。
その後も、何度も俺はメガーヌを求め、彼女もその度に応えてくれた……。
* * *
「……ふふっ、本当によく眠ってるわね」
あの後、私達は何度もお互いのことを求め合った。
この身体についたキスマークはその証――――。
私は、フィルの黒髪にそっと触れ……。
「……こんなに……ボロボロになるまで……」
未来での傷やゆりかごでの傷の跡は、殆ど目立たなくなってる。
だけど心の傷は、今でも深く残っている……。
「フィル……。今まで誰にも甘えられなかった分、これからは私に甘えてね……」
フィルの場合、絶対に自分から甘えようとはしない。
だから、私が積極的に包み込んであげないと……。
私はフィルを自分の方へ抱き寄せ……。
「こんなことくらいしか……できないけど」
これ以上フィルに、悲しみを背負わせちゃだめ……。
大切な人たちを失う悲しみは、人を強くするけど、それ以上に心を傷つけてしまう。
フィルはもう充分悲しみを背負ってきた。
これからは自分の幸せを考えてほしい……。
* * *
「それじゃ、お邪魔しました」
「えーっ!! フィルさんもう行っちゃうの!?」
「また遊びに来るから……。それじゃお二人ともお元気で」
休暇が終わり、またフィルは忙しい日常へと戻っていく。
いつもだったらこのまま見送るんだけど……。
「待って……。ほら、ネクタイが曲がってる」
「す、すみません……」
本当はネクタイは曲がってないんだけどね……。
「むぅ……。フィル、昨日もいったけど、ちゃんと私に甘えなさい!!」
「そうなんですけど……。どうにも慣れなくて」
気持ちは分かるけど、私には甘えてほしい。
そうでないと、いつか本当に潰れてしまうわよ……。
「それと、お邪魔しました、じゃなくて、『行ってくる』でしょう。ここはあなたが帰る場所なんだから……」
「……ありがとう。じゃ、『行ってきます』」
「うん、行ってらっしゃい」
そして、フィルは転移でクラナガンに帰って行った。
* * *
「……もしかして、ママ、フィルさんと……」
「ええ……」
ルーテシアは勘の良い子だ。
今の私とフィルのやりとりで、何となく分かったのだろう。
「そっか……。あーあ、まさかママに取られるなんて」
「ルーテシア……ごめんなさい」
「謝らないで!! フィルさんを支えられるのは、未来のティアナさんかママくらいだと、思うか……ら……」
ルーテシアは、涙をこらえながら私に言ってくれた。
「ママ、お願い……。絶対にフィルさんを幸せにして。もしフィルさんを悲しませたら……。絶対に許さないから!!」
「約束するわ……。たとえどんなことがあっても……」
私は絶対にフィルを幸せにしてみせる。
それが、初恋の人を奪ってしまったルーテシアのためでもあるから……。
* * *
数年後
「……ふふっ、よく眠ってるわね」
結婚当初は恥ずかしがって、膝枕をしても緊張してたけど、今ではこうして甘えてくれてる。
「本当に、あなたはいつも、私やルーテシアのことばかり優先してるのよね」
仕事が休みの時は、ルーテシアと一緒にコテージの増築をしたり、もしくは私のことを手伝ったりしてくれてる。
そのことは嬉しいんだけど、休みの日くらいはゆっくりして欲しいのよね……。
「今は羽を休めてね。これくらいしかしてあげられないけど……」
私はフィルの黒髪をそっとなでながら、一緒に日向ぼっこをする。
私とルーテシアにとって、フィルという人は大切な人。
フィルがいなかったら、私もルーテシアもこうして一緒にはいられなかったのだから――――。
でも、フィルは決して恩を売るようなことはしなかった。
それどころか、ずっと私達のことを見守ってくれて……。
フィルが一番嫌なのは、自分の大切な人たちが傷つくことだから……。
自分よりも周りの人を優先するのは、今でも変わらないけど……。
ちょっとだけで良いから自分もいたわってね。
これから生まれてくる新しい命のためにもね……。
皆様、現在自サイトのみで公開しています『とある休日シリーズ』になりますが、こちらでも見てみたいという方がいらっしゃいましたら、アンケートにお答えいただけたらと思います。
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見てみたいので公開してほしい
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まあまあ興味がある
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どちらでもいい
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興味がないので公開はしなくて良い