魔法少女リリカルなのはStrikerS ~ Remember my heart ~   作:アルフォンス

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if endingシリーズです。
基本は本編の流れに沿ってますが、フィルは誰ともつきあってません。


if ending カリム

「ふぅ……ようやく抜け出せました」

 

 

 

連日の仕事で休む暇も無し、これでは息が詰まってしまいます。

シャッハも真面目なのは良いのですが、もう少し肩の力を抜いて欲しいです。

 

いつもいつも、教会で仕事ばかりしていたら息が詰まってしまいます。

 

それに……。

 

申し訳ないと思いましたが、幸いシャッハは、今日はセインとお出かけをしていていません。

このチャンスを逃す手はありません!!

 

 

 

「でも、教会から抜け出したのは良いのですが……。一体どうしたらいいでしょうか?」

 

 

正直な話、教会の外に一人ではあまり出たことがない。

一体どうしたらいいのだろう……。

 

 

そんなことを考えていると、一台のバイクがこちらにやってきた。

 

 

 

「……あれ? もしかして……騎士カリム……ですか?」

 

「フィル……?」

 

 

それはJS事件以来、会っていなかったフィルとの再会だった。

 

 

 

「一体どうしたんですか? こんなところで、お付きの人もいないみたいですけど?」

 

「えっと……それは……?」

 

 

ま、まずいです。

もしフィルに私が教会を抜け出したと知られたら、きっと教会へ連れ戻すに決まっています。

 

せっかく苦労して抜け出したのに。

しかも、シャッハがいないチャンスなんて、滅多にないのに……。

 

 

 

「……なるほどね」

 

 

 

フィルがため息をつきながら、言葉を吐く。

これは……完全に感づかれました。

 

これで……また教会に戻されてしまいますね……。

 

 

 

「……あの、もしよかったら、俺と一緒に行動しますか?」

 

「えっ……?」

 

 

今、何と言ったのですか……。

一緒に行動しよう……確かにそう言いました。

 

 

 

「……仕事が辛いのは何となく分かりますからね。たまには息抜きも必要です。それに……」

 

 

フィルは、少しおどけてウインクをしながら……。

 

 

「世間のことをあまりご存じでないお姫様に、少し社会勉強して貰うのも悪くはないですからね♪」

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「あの……それでどこに連れてってくれるんですか?」

 

 

結局私はフィルのバイクに乗せられ、一緒に行動することになった。

正直フィルがこんな行動をするとは思わなかった。

 

私はてっきりすぐに教会に強制送還すると思っていたから……。

 

 

 

「うーん……。一日しかありませんから、そんなに遠くには行けませんけど、クラナガンの繁華街でしたら大丈夫でしょう」

 

「繁華街ですか……いいですね。私も行ってみたいと思っていました!!」

 

「それでしたら、少し飛ばしますのでしっかり捕まってくださいね」

 

「はい!!」

 

 

 

私はフィルの身体にしっかりしがみついて……。

 

 

「あ、あの……騎士カリム。そんなにくっつかなくても……大丈夫ですよ。それに……」

 

「それに……何ですか?」

 

「その……言いづらいのですが……。その……胸が……」

 

「あっ……」

 

 

た、確かにこれですと、フィルの背中に私の胸を押し当ててるようなものです。

ですけど……。

 

 

「え、えっと……騎士カリム……?」

 

「カリム……」

 

「えっ……?」

 

「今日くらい私のことは呼び捨てで呼んでください。今の私は聖王教会の騎士ではないんですから……」

 

 

今、この時だけでも良い。

普通の女性として謳歌してみたい。

 

 

 

「……前も言いましたけど、俺、女性を呼び捨てにするの慣れてないんですよ」

 

「それでしたら、フィルも私で慣れていきましょう。今日はその練習だと思ってください」

 

 

フィルは一瞬きょとんとしていたが……。

 

 

「……分かりました。それでは今日はそう呼ばせて貰いますね。カリム」

 

「はい!! あと、敬語も禁止ですよ♪」

 

「……えっ、そ、それは……ちょっと……」

 

「良いんです!! 思いっきり楽しみたいんです!! だからお願いします!!」

 

「……分かった。カリム。今日だけだからな……」

 

「はい♪」

 

 

フィルはバイクのスロットルをさらに上げて、クラナガンへ全速で走らせた。

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「うわぁ……色んなものがありますね……」

 

「ここは、クラナガンでも有数のショッピングモールだからな。洋服だけでなく、アミューズメントも充実しているんだ」

 

「アミューズメント……ですか?」

 

「ああ……ゲーセンとかもあるし、レストランとかも入っているから、色々と楽しめると思うよ」

 

 

 

フィルの説明に私は心がワクワクするのを止められなかった。

今まで私は、教会領のお店とかなら行ったことがあるけど、こんなに遠くまで一人では来たことがなかった。

というより、私の場合立場上自由が利かず、どこに行くにしても制約が多かったのだ。

 

 

 

「それじゃ、カリムはどこに行ってみたい?」

 

「出来れば……全部回ってみたいです」

 

「了解だ。それじゃ大分気合い入れないといけないが、覚悟は良いな」

 

「はい!! 体力ならありますから任せてくださいね」

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「ここは……?」

 

「ここはゲームセンターだな。色んなゲームがあるだろ」

 

「ええ……でも、ちょっと騒がしいのですね」

 

「まぁ……ここは若者が多く集まるしね。でも、大人の人も来たりしているよ」

 

「そうなんですか……。あっ……あれは何ですか?」

 

 

 

私が気になったのは、大きな箱形の機械だった。

そこにはカップルや若い女の子達がいっぱい集まって何かをしている。

 

 

「ああ……プリクラだな」

 

「プリクラ……? それは何ですか?」

 

「簡単に言うと、写真を撮ってそれをシールにして遊んだりするんだ。ほら、こんな感じかな」

 

 

フィルが見せてくれたのは、手帳に貼っていた数多くの小さな写真だった。

 

 

「これが……そうなんですね。でも……ずいぶん女性と撮っている写真が多いんですね」

 

「えっ……。まぁ……殆どがティアやスバル達と写っている物ばかりだけどね」

 

 

そうは言うが、その他にもなのはさんやフェイトさん、さらには、はやてさん達と写っている物まであった。

 

 

「ずいぶんおモテになるんですね。フィルは」

 

「モテてないって……現にフリーなんだぞ俺は」

 

「そう……なんですか?」

 

「そう言うこと。今日だって一人寂しくバイクを走らせていたんだからな。まさかあそこでカリムと会うとは思わなかったけどね」

 

「ふふっ……確かにそうですね」

 

 

でも、もしあそこでフィルに会わなかったら、もっと早く教会の方に連れ戻されていただろう。

聖王教会だって私が黙っていなくなったらすぐに探し出す。

 

 

「よかったら……一緒に写真撮ってみる?」

 

「良いんですか。私で?」

 

「せっかく一緒に遊びに来たんだ。何か思い出を残さなきゃね」

 

 

 

まさか、フィルの方から言ってくれるとは思わなかった。

私は年上と言うことと恥ずかしさで、自分からは切り出すことが出来なかった。

だから、フィルの言葉は本当に嬉しかった……。

 

 

「そうですね。それじゃ、お願いします!!」

 

 

フィルと私はプリクラの機械に行き、一緒にプリクラを撮ることになった。

私は初めてなので、操作はフィルにお任せすることになった。

 

 

「えっと……これはね、3種類撮ることが出来て、その後色々自分で書くことが出来るタイプなんだ」

 

「書くって……? 画像にですか?」

 

「うん、簡単に言うと合成が出来ると考えてもらえればいいかな。まずは写真を一緒に撮ってからだね」

 

 

 

その後私達は3回色んな表情の写真を撮った。

普通にピースしているのや、ふくれっ面の物や、後は少しだけ寄り添った物も撮ったりした。

 

 

「うん……上出来かな」

 

「うわぁ……すごいんですね」

 

 

フィルが渡してくれたのは、さっき撮った私達の写真だった。

写真には色々落書きをしてあって、とてもカラフルな物になったと思う。

 

一枚だけ私が全部やってみたのがある。

それには……。

 

 

「その……なんだ……。これは結構恥ずかしいかも……」

 

「良いじゃないですか。これは私の素直な気持ちですから♪」

 

 

『大切な人』

 

 

それがフィルに対する私の気持ちだった。

 

 

「まぁ……なんだ。俺もカリムのことは……大切な友人だと思っているしね」

 

「……そう……ですか」

 

「カリム?」

 

「何でもありませんよ。さぁ、次の所に急ぎましょう。時間は限られているんですから!!」

 

「お、おい!! カリム!?」

 

 

 

――――そうだ。

 

 

彼にとって私は友人の一人にしか過ぎないんだ。

だから、この気持ちは私の胸の内に仕舞うことにしよう。

 

 

だけど……。

 

 

今日だけは……。

 

 

今日だけは、貴方を好きで良いですか?

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「うーん……。今日は色々回りまくったな」

 

「そうですね。こんなにはしゃいだのは生まれて初めてです」

 

「そっか……。それは良かった」

 

 

 

あれから私達はウインドゥショッピングをしたり、喫茶店で甘いものを食べたりした。

喫茶店では、おもいっきってカップル限定のメニューを頼んで、それを食べさせあったりした。

 

フィルは終始顔を真っ赤にしていたけど、それでも最後まで付き合ってくれた。

 

色んな所を回って夜になり、今はクラナガンの海が見える公園に来て夜空の星を眺めている。

 

 

 

 

「本当に……本当に楽しかったです。今日は……ありがとう。フィル」

 

「俺も楽しかったよ。でも、カリムがあんなにはしゃぐ姿は見たこと無かったよ」

 

「そう……ですね。今まで私は……ずっと自由はなかったですから」

 

「カリム……」

 

 

そう……。

私のレアスキル、プロフェーティン・シュリフテンを持っているため、私には自由が殆ど無かった。

 

確かに教会領の中では、ある程度動けたけれど、それでも外に出るにはかなり制約があった。

この能力があるため、色んな犯罪者から狙われてしまっている。

 

だから、一人では外に自由に行くことも許されない……。

 

 

「フィル……今日は……本当に楽しかった。そして……普通の女としているのも……今日でお終い、かな」

 

「えっ……?」

 

「……何で、私が教会を抜け出したか、分かりますか?」

 

「いや……正直分からない」

 

 

 

これだけは言っておきたいの。

これから言うことは、フィルにとって重荷になってしまうかもしれない。

 

 

 

「実は……私……」

 

 

 

だけど、これ以上自分に嘘をつくのは嫌だから……。

 

 

 

「………結婚、させられるんです」

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「えっ……?」

 

 

カリムの言葉に俺は驚きを隠せなかった。

カリムの処遇は、今までのつきあいと今日の話で分かっているつもりだった。

 

だけど、まさか……。

 

 

 

「それ……自分の意志なの……?」

 

「……いえ、教会側が決めた政略結婚という奴ですね……。能力者同士結婚すれば、その能力を子々孫々にまで残せるって……そんな理由です」

 

「馬鹿げてる!!」

 

 

俺は思いっきりフェンスをけっ飛ばす。

 

 

「フィル……?」

 

 

ふざけるなよ。

聖王教会、どこまで思い上がった考えしてやがるんだ。

 

聖骸布を盗まれたことを隠蔽しただけでは飽きたらず、今度は一人の女性の人生も奪う気か……。

 

 

「俺は……俺は、カリムにこんな不幸な未来を歩ませるために、JS事件を戦ったわけじゃない!!」

 

 

未来でも、この人は生き残った俺たちを必死でサポートしてくれ、そして、人々にもその優しい笑顔で生きる希望を与え続けてきた。

 

だけど……。

 

 

それもクアットロが聖王教会に総攻撃をかけたときに……。

 

 

カリムも……一緒に死んでしまった……。

 

 

 

「今度こそ……今度こそ……自分の好きな人には……幸せになって欲しかったのに……」

 

「えっ……?」

 

「ごめん……こんなこと……言うつもりは無かったんだ……」

 

 

そんな泣きそうなカリムの目を見ていたら……俺まで……辛い。

 

 

 

「フィル……」

 

 

 

 

カリムは必死で、これはどうしようもないんだ、仕方がないんだと思いこもうとしている。

そんなのあまりにも悲しすぎる……。

 

 

 

 

「私だって……私だって……大好きな人と……フィルと一緒になりたい……」

 

「カリム……?」

 

「私は……貴方を……フィル・グリードのことを愛して……います……」

 

「!!」

 

「分かっています……。こんなことを言っても、貴方には迷惑なのは……でも、どうしても伝えたかったんです」

 

 

 

カリムはその場にしゃがみ込み、とうとう泣き崩れてしまった。

まさか……カリムが俺のことを思っていてくれたなんて……。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

とうとう言ってしまった……。

こんなことを言ったってフィルにとって迷惑なだけなのに……。

 

これで後悔はない。自分の気持ちを全部伝えられたから……。

 

 

 

でも……でも……。

 

 

本当は……本当は……自分の好きな人と添い遂げたかった。

 

 

愛する人の温もりを感じたかった……。

 

 

だけど、それは叶わない望み……。

 

 

せめて今日の思い出を胸に、生きていこう……。

 

 

 

「迷惑なわけ……ないよ。俺も……同じ気持ちだから……」

 

「フィ……ル……」

 

「だから……」

 

 

そう言ってフィルは私を自分の方へ力強く抱き寄せる。

 

 

「せめて、俺の前だけで良いから、悲しみを抱え込まないで……。自分の愛する人が悲しんでるのなんて……辛いから……」

 

「フィ……ル……私は……私は……」

 

「今は……思いっきり……泣いて……ね」

 

「う……あああ……ぁぁぁぁ……ああ……」

 

 

 

もう、私には涙をこらえるのは無理だった。

 

フィル……。

 

貴方の優しさ、心の芯まで伝わります……。

 

だから、その優しさに甘えさせて貰います。

 

しばらくの間、私はフィルの胸の中で思いっきり泣いた……。

 

 

そして……。

 

 

 

「フィル……」

 

 

 

私とフィルは、互いの瞳を見つめ合い……。

 

 

 

「お願い……キス……して……」

 

 

 

やがて、どちらからともなく……。

 

 

お互いの唇と唇は……。

 

 

 

それぞれの存在を確かめ合うように触れあった……。

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「なんか……恥ずかしいですね」

 

「そう……だな」

 

「……でも、それ以上に温かいんです。好きな人と……こうして温もりを感じられるんですから……」

 

 

カリムは俺の肩に自分の身体を預けてきた。

こうしていると、カリムの気持ちが伝わってくる。

 

 

「あ、あのですね……その……」

 

 

カリムは顔を真っ赤にしながら、何かを言おうとしている。

 

 

「どうしたの……?」

 

「……今日は」

 

 

そして、カリムは意を決し……。

 

 

「今日は……帰りたくない……です」

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「本当に……いいんだな」

 

「はい……政略結婚なんかで、私の……大切な物を奪われたくないです。初めては……大好きな人と……結ばれたいですから」

 

「カリム……」

 

 

あの後、俺たちはクラナガンのホテルに泊まり、お互いにシャワーを浴びた後、今はこうしてベッドに座って寄り添っている。

 

カリムの髪をそっと撫でると、カリムも眼を細めて俺に甘えてくる。

普段は年上の綺麗なお姉さんなんだけど、こうしていると可愛いという感じがする。

 

 

 

「フィル……」

 

 

カリムは潤んだ瞳で俺のことをじっと見つめる。

そんなカリムの瞳に、俺も吸い込まれるようにキスをする……。

 

 

「んっ……んんんっ……」

 

 

最初は舌を絡ませると、びっくりしてしまっていたけど、段々こちらの舌に合わせるようになり、何度も繰り返している内にカリムの方から求めてくるようになった。

 

 

キスが終わった後は、お互いの間に愛の証として、銀色の糸がつながっている。

 

 

「キスって……こんなに気持ちいいんですね……」

 

「そうだな……でも、それは、気持ちがつながっているからじゃないかな……。そうでないと不快なだけだし……」

 

「ふふっ、そうですね……。ねぇ、これだけ……なんですか?」

 

「まさか……」

 

 

俺はカリムの期待に応えるように、カリムを押し倒し、上着を脱がし、下着も取り、その綺麗な胸に触れる……。

 

 

「あっ……んんん……ふぁぁぁ……」

 

「……怖がらないで……その感覚に……」

 

「でも……こんな感覚、初めてなんです……。なんだか、自分じゃなくなる気がして……」

 

「大丈夫、俺がしっかり抱きしめてるから……ね……」

 

 

俺の言葉に安心したのか、カリムはギュッと抱きついてきた。

 

 

「お願いです……。これ以上は……もう……」

 

「ああ……カリム、カリムの初めて……もらうね」

 

「はい……私の初めてを……貰ってください……」

 

 

 

そして俺たちは月明かりが照らす部屋で……。

 

 

お互いが結ばれ……。

 

 

その後も、またお互いを求めて、何度も温もりを感じ合い……。

 

 

それは数時間繰り返し……。

 

 

身も心も完全にとけあう……。

 

 

 

*    *    *

 

 

 

半月後

 

 

俺はフェイトさんとティア、そしてレジアスの親父さんの力を最大限に使い、聖王教会の膿を全部調べ上げた。特に親父さんはものすごい乗り気で、聖王教会の弱点を徹底的に調べ上げてやると、部下を総動員して徹底的に調べてくれた。

 

オーリス姉もカリムのことを聞き、同じ女性として道具扱いは絶対に許さないと、張り切って調べてくれた。

 

その結果、カリムを政略結婚に追い込もうとしていた一派の事を完全に調べ上げ、さらに隠蔽して

いた聖骸布のこともフェイトさんとティアが見つけてきてくれた。

 

この一件は知ってはいたけど、証拠不十分でどうしようもなかったので、証拠を見つけてきてくれた二人には本当に感謝だ。

 

 

これが決定的な一打となり、一派は完全に崩壊し、結婚のことも破談となった。

 

 

 

「よかったな、これで俺は用済みかな……」

 

「何言ってるんですか……。私の大切な物を奪っておいて、それは無いんじゃないですか……」

 

「冗談だよ。それだったら、あの時抱いたりはしないから……」

 

「もう……その冗談はタチが悪いですよ……」

 

 

カリムは頬をふくらせ、私、怒ってるんですよとアピールしている。

でも、そんなカリムもなんか可愛く見えてしまう。

 

 

「なんで笑ってるんですか……。私、怒ってるんですからね」

 

 

そう言っても本気で怒っているわけではない。

 

 

「だったら……どうしたら、許してくれる?」

 

 

 

答えは分かっている。

だけど、あえてカリムに聞いてみる……。

 

 

 

「……それは、分かってるでしょう。フィル……」

 

「じゃ……」

 

 

そして、俺はカリムの唇にキスをする……。

 

 

「……これだけじゃ……いや……」

 

「後は、夜になってからね……というか俺の理性が持たん……」

 

「求めてくれても……いいのに……」

 

「一応仕事でここには来たから……。教会内でしたら、さすがにまずいだろう……」

 

「……だったら、もう一度キス……して。そしたら、夜まで頑張るから……」

 

 

 

実は、あの夜から俺とカリムはずっと俺の部屋で住んでいる。

今でこそ教会に戻っているけど、事件が収まるまでは、ずっと俺の部屋で過ごしていたのだ。

 

半月後、無事事件は解決したのだが、その後もカリムは教会領には戻りたくないと言い、仕方がなく俺の部屋で同棲という形を取っている。

 

だけど、クラナガンとここではかなりの距離がある。

だから、これは特別に許可を取って、クラナガンの俺の部屋とこことをポーターで繋いだのだ。

 

そうしないと教会には戻りませんと言い始めてしまい、シスターシャッハも俺も困り果ててしまったのだ。

今もシスターシャッハはカリムに振り回されている。

 

 

 

「……夜、覚悟しろよ……。火を付けたのは、そっちなんだからな……」

 

「望むところですよ。今日はいっぱい抱きしめてくださいね♪」

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「はい、フィル。あーんしてください」

 

「……やっぱ……しなきゃ駄目か」

 

「はい♪」

 

 

 

カリムが定時で仕事を終わって、すぐに夕御飯の支度をしてくれた。

しかも、その料理の内容は、うな重に肝すい、レバニラ炒めとどう考えても精力増強料理でしょう!!

 

 

「……あの……一人で食べられるから……ね」

 

「だぁーめ。こうして食べて貰うことが嬉しいんですから♪」

 

 

カリムは俺の隣に座って箸におかずを取って、俺にあーんと言ってさっきから食べさせてくれていた。

何度か良いよと言ったけど、その度に泣きそうな顔をしてしまい、ついつい俺も食べさせて貰ってしまっていた。

 

 

 

「美味しい……ですか。フィル」

 

「美味しいよ。カリムって、この半月で本当に料理がうまくなったよね」

 

 

 

実はカリムは事件が落ち着くまでの間、オーリス姉やはやてさんから料理を教わっていたりしていた。

特にはやてさんは、お姉さんのように慕っているカリムに料理を教えられると言うことで、張り切って教えてくれた。

 

 

 

「まだまだ、はやてやフィルには及びませんけどね」

 

「そんなこと無いよ。こうして好きな人に作ってもらうとより美味しいよ」

 

「ありがとう……フィル」

 

 

 

こうして、カリムの手料理を食べた後、その後は……その……カリムも一緒に食べてしまった。

やっぱり、あの精力料理を食べ過ぎてしまったせいかな……。

 

 

 

*    *    *

 

 

 

3年後

 

 

 

「フィル……何見てるんですか?」

 

「ああ……ちょっと、結婚式の写真をね……」

 

 

 

あの事件から2年、俺とカリムは同棲を続けたんだけど、聖王教会とレジアスの親父さんがいい加減に一緒になれと何度も言われてしまい、俺たちも丁度良い機会だと思い結婚に踏み切ることにしたのだ。

 

 

結婚式は親父さんが陣頭指揮を取り、とんでもない規模の式になってしまった。

聖王教会のメンバーだけでなく、元六課メンバーが全員集まり、忘れられない式になった。

 

 

 

「カリム……今、幸せかい」

 

「当たり前ですよ。だって……こうして、愛する人と一緒にいるんですから……」

 

 

 

未来でたった一人で、俺たちを支えてくれた気丈な女性……。

 

 

だけど、本当は誰よりも脆く、弱い女性だった……。

 

 

その女性は、一度は自らを殺そうとしたけど、幸せを手にした……。

 

 

そんなカリムを俺は一生支え続けたい……。

 

 

二人の愛は永遠なのだから……。

 

 

皆様、現在自サイトのみで公開しています『とある休日シリーズ』になりますが、こちらでも見てみたいという方がいらっしゃいましたら、アンケートにお答えいただけたらと思います。

  • 見てみたいので公開してほしい
  • まあまあ興味がある
  • どちらでもいい
  • 興味がないので公開はしなくて良い

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