魔法少女リリカルなのはStrikerS ~ Remember my heart ~   作:アルフォンス

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if endingシリーズです。
基本は本編の流れに沿ってますが、フィルは誰ともつきあってません。


if ending ティアナ

「あははは!! もう観念しなさい」

 

「……くっ」

 

 

 

フェイトさんのおかげで、クアットロの居場所を見つけた俺は、一人乗り込んだが、クアットロの聖王の鎧の前に、手も足も出ないでいた。

 

砲撃を撃っても、全てはじかれてしまうし、最後の手段で、ブラスターを使って、ザンバーで斬りつけたが、通用せずはじかれてしまい、床に倒れてしまった。

 

ヴィータ副隊長が駆動炉を破壊して、パワーが落ちるはずなのに全く落ちる気配がない。

ヴィヴィオもなのはさんが元に戻したから、ゆりかごは停止しても良いはずなのに……。

 

 

 

「なぜ、ゆりかごが停止しないのか、分からないみたいですね」

 

「……ああ、ゆりかごのキーは二つとも失ったはずだ。だが……」

 

「簡単なことですわ。それは、コアが失っていないからですわ~」

 

「コア……だと……」

 

「そうですわ。聖王も駆動炉も、ゆりかごのほんの一部に過ぎませんの」

 

「だからか……お前の力が失っていないのは……」

 

「その通りですわ~。さらに、教えておいてあげる。私はそのコアと融合してますのよ~」

 

「!!」

 

 

 

これで納得した。ユーノさんが教えてくれたゆりかごの情報で、二つのキーを止めても、もしかしたら駄目かもしれない、その言葉の意味がやっと分かった。

 

ゆりかごのエネルギー源は、コアと融合したクアットロそのものだったんだ。

 

 

 

「これで分かったでしょう。あなたがしてきたことは全て無駄だったのよ……。そして……」

 

 

 

クアットロは魔力を刃にし、倒れている俺に突きつけ……。

 

 

 

「これで……お終いですわ!!」

 

 

――――これまでか。

ごめん……ティア……。

 

 

 

『待ちなさい!!』

 

 

 

突如、入口の扉が、凄まじい衝撃を受け、内側に向かってひしゃげ、次の瞬間には、オレンジの奔流がぶち抜く。

 

そこにいたのは……。

 

 

 

 

*     *    *

 

 

 

 

「ティアナ・ランスター!? あなた、いつの間に!!」

 

「機動六課フォワードを舐めんじゃないわよ!! あんな竜くらい、あたし達で仕留めたわよ!!」

 

「ティ……ア……」

 

 

扉をぶち抜き、あたしが目にしたのはクアットロにボロボロにされたフィルの姿。

 

 

「フィル!! しっかりして!!」

 

「……ティア、無事だったんだな。みんなは……」

 

「キャロ達も全員無事よ。なのはさん達はスバルが助けに行ったわ。もう、全員脱出してるわ……」

 

「そっか……。それを聞いて、安心したぜ……」

 

 

 

フィルは、最後の力を振り絞って、何とか立ち上がる。

その傷じゃ、立つのだってつらいはずなのに……。

 

 

 

「……ティア。お前、どのくらい魔力残ってる?」

 

「正直言って、殆ど残って無いわ……。幻術1回が限度よ……」

 

 

 

ここに来る間に、フレイム・グロウを倒すのに、スターライトブレイカーを撃ってしまい、切り札のスーパーサンダーの増幅装置も、もう使えない。

 

 

―――――強力な攻撃魔法は、もう撃てない。

 

 

 

「……俺に考えがある。俺に、命を預けてくれるか?」

 

「……いいわ。あんたに、全てを賭ける……」

 

「ありがとう……。ティア……」

 

 

 

フィルが考えた作戦は、まずあたしが幻術でクアットロの視界を狂わせ、その間に、フィルがブラスタービットを使ってバインドをする。

 

そして、動きを封じたら、フィルが攻撃をする……。

 

 

 

「簡単にいってくれるじゃない……。あんただって、ブラスター使って、それが出来なかったんでしょう……」

 

「俺一人だったから駄目だったんだ。だけど、ティアが来てくれたことで、何とかなる!!」

 

「分かったわ。あたしは、あの馬鹿の動きを何とか止めるから。フィル……任せたわよ!!」

 

「任せとけ!!」

 

「じゃ、いくわよ……」

 

「「Go!!」」

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「クアットロ!! あんたの相手はあたしよ!!」

 

「ティアナ・ランスター……いいですわ。まず、あなたから片付けてあげますわ!!」

 

「そう、上手くいくかしら!!」

 

「何ッッ!?」

 

 

次の瞬間、あたしの姿が何十人にも増え、クアットロを混乱させる。

残った魔力、全部使っての幻術よ。

 

 

「くっ!! 幻術!? めんどくさいですわね。こうなったら、全部排除して差し上げますわ!!」

 

 

クアットロから放たれた魔力弾は、次々と偽物に命中し……。

ついに最後の一人になってしまう。

 

 

 

「もう……幻術をする魔力も、ありませんのね……。終わりですわ、ティアナ・ランスター!!」

 

 

 

クアットロはあたしにとトドメを刺そうと、巨大な魔力弾を作るため、一瞬だが動きが止まった。

この一瞬を待っていたのよ!!

 

 

 

「今よ!! フィル!!」

 

「待ってたぜ!! この時を!!」

 

 

 

次の瞬間、ブラスタービットが射出され、クアットロの周りを何重にも舞った。

ビットが引いていたバインドが絡みつき、完全に動きを封じる。

 

 

 

「はぁ……はぁ……。やっ、たわ……」

 

「くっ!! ティアナ・ランスターはおとりでしたのね!! 私の動きを封じるための!!」

 

「気づくのが、少しだけ遅かったな……」

 

「喜ぶのはまだ早いですわ。あなたの砲撃の威力では、私の聖王の鎧は貫けませんわ。それは、証明済みですわ!!」

 

 

 

悔しいけど、あいつの言うとおり、フィルやあたしの攻撃魔法の威力じゃ、聖王の鎧を壊すことは出来ない。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「……クアットロ」

 

「何ですの。負け惜しみですか。あはははは!!」

 

 

その耳障りな高笑いもそこまでだ――――。

俺の残された最後の手段……。

 

 

「………一緒に、地獄に……付き合ってもらうぞ」

 

《マスター!! まさか!!》

 

 

 

―――――スパイラルモード。

 

俺の命を魔力に変換する、ブラスターのラストリミット。

もう、それしか……この女を倒す手は無い!!

 

 

 

「プリム……約束破って……すまない。でも、これしかないんだ!!」

 

《……覚悟してましたよ。この戦いが始まったときから……いいんですね……》

 

「……ああ」

 

 

 

俺の命で、ティアが助かるならそれでいい……。

大好きな人が生きてくれれば、それが俺の幸せだから――――。

 

 

 

 

《マスター……》

 

「……いくぜ!!」

 

 

俺はポケットから、機動キーであるスパイラルカートリッジを取り出し、プリムに装填する。

 

 

「………ブラスターシステム、コード・ファイナル……スパイラル……起動!!」

 

《Blaster system code final spiral mode ignition!!》

 

 

 

カートリッジが装填され、スパイラルを起動した瞬間――――。

魔力は爆発的に上がり、俺の周りで魔力が放電現象を起こす。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「な、何ですの!! この魔力は!!」

 

「………フィル、あんた、まさか!! やめてぇぇぇぇ!! 今すぐスパイラルを止めて!!」

 

 

ブラスターのラストリミット、スパイラルモード。

この光は、俺の命そのもの――――。

 

 

 

「知ってたんだな……。スパイラルのこと。ごめんな……。これしか……あいつを倒す手段がないんだ………」

 

 

 

スパイラルを使ったら、待っているのは確実な死。

でも、後悔はない―――。

 

 

次の瞬間ブラスタービットが、ティアの周りを取り囲み、三角錐型のシールドを作り出す。

 

 

 

「この中にいれば……クアットロの攻撃から、護ってくれる。ティア……」

 

 

これは俺のわがまま――――。

これから言う言葉は、すぐに忘れてくれて良いから――――。

 

 

 

「俺は……」

 

 

 

いつも俺のそばにいてくれて、心の支えになってくれたティア。

 

 

 

「おまえのことが……」

 

 

 

そして、その優しい笑顔が……。

 

 

「……大好きだった」

 

「!!」

 

 

だから、その笑顔は絶対に護ってみせる。

 

 

 

「………幸せになれよ……俺の分も……」

 

 

 

それが俺が願う最後のこと。

 

 

 

―――――たった一つの俺の願い。

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「いやっ!! こんなのいや!! お願い、ここから出して!!」

 

 

 

クリスタルゲージは、完全にあたしの動きを封じてしまっている。

お願いだから、出してよ!!

 

 

 

「……フィル・グリード、あんた、まさか……自分の命を!?」

 

「そうさ……。俺の命で、魔力に変換しているんだ。これなら、お前の聖王の鎧もつらぬける!!」

 

「あ……ああ……あああああ!!」

 

 

 

クアットロは、フィルにプリムを突きつけられ、身体を震わせ、カチカチと歯を鳴らし、膝は笑い、今にも崩れ落ちそうになっていた。

 

さらに、フィルはバインドでクアットロの動きを完全にロックする。

 

 

 

「咎人に、滅びの光を。星よ集え!! 全てを撃ち抜く光となれ!!」

 

 

 

プリムの銃口に、辺り一帯の魔力が集まりだし、巨大な魔力球が展開され――――。

 

 

 

「貫け……閃光……」 

 

 

 

カートリッジがロードされ、魔力は、更にふた回り以上も増大する。

命の全てを魔力に変換している。

 

 

 

――――お願い。

 

 

誰でも良いから……。

 

 

だれかあのバカを止めてよ!!

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

「……はぁ……はぁ……全身の力が……抜け、て…いく」

 

 

身体から生命力が抜けていくのが分かる――――。

この一発を撃ったら、俺は助からないだろうな。

 

 

ティア――――。

 

 

この世界に戻ってきて、お前を助けられて本当に良かった――――。

 

 

 

そして、これで俺の後悔も消える――――。

 

 

あの時、ティアを助けられなかったことを――――。

 

 

 

「スターライト……」

 

 

この一発で全てが終わる――――。

 

 

 

「ブレイカーッッ――――!!」

 

 

 

放たれた砲撃………。

 

 

 

白銀のスターライトブレイカーが、クアットロに迫る。

 

 

 

 

「あああ………嫌あぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁ!!」

 

 

 

クアットロは必死に聖王の鎧で防ぐが――――。

ブレイカーの威力で鎧は木っ端微塵に砕かれ、クアットロに命中する。

 

 

そして……。

 

 

 

クアットロの存在を跡形もなく、消し去った。

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

 

全ての力を使い果たしてしまったフィルは、その場に倒れてしまう。

その瞬間クリスタルゲージは消え、あたしはフィルの元に駆けつけるが……。

 

 

 

「……う、うそ……よ、ね」

 

 

 

心臓が動いていない――――。

 

 

魔力反応も全くない……。

 

 

 

「……ねぇ……いつもの、冗談……なん、でしょう……」

 

 

こんなのって……こんなのって……ないわよ。

いくらみんなが助かったって、あんたが死んだら……。

 

 

起きてよ――――。

 

いつものように、あたしのことをティアって呼んでよ!!

 

 

「……フィ、ル」

 

 

涙が止まらない……。

 

 

本当に悲しいときは、涙を流さないなんて言うけど――――。

 

 

――――そんなのはうそ。

 

 

いくら抑えようとしたって、涙は収まらないじゃない……。

 

 

 

「うそ、つき……。みんな生きて帰ろうって、言ったじゃない……」

 

 

ふと、フィルのポケットから一つのカードが落ちた。

それは、クロスミラージュ。

 

未来のあたしが、フィルに託したデバイス――――。

あたしはそれを拾おうとしたその時……。

 

 

「……な、何、この光は!?」

 

 

 

クロスミラージュから、オレンジ色の強烈な光が発し――――。

 

 

光が収まると……。

 

 

「……うっ」

 

「……あっ……ああっ……」

 

 

 

フィルの瞳がゆっくりと開きだし……。

そして……。

 

 

 

「フィル!!」

 

 

あたしは、フィルのことを力一杯抱きしめる。

失いかけた大切な人。

 

 

もう、二度とあたしから離れないように……。

 

 

 

「……ごめんな。本当、俺はいつも……ティアのこと泣かせてばかりだよな」

 

「そう思うなら、二度とこんなことしないで……。お願いだから……あたしのそばから、いなくならないで……」

 

「……そう、だな。だけど、どうして俺は助かったんだ?」

 

 

そう、フィルの言うとおり、スパイラルを使ったら待ってるのは確実な死。

なのに、どうして……?

 

 

『それは、あたしが説明するわ』

 

 

再び、クロスミラージュから光が発し、空中に女性の姿を映し出す。

 

 

「ティア!!」

 

「えっ? あたし? どういうこと?」

 

 

あれ、どうみてもあたしよね?

いったい、何がどうなってるの!?

 

 

 

『混乱してるみたいね。簡単に言うと、あたしは未来でフィルと戦っていたティアナよ』

 

「つまり、未来のあたしということ?」

 

『そういうことね』

 

 

そっか……。

このクロスミラージュは、未来のあたしから託された物。

 

その思いが、これに宿っていたという訳ね。

 

 

 

「それより、なんで俺は生きてるんだ?」

 

『………そこにある、クロスミラージュを見て』

 

 

 

未来のあたしに言われて、クロスミラージュをみると、フレームはヒビだらけで、今にも砕けそうだった。

 

 

 

「これは!?」

 

『クロスミラージュに託した、あたしの魔力を、あんたの命に変換したの……。最後の力でね……』

 

「そういうことだったのね……」

 

 

本当に、フィルのことが好きだったのね。

自分の命を託せるほどに――――。

 

 

 

「だけど、それじゃお前は!!」

 

『心配しないで……。あんた達がクアットロを倒してくれたおかげで、未来は変わったわ。だから、あたしも、いなかったことになる。というより、無かった未来になるんだから、最初からいないのと同じね』

 

「そんな……」

 

『フィル、悲しまないで……。あたしは、むしろ感謝してるんだから。あんな未来にならないことにね。それと……』

 

『こっちのあたし、しっかりしなさい!! フィルはちゃんと告白したのよ。返事をするのが礼儀でしょう!!』

 

「ま、待て!! あれは俺が一方的に言ったことで……。あくまで、俺の片思いなんだし……」

 

 

まったく……。

この鈍感、こんなにあんたのことを思ってるのに、全く気づかないの――――。

 

 

 

「……片思いなんか……じゃないわよ……」

 

「ティア?」

 

「あたしも……あんたのことが、大好きなんだから……誰よりも大好きなんだから!!」

 

「だから、お願い……。さっきも言ったけど、あんな真似、二度としないで!!」

 

 

 

アグスタの時も……。

 

 

地上本部襲撃の時、フィルはたった一人で、ノーヴェ達を止めて戻ってきたときも……。

 

 

クアットロの策略で、瀕死の重傷を負ったときも――――。

 

 

 

そして――――。

 

 

スパイラルを使って……。

 

 

フィルがいなくなってしまった。

 

 

 

 

「もう……あんたがいなくなるのはいや。こんな悲しい思いをするのは……もう……いやなの」

 

 

さっきのことを思い出したら、また涙がポロポロと出てくる。

そんなあたしをフィルがそっと抱きしめてくれて……。

 

 

 

「さっきから……本当に泣かせてばかりだな、俺は……」

 

「いいの……。こうして、フィルがそばにいてくれれば……それだけで良いの……」

 

 

こうして、あたしを抱きしめてくれるだけで安心する。

あんたがあたしのそばにいてくれるって、そう思えるから――――。

 

 

 

「ティア……」

 

「フィル……」

 

 

 

 

あたしとフィルは、お互いに瞳を閉じ……。

 

 

そして……。

 

 

静かに………やさしいキスを交わした。

 

 

 

 

「何か……照れるわね……」

 

「そうだな……」

 

 

 

あたしもフィルも、少し落ち着きを取り戻し、今度はお互いに照れくさくなっていた。

でも、決して嫌な気持ちじゃない――――。

 

 

フィルもそれは同じで、表情を見れば分かる。

 

元から何となく表情で分かることがあったが、こうしてお互いの気持ちが両想いになり、さらに分かるようになっている。

 

 

 

『あの……あんた達、何、自分たちの世界に入ってるのよ!!』

 

《そうですよ!! まったく!!》

 

「「あっ……」」

 

『……ったく、こっちのあたし、フィルのこと頼んだからね!! 浮気しないように、ちゃんとあんたの魅力で繋ぎ止めておきなさい!!』

 

「分かってるわよ!! あたしだって、フィルをなのはさん達に渡す気は、更々無いわ!!」

 

 

 

あたしが知る限りで、フィルのことを好きなのは、なのはさんにフェイトさん、フォワードだってスバルにキャロ、そしてルーテシア。

 

八神部隊長は、一歩引いてる感じはするが、それでも好意は持っている。

 

 

 

「えっ? なんでなのはさん達が、そこで出てくるんだ?」

 

「『《はぁ……》』」

 

 

この鈍感、朴念仁は――――。

他人の心の痛みには敏感なのに、自分に向けられる好意には全く気づかない。

 

 

 

『あ、相変わらずなのね……あいつは』

 

《はい……だからティアさんも苦労したんです》

 

「そうね……。よく、両思いになれたって思うわ……」

 

 

きっと、こんな事がなかったら、このまま良い親友で終わっていたわね。

あたしが好きだったって事に、全く気づかなかったくらいだし――――。

 

 

 

『そのおかげで、誰にも取られなかったんだから、結果オーライということにしましょう』

 

「……そうね」

 

《そうですね……》

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

『そろそろ……時間ね……』

 

 

 

そう言うと、未来のあたしの身体が段々透けて、今にも消えかけていた。

 

 

 

「ティア……」

 

「未来のあたし……湿っぽいのは無しよ」

 

『ふふっ、そうね。あんたがちゃんと、女に磨きをかければ、あたしなんてすぐに抜けるわよ』

 

 

悔しいけど、今のあたしはまだまだ未来のあたしには追いついていない。

 

 

「そう出来るように頑張るわよ。あたしには、大好きな人が……フィルがいるんだからね!!」

 

「ティア……」

 

『じゃあね……。フィル、あたし……』

 

 

 

そして――――。

 

未来のあたしは、完全に消えてしまった。

 

 

 

 

*     *    *

 

 

 

 

「それにしても……いろいろあったな……」

 

「どうしたの? 何考えてるの?」

 

「事件が終わってからのこと……思い出してたのさ……」

 

 

 

二人でベッドに座っていた俺たちは、事件が終わってからのことを思い出していた。

 

 

 

JS事件が終結し、俺はブラスターとスパイラルの影響で入院をしていたが、退院したその日、ティアがとんでもない爆弾発言を、みんなの前でしてくれた。

 

 

『あたしとフィルは恋人同士ですので、誰も取らないでくださいね!!』

 

 

普段のティアじゃ、絶対あり得ない行動だ。

 

言い終わった後、相当恥ずかしかったみたいだけどな。

 

最初はかなり驚いていたけど、みんな祝福してくれて、六課を上げて盛大なパーティーまでしてくれた。

おまけに、はやてさんが変に気を利かせて、次の日から俺とティアを同じ部屋に変更していた。

荷物も俺とティアが訓練中に、ロングアーチのみんなで引っ越しをしていたし。

 

あの時は、さすがに驚いたぞ。

 

そのおかげで、俺たちは一緒の部屋で過ごしている。

 

 

 

「あれは、さすがに驚いたわよ。部屋に戻ったら、あたしの荷物が全くないし……」

 

「確かにな……。俺の場合は、なんでティアの荷物が、ここにあるんだって思ったからな……おまけに、下着まで落ちていたし………」

 

「……フィルのえっち。でも、どうだった? あたしも、ああいうのも、ちゃんと付けるんだよ……」

 

 

 

あの時落ちていた下着は、かなり過激な物もあった。

通常の下着だけじゃなく、黒のブラやパンツまであったし――――。

 

 

 

「うーん、下着も良いんだけど、やっぱり……」

 

「あっ……」

 

 

 

俺は、ティアを押し倒し……。

 

 

 

「ティア自身のほうがいいな……。こうして、ぬくもりを感じられるしな……」

 

「うん……。あたしも……そうだよ……」

 

 

 

そう言って、ティアはギュッとしがみついてきた。

 

 

 

「ティア……いいか……」

 

「………いいよ。いっぱい、フィルを感じさせてね……」

 

 

 

俺はティアに、そっと唇を重ねる。

 

 

 

「んっ……。フィルとのキス、やっぱり落ち着くね」

 

「だったら……もっとしないとな」

 

「もう……。ばか……」

 

 

 

ティアは少し怒ったように言ったが、拒むことはしなかった。

再び唇を重ね、今度は貪るようにキスをする。

 

 

息継ぎを繰り返し、互いが満足するまでキスを繰り返していた。

同時に、俺は、シャツの中に手を入れブラを外し、ティアの胸をまさぐる。

 

 

 

「あっ……んっ……」

 

 

ティアの喘ぎ声が、女性特有の甘い匂いが、俺の理性を溶かしていく。

俺は、ティアの身体全てを愛し――――。

 

 

そして――――。

 

 

 

「きて……フィル……」

 

 

 

――――月明かりの下。

 

 

二人の身体は重なり、気持ちも一つになった。

 

 

その後も、互いを幾度も求め合い――――。

 

 

その夜は……。

 

 

ベッドのスプリングが軋む音が、止むことはなかった――――。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

翌日、俺とティアは、なのはさんから休暇をもらうことが出来た。

ロードサンダーも修理が終わり、試運転も兼ねてツーリングする事にした。

 

目的地はとりあえず、クラナガンで良いかな。

 

 

 

「それにしても、気持ちいいわね」

 

「そうだな……。あのな、ティア」

 

「んっ、何?」

 

「その……なんだ。そんなに密着するとだな……」

 

「胸が当たってるって、言いたいんでしょう……」

 

「………ああ」

 

「別に良いじゃない。あたしの胸なんて、何度も触れてるんだから……」

 

「そ、そう言う問題じゃなくてだな……」

 

 

 

ティアの胸が俺の背中に当たる度、理性がガリガリ削られているんだ。

正直蛇の生殺しだぞ……。

 

 

 

「……よかった」

 

「えっ?」

 

「ちゃんと、あたしのこと、女の子として意識してくれてるんだ」

 

「当たり前だろ……。ティアは俺の大切な……彼女なんだから……」

 

「ありがとう……フィル……すごく嬉しい……」

 

《相棒、ティアナさん、ラブコメってる所悪いんですけど、ちゃんと運転してください!!》

 

「す、すまん!! サンダー」

 

「ご、ごめん!!」

 

 

そんなこんなで色々あったが、何とかクラナガンに着くことが出来た。

サンダーは道中、散々俺たちのことをからかっていたがな……。

 

 

クラナガンに着いた俺たちは、ウインドショッピングをしたり、アイスを食べたり、出店でたこ焼きが売っていたので、それを買って食べたりした。

 

ティアが俺に、たこ焼きを食べさせてくれるとき、顔を真っ赤にしていた。

普段、部屋でやるのは大分慣れたけど、やっぱり外だと照れてしまう。

 

 

そして、時間も経ち、夜になると、俺たちはクラナガンの近くにある海岸に来ていた。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「相変わらず……。ここは、海が綺麗ね………」

 

「ああ……」

 

 

 

この場所は、あたし達しか知らない秘密の場所。

海が見たくなったとき、よくフィルと一緒にここに来ていたわね。

 

 

 

 

「……ティア」

 

「何?」

 

「俺たちは六課が解散すれば、それぞれの道に進んでいく」

 

「うん……」

 

「俺もティアも、執務官志望だけど、ティアはフェイトさんの所で、俺はクロノ提督の所でやっていくことになる」

 

「そう……なのよね……」

 

 

執務官補佐は、二人までなので、フェイトさんはシャーリーさんとあたしで精一杯。

そこで、ハラオウン提督が、フィルの事を世話してくれることになり、六課解散後はクラウディア所属になる。

 

あたしもフィルも所属が違うので、執務官試験に合格し、コンビを組めるようになるまでは、一緒にいる時間はとれない。

 

 

 

「だから……」

 

 

フィルが取り出したのは、一つの小さな箱。

フタを開けると、そこにあったのは……。

 

 

銀色に輝く指輪―――。

 

 

 

「これ……もしかして……」

 

「執務官になり、コンビ組めるようになったら……俺と……」

 

 

 

そして、あたしの左薬指に――――。

 

 

 

「結婚して欲しい……」

 

 

 

銀色に輝く指輪を嵌めてくれた――――。

 

 

 

「あっ……」

 

 

 

あたしは嬉しさで、涙をこらえることが出来なかった。

初恋はかなわないって言うけど、それは違った。

 

 

 

「これ……。もう……返さないからね……」

 

 

 

あたし、絶対執務官試験一発で合格するから、一緒に頑張って合格しよう――――。

 

 

そして……。

 

 

――――ずっと、一緒にいようね。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

二年後

 

 

「どうしたんだ? 昔の写真なんか見て」

 

「……ちょっとね。結婚式の時のやつが出てきたから……」

 

 

 

ティアが見ていたのは、俺たちの結婚式の写真だった。

一年前、俺とティアは猛勉強の末、執務官試験に一発で合格した。

 

正直、あの難関試験を一回で受かるとは思っていなかった。

クロノ提督もフェイトさんも喜んでくれたのだが、優秀な補佐がいなくなるって言って、引き止められそうになった。

 

俺たちはすぐにコンビを組み、地上の事件を解決していった。

白と黒の銃使いコンビなんて言われるようになって、仕事も増えてしまったけど……。

 

そして半年前、ようやく旧六課メンバーと、元ナンバーズメンバーと、レジアスの親父さん達のスケジュールの合う日が出来て、結婚式をすることになった。

 

 

 

結婚式は、かなり内容の濃い物になった。

 

 

 

レジアスの親父さんがスピーチをしてくれたんだけど、緊張していて、普段の威厳が全くなかったり……。

 

はやてさんが俺たちの結婚式のために、料理とウェディングケーキを作ってくれたり……。

 

ウェンディとノーヴェが、相変わらずのどつき漫才を始めてしまったり……。

 

スバルが俺たちに泣きついてしまって、それをギンガさんとチンクに止められたり……。

 

エリオとルーテシアとキャロが、三人で一生懸命、歌を歌ってくれたり……。

 

なのはさんとフェイトさんが、一言ずつお祝いの言葉をくれて、ティアと俺が泣きそうになってしまったり……。

 

 

 

そして――――。

 

 

 

俺とティアはみんなが見守る中で、誓いの言葉を交わし、キスをしたんだ。

 

 

 

 

この一枚の集合写真………。

 

 

 

これには、みんなの笑顔が写っていた。

 

 

素直じゃないが、似たもの同士の二人……。

 

 

そんな、二人が結ばれ……。

 

 

幸せを手に入れた――――。

 

 

 

「これからもよろしくね……。あたしの素敵な旦那さん……」

 

皆様、現在自サイトのみで公開しています『とある休日シリーズ』になりますが、こちらでも見てみたいという方がいらっしゃいましたら、アンケートにお答えいただけたらと思います。

  • 見てみたいので公開してほしい
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  • どちらでもいい
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