魔法少女リリカルなのはStrikerS ~ Remember my heart ~ 作:アルフォンス
基本は本編の流れに沿ってますが、フィルは誰ともつきあってません。
パーティーが終わり、みんなそれぞれの部屋に戻っていたが、何となく眠れなかったので、俺は外に出て風に当たっていた。
「うーん……良い風だな」
今までクアットロのことで、ずっと戦っていたからな……。
こんな気持ちでいられるなんて思わなかった。
「こんな所で、何してるの?」
「なのはさん……」
俺が夜風に当たっていると、なのはさんがやってきた。
「ちょっと……眠れなくて、夜風に当たってたんですよ。なのはさんは?」
「わたしも一緒。何か興奮して、眠れなくてね」
「ヴィヴィオは?」
「部屋で眠ってるよ。フェイトちゃんと一緒にね。だけど、合い鍵も持ってないから、部屋に入れないんだ」
「あらら……」
フェイトさんらしくないミスだな。
仕事で、よっぽど疲れちゃったのかな。
* * *
「最近……どうしたんですか?」
「さっきも……普段なら、あんな事言わないのに、何か……あったんですか?」
いつもと、同じ様にしていたつもりだったのにな……。
隠しきれない……な。
「ねぇ、フィル……。パーティで、わたしに言ってくれたこと……覚えてる?」
「ええ……」
「あの時……自分の結婚のことで、フィルに相談したよね。だけど、フィルは相手が、外見だけで見るような人なら、結婚なんかしない方が良いって言ったよね」
「忘れてください……。あれは……俺の勝手な思いですから……」
忘れられないよ……。
だって、あの言葉は本当に嬉しかったんだよ。
ティアナ――――。
わたし、あなたにずっと遠慮していたけど……。
ごめんね……。
これ以上、自分に嘘をつきたくないから……。
嫌われたっていい……。伝えよう。
自分の本当の思いを――――。
「………すき……フィルが好き!! 大好き!!」
「好きなの!!」
――――とうとう言っちゃった。
「でも……だめだよね」
フィルは亡くなったティアナのことが好きだから、この気持ちは抑え込んでしまおうって思ってた。
―――――でも、無理だった。
ゆりかごで、フィルが死ぬかもしれないと思ったときから、ずっと自分の思いを抑えきれなくなっていた。
自分の大好きな人がいなくなってしまう。
そう思ったら、胸が張り裂けそうになる。
気持ちを隠せば隠すほど、胸がどんどん苦しくなって……。
ティアナのことが好きだって、知っているのに……。
ごめんね……。
わたしの思いなんて、あなたにとって邪魔なだけだよね……。
* * *
「……なのはさん」
ずっと考えていた――――。
なのはさんと出会い、今まで一緒に戦ってきて色んな事があった。
辛いこともあったけど、それ以上に楽しい思い出があった。
ティアとの模擬戦で、お互いの意見をぶつけ合ったこと。
ヴィヴィオが来て、一緒に料理をしたり、ご飯を食べたりしたこと。
ヴィヴィオがクアットロに誘拐されて、俺となのはさんが一緒に助けたこと。
そして――――。
ゆりかごで死にかけて、意識が戻ってから、なのはさんは本当に俺のためにいろいろしてくれた。
身の回りの世話だけでなく、精神的に不安定になっていたときも、ずっとそばにいてくれた。
そんな思い出の中心に、いつもなのはさんがいた。
何よりも、なのはさんと一緒にいるとあたたかい気持ちになれた。
そんななのはさんだから――――。
「俺も……なのはさんのことが……好きです」
「で、でも、それじゃティアナは……」
「ティアのことは、俺にとって大切なパートナーでした。大切だし、好きだったけど、それは恋人としてでははないです」
今なら分かる………。
あのときティアが俺に幸せになってほしいって、言った意味が……。
「いつも笑顔でいてほしいと思うのも、そばにいてほしいって思うのも……なのはさん……あなただけです……」
「フィル……」
* * *
フィルの言葉に、わたしは今度は、嬉し涙を押さえられなかった。
こんなにも強く、誰かに何かを、望んだ事なんてなかった。
これが好きということ……。
これが……恋なんだ……。
「フィル……」
「今日は……離れたく……ない…」
「なのはさん……」
やっと、フィルに自分の気持ちが伝わったんだ。
今日は、ずっと一緒にいたいから――――。
* * *
「そういえば……何で、俺のことが好きになったんですか?」
「ん……」
「表裏がないところかな」
「そうですか? かなりありますよ。みんなのこと、かなり騙してましたし……」
「騙してたといっても、それはスカリエッティに、ばれないようにするためだよね。普段のフィルは、正直だよ。ヴィヴィオもすごく懐いているし……」
「わたしには無いものだから……すごく憧れる……」
「聞いてくれるかな……わたしの話……」
なのはさんは自分の幼少期のことを語り始めた。
かつて父親が事故にあって、それで家族が大変なことになり、自分も何か手伝えることはないかって頑張ったのだが、みんな大丈夫だからと、自分は力になれなかったこと。
せめて自分が出来ることは、良い子でいること。
それで、それからは良い子でいることにしていた。
そして、いつの間にか、本音でぶつかることが、言葉で話すことが怖くなってしまっていた。
だから、あの時、自分の中で思っていても、ティア達に伝え切れていなかった。
フェイトさんやはやてさんにも、相談出来ずに……。
「だけどね。もう、良い子でいるのはおしまい……」
「フィルのことが、本気で好きだから……」
「なのはさん……」
俺はなのはさんをぎゅっと抱きしめ、まっすぐに瞳を覗き込むと……。
なのはさんは瞳を閉じて……。
そして、俺は……。
なのはさんの唇に、キスをする。
最初は唇が触れるだけのキス。次第に互いを求め合うキスになり、息継ぎを繰り返しながら、何度も互いを求め合う。
キスが終わったときには、互いの間に銀色の糸が出来上がっていた。
「抱いて……フィル……あなたのぬくもりを……もっと感じたい……」
「なのはさん……」
「なのは、って呼んで、フィル……」
「なのは……」
「フィル……」
俺は、なのはの上着を脱がし、ブラの上からそっと、形の良い胸に触れる。
「あっ……んっ……」
なのはの甘い声に、俺の理性が段々と崩れていくのが分かる。
「えへへ……。わたし、胸には自信あるんだよ」
「うん……。大きいし……それに、やわらかい」
「いっぱい……いっぱい触って良いんだからね。わたしの胸も身体も……全部、フィルのなんだからね」
その言葉に胸がいっぱいになる。
ここで遠慮するのは、却って失礼だ。
俺は、そのままブラを取り、なのはの身体を隅々まで愛し――――。
「……はぁ……はぁ……もう……いいよ。きて……フィル」
そして、俺たちは……。
一晩中、お互いの気持ちを確かめ合った。
* * *
「あ、目が覚めたんだ。おはよう、フィル」
あれから、わたしとフィルは何度もお互いの気持ちを確かめ合った。
初めてで痛かったけど、フィルに抱かれてとっても嬉しかった。
気持ちが通じ合うって、こんなにあたたかいんだね――――。
「あ、ああ、おはようございます。なのはさん……」
「むぅ―――」
「えっ? どうしたんですか?」
どうしたんですか? じゃないよ!!
昨日は、ベッドの上じゃ、ちゃんとなのはって呼んでくれたのに!!
「なのはさんじゃなく、なのはだよ!! それと敬語は禁止!! もう一度!!」
「……おはよう、なのは」
「うん♪ おはよう、フィル」
やっぱり、大好きな人に名前で呼んでもらうっていいよね。
お願いついでに、もう一つ甘えちゃおうかな♪
「じゃあ、おはようのキス~♪」
「えっ?」
「………して……くれないの……」
フィルは、戸惑ってなかなかキスをしてくれない。
もう……。照れ屋なのは分かるけど……。
こうなったら――――。
「んっ!? んんんっっ!!」
わたしのほうから、フィルにキスをしちゃった。
だって、フィルからしてくれないのが悪いんだからね――――。
「あ……あの……なのは。そんなことされると、俺も理性が持たなくなるから……」
「……いいよ。そのときは、またいっぱい……しよ……」
「なのは……」
「フィル……」
今度は、フィルの方からキスをしてくれた。
でも、キスだけじゃ満足しきれなくなり、わたしとフィルは、またベッドで一つになる。
フィル、いっぱい……いっぱい抱きしめてね♪
* * *
「おはよう、なのは」
「おはよう、フェイトちゃん」
「なのは、昨日はごめんね。部屋の鍵、私が持っていたから、入れなかったでしょう」
「大丈夫だよ。昨日はフィルの部屋に泊まったから……」
「ぶはっ!!」
しまった!! 話の流れで思わず言っちゃった。
フェイトちゃんも、飲んでいたコーヒーを吐いちゃったし……。
「なのは……どういうことか、話してくれるよね」
「にゃ、にゃははは……」
フェイトちゃんのあまりの迫力に、わたしはもう隠せないと悟った。
そして、わたしは昨日のことを、フェイトちゃんに話した。
「……なるほどね。やっと、言ったんだね……」
「えっ? もしかして、フェイトちゃん……」
「知ってたよ。でも、これはなのはが自分で、気づかなきゃいけないことだからね……」
「フェイトちゃん……」
「でも、良かったね。両思いになれて……」
「うん……」
駄目だと思っていた恋――――。
フィルと両思いになれて、本当に嬉しかった。
だって、こんなに優しい気持ちになれるんだから――――。
フェイトちゃんと話していたら、ヴィヴィオが起きてきて、こっちにやってきて……。
「なのはママ……」
「ヴィヴィオ!! ただいま」
「おかえり……ねぇ、フィルパパは?」
「あっ……その……えっと……」
わたしがなんて言ったらいいか困っていたら、フェイトちゃんが……。
「ヴィヴィオ。フィルなら、今日なのはママの部屋に来てくれるって」
「本当!!」
「ちょ、ちょっと、フェイトちゃん!!」
「本当だよ。だから、今日一日良い子でいようね」
「うん!!」
「なのは、今日私は、泊まりの出張に行くから、好きにして良いよ。じゃあね!!」
「フェイトちゃん!! もう……」
絶対嘘だ。こんな急にそんな仕事が、入るわけ無いじゃない。
でも……ありがとう……。
* * *
「こんばんは、ヴィヴィオ」
「あっ、フィルパパだ!!」
「パーティーの時、一緒にいてあげられなかったからね。今日は一緒にいよう」
「わーい!!」
実は、ここに来る途中、フェイトさんに会って……。
『今日は戻らないから、なのは達と一緒に過ごしてね』
そう言ってたけど、明らかにおかしい。
もしかして、フェイトさん。俺たちのこと――――。
「いらっしゃい、フィル」
「お邪魔します……」
「違うよ」
「えっ?」
「ただいまだよ。これから、わたし達は『家族』になるんだから……」
家族か……。
そうだよな……俺もヴィヴィオのパパになるんだからな。
「……そうですね」
「それと、前も言ったけど、普段は敬語は禁止!! 家族の間で、そんな他人行儀はしないの!!」
「きんし――!!」
なのはとヴィヴィオの二人に、そう言われてしまったら、敬語は止めるとするか。
「それじゃ、食べてね」
「わーい!!」
なのはが用意していたのは、ヴィヴィオの大好きなハンバーグを始め、クリームシチューと野菜サラダといったメニューだった。
俺も、ヴィヴィオの大好きなケーキを作ってきた。
「「「いただきます!!」」」
「はい、ヴィヴィオ。あーん」
「あーん」
「美味しい?」
「うん!! おいしい!!」
なのはがヴィヴィオに、ハンバーグを食べさせてあげている。
うん、こういった光景は良いよな……。
「ヴィヴィオ、俺のも食べるか?」
「うん!! 食べる!!」
「じゃ、あーん」
「あーん」
「美味しいか?」
「おいしいっ!!」
ヴィヴィオは、俺が食べていたピーマンを食べた。
実は、苦手だったピーマンも大分克服してきている。
そうやって、娘が成長しているのを見ると、すごく嬉しかった。
「さて、そろそろ、ケーキも出そうかな」
「「ケーキ?」」
「ああ、さっき持ってきた箱はパウンドケーキさ。なのは達と食べようと思ってね」
俺たち三人はパウンドケーキを食べ、その後は三人で一緒にゲームしたり、テレビを見たりして過ごした。
夜も遅くなり、俺はそろそろ戻ることにしたのだが……。
「フィルパパ……帰っちゃうの?」
「もう、遅いしな。なのはママにも悪いしね」
「そんなこと無いよ!! お願い、今日はヴィヴィオと一緒に、寝てほしいなぁ……」
「パパ………」
二人のお願いに、俺はNOとは言えなかった。
「それじゃ、今日は三人で一緒に寝ようか」
「「わーい」」
* * *
「ヴィヴィオ……寝ちゃったね」
「そう……だな」
あの後、わたしとフィルとヴィヴィオの三人で寝ることになり、ヴィヴィオが眠るまで、フィルが絵本を読んであげていたのだけど、それでも、眠る気配がなかったので、わたしが子守歌を歌ってあげて、ようやく眠ってくれた。
「こうしてみると、本当かわいいよな。ヴィヴィオ」
「うん……。ねぇ……フィル……」
「ん、何?」
「フィルは、これからどうするの? 六課が解散してから……」
「二つ考えてるんだ。一つは、このまま管理局に残って、身体が治り次第、執務官か捜査官を目指していく……」
それは止めてほしかった――――。
もう、フィルにあんな目にあってほしくない。
愛する人が死にかけるのを見るのは、もういや!!
「もう一つは……管理局を辞めて、もう一つの夢だった喫茶店を開く」
管理局を辞めても、フィルだったら大丈夫だよ。
もし、本当にやめてくれるのなら――――。
「……それだったら、わたしと一緒にやらない。喫茶店……」
「なのは?」
「正直ね。わたしも、今までの無理がたたって、そう長くはやれないと思うの。わたしの思いは、ティアナやスバル達にちゃんと伝わったし、ティアナ達なら、いつかわたしを超える魔導師になれるから……」
「……本当に、それでいいのか? 空を飛ぶのは、なのはの生き甲斐だったじゃないか!!」
確かに、空を飛ぶのはわたしの生き甲斐だったよ。
でも、それ以上に大切なことだってあるんだよ――――。
「なのは……俺は……」
「勘違いしないでね。これは前から考えてたことなの……」
多分……やれても、後、4~5年くらいだと思う。
だったら、完全に駄目になる前に、辞めようと思ったんだ。
ヴィヴィオのためにもね……。
「分かった……そこまで思っているなら、もう止めないよ」
「ありがとう……」
これはちょうど良い機会なのかもしれない。
フィルも、わたしも限界以上のことをしてきたのだから――――。
「じゃ、そのために一生懸命頑張らなくちゃな……」
「そうだよ、がんばってね。フィル……」
「ああ……俺には、こんなにかわいい彼女がいるんだからな……」
「……ばか」
フィルのばか……。
そんなこと言ったって、なにも出ないんだからね。
* * *
4年後
カランコロン……。
「いらっしゃいませ!!」
「おじゃまするっすよ!!」
「おそいよ、ウェンディ!!」
「いやぁ、すまないっす。道が混んでいて……」
「もう、みんな来てるわよ」
店の中にいたのは、スバル、ティアナ、そして、N2Rのメンバーと、聖王教会に世話になっているオットーとディードだった。
「ったく、相変わらずだな。お前の、そのいい加減さは……」
「ノーヴェにいわれたくないっす」
「何だと!!」
「お二人さん……店の中で喧嘩は止めてくれるかな……」
「ごめん……」
「ごめんっす……」
ノーヴェとウェンディの喧嘩を止めたのは、この店のマスターである俺だった。
六課解散後、俺となのはは管理局を退職し、その時に、二人は籍を入れ、なのはの両親に挨拶にいったのだ。
最初は、翠屋で長期の修行をするつもりだったが、未来やこっちで学んできた基礎があり、修行は短期間で終わらすことが出来た。
その後、師匠でもある高町桃子さんのお墨付きをもらい、二人でミッドチルダに喫茶店を出したのだ。
店の方も、なのはのネームバリューが効いていたおかげで、お客さんがなのはを見たさにやってきた。
段々となのはの力でなく、味で評価されてきて、最近ではよく雑誌の取材を受けるようになっていた。
そして、この店はティア達のたまり場にもなっていた。
「あいかわらず、大繁盛ね。今日だって、事前に予約してなかったら、大変だったんだから……」
「すまんな、ティア。夜だと、比較的大丈夫なんだけどな……」
「あんたが謝ることはないわよ。いいじゃない、繁盛してるのは……」
「モグモグ……そうだよ……モグモグ……」
「スバル……食べるか、しゃべるか、どっちかにしろ」
「だって、あたし普段は滅多に、これないんだから!!」
このメンバーが集まれるのは、あまりない。
大体スバルが、緊急出動でいないことが多いからな……。
「まぁまぁ……いいじゃない。誰かに迷惑をかけてる訳じゃないしね」
「なのはさん!!」
「みんな、今日は楽しんでいってね。わたしもフィルも、腕によりをかけて作るからね」
「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」
* * *
「ねぇ……フィル」
「何だ? なのは」
「この店やって……本当に良かったね……」
「ああ……」
喫茶店 『Amour eternel』
地球のフランスの言葉で、永遠の愛――――。
その想いを込め、俺たちはこの店の名前にした。
この場所は、俺たちの夢の場所でもある。
みんなが楽しく、俺の作ったケーキや料理をおいしく食べてくれる。
そして、笑顔になってくれるのが、何より嬉しい。
ここでは、戦闘機人だからとか、そんなのは関係ない。
それは、スバル達を見ていれば、よく分かる。
そして……。
「いらっしゃいませ~~~」
「あっ、ヴィヴィオ!! 今日も手伝いなの?」
「はい、パパとママのお手伝いです」
ヴィヴィオはこの喫茶店の制服に着替えて、ウェイトレスをしていた。
学校が終わると、こうして手伝ってくれるのだ。
* * *
「そういえば、この雑誌に載ってたぜ。かわいい母娘と素敵なマスターがいるって……」
「何だそりゃ? かわいい母娘は分かるが……」
「フィル、少しは自覚するっす。視線に気づかないんっすか?」
ここに来ている女性客の半数は、フィルの方を見ていた。
相変わらず、この方面には疎いままである。
「……ノーヴェ」
「は、はい!!」
「その雑誌……見せて……」
わたしはノーヴェから雑誌を取り上げると、その記事の所を確認していた。
「な、なんか……なのはさん、こわいぞ……」
「ノーヴェ、なんでそんな余計な物を持ってきたのよ!! なのはさんにそんな話したら、こうなるって分かってたでしょう!!」
「ごめん、本当に悪かった………」
「ティア!! そんなこと言ってる場合じゃないよ!! 見てよ、なのはさんを……」
「あっちゃぁぁぁ………」
「……そう……それで、女性客が増えたのね……」
わたしが、不機嫌オーラ全開でいたとき……。
「なのは」
「なに、ん……んんん!!」
「「「「「「「「ああっ!!」」」」」」」」
フィルがいきなり、みんなの見ている前で、わたしにキスをする。
「……もう、いきなり、なにするの!!」
「そんなの気にするなって……俺が、愛してるのは、なのはだけだから……」
「……もう……ばか」
でも、わたしもだよ――――。
愛してるよ……フィル……。
* * *
「ふぅ……やっと仕事が終わったな」
「そうだね……」
「まったく、パパ、ママ、あんな事もうしないでよ!! 店中でキスをするなんて、リオとコロナに見られたら、わたし、また学校でからかわれるんだからね!!」
「ごめん、ごめん。だけど、あんな雑誌を見たら……」
雑誌にはフィルのことが紹介されていた。
美味しいケーキを作る、イケメンマスター。
そんな風に書かれていて、店に来ていた女性客は、大半フィルのことを見ていた。
「もう、ママがパパのことを、大好きなのは分かるけど……ヤキモチはみっともないよ♪」
「ヴィヴィオ!!」
* * *
「ごちそうさま。パパ、ママ、ちょっと外で魔法の練習してくるね」
「ちょっと待って、ヴィヴィオ」
「どうしたの、ママ?」
「ヴィヴィオも、もう4年生だよね」
「そうだけど……」
「実はな、なのはと話し合って、そろそろ、デバイスを渡していいんじゃないかって?」
「ほ……ほんとっっ!?」
そう言って、パパが持ってきてくれた箱を開けてみると……。
「これ……」
「ああ……」
箱の中に入っていたのは、銀色に輝く銃型のデバイス。
パパの相棒のプリムだった。
「どうして!? プリムは、パパの大切なデバイスなのに!!」
プリムは、パパにとって命と同じくらい大切なデバイス。
そんな大切な物をどうして――――。
「だからだよ。だからこそ、大切な娘のお前に託したいんだ。俺は4年前の傷が元で、魔法が殆ど使えなくなってしまった……だから、お前に全てを託したいんだ……」
「それに、ヴィヴィオの聖王の力は、並半かな物じゃ耐えきれないの。だけど、プリムなら、大人になっても使ってあげられるから……」
「パパ……ママ……」
「だから、受け取ってくれ……。俺となのはの思いを……」
パパは箱からプリムを取り出し、わたしに渡してくれた。
「……ありがとう……パパ……ママ……大切にするね」
「そうしてくれ。プリム、今日からヴィヴィオがお前のマスターだ。よろしくな!!」
《分かってます、ヴィヴィオ、これからよろしくお願いしますね》
「うん!! よろしくね、プリム!!」
「ちなみに、あれも使えるように、データは組んでおいたから、後は自分が使いやすい形にするだけだ」
「実は、ずっと前から決めてるんだ。デバイスを持ったら、これにしようって、ずっと思ってたんだ!!」
* * *
「マスター認証……ヴィヴィオ・高町・グリード」
「術式はベルカ主体のミッド混合ハイブリッド……」
「いくよ、プリム」
《いつでも良いですよ、ヴィヴィオ!!》
「プリム、セーーーット・アーーーップ!!」
セットアップがすむと、そこにいたのは聖王モードの姿をしたヴィヴィオだった。
しかも、何故か俺と同じく銃型のデバイスも持っていた。
「な、な、な、な!?」
「「やった!! 大成功!!」」
セットアップの成功に、なのはとヴィヴィオは、ハイタッチをしていた。
「なのは、お前、このことを知ってたのか?」
「うん、聖王モードのことは話したよね」
「それは知ってる。何度も見ているしな。だけど、何でわざわざ、おれと同じ銃を……」
「実はね、ストライクアーツやってたんだけど、ある時、フィルのことを……未来でのことを、ティアナから聞いて、それからティアナに、銃の使い方を教えてもらってたの。フィルのようになりたいからって……」
「そうだったのか……。なんか、複雑な気持ちだ」
ヴィヴィオはストライクアーツをしていたから、てっきりスバルのような機能を選ぶかと思ったけど、まさか俺と同じ射撃タイプになるとは……。
「パパ、勝手にティアナさんから教わっていたこと、ごめんなさい。でも、どうしてもパパのようになりたかった。だから、ティアナさんに教えてもらってたの……」
「別に構わないよ。なのはには話してたんだろ?」
「うん、ママも協力してくれたの」
「ったく、なのはも人が悪いぜ。俺に黙っているなんてよ……」
「これでおあいこだよ。フィルがヴィヴィオにプリムを渡すなんて、聞いてなかったんだからね!! さっき聞いて、びっくりしたんだから……」
「確かにな。俺もなのはとヴィヴィオを驚かしたかったしな……」
「「「あははははは!!」」」
「頑張れよ、プリムを使いこなすようになるまで、大変だと思うけど、困ったら俺やなのは、もしくは師事しているティアに相談しろよ」
「うん!! ありがとう。パパ、大好き!!」
そう言ってヴィヴィオは、俺の胸に抱きついてきた。
不謹慎なんだけど、その姿だと、ヴィヴィオって、結構胸あるんだよな……。
以前も似たようなことがあって、なのはがすっごくヤキモチ焼いたんだよな。
相手はヴィヴィオなのにな。
「ああ――――!! ヴィヴィオ、ずるい!!」
「だったら、ママもパパに抱きつけばいいじゃない。いつもしてるんだから♪」
ヴィヴィオの言葉に、なのははポンと手を叩いて、名案と言わんとばかりに……。
「それもそうだね。えい♪」
今度は、なのはまで俺の背中に抱きついてくる。
しかも、自分の胸をしっかりと当ててきてるし――――。
「な、なのはまで……。ったく、この甘えんぼさん……」
「そうだよ、わたしもヴィヴィオも甘えん坊だもん♪」
「だよ♪」
ヤキモチ焼きで、甘えん坊の年上のかわいい奥さん。
母親に似て、やっぱり甘えん坊のかわいい娘。
そんな二人に囲まれて、俺は幸せをかみしめていた。
願わくは、俺たちの三人の愛が、永遠に続くように――――。
皆様、現在自サイトのみで公開しています『とある休日シリーズ』になりますが、こちらでも見てみたいという方がいらっしゃいましたら、アンケートにお答えいただけたらと思います。
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見てみたいので公開してほしい
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まあまあ興味がある
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どちらでもいい
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興味がないので公開はしなくて良い