魔法少女リリカルなのはStrikerS ~ Remember my heart ~   作:アルフォンス

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if endingシリーズです。
基本は本編の流れに沿ってますが、フィルは誰ともつきあってません。


if ending なのは

パーティーが終わり、みんなそれぞれの部屋に戻っていたが、何となく眠れなかったので、俺は外に出て風に当たっていた。

 

 

「うーん……良い風だな」

 

 

今までクアットロのことで、ずっと戦っていたからな……。

こんな気持ちでいられるなんて思わなかった。

 

 

「こんな所で、何してるの?」

「なのはさん……」

 

 

俺が夜風に当たっていると、なのはさんがやってきた。

 

 

「ちょっと……眠れなくて、夜風に当たってたんですよ。なのはさんは?」

「わたしも一緒。何か興奮して、眠れなくてね」

「ヴィヴィオは?」

「部屋で眠ってるよ。フェイトちゃんと一緒にね。だけど、合い鍵も持ってないから、部屋に入れないんだ」

「あらら……」

 

フェイトさんらしくないミスだな。

仕事で、よっぽど疲れちゃったのかな。

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「最近……どうしたんですか?」

「さっきも……普段なら、あんな事言わないのに、何か……あったんですか?」

 

 

いつもと、同じ様にしていたつもりだったのにな……。

隠しきれない……な。

 

 

「ねぇ、フィル……。パーティで、わたしに言ってくれたこと……覚えてる?」

「ええ……」

「あの時……自分の結婚のことで、フィルに相談したよね。だけど、フィルは相手が、外見だけで見るような人なら、結婚なんかしない方が良いって言ったよね」

「忘れてください……。あれは……俺の勝手な思いですから……」

 

 

 

忘れられないよ……。

だって、あの言葉は本当に嬉しかったんだよ。

 

ティアナ――――。

 

わたし、あなたにずっと遠慮していたけど……。

 

ごめんね……。

 

これ以上、自分に嘘をつきたくないから……。

 

嫌われたっていい……。伝えよう。

 

 

自分の本当の思いを――――。

 

 

 

「………すき……フィルが好き!! 大好き!!」

「好きなの!!」

 

――――とうとう言っちゃった。

 

 

「でも……だめだよね」

 

 

フィルは亡くなったティアナのことが好きだから、この気持ちは抑え込んでしまおうって思ってた。

 

 

―――――でも、無理だった。

 

 

ゆりかごで、フィルが死ぬかもしれないと思ったときから、ずっと自分の思いを抑えきれなくなっていた。

 

自分の大好きな人がいなくなってしまう。

 

そう思ったら、胸が張り裂けそうになる。

気持ちを隠せば隠すほど、胸がどんどん苦しくなって……。

 

 

ティアナのことが好きだって、知っているのに……。

 

 

ごめんね……。

わたしの思いなんて、あなたにとって邪魔なだけだよね……。

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「……なのはさん」

 

 

ずっと考えていた――――。

 

なのはさんと出会い、今まで一緒に戦ってきて色んな事があった。

辛いこともあったけど、それ以上に楽しい思い出があった。

 

 

ティアとの模擬戦で、お互いの意見をぶつけ合ったこと。

ヴィヴィオが来て、一緒に料理をしたり、ご飯を食べたりしたこと。

ヴィヴィオがクアットロに誘拐されて、俺となのはさんが一緒に助けたこと。

 

そして――――。

 

ゆりかごで死にかけて、意識が戻ってから、なのはさんは本当に俺のためにいろいろしてくれた。

身の回りの世話だけでなく、精神的に不安定になっていたときも、ずっとそばにいてくれた。

 

そんな思い出の中心に、いつもなのはさんがいた。

 

何よりも、なのはさんと一緒にいるとあたたかい気持ちになれた。

 

そんななのはさんだから――――。

 

 

「俺も……なのはさんのことが……好きです」

「で、でも、それじゃティアナは……」

「ティアのことは、俺にとって大切なパートナーでした。大切だし、好きだったけど、それは恋人としてでははないです」

 

 

今なら分かる………。

あのときティアが俺に幸せになってほしいって、言った意味が……。

 

 

「いつも笑顔でいてほしいと思うのも、そばにいてほしいって思うのも……なのはさん……あなただけです……」

「フィル……」

 

 

*    *   *

 

 

フィルの言葉に、わたしは今度は、嬉し涙を押さえられなかった。

こんなにも強く、誰かに何かを、望んだ事なんてなかった。

 

これが好きということ……。

 

これが……恋なんだ……。

 

 

「フィル……」

「今日は……離れたく……ない…」

「なのはさん……」

 

 

やっと、フィルに自分の気持ちが伝わったんだ。

今日は、ずっと一緒にいたいから――――。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「そういえば……何で、俺のことが好きになったんですか?」

「ん……」

「表裏がないところかな」

「そうですか? かなりありますよ。みんなのこと、かなり騙してましたし……」

「騙してたといっても、それはスカリエッティに、ばれないようにするためだよね。普段のフィルは、正直だよ。ヴィヴィオもすごく懐いているし……」

「わたしには無いものだから……すごく憧れる……」

「聞いてくれるかな……わたしの話……」

 

 

なのはさんは自分の幼少期のことを語り始めた。

かつて父親が事故にあって、それで家族が大変なことになり、自分も何か手伝えることはないかって頑張ったのだが、みんな大丈夫だからと、自分は力になれなかったこと。

せめて自分が出来ることは、良い子でいること。

それで、それからは良い子でいることにしていた。

そして、いつの間にか、本音でぶつかることが、言葉で話すことが怖くなってしまっていた。

だから、あの時、自分の中で思っていても、ティア達に伝え切れていなかった。

フェイトさんやはやてさんにも、相談出来ずに……。

 

 

「だけどね。もう、良い子でいるのはおしまい……」

「フィルのことが、本気で好きだから……」

「なのはさん……」

 

 

俺はなのはさんをぎゅっと抱きしめ、まっすぐに瞳を覗き込むと……。

 

なのはさんは瞳を閉じて……。

 

そして、俺は……。

 

なのはさんの唇に、キスをする。

最初は唇が触れるだけのキス。次第に互いを求め合うキスになり、息継ぎを繰り返しながら、何度も互いを求め合う。

キスが終わったときには、互いの間に銀色の糸が出来上がっていた。

 

 

「抱いて……フィル……あなたのぬくもりを……もっと感じたい……」

「なのはさん……」

「なのは、って呼んで、フィル……」

「なのは……」

「フィル……」

 

 

俺は、なのはの上着を脱がし、ブラの上からそっと、形の良い胸に触れる。

 

 

「あっ……んっ……」

 

なのはの甘い声に、俺の理性が段々と崩れていくのが分かる。

 

 

「えへへ……。わたし、胸には自信あるんだよ」

「うん……。大きいし……それに、やわらかい」

「いっぱい……いっぱい触って良いんだからね。わたしの胸も身体も……全部、フィルのなんだからね」

 

その言葉に胸がいっぱいになる。

ここで遠慮するのは、却って失礼だ。

俺は、そのままブラを取り、なのはの身体を隅々まで愛し――――。

 

 

「……はぁ……はぁ……もう……いいよ。きて……フィル」

 

 

そして、俺たちは……。

 

 

一晩中、お互いの気持ちを確かめ合った。

 

 

*    *    *

 

 

 

「あ、目が覚めたんだ。おはよう、フィル」

 

 

あれから、わたしとフィルは何度もお互いの気持ちを確かめ合った。

初めてで痛かったけど、フィルに抱かれてとっても嬉しかった。

気持ちが通じ合うって、こんなにあたたかいんだね――――。

 

 

「あ、ああ、おはようございます。なのはさん……」

「むぅ―――」

「えっ? どうしたんですか?」

 

 

どうしたんですか? じゃないよ!!

昨日は、ベッドの上じゃ、ちゃんとなのはって呼んでくれたのに!!

 

 

「なのはさんじゃなく、なのはだよ!! それと敬語は禁止!! もう一度!!」

「……おはよう、なのは」

「うん♪ おはよう、フィル」

 

やっぱり、大好きな人に名前で呼んでもらうっていいよね。

お願いついでに、もう一つ甘えちゃおうかな♪

 

 

「じゃあ、おはようのキス~♪」

「えっ?」

「………して……くれないの……」

 

フィルは、戸惑ってなかなかキスをしてくれない。

もう……。照れ屋なのは分かるけど……。

 

こうなったら――――。

 

 

「んっ!? んんんっっ!!」

 

わたしのほうから、フィルにキスをしちゃった。

だって、フィルからしてくれないのが悪いんだからね――――。

 

 

 

「あ……あの……なのは。そんなことされると、俺も理性が持たなくなるから……」

「……いいよ。そのときは、またいっぱい……しよ……」

「なのは……」

「フィル……」

 

 

今度は、フィルの方からキスをしてくれた。

でも、キスだけじゃ満足しきれなくなり、わたしとフィルは、またベッドで一つになる。

フィル、いっぱい……いっぱい抱きしめてね♪

 

 

 

 

*    *    *

 

 

「おはよう、なのは」

「おはよう、フェイトちゃん」

「なのは、昨日はごめんね。部屋の鍵、私が持っていたから、入れなかったでしょう」

「大丈夫だよ。昨日はフィルの部屋に泊まったから……」

「ぶはっ!!」

 

 

しまった!! 話の流れで思わず言っちゃった。

フェイトちゃんも、飲んでいたコーヒーを吐いちゃったし……。

 

 

「なのは……どういうことか、話してくれるよね」

「にゃ、にゃははは……」

 

 

フェイトちゃんのあまりの迫力に、わたしはもう隠せないと悟った。

そして、わたしは昨日のことを、フェイトちゃんに話した。

 

 

「……なるほどね。やっと、言ったんだね……」

「えっ? もしかして、フェイトちゃん……」

「知ってたよ。でも、これはなのはが自分で、気づかなきゃいけないことだからね……」

「フェイトちゃん……」

「でも、良かったね。両思いになれて……」

「うん……」

 

駄目だと思っていた恋――――。

フィルと両思いになれて、本当に嬉しかった。

だって、こんなに優しい気持ちになれるんだから――――。

 

フェイトちゃんと話していたら、ヴィヴィオが起きてきて、こっちにやってきて……。

 

 

「なのはママ……」

「ヴィヴィオ!! ただいま」

「おかえり……ねぇ、フィルパパは?」

「あっ……その……えっと……」

 

 

わたしがなんて言ったらいいか困っていたら、フェイトちゃんが……。

 

 

「ヴィヴィオ。フィルなら、今日なのはママの部屋に来てくれるって」

「本当!!」

「ちょ、ちょっと、フェイトちゃん!!」

「本当だよ。だから、今日一日良い子でいようね」

「うん!!」

「なのは、今日私は、泊まりの出張に行くから、好きにして良いよ。じゃあね!!」

「フェイトちゃん!! もう……」

 

 

絶対嘘だ。こんな急にそんな仕事が、入るわけ無いじゃない。

でも……ありがとう……。

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「こんばんは、ヴィヴィオ」

「あっ、フィルパパだ!!」

「パーティーの時、一緒にいてあげられなかったからね。今日は一緒にいよう」

「わーい!!」

 

 

実は、ここに来る途中、フェイトさんに会って……。

 

『今日は戻らないから、なのは達と一緒に過ごしてね』

 

そう言ってたけど、明らかにおかしい。

もしかして、フェイトさん。俺たちのこと――――。

 

 

「いらっしゃい、フィル」

「お邪魔します……」

「違うよ」

「えっ?」

「ただいまだよ。これから、わたし達は『家族』になるんだから……」

 

 

家族か……。

そうだよな……俺もヴィヴィオのパパになるんだからな。

 

 

「……そうですね」

「それと、前も言ったけど、普段は敬語は禁止!! 家族の間で、そんな他人行儀はしないの!!」

「きんし――!!」

 

 

なのはとヴィヴィオの二人に、そう言われてしまったら、敬語は止めるとするか。

 

 

「それじゃ、食べてね」

「わーい!!」

 

なのはが用意していたのは、ヴィヴィオの大好きなハンバーグを始め、クリームシチューと野菜サラダといったメニューだった。

俺も、ヴィヴィオの大好きなケーキを作ってきた。

 

 

「「「いただきます!!」」」

「はい、ヴィヴィオ。あーん」

「あーん」

「美味しい?」

「うん!! おいしい!!」

 

 

なのはがヴィヴィオに、ハンバーグを食べさせてあげている。

うん、こういった光景は良いよな……。

 

 

「ヴィヴィオ、俺のも食べるか?」

「うん!! 食べる!!」

「じゃ、あーん」

「あーん」

「美味しいか?」

「おいしいっ!!」

 

 

ヴィヴィオは、俺が食べていたピーマンを食べた。

実は、苦手だったピーマンも大分克服してきている。

そうやって、娘が成長しているのを見ると、すごく嬉しかった。

 

 

「さて、そろそろ、ケーキも出そうかな」

「「ケーキ?」」

「ああ、さっき持ってきた箱はパウンドケーキさ。なのは達と食べようと思ってね」

 

 

俺たち三人はパウンドケーキを食べ、その後は三人で一緒にゲームしたり、テレビを見たりして過ごした。

夜も遅くなり、俺はそろそろ戻ることにしたのだが……。

 

 

 

「フィルパパ……帰っちゃうの?」

「もう、遅いしな。なのはママにも悪いしね」

「そんなこと無いよ!! お願い、今日はヴィヴィオと一緒に、寝てほしいなぁ……」

「パパ………」

 

 

二人のお願いに、俺はNOとは言えなかった。

 

 

「それじゃ、今日は三人で一緒に寝ようか」

「「わーい」」

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「ヴィヴィオ……寝ちゃったね」

「そう……だな」

 

 

あの後、わたしとフィルとヴィヴィオの三人で寝ることになり、ヴィヴィオが眠るまで、フィルが絵本を読んであげていたのだけど、それでも、眠る気配がなかったので、わたしが子守歌を歌ってあげて、ようやく眠ってくれた。

 

 

「こうしてみると、本当かわいいよな。ヴィヴィオ」

「うん……。ねぇ……フィル……」

「ん、何?」

「フィルは、これからどうするの? 六課が解散してから……」

「二つ考えてるんだ。一つは、このまま管理局に残って、身体が治り次第、執務官か捜査官を目指していく……」

 

 

それは止めてほしかった――――。

もう、フィルにあんな目にあってほしくない。

愛する人が死にかけるのを見るのは、もういや!!

 

 

 

「もう一つは……管理局を辞めて、もう一つの夢だった喫茶店を開く」

 

 

管理局を辞めても、フィルだったら大丈夫だよ。

もし、本当にやめてくれるのなら――――。

 

 

 

「……それだったら、わたしと一緒にやらない。喫茶店……」

「なのは?」

「正直ね。わたしも、今までの無理がたたって、そう長くはやれないと思うの。わたしの思いは、ティアナやスバル達にちゃんと伝わったし、ティアナ達なら、いつかわたしを超える魔導師になれるから……」

「……本当に、それでいいのか? 空を飛ぶのは、なのはの生き甲斐だったじゃないか!!」

 

確かに、空を飛ぶのはわたしの生き甲斐だったよ。

でも、それ以上に大切なことだってあるんだよ――――。

 

 

「なのは……俺は……」

「勘違いしないでね。これは前から考えてたことなの……」

 

 

多分……やれても、後、4~5年くらいだと思う。

だったら、完全に駄目になる前に、辞めようと思ったんだ。

 

ヴィヴィオのためにもね……。

 

 

「分かった……そこまで思っているなら、もう止めないよ」

「ありがとう……」

 

これはちょうど良い機会なのかもしれない。

フィルも、わたしも限界以上のことをしてきたのだから――――。

 

 

「じゃ、そのために一生懸命頑張らなくちゃな……」

「そうだよ、がんばってね。フィル……」

「ああ……俺には、こんなにかわいい彼女がいるんだからな……」

「……ばか」

 

フィルのばか……。

そんなこと言ったって、なにも出ないんだからね。 

 

 

 

*    *    *

 

 

4年後

 

カランコロン……。

 

 

「いらっしゃいませ!!」

「おじゃまするっすよ!!」

「おそいよ、ウェンディ!!」

「いやぁ、すまないっす。道が混んでいて……」

「もう、みんな来てるわよ」

 

 

店の中にいたのは、スバル、ティアナ、そして、N2Rのメンバーと、聖王教会に世話になっているオットーとディードだった。

 

 

「ったく、相変わらずだな。お前の、そのいい加減さは……」

「ノーヴェにいわれたくないっす」

「何だと!!」

「お二人さん……店の中で喧嘩は止めてくれるかな……」

「ごめん……」

「ごめんっす……」

 

 

ノーヴェとウェンディの喧嘩を止めたのは、この店のマスターである俺だった。

 

六課解散後、俺となのはは管理局を退職し、その時に、二人は籍を入れ、なのはの両親に挨拶にいったのだ。

 

最初は、翠屋で長期の修行をするつもりだったが、未来やこっちで学んできた基礎があり、修行は短期間で終わらすことが出来た。

 

その後、師匠でもある高町桃子さんのお墨付きをもらい、二人でミッドチルダに喫茶店を出したのだ。

 

店の方も、なのはのネームバリューが効いていたおかげで、お客さんがなのはを見たさにやってきた。

 

段々となのはの力でなく、味で評価されてきて、最近ではよく雑誌の取材を受けるようになっていた。

 

そして、この店はティア達のたまり場にもなっていた。

 

 

「あいかわらず、大繁盛ね。今日だって、事前に予約してなかったら、大変だったんだから……」

「すまんな、ティア。夜だと、比較的大丈夫なんだけどな……」

「あんたが謝ることはないわよ。いいじゃない、繁盛してるのは……」

「モグモグ……そうだよ……モグモグ……」

「スバル……食べるか、しゃべるか、どっちかにしろ」

「だって、あたし普段は滅多に、これないんだから!!」

 

 

このメンバーが集まれるのは、あまりない。

大体スバルが、緊急出動でいないことが多いからな……。

 

 

「まぁまぁ……いいじゃない。誰かに迷惑をかけてる訳じゃないしね」

「なのはさん!!」

「みんな、今日は楽しんでいってね。わたしもフィルも、腕によりをかけて作るからね」

「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」

 

 

*    *    *

 

 

「ねぇ……フィル」

「何だ? なのは」

「この店やって……本当に良かったね……」

「ああ……」

 

 

喫茶店 『Amour eternel』

 

地球のフランスの言葉で、永遠の愛――――。

その想いを込め、俺たちはこの店の名前にした。

 

 

この場所は、俺たちの夢の場所でもある。

 

みんなが楽しく、俺の作ったケーキや料理をおいしく食べてくれる。

そして、笑顔になってくれるのが、何より嬉しい。

ここでは、戦闘機人だからとか、そんなのは関係ない。

それは、スバル達を見ていれば、よく分かる。

 

そして……。

 

 

 

「いらっしゃいませ~~~」

「あっ、ヴィヴィオ!! 今日も手伝いなの?」

「はい、パパとママのお手伝いです」

 

 

ヴィヴィオはこの喫茶店の制服に着替えて、ウェイトレスをしていた。

学校が終わると、こうして手伝ってくれるのだ。

 

 

*    *    *

 

 

「そういえば、この雑誌に載ってたぜ。かわいい母娘と素敵なマスターがいるって……」

「何だそりゃ? かわいい母娘は分かるが……」

「フィル、少しは自覚するっす。視線に気づかないんっすか?」

 

 

ここに来ている女性客の半数は、フィルの方を見ていた。

相変わらず、この方面には疎いままである。

 

 

「……ノーヴェ」

「は、はい!!」

「その雑誌……見せて……」

 

 

わたしはノーヴェから雑誌を取り上げると、その記事の所を確認していた。

 

 

「な、なんか……なのはさん、こわいぞ……」

「ノーヴェ、なんでそんな余計な物を持ってきたのよ!! なのはさんにそんな話したら、こうなるって分かってたでしょう!!」

「ごめん、本当に悪かった………」

「ティア!! そんなこと言ってる場合じゃないよ!! 見てよ、なのはさんを……」

「あっちゃぁぁぁ………」

「……そう……それで、女性客が増えたのね……」

 

わたしが、不機嫌オーラ全開でいたとき……。

 

「なのは」

「なに、ん……んんん!!」

「「「「「「「「ああっ!!」」」」」」」」

 

 

フィルがいきなり、みんなの見ている前で、わたしにキスをする。

 

 

「……もう、いきなり、なにするの!!」

「そんなの気にするなって……俺が、愛してるのは、なのはだけだから……」

「……もう……ばか」

 

でも、わたしもだよ――――。

愛してるよ……フィル……。

 

 

*    *    *

 

 

「ふぅ……やっと仕事が終わったな」

「そうだね……」

「まったく、パパ、ママ、あんな事もうしないでよ!! 店中でキスをするなんて、リオとコロナに見られたら、わたし、また学校でからかわれるんだからね!!」

「ごめん、ごめん。だけど、あんな雑誌を見たら……」

 

 

雑誌にはフィルのことが紹介されていた。

美味しいケーキを作る、イケメンマスター。

そんな風に書かれていて、店に来ていた女性客は、大半フィルのことを見ていた。

 

 

「もう、ママがパパのことを、大好きなのは分かるけど……ヤキモチはみっともないよ♪」

「ヴィヴィオ!!」

 

 

 

*    *    *

 

 

「ごちそうさま。パパ、ママ、ちょっと外で魔法の練習してくるね」

「ちょっと待って、ヴィヴィオ」

「どうしたの、ママ?」

「ヴィヴィオも、もう4年生だよね」

「そうだけど……」

「実はな、なのはと話し合って、そろそろ、デバイスを渡していいんじゃないかって?」

「ほ……ほんとっっ!?」

 

 

そう言って、パパが持ってきてくれた箱を開けてみると……。

 

 

「これ……」

「ああ……」

 

 

箱の中に入っていたのは、銀色に輝く銃型のデバイス。

パパの相棒のプリムだった。

 

 

「どうして!? プリムは、パパの大切なデバイスなのに!!」

 

プリムは、パパにとって命と同じくらい大切なデバイス。

そんな大切な物をどうして――――。

 

「だからだよ。だからこそ、大切な娘のお前に託したいんだ。俺は4年前の傷が元で、魔法が殆ど使えなくなってしまった……だから、お前に全てを託したいんだ……」

「それに、ヴィヴィオの聖王の力は、並半かな物じゃ耐えきれないの。だけど、プリムなら、大人になっても使ってあげられるから……」

「パパ……ママ……」

「だから、受け取ってくれ……。俺となのはの思いを……」

 

 

パパは箱からプリムを取り出し、わたしに渡してくれた。

 

 

「……ありがとう……パパ……ママ……大切にするね」

「そうしてくれ。プリム、今日からヴィヴィオがお前のマスターだ。よろしくな!!」

《分かってます、ヴィヴィオ、これからよろしくお願いしますね》

「うん!! よろしくね、プリム!!」

「ちなみに、あれも使えるように、データは組んでおいたから、後は自分が使いやすい形にするだけだ」

「実は、ずっと前から決めてるんだ。デバイスを持ったら、これにしようって、ずっと思ってたんだ!!」

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「マスター認証……ヴィヴィオ・高町・グリード」

「術式はベルカ主体のミッド混合ハイブリッド……」

「いくよ、プリム」

《いつでも良いですよ、ヴィヴィオ!!》

「プリム、セーーーット・アーーーップ!!」

 

 

セットアップがすむと、そこにいたのは聖王モードの姿をしたヴィヴィオだった。

しかも、何故か俺と同じく銃型のデバイスも持っていた。

 

 

「な、な、な、な!?」

「「やった!! 大成功!!」」

 

 

セットアップの成功に、なのはとヴィヴィオは、ハイタッチをしていた。

 

 

「なのは、お前、このことを知ってたのか?」

「うん、聖王モードのことは話したよね」

「それは知ってる。何度も見ているしな。だけど、何でわざわざ、おれと同じ銃を……」

「実はね、ストライクアーツやってたんだけど、ある時、フィルのことを……未来でのことを、ティアナから聞いて、それからティアナに、銃の使い方を教えてもらってたの。フィルのようになりたいからって……」

「そうだったのか……。なんか、複雑な気持ちだ」

 

 

ヴィヴィオはストライクアーツをしていたから、てっきりスバルのような機能を選ぶかと思ったけど、まさか俺と同じ射撃タイプになるとは……。

 

 

「パパ、勝手にティアナさんから教わっていたこと、ごめんなさい。でも、どうしてもパパのようになりたかった。だから、ティアナさんに教えてもらってたの……」

「別に構わないよ。なのはには話してたんだろ?」

「うん、ママも協力してくれたの」

「ったく、なのはも人が悪いぜ。俺に黙っているなんてよ……」

「これでおあいこだよ。フィルがヴィヴィオにプリムを渡すなんて、聞いてなかったんだからね!! さっき聞いて、びっくりしたんだから……」

「確かにな。俺もなのはとヴィヴィオを驚かしたかったしな……」

「「「あははははは!!」」」

「頑張れよ、プリムを使いこなすようになるまで、大変だと思うけど、困ったら俺やなのは、もしくは師事しているティアに相談しろよ」

「うん!! ありがとう。パパ、大好き!!」

 

 

そう言ってヴィヴィオは、俺の胸に抱きついてきた。

不謹慎なんだけど、その姿だと、ヴィヴィオって、結構胸あるんだよな……。

以前も似たようなことがあって、なのはがすっごくヤキモチ焼いたんだよな。

相手はヴィヴィオなのにな。

 

 

「ああ――――!! ヴィヴィオ、ずるい!!」

「だったら、ママもパパに抱きつけばいいじゃない。いつもしてるんだから♪」

 

 

ヴィヴィオの言葉に、なのははポンと手を叩いて、名案と言わんとばかりに……。

 

 

「それもそうだね。えい♪」

 

 

今度は、なのはまで俺の背中に抱きついてくる。

しかも、自分の胸をしっかりと当ててきてるし――――。

 

 

「な、なのはまで……。ったく、この甘えんぼさん……」

「そうだよ、わたしもヴィヴィオも甘えん坊だもん♪」

「だよ♪」

 

 

 

ヤキモチ焼きで、甘えん坊の年上のかわいい奥さん。

 

母親に似て、やっぱり甘えん坊のかわいい娘。

 

そんな二人に囲まれて、俺は幸せをかみしめていた。

 

願わくは、俺たちの三人の愛が、永遠に続くように――――。

 

皆様、現在自サイトのみで公開しています『とある休日シリーズ』になりますが、こちらでも見てみたいという方がいらっしゃいましたら、アンケートにお答えいただけたらと思います。

  • 見てみたいので公開してほしい
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  • どちらでもいい
  • 興味がないので公開はしなくて良い

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