魔法少女リリカルなのはStrikerS ~ Remember my heart ~ 作:アルフォンス
無人世界カルナージは、首都クラナガンから臨行次元船で約4時間。
標準時差は7時間。
一年を通して温暖な大自然の恵み、豊かな世界。
その世界に住むアルピーノ親子の所に、今回お世話になることになった。
「みんな、いらっしゃ~い♪」
「こんにちはー」
「お世話になりまーすっ」
「すみません、こんな大勢で……」
本当なら、女性ばかりのメンバーだから、俺は抜けても良かったんだけど、それをヴィヴィオ達に言ったら、えらい剣幕で怒られたからな……。
「みんなで来てくれて嬉しいわー。食事もいっぱい用意したから、ゆっくりしていってね。特にフィル」
「あっ、はい?」
「この4日間は、仕事のことは忘れなさい。せっかくのお休みなんですからね」
「そう……ですね」
ここ最近、こんな風に休めるときがなかったからな。
ここはメガーヌさんのお言葉に甘えるとしよう。
* * *
「ルーちゃん!!」
「ルールー!! 久しぶり~!!」
「うん、コロナ、ヴィヴィオ。そういえば、リオは直接会うのは初めてだね」
「今までモニターだったもんね」
リオとは通信では何度もやりとりをしていたけど、こうして合うのは初なんだよね。
「うん、モニターで見るより可愛い」
「ほんとー?」
私はリオの頭を撫でてあげると、照れながらとっても可愛い笑顔で応えてくれた。
コロナもそうだけど、本当に素直で可愛いんだよね♪
「あ、ルールー!! こちらがメールでも話した……」
「アインハルト・ストラトスです」
ヴィヴィオが紹介してくれたのは、碧銀の女の子。
この子が、ヴィヴィオが話していた女の子ね。
確かに物静かな女の子って感じかな―――――。
「ルーテシア・アルピーノです。ここの住人でヴィヴィオの友達で14歳」
「ルーちゃん、歴史とか詳しいんですよ」
「えっへん」
といっても、無限書庫で司書のバイトをやっているフィルさんには敵わないんだけどね。
でも、普通の人よりはいっぱい知っているんだよ。
「あれ、エリオとキャロはまだ来ていないんだ?」
「ああ、ふたりは今ねぇ」
スバルさんが二人のことを探していると―――――。
「こんにちは!!」
「おつかれさまでーすっ!!」
『エリオ、キャロ♪』
実は、みんなより数時間前に着いていて、少しだけお手伝いをしてもらっていた。
最初は断っていたんだけど、エリオが「ルーにだけ、負担をかけたくないから」と言ってくれて、そのお言葉に甘えて薪割りをお願いをした。
キャロもエリオだけにさせるのは悪いと言って、エリオの手伝いをしてくれていた。
本当なら、お客さんなんだから、そんなに気を遣わないで欲しいな。
「わーお!! エリオまた背伸びてる!!」
「そ、そうですか?」
「わたしもちょっと伸びましたよ!?」
この数年、エリオは本当に大きくなっている。
六課時代なんて、今のキャロくらいだったのにね。今は、私と殆ど同じくらいだけど、あと2~3年もすれば、背丈はフィルさんくらいになっていくんだろうな。
親友が格好良くなるのは嬉しいしね♪
そして、そんなエリオ達を、フェイトさんがアインハルトに紹介していた。
「アインハルト、紹介するね」
「あ、はい」
「ふたりとも私の家族で……」
「エリオ・モンディアルです」
「キャロ・ル・ルシエと飛竜のフリードです」
こうして二人が一緒にいると、本当に仲の良い兄妹って感じなんだよね。
「一人ちびっこがいるけど、3人で同い年」
「なんですと!? 1.5㎝も伸びたのに!!」
「あ、あはは……」
エリオが私の言葉に苦笑いをしてる。
しょうがないでしょう。キャロって、本当におもしろい反応を見せてくれるんだから、これでからかうなってのは無理でしょう。
フィルさんは、こういった人の事を馬鹿にする言葉は大嫌いなんだけど、私が本気で言ってないって事は分かってるから、それを止めたりはしない。
キャロもこの数年、私とのやりとりで大分揉まれたので、このくらいのことで凹んだりはしなくなった。
「ど、どうも、アインハルト・ストラトスです」
「うん」
「よろしくね、アインハルト」
現にキャロはもう立ち直って、アインハルトと自己紹介をしあっていた。
そろそろ、魚を捕りに行ったガリューが戻ってきても良いんだけど――――。
そう思っていたら、草をかき分ける音がして、そっちを見ると、ガリューが魚を捕ってかえってきたみたい。
「!?」
ガリューを見て、アインハルトが、ファイティングポーズを取って、身構えてしまっている。
「あー!! アインハルトさんごめんなさい!! 大丈夫です!!」
「あの子は……」
あっ、しまった!!
コロナ達は知っていたけど、アインハルトはガリューのことは知らなかったんだ。
だから、さっきガリューを見て構えてしまったんだ。
「ごめんね。ちゃんと紹介しておくね。私の召喚獣で大切な家族。ガリューって言うの」
私の声でガリューは頭を下げて、挨拶をする。
「し、失礼しました」
「わたしも最初はびっくりしましたー」
コロナも最初ガリューを見たときは、ビックリしていたからね。
ああなっちゃうのはしょうがないかな。
でも、セイクリッド・ハートがファイティングポーズを取っても、全然こわくも何ともないから、可愛いとしかいえないんだよね。
* * *
「さて、お昼前に大人のみんなはトレーニングでしょ。子供達はどこに遊びに行く?」
「やっぱり、まずは川遊びかなと、お嬢も来るだろ?」
「うん!!」
「アインハルトもこっちに来いな」
「えっと……」
アインハルトがこっちを見て、どうしようか迷っている。
正直言って、なのはさん達と一緒のトレーニングは、まだアインハルトには向いていないと思う。
「今回はノーヴェ達と一緒にいってきな。ヴィヴィオ達も喜ぶしな」
「はい……」
「あれ? フィル。あんたはこっちのトレーニングに参加しないの?」
ティアは、俺がトレーニングに参加する物だと思っていたから、驚いて、こっちに訊いてきた。
「ああ、とりあえず午前はメガーヌさんと一緒にお昼の支度をして、午後の訓練から参加させてもらうよ」
「本当に大丈夫? 午後の訓練かなりハードになるから、身体ならしておいた方が良いよ」
フェイトが心配して言ってくれるのはありがたいのだが、なにせこれだけの人数の食事を用意するのに、メガーヌさん一人にさせるのは大変だからな。
「大丈夫、それまでにはちゃんと慣らしをしておくよ」
「そっか……」
正直、あのメンバーを相手に、いきなりやるのはきついかもしれないけど、俺だってこの半年間何もしなかった訳じゃない。
フェイトやティアに隠れて、自己鍛錬はしてきているんだ。
後は実践感覚を取り戻すだけだ―――――。
「じゃ、お昼はフィルとメガーヌさんに任せて、わたし達は着替えてアスレチック前に集合しよう!!」
「「「「「はいっ!!」」」」」」
「こっちも水着に着替えて、ロッジ裏に集合!!」
「「「「は―――――いっ!!」」」」
こうして、なのはさん達はトレーニングに、ノーヴェ達は川に遊びに行くことになり、残った俺とメガーヌさんは、ロッジでお昼の支度をすることになった。
* * *
「でも、本当によかったの? みんなと一緒に行かなくて?」
今俺たちは、昼ご飯のバーベキューとカレーを用意している。
野菜を切る作業はそんなでもないけど、さすがにこれだけの人数のカレーを用意するとなると、結構力作業になるからな。
「これで俺までどっちかに行ったら、メガーヌさんの負担がきついですよ」
俺が今、みんなのために出来ることといったら、これくらいしかない。
元々俺はサポートを特化する人間だ。
だから、こうしてみんなが楽しんでくれれば、それが何より嬉しいから―――――。
「やっぱり……優しいわねフィル。こうやって、心配してくれるのは嬉しいけど、あなたも楽しんでもらわなくちゃ、何の意味もないのよ。だから……」
メガーヌさんは、俺の肩に手を置き、そして―――――。
「後のことは心配しないで、フィルもヴィヴィオ達の所に行ってあげて。トレーニングは、後でも出来るけど、あの子達と一緒にいてあげられる時間は、とっても少ないんだからね」
「メガーヌさん……」
「ささ、分かったら、さっさと合流してあげなさい!!」
そうだな―――――。
せっかく、こうやってみんなと一緒に来ているんだもんな。
たまには、羽を伸ばすのもいいかな―――――。
「………分かりました。それではお言葉に甘えさせてもらいます」
「よろしい♪」
「じゃ、ガリュー。カレーの仕込みは任せるぞ。後は時間まで焦がさないようにしていてくれればいいから……」
ガリューは俺と交代して、大鍋をかき回して、焦がさないように丁寧に作業をする。
これは普段からガリューも炊事をしているな。手つきを見ていればそれは分かる。
「さてと、水着を持って行かないとな……」
俺は自分の部屋に戻り、水着を持ってヴィヴィオ達がいる川沿いに向かうことにした。
* * *
「おや、水切りをしてるのか?」
「フィルさん!? どうしてここに!?」
「……あ、あはは、メガーヌさんに、アシスタント失格と言われてな」
フィルさんが、おちゃらけてこんなことを言ってるけど、絶対にあり得ない!!
フィルさんが失格なんて言われるなら、大抵の人が失格と言われるよ。
以前、フィルさんが私達の所に来てくれて、いろんな事を手伝ってくれたけど、殆どフィルさんがしてくれて、私やママはほんの少し手伝ったくらいだもん。
「ルーテシアは、もう泳がないのか?」
「ちょっとだけ、休憩してます。あとでまた泳ぎますよ」
「そっか……」
でも、フィルさんがこっちに来てくれたのは嬉しいかな。
キャロ達がなのはさん達と一緒に、トレーニングに行っちゃったから、ちょっと寂しかったんだよね。
「そっか。それじゃ私達と一緒に遊びましょう♪ フィルさんも、これだけの美少女達に囲まれて嬉しいでしょう♪」
「……ノーコメント」
「ふふっ、言わなくても顔を見れば十分ですよ♪」
フィルさんって、本当に女の子には弱いと思う。
正確に言えば、心を許している人たちに弱いと言った方が良いかな。
別に普通に女性を見ていても、何の反応もないけど、ティアナさんや私達みたいに、フィルさんのカテゴリーにいる人たちには、本当に弱い。
ちょっとからかうだけで照れて、初心な反応をしてしまう。
それは、年齢とか関係ない。私はフィルさんを5つ以上離れているけど、それでも女性として反応をしてくれる。
もし、フェイトさんと結婚してなかったら、フィルさんに積極的にアタックしたんだろうな―――――。
「じゃ、せっかくだから、一緒に泳ぐか?」
「いいですよ。たまには大人の男性と一緒にいるのも楽しいですから♪」
フェイトさんには悪いけど、今のこの時間だけは、フィルさんと一緒に楽しもう。
ヴィヴィオやコロナ達は、水切りの練習で夢中になってるし、私もちょっとだけいいかな。
私の初恋の人と一緒に楽しむ時間をね♪
* * *
「アインハルトちゃん、楽しんでくれてるかな?」
「ヴィヴィオ達も一緒ですし、きっと大丈夫です」
多分、ノーヴェがその辺は上手くやってくれると思う。
あの子は、ああ見えても、その辺の気配りはとっても上手いから。
「それにしても、ティアナ。本当に体力が付いたよね。わたしやスバルについてきて、息切れしていないんだから」
「大分、鍛えましたから……。あの時から……ずっと……」
「……そう……だったね」
ティアナは、ゆりかご以来、本当にレベルアップしてきていた。
あの時の後悔は、今でもティアナの胸の中でずっと残っている。
フィルをあんな風にさせてしまったことを―――――。
「ところで、みんな大丈夫?」
わたしは頂上から、残ったメンバーに声をかけると―――――。
「大丈夫だよ」
「はぁ……はぁ……」
「ぜぇ……ぜぇ……」
フェイトちゃんは、息を整えて余裕があるけど、エリオとキャロがちょっといっぱいいっぱいかな。
これはもうちょっと鍛え直す必要があるかも。
* * *
「エリオ、キャロ、ほら、もう少しだよ。頑張ろう」
「は、はい……はぁ……はぁ……」
「ぜぇ……ぜぇ……フェイトさん、どうしてそんなに余裕なんですか……」
「……私も、それなりに鍛え直したからね……」
あの日―――――。
フィルが倒れ、病院に搬送され、変わり果てたフィルの姿を見て、自分の無力さと絶望を痛感した。
私やはやてが一緒だから、絶対に大丈夫だと思っていた。
だけど、その考えは甘すぎた。
自分の大切な人のためなら、自分の身は二の次にしてしまうフィル。
だからこそ、私の危機にその身を擲って助けようとした。
あの時、もっと私に体力があればあんな事にはならなかったかもしれない――――。
だから、二度と後悔しないように、私自身もう一度鍛錬をし直した。
体力がないなんて言い訳をしないために―――――。
そして―――――。
フィルの背中を私の手で守るために―――――。
* * *
「さ、お昼ですよー!! みんな集合――――♪」
「「「はーいっ!!」」」
「おかえりー。みんな遊んできた?」
「もーバッチリ!!」
どうやら、みんなちゃんと楽しんできたみたいだな。
こっちはルーテシアと一緒だったから、ヴィヴィオ達のことをそこまで見ていなかったけど、ノーヴェがしっかりと見ていてくれたから心配はしていない。
「体冷やさないように、暖かいものも用意したからな。沢山食べてくれよ」
「「ありがとうございます!!」」
「あらあら、ヴィヴィオちゃん、アインハルトちゃん、大丈夫?」
「いえ……あの」
「だ、だいじょうぶ……です」
体をぷるぷるさせながら言っても、説得力が全くないぞ。
一体何をしていたんだ?
「こいつら、二人で水切り練習をずーっとやってたんですよ」
「あらー」
「やれやれ……」
数時間も全身の筋肉を使う水切りをしていたんじゃ、こうなるのも当たり前だよな。負けず嫌いの二人のことだ。出来るまでずっとやっていたんだな――――。
「はい、おまたせー!!」
「「わ――――!!」」
スバルがコロナ達の所に、焼きたてのバーベキューをいっぱい置くと、二人とも目を輝かせていた。
やっぱり、これだけの物が来たら、誰でもこうなるな。
「じゃあ、今日の良き日に感謝を込めて」
『いただきます!!』
みんなでいただきますの声を言い、楽しい昼ご飯のはじまりだ。
「おぉ――――いし――――いっ!!」
「ほんと……!! いいですね。これ!!」
「えっへん。自慢のソースです♪」
「確かに美味しいよな。これ」
俺も料理を作る身として、美味しい料理は出来るだけ覚えたい。
アルピーノ家の味付けは、かなりの物だ。
「えへへ、フィルさんにそう言ってもらえて良かったです。結構苦労したんですよ」
「本当にこれは良い味付けだ。ルーテシア、これなら彼氏が出来たら、ハートも、胃袋もしっかり捉えておけるな」
「えっへん♪」
ルーテシアはこの数年、本当に頑張っている。
こいつの彼氏になる人は幸せになると思う。
* * *
『ごちそうさまでしたー!!』
昼ご飯も終わり、わたし達は後片付けをしていた。
みんな、それぞれ別れて、わたしとアインハルトさんは皿洗いをしている。
「ヴィヴィオさん達は、いつもあんな風に、ノーヴェさんからご教授を?」
「あ、そんなに『いつも』でもないんですが……。わたしは最初スバルさんに、格闘の基礎だけを教わったんです。それから、独学で頑張っていたら、ノーヴェが声をかけてくれて……」
あの時、ノーヴェに『そんなんじゃ体壊すぞ』と指摘を受けて、その時から、ノーヴェが時間を作っては、色々教えてくれた。
そして、フィルさんにも練習しているところを見られてしまい、ノーヴェとフィルさんが交互に教えてくれるようになった。
「なんだかんだで、ノーヴェもフィルさんも、コロナとリオのことを見てくれるようになって、本当に優しいんです。二人とも……」
「――――わかります。少し羨ましいです。私は……」
「私は……ずっと、独学でしたから」
「あっ……」
そうだった。
この人は、今までずっと一人で覇王流を学んできたんだ。
悲しい過去と一緒に――――。
「でも、これからはもう、ひとりじゃないですよね?」
「あ……その、流派とかはあくまで別にしてですよ!?」
「いえ、あの、大丈夫です、わかります」
古流武術(カイザーアーツ)と近代格闘術(ストライクアーツ)
同じ道はたどれないかもしれない――――。
だけど、時々こんな風に――――。
少しだけ一緒に、歩いていけたらと思うから――――。
皆様、現在自サイトのみで公開しています『とある休日シリーズ』になりますが、こちらでも見てみたいという方がいらっしゃいましたら、アンケートにお答えいただけたらと思います。
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見てみたいので公開してほしい
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まあまあ興味がある
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どちらでもいい
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興味がないので公開はしなくて良い