魔法少女リリカルなのはStrikerS ~ Remember my heart ~   作:アルフォンス

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第2話 機動六課

試験が終わり俺たちは、フェイト執務官と八神捜査官に呼ばれていた。

そこで聞かされたのは、ミッドチルダ臨海空港火災事件のこと。それが切欠で新部隊を作ることになったこと。そして四年ほどかかって、やっと設立できると言うことだった。

その部隊ってのは機動六課のことなんだけどな。

 

「部隊名は時空管理局本局、遺失物管理部機動六課。登録は陸士部隊。フォワード陣は陸戦魔導師が主体で、特定遺失物の捜査と保守管理が主な任務や」

「………遺失物……ロストロギアですね……」

「そう、でも広域捜査は一課から五課までが担当するので、うちは対策専門」

 

八神捜査官の説明の後、ティアの質問にフェイト執務官が補足を加えた。

 

「んで、スバル・ナカジマ二等陸士とティアナ・ランスター二等陸士、それにフィル・グリード二等陸士」

「「「はい!!」」」

「私は三人を機動六課のフォワードとして迎えたいと考えている。厳しい仕事にはなるやろうけど、濃い経験は積めると思うし、昇進機会も多くなる。どないやろ………」

「「「……あの……えっと……」」」

 

 

俺たちが混乱していると、フェイト執務官がさらに……。

 

 

「スバルは高町教導官に直接魔法戦を教われるし……」

「はい……」

「執務官志望のティアナとフィルは、私でよければアドバイスとか出来ると思うんだ」

「あ、いえ、とんでもない!!」

「そうですよ、というか恐縮です……」

 

フェイトさん……。

 

 

かつてゆりかご襲撃の時は、スカリエッティの基地に単独で向かって命を落としてしまった。

以前の時もいろいろティアや俺がお世話になっていた。なのはさんの訓練で疲れ果てた時もいろいろ励ましてくれた。

 

そして俺がいろんな意味で憧れていた人。

 

 

 

―――――『あの時』の最後の言葉は忘れられない。

 

 

 

また一緒に仕事が出来るなんて思わなかったけど、もう一度死なせるなんてゴメンだ……。

 

こっちのフェイトさんも相変わらず優しいんだな。俺たちのことを本当に考えてくれている。

以前はティアは、執務官になる夢は果たせなかったからな………。

 

 

過去の俺は執務官になりたいと思っていたけど、今は正直わからない。

 

 

そんな中なのはさんが試験結果を持ってやってきた。今回は果たしてどうなのだろうか……。

 

 

「……とりあえず、試験の結果ね。三人とも技術はほぼ問題無いんだけど……。一つだけ聞いて良いかな。フィル、試験中あれだけ慎重に行動し、スバル達の行動をまとめてきたのに、何で最後はあんな事をやったの? もしあの時スピードを殺しきれなくて、壁に激突するって思わなかった……」

「そのことはずっと頭にありました。ですから俺のデバイス、プリムにあらかじめ計算をしてもらいました。俺の持っている魔法で、今回やったプランなら安全に止まれるって事になって実行しました」

「……そして、もし失敗するって結果が出ていたら、二人には悪いが、俺は失格を選んだ」

「「えっ?」」

「スバル、ティア。無茶することと頑張ることは違うんだ。あの時、もし失敗するって出て、それが分かっていて実行して取り返しのつかないことになったら、それこそ自分の夢を叶えるどころじゃない。それに、ティアは足をねんざしていたんだ。ここで無茶する必要はない。それだったら、半年後受け直した方が良い……。それに死んじまったら、何もかも終わりなんだ……」

「「フィル……」」

「そっか……。うん……」

 

なのはさんは何か納得した様子だった。だけど今の言葉は俺の本心なんだ。

そう、事故とかで死んでしまったら、悲しみと後悔しか残らない。残される者には特に……。

 

「……じゃあ、改めて結果を言うね。今回は三人とも合格とします」

「「「や、やったぁぁぁぁぁ」」」

「その代わり、三人にはそれぞれ課題というか、講習を受けてもらうね。スバルとティアナは本局武装隊に行って、来週から十日間、本局の厳しい先輩達に揉まれて安全とルールを学んでこよう。フィルはよく分かっていたみたいで、今回はそれに助けられている部分が大きいんだからね。本当は二人は不合格なんだけど、そうするとフィル、絶対辞退するでしょう……」

「そ、そんなことは……」

「ううん、分かるよ。フィル、あの時の事………計算して失敗するって結果だったら、失格を選ぶつもりだったんでしょう。それだけ二人のことを思っていて、自分だけ受かるって事は考えてなかったんでしょう。だからあんな作戦をとった。違うかな……」

「参りました……。その通りです……」

 

そこまで見抜かれていたなんてな……。

さすがというべきなのかな……。

 

「それで、フィルはわたし達の知り合いのメカニックマイスター、マリエル・アテンザさんの所へ行って、デバイスの理論をきっちり学んできて。独学であれだけのデバイスを作れるなら、ちゃんと学べばさらにスキルアップすることが出来ると思う。もし、機動六課に来てくれるなら、その力は絶対に必要になるから、フォワード達だけでなく、私達も助かることになるから………」

「……ありがとうございます。高町教導官。こんなチャンスをくれて恐縮です……」

「そんなにかしこらなくて良いよ。普段はなのはさんで良いよ。それと三人とも講習頑張ってきてね」

「「「はい、ありがとうがございます」」」

「三人とも講習が終わるまでは、それに集中したいやろ。私への返事はそれが終わってからって事にしとこうか」

「「「すみません、恐れ入ります!!」」」

 

俺たち三人は八神捜査官に敬礼してその場を離れた。

 

「ふう、緊張したね、フィル、ティア」

「全くだ。補習付きとはいえ、合格できて本当によかったぜ」

「……」

「どうしたんだティア。何落ち込んでるんだ……」

「フィル、ゴメンね。色々迷惑をかけて………」

「ん、何だよいきなり……」

「あんたがいなかったらあたし達は落第していた。いつもあんたには助けてもらってばかりで……」

「それは違うぞ。俺がいなかったとしても、ティアとスバルはちゃんと受かっていたよ。それに俺は、お前らとだからあんなに頑張れたんだ。俺一人じゃ駄目だったよ……。それに……」

「俺はティアが頑張っているのは知っているから、だから、そんなことを言わないでくれ………」

 

俺はティアの肩にそっと手を置き励ます。

正直こういう柄じゃないんだが、ちゃんと言ってやらないと駄目だからな。

 

「……あ、ありがとう」

「あの~お二人さん。何こんなところでラブコメしてるんですか」

「「ス、スバル!!」」

 

そういえばスバルがいたことをすっかり忘れていた。

 

「な、な、なにいってんのよあんたは!!」

「そ、そ、そうだぞ!!」

「二人ともそんな態度じゃ説得力無いよ」

「「あっ……」」

 

俺って今、ティアの肩に触れてるんだよな。しかも、かなり恥ずかしいことを言って……。

 

「まあ、二人をからかうのはこれくらいにして……。どうするの二人とも、行くの新部隊に」

「……そうだな、お前は行きたいんだろ。なのはさんはお前のあこがれなんだし、同じ部隊なんて滅多にないぞ」

「まぁ、そうなんだけどさ………」

「……あたしはどうしようかな。遺失物管理部の機動課って言ったら、普通はエキスパートとか、特殊能力持ちが勢揃いの生え抜き部隊でしょう。そんな所に行ってさ、いまのあたしがちゃんと働けるかどうか……。って、何よ気持ち悪いわね、スバル……」

「そんなこと無いよ、『ティアもちゃんと出来る』って、言って欲しいんでしょう。特にフィルに!!」

「なにいってんのよ、バカいってんじゃないわよ!! そんなんじゃないわ!!」

「い、いたたたたた、ギブ、ギブゥゥゥゥゥゥゥゥ」

「なにやってんだお前らは……」

 

スバルにつねくり攻撃をし、少しは鬱憤がはれたのかそっぽ向くように解放した。

そんなティアにスバルが……。

 

「……ねぇ、ティア。あたし達は知ってるよ。ティアはいつも口ではふてくされたことを言うけど、本当は違うんだって……。フェイト執務官にも、内心ではライバル心メラメラでしょう」

「ラ、ライバル心とか、そんな大それたもんじゃないけど……。知ってるでしょう。執務官は私の夢なんだから……。勉強できるならしたいって気持ちはあるわよ」

「だったらさ、やろうよティア、フィル。あたしはなのはさんに色々なことを教わって、もっともっと強くなりたい。ティアとフィルは新しい部隊で経験を積んで、自分の夢を最短距離で追いかける」

「うん」

「ああ」

「それに、当面三人でやっと一人前扱いなんだしさ。まとめて引き取ってくれるとうれしいじゃん」

「それ以上言うな!! あんたのせいで、どこへ行ってもあたし達はトリオ扱いなのよ!!」

「それにお前には言われたくはないぞ、スバル!!」

「いたいよぉぉぉぉぉ、ティア、フィル~」

 

今度は俺もスバルの頬を一緒につねってやった。一言多いんだよ。

 

「ふん、まぁいいわ。うまくこなせればあたしの夢への短縮コース。スバルのお守りはゴメンだけど……まっ、我慢するわ」

「「ぷっ、あははははっっっ」」

「何よ、何笑ってるのよ……」

 

全くティアって素直じゃないよな。こんなんだからスバルにからかわれるんだろ。

あの二人は良いコンビだよ。全く……。

 

 

 

*     *     *

 

 

 

「あの三人は、まぁ入隊確定かな……」

「……だね」

「なのはちゃん、嬉しそうやね」

「三人とも育てがいがありそうだし、時間をかけてじっくり教えられるしね」

「ふふっ、それは確実や」

「新規のフォワード候補は後二人だっけ、そっちは」

「二人とも別世界。今、シグナムが迎えに行ってるよ」

「なのは、はやて。お待たせ……」

「お待たせです~」

「ほんなら、次に会うんは六課の隊舎やね」

「お二人の部屋、しっっっっかり作ってあるですよ」

「うん」

「楽しみにしている」

 

私達はそれぞれの職場に戻っていった。新部隊設立まではそれぞれが準備をしなければならないからだ。

やることはいっぱいあるのだ。

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

 

-ミッドチルダ駅構内-

 

 

 

「えっと……あっ……お疲れ様です。私服で失礼します。エリオ・モンディアル三等陸士です」

「……ああ、遅れてすまない。遺失物管理部機動六課のシグナム二等空尉だ。長旅ご苦労だったな……」

「いえ」

「ん、もう一人は……」

「はい、まだ来てないみたいで……あの、地方から出てくるとのことですので迷ってるのかも知れません。捜しに行ってもよろしいでしょうか……」

「頼んでも良いか」

「はい!!」

 

僕はシグナム二等空尉に許可を得て、もう一人の新人の女の子『キャロ・ル・ルシエ』を捜しに行った。

いったいどこにいるんだろう。そうしてると女の子の慌てた声が聞こえてきた。

 

「すみません、遅くなりました……」

 

ルシエさんがエスカレーターを走って降りてきた。大丈夫かな……。

 

「そんなに慌てなくて良いですよ………って危ない!!」

 

心配してたとおり、バランスを崩して転げ落ちそうになった。

僕はソニックムーブで何とかルシエさんを助けることが出来た。

 

けど、制御に失敗して上まで駆け上がってしまい、もつれるような状態になってしまい、何とか僕がクッションになることでルシエさんは怪我をしなかった。

 

「……っっててて、大丈夫ですか?」

「いえ、ありがとうございます。助かりました………。あっ……」

「……あっ!! す、すみません!!」

「い、いえ……」

 

僕はルシエさんの胸に触れるような格好になってしまった。

ルシエさんも恥ずかしいのか、顔が真っ赤になってしまった。

 

 

当たり前だよな……。

 

 

よく引っぱたかれなかったな僕……。

 

「キュウゥゥゥ」

「フリードもごめんね。大丈夫だった……」

「キュクゥゥゥ」

「竜の……子供……」

「あの、すみませんでした。エリオ・モンディアル三等陸士ですよね……」

「あっ、はい!」

 

そういうとかぶっていたフードを取り、僕に自己紹介をしてきた。

 

「初めまして、キャロ・ル・ルシエ三等陸士であります。……それと、この子はフリードリッヒ……わたしの竜です」

「キュクゥゥゥ」

 

これが後にライトニングのコンビとなる二人の出会いであった。

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

 

翌日、ティアとスバルは本局に行って、特別講習受けることになった。本局の武装隊は厳しいので有名だから、徹底的に叩き直されるだろう。俺もそっちでよかったのだが、どうやら試験でプリムの性能に気づいて急遽変更されてしまった。

 

まぁ、確かに今後のことを考えると、デバイスのことを再勉強し直した方が良いんだけど………。

―――――ったく、なのはさんも人が悪いな。

そして俺も、メカニックマイスターであるマリエルさんの所に向かっていた。

今回の目的はデバイスの理論の再認識と、今後、ティア達が使うデバイスの改造プランのヒントを得る為だ。

マリエルさんなら、もっと効率の良い方法を教えてくれるかも知れないし、俺もプリムをさらに進化させたいしな。

 

「初めまして、マリエル・アテンザです。君がフィル君?」

「はい、初めまして。フィル・グリード二等陸士です。よろしくお願いします」

「そんなに硬くならなくて良いよ。マリーって呼んでね。私もそんなに気を張ってる方じゃないしね」

「わかりました。じゃ、マリーさんって呼ばせてもらいます」

 

どうやらこの人はすごく話しやすい人みたいだ。

メカニックマイスターっていってたから、もっと気むずかしい人なのかと思ってたけど………。

 

「……早速で悪いんだけど、君のデバイス見せてくれる?」

 

 

俺は、待機状態のプリムをマリーさんに手渡した。

 

「……へえぇ、独自でここまでのデバイスを作るなんて……。ちょっと構造を見ても良いかな?」

「………はい、その代わり個人端末でしてもらえますか」

 

俺はマリーさんにプリムの構造を教えて良いものか迷ったが、ティア達のデバイスを改良するのに協力してもらう為には、ある程度知っててもらう必要があるので、条件付きでマリーさんがデバイスの構造を見ることに許可した。

マリーさんはプリムを自分の端末にかけ、構造を見てもの凄く驚いていた。

 

「ちょ、ちょっと、何これ!! 明らかにBランクの持つデバイスじゃない。インテリジェントだけど、普通のものじゃなく、ユニゾンデバイスに近いAIが入ってるし、それにモードチェンジもあって、多方面にわたって使える物になっている………。でも、なによりも………」

「………リミット、ブレイクですね」

「そう、何でこんな危険なものを組み込んでいるの!?」

「……マリーさん、これから話すことは、絶対誰にも言わないでさい。機動六課の皆さんには時期を見て俺から話しますから……」

「……分かったわ」

 

俺はマリーさんに未来で起きたことを話すことにした。機動六課の設立、ジェイル・スカリエッティのこと、ゆりかごのこと、そして管理局が負けてその後のこと……。

 

そして―――――。

 

 

過去を変えるために、未来から戻ってきたことも……。

 

 

話し終わった時はマリーさんは顔面が蒼白していた。

 

 

「………何、それ……嘘じゃないのよね」

「荒唐無稽な話と思いますが、事実なんです………」

「……でも、それならつじつまも合うところもある。これに使っている技術は、今ではまだ完成していないものもある。その主なのがリミットブレイクシステム。これはまだ未完成のものなのよ」

「そうですね。これはなのはさんとフェイトさん、二人のデバイスにしか組み込んでませんものね。しかも……術者の負担が相当なもので、他の人には使えない」

「……そこまで知ってるのなら、君の言ってることは本当の事みたいね。だってこれは現段階ではトップシークレット扱いのことですもの。君のランクの人間が知っている事じゃない。それこそ実際に見てきてない限りは……」

「本当は、言わないつもりだったんです。局内にもスカリエッティに繋がっているのがいるので……」

 

 

 

実際、戦闘機人が局内に侵入してスパイ活動をしているはずだ。

ここで奴らに情報を渡すわけにはいかない。

 

 

「だから個人端末でって事だったのね。局のものを使うと、そこから漏れてしまうものね」

「そういうことです。でも、まだリミットブレイクも完全ではないんです。これに組み込んでいるのはあくまで使えるようになっているだけで、しかも術者への負担はなのはさん達のよりは大きいんです。そして……魔力の少ない俺では使いこなせないんです」

「………なるほど、君がなぜ話をしてくれたのか分かったわ。完成させたいのね、リミットブレイクを……」

「はい、残念ながら俺ではここまでが……限界でした」

 

 

 

 

俺の知識と、レジスタンス基地の設備ではここまでが限界だった。

 

 

 

「だけど、メカニックマイスターのマリーさんなら、これを参考にして、完全版のシステムを作れると思ったんです」

「……確かに、ここに組み込んでいるのをヒントにすれば、なのはさん達のも完成を早められるし、欠点も見つけることが出来る………。いいわ、一緒に完成させましょう!!」

「ありがとうございます!!」

「私も君の経験してきた未来はごめんだからね。でも、みんなにはいつかちゃんと言ってよ。それと、もう一つ!!」

「君の本当の力がどのくらいあるのかは分からないけど、リミットブレイクを完成させても、むやみに使わないこと!! いくら負担を減らせても危険なことには変わらないんだからね!!」

「はい」

 

あれから一週間がたち、マリーさんと俺は、ティア達のデバイスプランとなのはさん達のリミットブレイクの改良に昼夜問わず続けていた。

同時進行だったので、ティア達のデバイスについては、俺が六課に合流してから、シャーリーさんと一緒に本人達のデータを取りながら完成させることになった。

 

一方リミットブレイクについては、何とか術者の負担を軽減させる方法が見つかったが、フレームとか最初から見直すことになり、その為最初からの作成となり、完成までにはもう少し時間が掛かりそうだ。

そして俺はティア達よりも一足早く返事をしてたので、今日、六課に合流をすることになった。マリーさんとも一時お別れになる。

 

「じゃ、頑張ってね。無茶しちゃ駄目よ。なのはさん達にも、君が無茶しないようによく言っておくから……」

「少しは信用してくださいよ。マリーさん。それとまだ未来でのことは言わないでくださいね」

「それは大丈夫よ。でも、君が無理をすることは別よ!! この一週間殆ど睡眠取ってないでしょう!! いくらみんなの為だからって、君が倒れたんじゃ駄目でしょう!!」

「すみません………」

「ともかく、私もなのはさん達のシステムが完成次第、組み込む為に、六課に合流するから……」

「それじゃ、マリーさん、六課で……」

「ええ、また会いましょう……」

 

 

俺はマリーさんと別れ、自分のバイク『ロードサンダー』で機動六課隊舎へ向かった。

車も良いんだけど、俺は風を感じることが出来るバイクの方を好んでいる。

マリーさんがロードサンダーを時々いじっていたみたいだけど、何か仕掛けがあるんじゃないだろうな。

 

「よう、きてくれたな、フィル。ようこそ機動六課へ……」

「いらっしゃい、フィル」

「よくきてくれたね、嬉しいよ」

 

隊舎に着いた俺を迎えてくれたのは八神部隊長達だった。

隊長陣勢揃いとは正直驚いた。しかもクラッカーのおまけ付きとは……。

たがが、一介の二等陸士に、これは………。

 

 

「あ、あは、あははは……。ど、どうなってんの……これ?」

「驚いたやろ、マリーさんから連絡を受けてたんでな。ちょっと驚かせてみたんやけど……」

「はやて。フィル、どん引きしているよ」

「……まぁ、はやてちゃんって、いつもこんな感じだから。フィルも慣れておいた方が良いよ」

 

八神部隊長の性格は分かっていたつもりだったが、ここまではっちゃけていたっけな。

 

「まあ、それはともかく来た早々で悪いんやけど、オリエンテーション後に部隊長室にきてくれへんか」

「はい、分かりました」

 

俺はなのはさん達に機動六課の隊舎の案内をされた後、自分の部屋を紹介され、一旦荷物を置いた後、八神部隊長の待つ部隊長室に向かった。

 

「失礼します」

「あっ、ようきたな。まあ楽にしてな」

「あっ、はやてちゃん、フィル」

「はやて、フィル。もう始まっちゃってる……」

「いいや、これからやで。そこに座って話をしようか」

 

俺たちは部隊長室にあるソファーに腰をかけ、話をすることになった。

いったい何の話なんだろう?

 

「実は、フィルのチーム所属何やけど……」

「はい、いったいどこになるんですか。ロングアーチですか、それとも……」

 

 

前は、戦闘適正より事務能力を買われてロングアーチ所属になったんだけど、今回はスバル達と一緒に試験も受けてるからな……。

 

 

 

「それなんやけど、フィルの能力やと本当なら、ロングアーチが向いてると思うんやけどなぁ。メカニックマイスターが認める能力は欲しいし……」

「ランク試験で見せた、あの指揮能力は無視できないよ。スターズかライトニングに入ってもらった方が良いよ」

「そうだね、スターズはティアナが入る予定だから、やっぱりライトニングかな……」

「でも、ティアナとスバルの暴走を止められるのはフィルだけなんだよね……」

「「「はぁぁぁ……」」」

「あ、あの………」

 

なんか、すごく嫌な予感がするのは気のせいか……。

 

「せやから、フィルは訓練及び戦闘時はスターズ5として動いてもらい、デバイス関係とかで協力してもらう時はロングアーチで働いてもらう」

「ちょっと待ってください!! 二足のわらじなんて無理ですよ!!」

「無理言ってるのは分かってるよ。でも、フォワードとしての能力は高いのに、それをそのままにしておくのは正直もったいないと思う。元々、フォワードとしてスカウトをしたんだから……」

「なのは隊長……」

「でもな、機動六課にはデバイスマイスターと言われているのがシャーリーだけなんや。フィルのその力を新人達や私達に貸してほしいんや……」

「八神部隊長……」

「フィル、フィルの訓練は私達が責任を持つ。時間も出来るだけ訓練に集中できるようにするから……だからお願い。フィルの力をロングアーチに貸して欲しいの」

「フェイト隊長……」

「わかりました。その代わり、出来るだけフォワードとしての任務を優先にしてください。シャーリーさんもいるんだし、どうしようもない時だけは俺が一緒にやるようにします」

 

本来、俺の出る幕なんて無いんだから、デバイス関係はシャーリーさんに頑張ってもらわなくちゃならない。

俺が出来ることは、ほんの僅かなことなんだから―――――。

 

「ありがとうな、本当にありがとうな……」

「ありがとうフィル。引き受けてくれて……そして、ごめんね。こんな無茶な配置になっちゃって」

「八神部隊長、フェイト隊長、いいですよ。それに見越してたんでしょう。こうなることは……そうですよね、なのは隊長」

 

でなきゃ、わざわざマリーさんの所まで研修に行かせたりはしない。

そのくらいのことは俺でも分かる。

 

「にゃははは。わかっちゃった……?」

「わかりますよ。そうでなかったら、わざわざマリーさんの所に行かせたりしませんよね。スキルアップも目的だったんでしょうけど、本来はフォワード達のデバイスをシャーリーさん達と一緒に、考えて欲しかったというのが狙いですよね」

「……正解だよ、フィルはあの四人を正確な目で見ることが出来る。だから一緒に訓練して長所や短所、そして何を望んでいるのかを見ることが出来ると思う」

「そういったところをデバイスを作る時に、一緒にやって欲しいんや。それにマリーさんから届いてるで。新人四人の新デバイスプラン……これフィルが考えたもんやろ。これだけあの四人の特徴を捉えてあるものを作れるんやから、いまから新しく考えるより、これを採用した方がええってことや」

 

八神部隊長に見せられたのは、マリーさんのところで考えていた、ティア達のデバイスの設計図だった。

マリーさん、部隊長達に見せるなら先に言っておいてくれよ。

 

「これらのプランは、これから一緒に訓練をしてさらに煮詰めて行かなくてはなりませんけどね。あの四人の力はまだ未知数な所もありますし……」

「シャーリーには私からも行っておくよ。あんまりフィルに頼るなってね。さっきも言ったけど、フォワードなんだからね。フィルは……」

「お願いしますフェイト隊長。デバイスの設計図はシャーリーさんに渡しておいてください。細かいデータはこれから取って、一緒に考えていく事にしますよ」

 

俺は部隊長室を後にし、今後のことを考えていると……。

 

《マスター、大変なことになってしまいましたね》

「ああ、まさかスターズとはな。フォワードになってティアと一緒に戦えるのは良いけど、デバイスのことと同時進行じゃ厳しいな」

《弱気にならないでください。新デバイスとリミットブレイクシステムについては、私も協力します。ですからマスターはティアナさん達のことを守ることに集中してください!!》

「ありがとうプリム。本当にたいした相棒だよ、お前は……」

 

正式運用まで三日と迫っていたが、その間もほかのスタッフが集結してきていた。その中にティアとスバルの姿もあった。どうやら六課に入ったみたいだな。

 

そして一週間が経ち、機動六課の正式な立ち上げの日がやってきた。

 

皆様、現在自サイトのみで公開しています『とある休日シリーズ』になりますが、こちらでも見てみたいという方がいらっしゃいましたら、アンケートにお答えいただけたらと思います。

  • 見てみたいので公開してほしい
  • まあまあ興味がある
  • どちらでもいい
  • 興味がないので公開はしなくて良い

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