魔法少女リリカルなのはStrikerS ~ Remember my heart ~   作:アルフォンス

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Memory;08 ブランニュー・ハート

pipipi

 

 

「ん……朝か」

 

 

目覚ましの音で、目が覚めカーテンを開けると、空も晴れ渡っていて、最高の天気だった。

 

 

「というか、この目覚ましはちょっと勘弁して欲しいよな……」

 

 

というのも、目覚ましは普通の目覚ましじゃない。

フェイトがマリーさんに頼んで、特別に作ってもらった2頭身のフェイト型目覚ましだ。

 

最初の目覚ましで起きなかった場合、今度はフェイトの声が入ったメッセージでおこされるんだけど、そのメッセージが、かなり照れてしまう物が入っているから質が悪い。

 

だから俺はメッセージが再生する前に、目覚ましを止めるのが日課になってしまったのだ。

 

 

 

「さてと、あんまりダラダラしていたら、フェイトが直接起こしに来てしまうからな」

 

 

俺は普段着に着替え、フェイトが待つキッチンに降りていった。

 

 

「おはようフィル。朝ご飯出来ているよ」

 

「ああ……。いつもありがとうな」

 

「ふふっ、どういたしまして♪」

 

 

テーブルを見ると、サラダとパンとスクランブルエッグ、後はコーンスープが並んでいた。

どんなに忙しいときでも、朝ご飯は欠かしたことはない。

基本的に食事はフェイトが作ることが多い。最初の頃は俺がやっていたんだけど、フェイトが『フィルにばかりやらせてたら、奥さんとしての立場無くなっちゃうから!!』ということで、今ではフェイトが作ってくれることが多くなってる。

 

 

 

「「いただきます」」

 

 

俺たちは席について、朝ご飯を一緒に食べる。

相変わらずフェイトの作る御飯は美味しいよな。味とかもそうなんだけど、何より優しい感じがするんだよね。

 

身内贔屓と言えばそれまでなんだけど、でも俺はフェイトと一緒にいるこの時間が大好きだ。

 

 

「そう言えばフィル。今度の週末、お休みとれそう?」

 

「ああ、それは大丈夫。今日の仕事が終わったら、休暇はもらえるように交渉済みだ。前々から言っていたし、元々メカニックは副業だしね」

 

「でも、執務官をやっていた頃と同じくらい忙しいよね。フィルの場合」

 

「た、確かに……。命の危険が少ないだけで、労働時間はそう変わらないかも……」

 

 

執務官を休職中、俺はいろんな資格を取り、様々な仕事を手伝っていた。

無限書庫の司書やマリーさんの助手。さらにシャーリーさんとデバイス作成。

 

こういったことをやっていたら、いつの間にかバイトではなく、本業以上にやるようになってしまった。

 

でも、さすがにそろそろ執務官として復帰も考えなきゃいけないから、副業も控えないとな―――――。

 

 

 

「でも、私はフィルが無茶をしなくなった分、今のままでも良いかなっておもうんだ。私もティアナも本当に心配していたんだからね」

 

「……ぐっ、反論出来ない」

 

「フィル、もうゆりかごの時のような無茶はしないでね。あの時のことは、ティアナも私も本当に悔やんでいるんだよ。フィルに無茶させてしまったことに……」

 

「……ああ」

 

 

あの時――――。

 

死の狭間の世界で、下界の様子を見ていた俺は二人の様子もはっきりと覚えている。

 

 

病室で泣きじゃくっていたフェイト―――。

 

 

いつも、俺の様子を見に来てくれて、人知れず涙を流していたティア。

 

 

俺が二人をどんなに傷つけてしまったのかを痛感した―――――。

 

 

「あれ以来、フィルが私やティアナの補佐的なことをしてくれたおかげで、私達は安心して任務をすることが出来てるしね」

 

「今の俺には、二人のサポートをすることしかできないからな。だから、二人がちゃんと帰ってこられるようにするのは、当たり前のことだ」

 

「……そのおかげで、最近ティアナに、奥さんとしての立場を取られそうになってるけどね」

 

 

フェイトが思わず苦笑いでそう答えた。

確かに最近、ティアはフェイトが出張でいないときは、フェイトの代わりに、色々と手助けをしてくれる。

 

ある意味、奥さんであるフェイトよりも俺の近くにいることが多くなっている気がする。

 

 

「あのね……」

 

「だから、私もっと頑張って、フィルの奥さんは私なんだって事を、ちゃんと分かってもらわなくちゃね!!」

 

 

フェイトが可愛く握り拳を作って、ガッツポーズをして意思表示をする。

 

 

「だったら、俺も、もっと頑張らないとな。奥さんが頑張ってるのに、旦那がちゃらんぽらんじゃかっこ悪いからな……」

 

「……フィル」

 

 

俺たちはお互いを見つめ合う―――――。

 

言葉は要らない―――――。

 

今はお互いが一つになりたい。ただそれだけ―――――。

 

 

「ん……んぁ……」

 

 

俺たちは口づけをかわし、さらに深く求め、互いの口を蹂躙する。

その度に、お互いの心が解け合う感覚にとらわれ、その快楽に身を任せていた。

 

数分間味わった後、俺たちは唇を離し、名残惜しむ。

 

 

「ねぇ……」

 

 

フェイトが瞳を潤ませ、こちらに熱い視線を送ってくる。

夜なら、このまま寝室に行ってお互いを求め合うが、さすがに朝からそんなことはしてはまずい。

 

 

「今は、これくらいにしておこう。後は夜……でな……」

 

「……うん」

 

 

正直、俺もしたい気持ちでいっぱいだけど、それはいろんな意味でよろしくないからな。

 

 

「じゃ、仕事場に行ってくるよ」

 

「待って、途中まで一緒に行こう。たまには……良いでしょう?」

 

「そうだな……。フェイトは今週からお休みだし、たまには良いか」

 

「うん♪」

 

 

食事も食べ終わり、後片付けをした後、俺たちは外に出て、愛車のエンジンをかけに行く。

今日は車で行きたい気分なので、ロードサンダーではなく、俺の愛車のスポーツカーで行くことにした。

 

 

「さて、久しぶりにこいつを動かすとしますか」

 

 

ガレージの中にある車は三台。

フェイトの仕事用の黒のスポーツカー。

なのはさん達と一緒に行動するときに使う高級ワゴン車

 

 

そして―――――。

 

 

 

「やっぱ、地球の古い車は、デザインが良いよな……」

 

 

ボンネットの前方中心にある『XX』のエンブレム。

フォルムは無駄が無く、リトラクタブルヘッドライトでライトでスタイルを阻害する物が全くない。

 

例えるなら、地球の日本刀のような鋭いスタイル。

その美しい白の車の名は―――――。

 

『TOYOTA CELICA XX』

 

 

「あいかわらず、この車はすごいね……」

 

「ああ、これはわざわざ地球まで行って買ってきた車だからな。俺のお気に入りだよ」

 

 

実は、フェイトが持っていた車雑誌に載っていたのを、たまたま見つけて、どうしても欲しくなって、わざわざ地球まで行って買ってきたのだ。

 

だけど、ミッドチルダの燃料じゃ、そのままじゃ動かすことは出来ないので、マリーさんと俺が半年をかけて、レストアをして、こっちでも使えるようにしたのだ。

 

外見以外、中身は殆ど入れ替えなので、性能的にはフェイトが持っている車と大差がないマシンになってしまった。

 

 

 

「じゃ、早速出発するか」

 

「そうだね」

 

 

俺たちは車に乗り込み、エンジンかけると、"ブロロロン"とマフラーから爆音を奏でる。

その音は、ターボではなく、NAエンジンならでの重低音。

 

車乗りにとっては、最高のサウンドだった。

 

 

 

「じゃ、いくぞ!!」

 

 

俺はギアをローギアに入れ、ホイルスピンをさせながら発進した。

 

 

 

*    *    *

 

 

「そういえばヴィヴィオ。新しいお友達。アインハルトちゃんだって? ママにも紹介してよ」

 

「んー、お友達っていうか先輩だからねー。もっとお話したいんだけど、なかなか難しくて」

 

「そっか」

 

 

そう―――――。

 

出会ったのは少し年上の女の子。

 

中等科の一年生、アインハルト・ストラトスさん。

 

 

アインハルトさんは、すごく強い格闘技者で、真正古流ベルカの格闘武術、覇王流(カイザーアーツ)の後継者。

 

 

それからベルカ諸王時代の王様。覇王イングヴァルト陛下の正統な子孫。

 

 

「あっ!! アインハルトさん」

 

「はい」

 

「ごきげんよう、アインハルトさん」

 

「ごきげんよう、ヴィヴィオさん」

 

 

 

わたしもこないだ試合させてもらったけど、まだまだ全然敵わなくて―――――。

できれば今よりももっと仲良くなって、一緒に練習したり、お話ししたりしたいんだけど―――――。

 

 

「―――――ヴィヴィオさん、あなたの校舎はあちらでは?」

 

「あ!! そ、そうでしたっ!!」

 

 

 

しまった……。

アインハルトさんと一緒に登校しているうちに、初等科の校舎を通り過ぎちゃったよ!!

まわりの先輩にくすくすと笑われてるし、恥ずかしい!!

 

 

「それでは」

 

「あ」

 

 

アインハルトさんは、くるっと向いて校舎の中に入っててしまった。

 

 

「ありがとうございます。アインハルトさん」

 

 

中々上手くいかなったりしてますが―――――。

 

 

「―――――遅刻をしないように」

 

「気をつけてくださいね」

 

 

それでも―――――。

 

 

「はいっ! 気をつけます!!」

 

 

何気ない一言が嬉しかったりと、そんな一喜一憂の日々だけど

今はもう無くなってしまった旧ベルカの出身同士―――――。

 

『強くなりたい』格闘技者同士。

触れあえるときはきっとあるから……。

 

 

 

 

「……ていうかー」

 

「今日も試験だよー!! 大変だよー!!」

 

「そうなんだよね~~!!」

 

 

実は、初等科も中等科も、ただいま一学期前期試験の真っ最中です。

コロナはこういったことが得意だから、そんなに慌てていないけど、わたしとリオは、試験が大の苦手です。

 

 

「でも、試験が終われば土日と合わせて、4日間の試験休み」

 

「うん!! 楽しい旅行が待ってるよ!!」

 

「宿泊先も遊び場も、もう準備万端だって!!」

 

「「おおー!!」」

 

 

 

今回のお休みは、ママ達の引率でみんな一緒に異世界旅行!!

しかも、今回はフィルさんが企画しているところもあるから、とっても楽しみです!!

 

 

「よーし、じゃあ楽しい試験休みを笑顔で迎えるために!!」

 

「目指せ100点満点!!」

 

「「お―――――っ!!」」

 

 

 

せっかくの楽しい旅行が待っているんだ。

今は頑張って良い結果を出さなくちゃね!!

 

 

 

*    *    *

 

 

同時刻 高町家

 

 

 

「エリオ、キャロ、そっちはどう?」

 

『はい、さっき無事に引き継ぎが終わりました』

 

『予定通り、週末からお休みです!!』

 

 

高町家で私は、なのはと一緒にエリオ達に、週末の休みが取れたかを確認するために通信を入れていた。

 

どうやら無事休みが取れそう。

 

 

「そう、よかった!!」

 

「じゃ、予定通りみんなで行けるね。春の大自然旅行ツアー&」

 

「ルーテシアも一緒にみんなでオフトレーニング!!」

 

 

こうやってみんなで揃うのは久しぶりだもんね。

フィルはルーテシアやエリオ達とは頻繁にあっているけど―――――。

 

 

*    *    *

 

 

同時刻 ナカジマ家

 

 

「みんなで旅行。あたしもいきたかったッス~~~!! ノーヴェとスバルだけってズルイっス~~!!」

 

「あーうるせーな。あたしらだって別に遊びに行く訳じゃねー。スバルはオフトレだし、あたしはチビ達の引率だ」

 

「とかいって、通販で水着とか川遊びセットを買ってるのを、おねーちゃんがしらないとでも?」

 

「!!!」

 

「なんだ。そうなのか」

 

 

 

ちょっとまたんかい!!

ディエチ、なんでお前がその箱を持っているんだ!!

 

そして、なんで中身を知っているんだよ!!

 

 

「おまえ、人の物勝手にッ!!」

 

「いや、配送データに中身書いてあるし……」

 

 

そう言われてみると、確かに思いっきり書いてあった。

くそっ!! 中身を書かないでくれとするべきだった!!

 

 

 

「まあ、いいじゃない。ノーヴェはバイトと救助隊の研修も頑張ってるんだし」

 

「まったくだ」

 

「だから遊びじゃねーって」

 

 

普段はチンク姉はこういったことは言ってこないのに、たまにフィルみたいにからかってくることがある。

 

ある意味チンク姉とフィルって、似たもの同士かもしれない―――――。

 

 

「そういえばあの子……。アインハルトも一緒か?」

 

「そのつもり、これから誘うんだけどね」

 

 

早速あたしはアインハルトに通信を入れることにした。

それとウェンディ、いい加減にあたしから離れろ!!

 

さっきからうっとうしいぞ!!

 

 

 

「合宿……ですか?」

 

「すみません……。私は練習がありますので……」

 

 

アインハルトの答えは、あたしの予想通りの物だった。

だけど、これであたしが退くと思ったら大間違いだ。

 

 

「だからその練習のために行くんだって!! あたしや姉貴もいるし、ヴィヴィオも来る。それに何よりフィルの奴も来る!! 練習相手には事欠かねー。しかも!!」

 

「魔導師ランクAAからオーバーSのトレーニングも見られる」

 

「はい……」

 

 

おっ、フィルの名前と、トレーニングのことを言ったら少し食いついてきたな。

よし、もう少しだ!!

 

 

「ついでに歴史に詳しくて、お前の祖国のレアな伝記本とかも持っているお嬢もいる。まぁたった4日だ。だまされたと思って来てみろって。つまんなかったら、走り込むなり、一人で練習するなりしててもいいんだし」

 

「あ、あの……」

 

「良いから来い!! 絶対に良い経験になる!!」

 

 

今回のことは絶対アインハルトの奴に良い経験になる。

せっかくのチャンスを生かさない手はない!!

 

 

「詳しいことは後でメールすっから、とりあえず今日の試験頑張れな」

 

「……はい」

 

 

ちょっと強引だったけど、これであいつも来るだろう。

それにヴィヴィオやフィルと一緒にいれば、あいつの視野ももっと広がるしな。

 

 

 

「ノーヴェのああ言う強引さって、つくづくスバルと姉妹だよねぇ」

 

「ああ……そうだな」

 

「うう あたしも行きたかったッス~」

 

 

 

*    *    *

 

 

そして―――――。

 

 

そんなこんなで試験期間も無事終了。

 

 

「試験終了おつかれさま」

 

「みんなどうだった?」

 

「花丸評価を頂きました!!」

 

「3人揃って」

 

「優等生です!!」

 

 

わたし達、3人ともテストは9割以上キープ。

成績は上位を取って、無事試験を突破しました!!

 

 

「わーみんなすごいすごーいっ」

 

「これならもう堂々とお出かけできるね」

 

「よくやったな3人とも」

 

 

 

だって、この旅行のために一生懸命頑張ったもん。

これで赤点を取りましたなんて言ったら、なのはママ達とフィルさんに大目玉だもん。

 

 

「じゃ、リオちゃんとコロナちゃんは、一旦おうちに戻って準備しないとね」

 

「「はいっ」」

 

《Good job》

 

「ありがとうレイジングハート」

 

「おうちの方にもご挨拶したいから、車出すね」

 

「あ、じゃあ準備をすませてわたしも行く!!」

 

 

 

わたしが着替えに行こうとしたとき―――――。

 

 

「あーヴィヴィオは待ってて。お客様が来るから」

 

「おきゃくさま?」

 

 

一体誰が来るんだろう?

わたしにおきゃくさまって……?

 

そう思っていたら―――――。

 

 

ピンポーン

 

 

《It seems to have come. (いらっしゃったようです)》

 

 

チャイムが鳴り、玄関に行ってみると―――――。

 

 

「こんにちは」

 

「よう」

 

「アインハルトさん!? とノーヴェ!!」

 

 

そこにはアインハルトさんとノーヴェが一緒に来ていた。

 

 

「異世界での訓練合宿のことで、ノーヴェさんにお誘いを頂きました」

 

「同行させていただいても、宜しいでしょうか?」

 

「はいッッ!! もー全力で大歓迎です!!」

 

 

まさか、アインハルトさんと一緒に行けるなんて夢にも思わなかった!!

フィルさんの方を見ると、クスクスと何かうまくいったという笑みを浮かべている。

 

もしかして、フィルさんとノーヴェが、アインハルトさんに!?

 

やられた!!

こんなサプライズを用意してあったなんて!!

 

 

「ほら、ヴィヴィオ。上がってもらって」

 

「あ、うん!!」

 

 

いけない―――――。

ここが玄関だって事をすっかり忘れていた。

 

 

「アインハルトさんどーぞ!!」

 

「お邪魔します」

 

 

うわぁ……。

まだ胸がドキドキしているよ。

 

 

「あの子が同行するって、教えなかったの正解だねノーヴェ」

 

「はい。予想以上に」

 

 

わたしはアインハルトさんをリビングに案内し、ソファーの埃も払い、周りも綺麗にする。

 

 

「「こんにちは」」

 

 

リオとコロナが挨拶した後―――――。

 

 

「はじめましてアインハルトちゃん」

 

 

なのはママがアインハルトさんに自己紹介をしていた。

考えてみれば、これが初対面なんだよね。

フェイトママとフィルさんは会ったことがあるけど―――――。

 

 

「ヴィヴィオの母です。娘がいつもお世話になってます」

 

「いえ……。あのこちらこそ……」

 

「格闘技が強いんだよね? 凄いねぇ」

 

「は、はい……」

 

 

ママがいつもの押しで、アインハルトさんの手を握って話していた。

 

 

「ちょ、ママ!! アインハルトさん物静かな方だから!!」

 

「えー?」

 

 

うちのママ、積極的なのは良いのですが、時々強引なところもありますから、とっても困ってしまいます。

 

アインハルトさんが、ビックリしてしまっていなければいいのですが―――――。

 

 

「さて、ここから出発するメンバーは揃ったな」

 

「そうだね。それじゃ、途中でふたりの家に寄って、そのまま出かけちゃおうか」

 

「「「はぁ―――――い!!」」」

 

「あ、ヴィヴィオ、着替え着替え!!」

 

 

しまった。

そのことをすっかり忘れていた!!

 

 

「クリス、手伝って!!」

 

 

わたしは急いで部屋に戻って、服を着替えに行った。

 

 

「賑やかになりそうですねー」

 

「ああ」

 

「ノーヴェさん、そういえばスバルさんたちは別行動なんですか?」

 

「スバルは次元港で待ち合わせ。ちょうど仕事終えてるころじゃねーかな」

 

 

 

*    *    *

 

 

 

同 特別救助隊オフィス

 

 

 

「それでは司令!!」

 

「スバル・ナカジマ防災士長。本日只今より、4日間の訓練休暇に入ります!!」

 

「おう、頑張ってこいや。今回の訓練は例の執務官殿二人と一緒だったか?」

 

「はい。ランスター執務官とグリード執務官と一緒に、色々鍛え直してきます!!」

 

 

 

久しぶりのフィルとの訓練。

フィルはこの訓練次第で、また執務官に復帰するかを考えるらしい。

 

あたし個人としたら、これ以上無茶はして欲しくはないんだけどね。

 

 

 

*    *    *

 

 

 

本局 次元航行部第3オフィス

 

 

「オフトレとはいえ、本格的な戦闘訓練はちょっと久しぶりよね」

 

「気合い入れなきゃ!! ヴィヴィオやアインハルト達にダメなところは見せられないし!!」

 

《Yes master》

 

 

それに、フィルも今回の訓練は参加する。

本当なら、もう少し休んでいて欲しかったけど、でも、今までよく休んでくれたという方が正しいわね。

 

だから、あたしもフィルに負けないように、仕事でフェイトさん以上のパートナーになれるように頑張らなきゃね。

 

 

「でも、その前にこのデータ整理を終わらせなきゃ!!」

 

《Let's work hard (がんばりましょう)》

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

無人世界カルナージ アルピーノ家

 

 

「じゃ、それで人数確定ね」

 

『はい。すみません、メガーヌさん。4日間お世話になります』

 

 

事前にフィルから聞いていたので、準備の方は万全にしてある。

一人二人増えたところで、どうってことはない。

 

 

「いいえ~♪ じゃ待ってるわね~」

 

 

さてと、これから大忙しになるわね。

ルーテシアも、このためにロッジの改装や温泉設備の増築、訓練場の新築を張り切ってしていたものね。

 

訓練場の新築は、時々フィルに聞いていたりしていたけど、その他はあの子が全部やったんですものね。

 

元六課の皆さん、そしてフィル。

 

アルピーノ家のおもてなし、存分に楽しんでくださいね!!

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「さて、サンダー出発するぞ」

 

《了解です》

 

 

ワゴン車は7人乗りなのだが、一人分のスペースは荷物置き場になるため、俺は自分のバイク『ロードサンダー』で空港に行くことになった。

 

そしてエンジンをかけようとしたが―――――。

 

 

キュルルルルル

 

 

「あれ? かからないぞ?」

 

 

もう一度キーを回して試してみたが、結果は同じだった。

 

一体どういう事だ?

昨日もちゃんと整備して、準備万端にしたはずなのに?

 

 

 

《どうやら、電気系統の故障のようですね。数十分あれば直りますが、今からですと時間がありませんね》

 

 

サンダーに自己診断プログラムでチェック入れてもらったら、ヒューズが切れていて、交換するのにはちょっと時間が足りない。

 

 

「しかたがない。俺はみんながカルナージに着いてから、ワープで合流するか?」

 

 

さすがに荷物置き場の所をどかすわけにはいかないし、もう一台車を出すのは効率が悪いしな。

 

そう思っていたら―――。

 

 

 

「あの……。どうしたんですか?」

 

 

コロナが車から降りてきて、こっちにやってきた。

 

 

「ああ、コロナ。ちょっとサンダーの調子が悪くてな……」

 

「そうですか……」

 

 

 

*    *    *

 

 

 

フィルさんがバイクを弄っていて、中々エンジンがかからないのに気づいて来てみたら、そんなことになっていたんだ。

 

 

「こうなったら……俺は後で出発するしかないな」

 

「えっ……?」

 

 

そんな―――。

せっかくの旅行なのに、フィルさんだけ後で一人で来るなんて―――。

 

何か良い方法は……?

 

 

「あ、あの……。フィルさんが良かったら、わたしの席に座りませんか?」

 

「だけど、それじゃコロナは……?」

 

「ですから……その……」

 

「?」

 

 

 

恥ずかしいよ……。

でも、これしかフィルさんと一緒に出かけられないから、ファイトだよ、わたし!!

 

 

 

「フィルさんの……ひ、ひざに……座らせて……もらえ……ませんか……」

 

 

きっと今顔は真っ赤になっているよ。

フィルさんも、いきなり何を言ってるんだと思うよね。

 

 

 

「……良いよ。っていうか、俺の膝で良いのか? 何なら効率は悪いけど、車は出すから」

 

「良いんです!! みんなで一緒に行った方が楽しいですし、それに……」

 

「フィルさんだけ、一人だなんて……嫌ですから」

 

「コロナ……」

 

 

一人でも大丈夫だなんて、そんなこと絶対にない!!

フィルさんは、一人でも行ける手段はいくらでもあると思う。

 

だけど、フィルさんだけ一人にするなんて、わたしは嫌だから―――。

 

 

 

「……それじゃ、お言葉に甘えさせてもらうよ。コロナ」

 

「はい♪」

 

 

 

結局、ワゴン車についたわたしとフィルさんは、途中までフィルさんの膝に座ってフィルさんと一緒に楽しい会話をしていたんだけど、リオとヴィヴィオの『いいないいな~』の視線に負けてしまい、交代で座ることになりました。

 

フィルさんは、誰の時でも笑顔で対応してくれて、一緒にいるときは本当に楽しかった。

 

リオもヴィヴィオも、本当に心から笑っていて、ワゴン車内は笑い声で溢れていた。

 

 

やっぱり旅は、こうやってみんなで楽しまなきゃ!!

 

 

 

*    *    *

 

 

 

同時刻 グリード家

 

 

 

《どうやら、相棒は行ったようですね……》

 

 

本当は故障なんてしてはいない。

相棒が念入りにチェックを入れて、私も自己解析でやっているんですから―――。

 

 

 

《たまには相棒はみんなと一緒に行って、輪の中で楽しんだ方が良いんです。いつも裏方ばっかりしてるんですから……》

 

 

コロナさんが来るのは予想外でしたけど、ああやって相棒のことを見てくれたのはとても嬉しかったです。

 

少女ながら、本当に優しい心の持ち主なんだと思います。

 

 

《いつかあの子達が、免許を取ったら、私を運転させてあげたいですね……》

 

 

 

普通のバイクに乗せるより、私がバイクのすばらしさを。たっぷりと教え込みますよ。

 

そして、みんなでツーリングとかもしてみたいです。

 

相棒、みなさん、良い休暇を!!

 

皆様、現在自サイトのみで公開しています『とある休日シリーズ』になりますが、こちらでも見てみたいという方がいらっしゃいましたら、アンケートにお答えいただけたらと思います。

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