魔法少女リリカルなのはStrikerS ~ Remember my heart ~   作:アルフォンス

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Memory;02 大切な人たちからのメッセージ

むかしむかし

 

 

「どこに行ってたの…? 心配したんだよ」

 

「ママ、いないの……」

 

「そっか。じゃあ一緒に探そうか」

 

 

 

花咲く庭でふたりは出会って――――。

 

 

だけど訪れたのは―――――。

 

 

残酷な現実―――――。

 

 

 

 

「そうとも彼女こそが!!」

 

「旧きベルカの最強の人間兵器にして、最凶の戦船の起動キー」

 

「ゆりかごの聖王だよ」

 

 

 

なのはとヴィヴィオは、ぶつかって戦って―――――。

 

 

「パパとママと一緒にいたい。ママ……パパ……」

 

「助けて……」

 

「助けるさ……」

 

「いつだって……」

 

「「どんなときだって!!」」

 

 

 

思いを伝えあって―――――。

 

 

 

そして―――――。

 

 

 

抱きしめ合って、『親子』になって―――――。

 

 

 

なのはとヴィヴィオの時間は静かに優しく―――――。

 

 

 

「流れていってるんだって思ってたんだけど……」

 

 

 

それがどうしてこんな事になったのよ!!

ヴィヴィオが聖王モードになっちゃてるし、もう何が何だか分からないよ!!

 

 

 

*    *    *

 

 

「いや、あのねフェイトママ?」

 

「大人変化自体は別に聖王化とかじゃないんだよ」

 

「魔法や武術の練習はこっちの姿の方が便利だから、きちんと変身できるように練習もしてたの」

 

 

 

実は最初は、一人でやっていたんだけど、あるときフィルさんに見られて、魔法のコントロールをきちんと出来るように、基礎プログラムとか作ってくれたんだ。

 

 

「なのはママやフィルさんにも見てもらって、もう大丈夫だねって。ねっ、なのはママ!!」

 

「そうなの!」

 

「でも……」

 

 

フェイトママは、まだ不安な顔をしてる。

心配してくれるのは嬉しいんだけどね……。

 

 

「ん……。クリス、モードリリース!!」

 

 

クリスに頼んで変身を解除してもらい、わたしはフェイトママの方へ行き、しっかりと瞳を見て自分の思いを伝える。

 

 

「なにより、変身したってヴィヴィオはヴィヴィオのまんま!!」

 

「ゆりかごもレリックも、もうないんだし……」

 

 

わたしの辛い思い出の象徴。

レリックとゆりかごはもう無い……。

 

フィルさんが自分の命をかけて、壊してくれたんだ。

そして、そのおかげでわたしはこうしていられる。

 

 

「だから、大丈夫。クリスもちゃんとサポートしてくれるって」

 

「うん……」

 

 

わたしにはフィルさんが、作ってくれたセイクリッド・ハートがある。

だから、大丈夫だよ。フェイトママ。

 

 

「心配してくれてありがとう。フェイトママ」

 

「でも、ヴィヴィオは大丈夫です!!」

 

「それにそもそもですね?」

 

「ママ達だって、今のヴィヴィオくらいの頃には、かなりやんちゃしてたって、フィルさんから聞いてるよ?」

 

 

 

昔、六課にいたときに資料とかも見ていたけど、フィルさんや色んな人からママ達のことを聞いたら、出るわ出るわの武勇伝。

 

はっきり言って、わたしの変身魔法なんて、可愛い物だと思います。

 

 

「そ、それはその……」

 

「あははー」

 

 

特になのはママ、笑ってごまかしているけど、昔フェイトママにスターライトブレイカーを撃ったのは、どう考えてもやりすぎだと思う。

 

 

「そんなわけで、ヴィヴィオは早速魔法の練習に行ってきたいと思います」

 

「あ、わたしも!!」

 

 

一人じゃさすがに危ないけど、なのはママが一緒になら大丈夫。

なのはママやフェイトママが駄目なときは、フィルさんが一緒に来てくれるんだけど、今日はまだお仕事が終わらないみたいで、まだ帰ってきていない。

 

ちょっとだけ、フィルさんが一緒のほうがいいなっておもったのは、ママ達には内緒です。

 

 

 

「いいですか。フェイトママ?」

 

「はい、気をつけてね」

 

「じゃ、フェイトちゃん。ちょっと行ってくるね」

 

「いってきまーす!!」

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「……ってことになっててね。本当にびっくりしたんだけど、キャロとエリオは聞いてたりした?」

 

 

 

なのは達が出かけて、私は辺境自然保護隊で活動しているエリオとキャロに、定時連絡をしていた。

もしかしたら、フィルがエリオ達には言ってるかもしれないと思ったから……。

 

 

 

『大人モードって単語だけはたまに』

 

『わたしもフィルさんから、少しだけ聞いていたんですけど、まさか変身制御の事とは思ってませんでした』

 

「やっぱりー?」

 

 

もしかしたらって思ってたんだけど、時々フィルっていたずらっ子な所がある。

私に内緒にして、何かを進めたりして脅かすのが好きだし……。

 

例えば、結婚記念日のことを忘れているふりをして、実は裏で綿密に計画を練って、プレゼントをくれたり、エリオとキャロの誕生日のときも、素っ気ないふりをして、当日にサプライズをしたりする。

 

そんな感じで、ごくたまにだけど内緒でやることがあるから、その辺はちょっと困ったさんかな。

 

 

 

『でも、フィルさんは、ヴィヴィオがしていることが危ないと思ったら、真っ先にフェイトさんに相談すると思いますよ』

 

『フィルさんが誰よりも信じているのは、フェイトさんなんですし……』

 

「エリオ、キャロ……。うん、そうだね!!」

 

 

今回私に言わなかったのは、まだなのは達でちゃんとしていたからだと思う。

実際、なのははヴィヴィオのことを知っていたんだしね……。

 

ただ、私に言い忘れるってのは、ちょっと勘弁してよ。

 

 

『それに、ヴィヴィオ、魔法も戦技も勉強するのが好きですから、出来ることは何でも試してみたいんですよ』

 

『ヴィヴィオはあれでもしっかりしてます。心配ないと思いますよ』

 

「……うん」

 

 

そうだね。ヴィヴィオはなのはの娘だもん。

ちゃんとその辺は分かっている。

 

 

「そんなに心配なら、ちょっとこっそり見に行くか?」

 

『『「えっ?」』』

 

 

後ろから声がして振り返ると、そこには黒のGジャンとGパンを履いた黒髪の青年。

私の旦那様、フィルがいた。

 

 

『『「フィル (さん)!!」』』

 

「ただいまフェイト。その様子じゃ、なのはさんから聞いていなかったんだな……」

 

 

フィルがふぅっとため息をついて言う。

この様子だと、なのはにはちゃんと言ってて、ちゃんと話してあったんだ。

 

私に内緒にしておくつもりじゃなかったんだ。

 

 

「こんなことなら、悪戯心を出さないで、俺からフェイトに言っておけば良かったな。心配をかけてごめんな」

 

 

フィルが真剣な表情で、頭を下げて謝ってくれた。

 

 

「ううん、良いよ。フィルがヴィヴィオのことをちゃんと言うつもりだったんなら。でも、今度はちゃんと私に言ってね」

 

 

私はフィルのおでこをツンとつついて、頬をふくらませながら、ちょっと怒ったふりをする。

もう怒ってないけど、言ってくれなかったのは寂しかったんだからね。

 

 

「でも、なのはさんも忘れることがあるんだな。伝言を頼んだのは、ヴィヴィオのデバイスを作るときだったのに……」

 

「そんな前だったの!? じゃ、もう半月はたってるじゃない!!」

 

 

 

ヴィヴィオのセイクリッド・ハートは、既製品じゃなくワンオフだ。

だから、フィルが作るときに、半月の時間がかかるって言ってたのに……。

 

それじゃ、そのときからなのはは忘れてたんだ。

 

 

「もう、なのはったら、ケーキの一つでも奢って貰わなくちゃ」

 

「その辺はふたりでお任せするとして、エリオ、キャロ。2週間ぶりだな。元気でやってるか?」

 

『はい、今日も本当に平和でしたよ』

 

『今やっている希少種観測も、もうすぐ一段落ですから。来月にはフィルさん達の所へ帰れそうです』

 

『そっか。エリオ、お前はどうするんだ? 休暇はルーテシアの所に行くのか?』

 

 

エリオ達の親友であるルーテシア・アルピーノは現在休職していた。

母親のメガーヌ・アルピーノさんと一緒に、無人世界カルナージで一緒に暮らしている。

 

これは、フィルがレジアスさんに頼んで、離ればなれになってた親子の時間を取り戻して欲しいという配慮で、一時、職務を離れるようにしたのだ。

 

だけど、ルーテシアの罪状は、ほんの少しだけ刑期が残っていたので、普通には休めさせられないので、それだったらメガーヌさんの休養もかねて、無人世界だけど、自然があふれていて、空気も良いところであるこの世界で、表向きは島流しという形でやることにした。

 

交通の便はちょっと不便だけど、エリオ達はポーターや、フィルのワープでよく逢ったりしているので、特に問題はないみたいだ。

 

 

『えっと、今回はフェイトさん達の所に一緒に帰ります。ルーとはこないだ逢いましたから』

 

『というわけで、わたしも一緒にフェイトさん達の所に行きますね』

 

「そっか……。でも、キャロもルーテシアも良い年頃なんだから、そろそろ彼氏でも作れよ……」

 

 

こうして私たちに甘えてくれるのは嬉しいんだけど、エリオはまだ彼女を作れそうだけど、キャロとルーテシアはちょっと心配になる。

 

 

『むぅ……。フィルさんはエリオ君だけ特別視してます?』

 

「そうじゃないけどな。キャロ達の歳くらいになると、彼氏くらい作るんだけどな……」

 

『……じゃ、フィルさん、わたしと付き合ってくれますか?』

 

「おいおい……。あんまり心臓に悪い事は言わないでくれよな。冗談なのはわかるけどよ」

 

『あながち冗談じゃないんですけど……』

 

 

キャロが六課時代からフィルのことが好きだったのは分かってる。

だから、こうしてよくフィルに言ったりすることがある。

 

小さい頃は、お父さんやお兄ちゃんに懐いているって感じていたけど、14歳になってキャロも成長してきて、行動も大人じみたこともしてきている。

 

フィルのことは信じてるけど、ちょっとヤキモチも焼いちゃうかな。

 

 

「……まぁ、キャロならすぐに良い奴見つかるし、その相手が見つかるまでは、俺が付き合うよ」

 

『わーい!! ありがとうございます!! フィルさん、今度会うの楽しみにしてますね』

 

「もう……フィル、キャロに甘すぎだよ」

 

「かもな。でも、たまには良いだろ?」

 

「……ちゃんと、奥さんである私もかまってね。じゃないと拗ねちゃうからね」

 

「了解。じゃ、俺もフェイトに愛想尽かされないようにしないとな」

 

 

私がフィルのことを愛想尽かすことは無いよ。

だって、こんなに私のことを思ってくれて、エリオ達のこともちゃんと見てくれる人なんていないから……。

 

 

『それじゃ、僕たちはそろそろ失礼します』

 

『フェイトさん、フィルさん、次の休暇楽しみにしてますね♪』

 

 

エリオとキャロの通信が終わると、フィルは立ち上がって、吊してあった自分のコートから、一つの鍵を取り出し……。

 

 

「ほら」

 

 

それを私に放り投げた。

 

 

「えっ……? これって、ロードサンダーの鍵だよね?」

 

 

私の手に渡されたのは、前に、私がプレゼントしたキーホルダーに付けた銀色に輝く鍵。

 

 

「ヴィヴィオのこと、心配なんだろ。だったら、ちょっと様子を見に行くか?」

 

「フィル……」

 

 

いつもフィルはそうだ。

素っ気ないそぶりしてるけど、ちゃんと相手のことを見てくれる。

 

今だって、ヴィヴィオのことを心配してくれてる。

 

 

「うん♪」

 

「じゃ、行くとしますか」

 

 

私達はガレージに停めてあるロードサンダーの所に向かった。早速私はキーを差し込みエンジンに火を入れる。

ブオオオンと心地良いエンジン音は、今日も絶好調の証。

 

 

「じゃ、サンダー。ちょっとお願いね」

 

《珍しいですね? 今日は、フェイトさんが運転するんですか?》

 

「うん、たまには風を感じたいしね。フィルじゃなくてごめんね」

 

《かまいませんよ。相棒も良いですけど、フェイトさんに使って貰うのも嬉しいですから》

 

「ふふっ、ありがとう。じゃ、早速飛ばすよ!!」

 

 

 

フィルが後ろに乗り込んだのを確認すると、私はスロットルを全開にして、ヴィヴィオとなのはがいる公園へ向かった。

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「やっぱいいなー。大人モード♪ ねっ、クリス」

 

 

クリスがピッと腕を上げて、答えてくれた。

 

 

「だよね~♪」

 

「ね、ヴィヴィオ?」

 

「はい?」

 

 

わたしがクリスとコミュニケーションを取っていたら、なのはママが話かけてきた。

この話し方は、まじめなお話のときの口調だ。

 

 

「大人モードはヴィヴィオの魔法で、自分の魔法をどう使うかは自分で決めることなんだけど……いくつか約束して欲しいんだ」

 

「――――うん」

 

「大人モードは魔法や武術の練習や実践のためにだけ使うこと。いたずらや遊びで変身したりは絶対にしないこと。ママと約束……」

 

「うん。遊びで使ったりは絶対にしません」

 

 

なのはママの右手の小指に、わたしの小指も絡ませ、誓いをする。

これは言われなくても、わたし自身の誓い……。

 

 

「天に誓って?」

 

「天と星と時に誓って」

 

 

例え神様に誓えなくても、なのはママとフィルさんには誓える。

ここまでわたしを思ってくれた人たちだから……。

 

 

「それに、魔法でママよりおっきくなったって……」

 

「心まで大人になるわけじゃないもん」

 

 

今のわたしじゃ、まだまだ子供……。

だから……。

 

 

「ちゃんと順番を追って大人になってくよ。普通に成長して、この姿になったときに恥ずかしくないように……」

 

 

そして……。

 

 

「自分の生まれとなのはママの娘だって事に、えへんと胸を張れるように……」

 

 

いつかフィルさんと、ちゃんと向き合えるような素敵な大人になるように……。

 

それが、お世話になった大切な人たちへの恩返し―――――。

 

 

「ちょっと生意気!!」

 

「にゃっ!!」

 

 

なのはママがわたしの首をぎゅっとして、自分の方へ抱き寄せる。

ちょっと、そんなにしたら苦しいってば!!

 

 

「にゃー!! せっかくイイ事言ったのに!!」

 

「あはは♪」

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「なっ、ヴィヴィオなら大丈夫だろ?」

 

「そうだね……。私が心配するまでもなかったね」

 

 

俺とフェイトは、少し前からふたりに見えない位置で、隠れて様子をうかがっていた。

もし、ヴィヴィオが浮ついた心で魔法を使っていたのなら、あの場でデバイスを取り上げるつもりだったんだけど、それは俺の杞憂だったな。

 

ヴィヴィオは俺なんかより、ちゃんと分かっている。

魔法を使う本当の心構えをな……。

 

 

「これ以上は、ふたりに野暮ってもんだぞ。フェイト」

 

「うん、じゃ、そろそろ行こうか?」

 

「だな。せっかくだから、少しツーリングでもするか?」

 

「じゃ、今度はフィルが運転してね。こうしてフィルのぬくもりをいっぱい感じたいから……」

 

 

サンダーに乗り込んで、フェイトは俺の身体にぎゅっと密着してくる。

あのな……。

そうされると、俺、本当にきついんだけどな……。いろいろな意味で……。

 

 

「じゃ、行くとしますか。しっかりつかまってろよ」

 

「うん♪」

 

 

ヴィヴィオ、俺が作ったデバイスを……大切に育ててな。

そして、セイクリッド・ハート、ヴィヴィオの助けになってくれ。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

「じゃ基本の身体強化系からね。それから放出制御」

 

「クリスの慣らしもあるんだから、いきなり全開にはしないんだよ」

 

「だーいじょーぶ!!」

 

 

大切な愛機(デバイス)だもん。

無茶して壊したりなんかできない。そんなことしたら、フィルさんやママ達に謝りきれない。

 

 

今日は本当に色んな事があった……。

 

帰ったら、リオとコロナにメールを送って、ノーヴェにも、明日からいっぱい練習しようねって伝えて……。

 

 

ああ……

 

 

それからまたあの子に会いに行こう。

 

 

わたしの故郷に咲いてた花と―――――。

 

 

綺麗な世界の写真を持って―――――。

皆様、現在自サイトのみで公開しています『とある休日シリーズ』になりますが、こちらでも見てみたいという方がいらっしゃいましたら、アンケートにお答えいただけたらと思います。

  • 見てみたいので公開してほしい
  • まあまあ興味がある
  • どちらでもいい
  • 興味がないので公開はしなくて良い

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